『人新世の「資本論」』を徹底解説。書評とサクッと要約|SDGsは大衆のアヘンである

人新世の資本論 経済
人新世の資本論(斎藤 幸平)

2021年入り早々に話題になった本が、斎藤幸平氏の『人新世の「資本論」(集英社)』(よく「人新生」と誤って書かれていたりしますが、正しくは人および人工物が地球を覆う地質時代の意味を指して、「人新世(読み方:ひとしんせい)」)。

昨今の新型コロナウイルスの猛威における経済および社会システムの不安もあいまり、NHK100分de名著でマルクスの『資本論』が取り上げられました。その資本論を新解釈して、2020年9月に刊行されてから一部で話題になっていた本書がさらに注目を浴びた格好です。『NHK100分で名著』には、著者の斎藤幸平さんがナビゲーターとして出演されていました。

さて、このところ「資本主義の限界」というような表現をよく聞くようになりました。限界とまでは思わないまでも、何か違和感であったり正体不明な不安を感じる人は多くなっているのではないかなと思ったりします。

というのも、新型コロナウイルスが世界中の経済を停滞させているにも関わらず、金融市場では一時落ち込んだ日経平均やダウ指数が急回復。一方で現実では、学生の孤独によるコミュニティ形成の欠落、飲食の営業休止、アルバイトや派遣労働者の雇用削減。新型コロナの影響が直撃した業界はのきなみ大きな損害を被っているにも関わらず、株式市場がコロナ以前の数字になっているといういわゆる実体経済と違いすぎるんじゃないか問題が発生しています。

各国、財政出動をして対応しているわけですが、本書で述べられる、現行の大人世代(日本でいう団塊や氷河期)による先送り問題が危うさを孕んでいるように思います。経済援助のお金は刷れますが、将来の若い世代に責任転嫁されていきます。でも援助は喫緊で必要としている多くの人たちがいます。

新型コロナウイルス自体がどのように生まれたかはわかりませんが、グローバルな市場経済のなかでの競争が生み出したとしたら、その原因は、資本が大きい者が勝ってしまう資本主義だとも言えます。

こうした資本主義の矛盾に応えられるかもしれないというのが、マルクスの資本論の新解釈というわけです。

私たちは、資本主義のなかに生きていて、その恩恵を多分に受けています。なのでいま私自身が資本主義を全否定できないんですよね。そうなんですが、本書で述べられる「コモン」と「脱成長」という考え方は本当の意味で、持続する社会を作るには必要なものだろうと思うんです。

めちゃくちゃ矛盾するんで、この本を手放しで賛成できないのが本音のところです。自分には少し高尚な内容かな。みなさんはどう思いますか?きっとこれから日本で気候変動について議論の中心になっていくのが巻き起こしていくのが、斎藤幸平さんであり、本書なのでしょう。興味津々です。

ちなみに発行部数は着実にのばしていて2021年8月時点で30万部だそうです。再分配というワードが盛り上がる昨今、持続的に部数も伸ばしていきそうな気がしますね。

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本の概要と要約

人新世の資本論の問題提起
『人新世の「資本論」』の問題提起

著者の課題
資本主義による経済成長が人類繁栄の基盤を切り崩していく。どこか遠い人に責任転嫁し、労働者も環境も搾取されている。

解決方法
脱成長を検討する。マルクスの研究ノートがヒントとなる。

人新世の資本論
『人新世の「資本論」』とは?
人新世の資本論
『人新世の「資本論」』の要約

内容
●人新世とは?
「人間の活動が地球の表面を覆った年代」という意味。
石油、土壌養分…地球の資源は有限なのに、資本主義が搾取をやめることはない。

●資本主義とその問題点とは
「価値を増やしていく終わりなき運動」。
人任せにしていると超富裕層が優遇されていく。結果、気候変動の問題は先送りにされ、私たちの労働力も搾取され続ける。

●解決策としての「脱成長」という選択
脱成長とは、清貧でもなく、脱成長資本主義でもなく、長期停滞でもない。
考えるにあたって、マルクスの資本論がヒントになる。
資本論のイメージは、ソ連や中国などの一党独裁だが、現在流通する資本論は、共著者エンゲルスの解釈になっている。晩年のマルクスの研究を再解釈する。
「コモン」という考えで、市民が民主的に水平的に参加型に管理することで、脱成長コミュニズムが形成され「減速」した社会を実現する。生産の民主化で物質代謝の亀裂を修復する。

著者:斎藤 幸平(さいとう・こうへい)

1987年生まれ。現在は、大阪市立大学大学院経済学研究科准教授に就かれているそうです。
ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程修了。専門は経済思想、社会思想。Karl Marx’s Ecosocialism: Capital,Nature,and the Unfinished Critique of Political Economy (邦訳『大洪水の前に』)によって権威ある「ドイッチャー記念賞」を日本人初、歴代最年少で受賞。同書は世界五カ国で刊行。編著にベストセラー『未来への大分岐』(集英社新書)があり、『人新世の「資本論」』が単独の著書としては初めて。

時の人になっているようで、インタビューも多数あります。

●インタビューリスト
グレタ トゥーンベリさん世代に向けて 「人新世の『資本論』」 を書いた。斎藤幸平さんが伝えたかったこと(ハフィントンポスト)
「脱成長コミュニズム」社会へ、危機の瞬間のチャンス到来(ForbesJapan)
『人新世の「資本論」』斎藤幸平さんインタビュー マルクスを新解釈、「脱成長コミュニズム」は世界を救うか(好書好日)
気候危機、格差が迫る転換 「コモン再生」で脱成長を 斎藤幸平・大阪市立大准教授インタビュー(JIJI.COM 2021年5月3日 )

