『宇宙兄弟』は、『キングダム』を買い集める前に、自主的モチベーション維持プログラムとして「週1漫画ルーティン」をやっていた時に読み始めました。私がソシャゲ事業開発時代の全盛の時だったかもしれません。
日々のクレームとバグ対応に追われ、心が荒廃していましたが(身体は全然元気なんですけどねー)、六太のジレンマには共感するし、仲間との関わり合い、魅力的な登場人物たちの心に刺さるセリフの数々に勇気付けられたものです。…たぶん。
ということで、私のなかで絶賛、「自分の子どもに読ませたい漫画第1位」に君臨しているんですが、いまだに子どもどころか結婚していないので、宇宙兄弟の話をするたびになんだか悲しい気持ちになります。。
『宇宙兄弟』は全巻集めていたのですが、友人や会社のメンバーに漫画を貸しているうちに、25,6巻だけぽっかりなくなってたんですよね。昨年の誕生日に、Amazon欲しいものリストに入れていたんですが、見事に2冊とも贈って頂いてうれしかったです。
改めてじっくり読むと、この2巻ともいいですね。
六太が宇宙に行き、月に立つタイミングです。アツい。
25巻は、六太がケネディ宇宙センターに行く途中、かつて日々人が体験したであろう体験を追体験しながら、兄弟の対比が描かれています。ジェット機に向かうときに見た風景、日々人を見送るときの「こっち側」と「そっち側」の描写。子どものころ、宇宙飛行士の夢を周りからなじらて恥ずかしいと思って夢をつぶした六太と、全然気にしない日々人。
26巻は、月着陸で事故寸前。まさに月着陸しようとするタイミングが、六太と日々人に子ども頃に宇宙を教えてくれたシャロン博士が、ALSの進行によって、自分で呼吸ができなくなったために手術をするタイミングと重なっています。六太はそんな状況になっても、「月着陸の音声」がシャロンにつながっていることを意識してなのか、自らの名前をしっかり添えたうえで「ちゃんと着陸します」「大丈夫!余裕です!」と管制塔と連絡をとります。
笑えるポイントの入れ込み具合もさすが。25巻のドロップキック、26巻のフィリップが語る父親が自動車にぶつかった小話、六太と日々人の父長介が語る二人のエピソードあたり。
ところでこのブログを書いている現時点では、日々人が六太を助けにいく寸前。もうすぐ本当のクライマックスだと思うんですけどねー。どんな最後になるか楽しみです。
宇宙兄弟 25巻の内容と感想
六太のサイン
六太のサインがかわいいです。(上の画像の右上)
まねして書いてみましたが、これサインとしては結構書くのに時間がかかるので、しんどそうな気がします。六太がグッズにサインを書いていた李しましたが、他のメンバーと比べて効率が悪そう。…というのは私個人の感想。物語のなかでは女性ウケがいいらしい。
南波家
南波家ってすごい。宇宙飛行士を二人輩出している時点で、客観的には素晴らしい教育環境で育ったんじゃないかと、評判になりそうなものです。なんですけど、母・南波真弓、父・南波長介ともにちょっとズレているというか…(ちなみに両親の名前はアニメ化後に決まったらしい)
六太と両親の掛け合いはいつも面白い。月に立つ前に、ジョーカーズ(六太が所属する月探査チーム)のクルーは各々で故郷に帰っていて、六太も日本に戻り、実家に顔を出します。六太の部屋は片付けられている…というか父親の趣味の部屋にリフォームされていて、父・長介は陶芸家のような格好をしている。そこで陶器をもった六太。
超重いけど…
『宇宙兄弟 25巻』六太
それが父さんの”人生の重み”だ!
『宇宙兄弟 25巻』長介
それにしては軽い
『宇宙兄弟 25巻』六太
これこれ。南波家の日常。
カルロのカムバック
25巻の一つ前の24巻では、訓練施設から突如いなくなったカルロの父親とのエピソードが描かれていました。月面探査直前のタイミングでクルーが欠けるということは、大問題。ジョーカーズには、モッシュ・ベルマーという別のチームからの補充がほぼ決まりかけていました。
モッシュは、おそろしく話がつまらなく、落ちのない話をさも落ちがついたかのように話したり、訓練中も他のメンバーの空気を読まずに自分のスタイルを通したり、ジョーカーズメンバーとは全く相性が合っていませんでした。
もう翌日には、NASAが探査計画とチーム発表の公式会見を行うというタイミング。モッシュは親戚たちと過ごしていて、甥っ子のサムの悩みを聞いていました。サムはケンカで負けたのか、やり返したいという気持ちがあり、モッシュに相談をもちけたという感じです。
モッシュは自分の過去の武勇伝として「ドロップキック」をしたことで、同じような問題を解決したような話をサムに聞かせ、サムはそのドロップキックを教えてとモッシュに乞います。
もう先が見えましたね。
モッシュは前日、夜空の月にドロップキックをかますかのように、鮮やかな見本を見せます。その結果、着地に失敗し、全治三か月の骨折。記者会見にはカルロがギリギリ間に合い、改めてメンバー継続という判断となりました。
モッシュって一体何だったんだろう、と考えると、当て馬な役割であったのでちょっとかわいそうではあります。最初、ジョーカーズのクルーたちは個性が強くて、チームとして一致団結するような構成ではないように描かれていました。しかし、いくつかのプロセスを経てチームとして完成していることを表現させたかったんですね、モッシュというイレギュラーの登場によって。
モッシュはモッシュでもといた「パーフェクツ」というチームでは、欠かせないメンバーだったようだし、チームビルディングって難しいんだなって思ったりしました。
日々人の見た風景
ケネディ宇宙センターには、六太たちはジェット機に乗り込み向かいます。こういうのは、NASAのパフォーマンスなんですかね?
ここからしばらく、六太は日々人が見たであろう風景を追体験するようになります。ジェット機から見下ろす街並み。過去の自分はそれを見上げているだけだった。ケネディ宇宙センターではクルーの家族が迎えてくれるのだけど、ロープで区切られていて、日々人が月に向かったとき、六太はいま両親がいるロープの外側にいたのに、今度は自分が「こっち側」にいるとう状態。長介に「そっち側の気分」を聞かれると「意外な冷静さ」「使命感」「楽しみたい感」があると声耐えました。きっと日々人にもあったのか…なんて思ったのかもしれません。
打ち上げまで
宇宙飛行士は、打ち上げまでの時間はクルーがリラックスできるよう過ごす模様。
たまにある宇宙兄弟のえも知れぬ小笑いポイント、今回はクルーが皆で観ていた映画。
『フロ・グラビティ』。サンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーが出演していた『ゼロ・グラビティ』のパロディですが、「俺は必ず生きて帰る!」「シャワーじゃなくて風呂につかるんだあ!」と地球帰還のモチベーションが風呂という物語で涙を流すジョーカーズ。さらに『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のパロディと思われる『Gardens of The Galaxy』というパッケージに宇宙服(?)を着た人や動物がジョウロやホースを勇ましく持っている謎の映画を観ようとしている…
でも打ち上げ前日の夜は、いよいよという雰囲気に。船長のエディの計らいで、ジョーカーズはこっそり夜中に施設を抜け出します。一行は、照明で照らされた自分たちが乗るロケットとその打ち上げ台を下から眺めます。「バレたらまずいこのミッション」の共犯者となったクルーは、心のどこかでまたつながったんだなと思いました。
打ち上げ
宇宙兄弟のゴールって六太と日々人が月で一緒になることだと思うんですよ。
そこに至るまでのステップとして、JAXAでの宇宙飛行士試験があり、NASAの訓練があり、プロジェクトのクルーに選ばれるといういくつかの壁があるわけですね。で、六太が「宇宙に行く」というのは物語の中でも一大イベントなわけです。
25巻の最後は、夢をかなえることの難しさが描かれています。子どもの夢は純粋な気持ち。その純粋な気持ちを無遠慮に容易く摘んでいくのは、いつだって本人以外。六太は宇宙飛行士になるという夢を友達や先生に話しています。でもこう言われてしまいます。
マジで言ってる?
『宇宙兄弟 25巻』六太の高校時代の友達
人前でいうと痛い奴だと思われるぞ
『宇宙兄弟 25巻』六太の高校時代の先生
私も思い出せないだけでそういうのあったのかなー。対する日々人は、他人のことなんか関係なく、宇宙飛行士になるという夢を隠さずにまっすぐ生きていたのが印象的です。
だから宇宙兄弟、特に六太という夢を持つのがダサいと思い込んで、現実を見る大人として自己を置こうとした人物が主人公になっていて、多くの読者は六太に共感して日々人のことを羨ましいとおもったり、その行動に勇気づけられるんでしょうね。
打ち上げで六太は、過去を思い出していました。そうしているうちに、六太が持ってきた1枚の写真が宙に浮き上がりました。幼少のころ日々人と六太が、毛利衛さんに手を添えられて写った写真です。
もう宇宙だよな…ここ
『宇宙兄弟 25』六太
というセリフで締めくくられています。
宇宙兄弟 26巻の内容と感想
ランデブー
宇宙に来て早々、日々人からメールを受信。「楽しいだろ?宇宙って」というシンプルなメール。六太はこれに対して「バクバクだ」と返す。25巻で伊東せりかさんから来ていた「実は心臓はとんでもないことになってました」に続く意味不明の2続きの絵文字が空想上の動物の「獏」の絵だと気づいて、早速それを使う六太。
せりかさんと言えば、六太が想いを寄せ続けているのですが、なかなか届かない、気づかれない。六太が乗るオリオンは、せりかさんの乗るISSとランデブー直前。六太はせりかさんと通信をしながら、ぼうっと妄想を展開させていました。宇宙空間で告白をしてヘルメット越しにキスをするという妄想。
我に返った六太は、頬をパンパンに膨れさせています。宇宙という無重力空間では上半身に水分が動くらしくむくむんだとか。ムーンフェイスってやつですね。六太の妄想ボケもこれに助けられ、クルーには全然気づかれてません。
やがてISSとランデブーすると、特別な感情が湧きおこります。
人の心を感じられるものに 人は癒される 我々にとっては”ランデブー”がそれだ
『宇宙兄弟 26』エディ・ジェイ
六太の辞書に、ランデブーが「宇宙飛行士にとっての癒し」という意味が記されました。
宇宙という壮大な空間のなかで、人が人らしく活動できるのは「人という存在が感じられるから」かもしれませんね。
シャロン
シャロン博士のALSは徐々に進行している描写が描かれます。24巻ではシャロンと同じくALS患者で強く生きている人たちに出会い、勇気づけられたシャロン。26巻では六太たちの活動をみんなで映像を見ながら過ごしていました。
しかし、突然呼吸ができない状態に陥ります。そのとき世話をしてくれる宍戸さんたちはたまたまシャロンの傍から離れていて異変にすぐに気がつきません。体が動かせず誰にも危機を知らせることができないでいます。それはまるで宇宙空間に一人で放り出されたかのよう。幸い、その後に異変に気付いてもらうことができ、最悪の事態は免れます。
こういう事態が起こるというのが非常に怖いですね。少しだけ目を離した瞬間に…ということも十分に考えられるわけです。家族であろうが、闘病している人といつでもずっとわけではありません。
シャロンは自立呼吸ができなくなるため手術をすることになりますが、その手術の日は、六太が月面着陸するというタイミング。『宇宙兄弟』、なんという設定を組んでくるのか…
月着陸のアクシデント
26巻最大の見せ場が、月着陸時のアクシデント対応。想定しない障害物(岩)が隠れており、機体が傾き六太が動きます。意図的なのかどうなのか、六太が人に安心感を与えようとしたりするリーダーシップを感じざるを得ません。
月面着陸は失敗すればクルーの命にも関わります。事故で機体が破壊されてしまうかもしれないし、助かったとしても、何の活動もできなくなるかもしれません。非常に緊迫した状況。結果として無事に着陸することができるのですが、そこまでの六太の行動、というか言葉の打ち出し方はとても勉強になりました。
シャロンの手術が行われている手術室では、月面着陸の様子が音声で流れています。シャロンは無意識のなかでアクシデントの情報を聞いているわけです。
こちらナンバ・ムッタ! 聴こえますか! これよりちゃんと着陸します、大丈夫!余裕です!
『宇宙兄弟 26』六太
この通信を聞いたシャロンは夢の中で機体を支えて、大丈夫!余裕です!という六太の姿を見ます。
誰からのメッセージなのか、「ちゃんと」「大丈夫」「余裕」という言葉選び。これは自分事にしてみると、何かしら大変なことが起こったとき、メンバーに恐怖を増幅させるような言動はさせないという教えになりました。
ちなみにこのあと、六太は船外に出て月に足を踏み出そうとしますが、躓いて足よりも先に手で月に触れます…
「こいつはダメだと思った」南波長介の子どもたちの印象
ところで、やはり南波家はすごい。奔放な母親と寡黙なわりにボケをかましてくる父親。六太と日々人はシャロンという存在がいたから、家庭だけではないところでも成長させる要素があったから宇宙飛行士という職業に就けているんだと思う。
けど、子供たちに過度な期待をしないが、やりたいことを否定しなかったこの両親のスタンスはとっても重要だったのかも。漫画の話ではあるのでなんともですが。
父の長介は、日々人への期待をやめたエピソードがこれ。
活造りの魚がまだパクパクしているその口に そいつの刺身を咥えさせたあの日々人の奇行を見て 「こいつ(日々人)はダメだ」と思った
『宇宙兄弟 26』南波長介
六太への期待をやめたエピソードがこれ。
家にあった「こんにちは赤ちゃん」のメロディが流れるオルゴールを 何の曲だか知りもせず カッコつけて夕空を見ながら聴いてたな あの時もワシは「あーー…こいつ(六太)はダメだ」と思った
『宇宙兄弟 26』南波長介
すごいエピソードをもってるな、おやじ。
まとめ
漫画から学べることって多いなーとつくづく思います。共感できるから感情移入ができると思うので、登場人物の行動であったり言葉には、見えること以上の意味が込められているんですよね。それが何なのかを考え続けていくと、いろんな人の心が理解できるようになる気がします。
『宇宙兄弟』はチームとか友情とか、人を前向きにする見本がたくさんあるなと思います。描写として暴力や性(ケンカや恋愛はありますが)が描かれないので、子供に読ませても全然大丈夫。という意味でもおススメ。