●SNS
・[twitter]斎藤幸平@koheisaito0131

●受賞歴
・新書大賞2021
「資本主義の暴走と環境破壊を止めろ <新書大賞2021>大賞『人新世の「資本論」』レビュー

本の解説と感想(レビュー)

SDGsは大衆のアヘンである

最初からグサッとくる見出しがこれです。「SDGsは大衆のアヘンである」。

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、国連において加盟193か国で採択された、世界を挙げて持続可能な社会を作りましょう、という目標。2019年くらいから日本でも浸透し始め、ESG投資のトレンドもあいまって2020年には多くの企業が「社会貢献しまっせ」的にPRするようになりました。主観ですが、何を目標にどのように測定するのかが不明なため、宣言しているだけにとどまっている企業が多い印象です。

序文にある「アヘン」と表現する点は、とても考えさせられます。著者の斎藤さんは、SDGsを意識することを悪いとは言っていません。しかし、SDGsを実行するだけではもはや取り返しがつかないのだと言っています。「温暖化対策してます」と思い込み、SDGsを免罪符として、様々なビジネスが推進されます。エコバッグやマイボトルといった、善意は無意味だとも言い切ります。

SDGsは、温暖化対策をしていると思い込むことで、将来の大変な危機から目を背けさせるためのアリバイ作りだというのです。SDGsを達成したとしても気候変動は止められないのだと、どこかでうすらと分かっていたことに、図星を指された気になります。

人新世とは

本書では、完新世や更新世といった地質年代の次の地質を「人新世」として表現し、用いられています。地球が新たな年代に突入したということです。SDGsを達成しただけでは気候変動は止められないというのは、地球の地表の様子がすっかり変わってしまったことが要因。つまり「人新世」は、活動が地球の表面を覆い尽くした年代です。「人新生」ではないので、注意ですよ!

家の外に出てみると、視界には人工物が立ち並んでいませんか。

人間が地球を大きく変えています。いま、二酸化炭素濃度は高くなっていて、この濃度になるのは400万年ぶりだそうです。ではその400万年前はどのような環境だったのでしょうか。今から平均気温は2~3度高く、海面も6m高かったそうです。

海面上昇と言えば、キリバスやツバルという国が取りざたされますが、これらの国は30cm高くなるだけで、国土の5~8割が浸水するそうです。たった30㎝でそうなる国があります。(【かごしま4】“沈みゆく島国”キリバス・ツバルの現状

この気候変動の鍵を握るのが資本主義で、 本書ではマルクスの「資本論」を参照しながら「人新世」における社会と自然の絡み合いを分析しています。

資本主義のグローバル化と環境危機の関係性

資本主義による経済成長によって、多くの人は恩恵を受けています。

ハンスロリングの『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』では、客観的なデータ、つまりファクトをみれば、世界全体で生活水準は向上、貧困率は下がり飢餓もすくなくなり、疫病への対策もでき(黒死病やインフルエンザと違い、コロナは全然防げているしワクチンの流通も早そう)、戦争で命を落としたり、出産で亡くなることも減り平均寿命は上がっています。

一方で、フランスのジャック・アタリは、『2030年ジャック・アタリの未来予測』でも述べられているように、資本主義は一部の富裕層に富が集中する傾向にある(富裕層上位10%が世界の富の87.7%を所有、先進国の中産階級は貧困化)と述べています。

本書でも、資本主義は「人を豊かにするはずが、人類の繁栄の基盤を切り崩しつつある」と、資本主義がうまくいっている面もありながら、このまま続くとまずいと言っています。

資本主義は、豊かな生活を与えてくれます。しかしこれがどのような背景に成り立っているかというと「外部化」によりもたらされています。ものをつくって利益を上げる手段として、コストを下げるという選択肢があります。コストを下げるためには、安い賃金で働いてくれる人がいるといいので、どんどん貧しい国に仕事が行きます。ものを作るには材料が必要なので自然を切り崩す必要があります。

私たちは、その姿を見ることはほとんどありません。「どこか遠くの人々に負荷を転嫁し、その真の費用を不払いにすることで成り立つ」のです。この免罪符としてエコバッグを買うということで本当にいいのでしょうか。 

資本主義の責任転嫁

私たちは、どんどん問題を先送りにしています。そりゃZ世代のグレタさんも激怒しますわ

負荷を転化していると前述しましたが、資本主義はどんな責任転嫁をしているのでしょうか。本書では3つ挙げられています。これは分かりやすいです。

①技術的転嫁
環境危機を技術発展によって乗り越えようとしますが、生態系の攪乱を引き起こします。

②空間的転嫁
外部の資源に頼ろうとすると、生態学的帝国主義によってどこかの誰かの労働力と、自然を搾取することになる。

③時間的転嫁
影響を先延ばしにして、その間に稼ごうとすれば、ただただ次世代へ大きな負担を残す。

転嫁していることを認識し、私たちの生活様式の抜本的見直しが必要になってきています。SDGsの啓蒙というのはそういう意味で人々に環境を考えさせるきっかけにはなっていると思うんですよね。たしかにSDGsの目標を達成することでは真も問題を解決しえないかもしれませんが、いま自分たちの生活を直視して生活様式を改める機会が今訪れているのかもしれません。

脱成長

斎藤氏は、「経済成長を諦め、脱成長を気候変動対策の本命として真剣に検討するしかない」という旨を主張しています。

では、脱成長とはなんでしょうか。

ここで主張されているのは、資本主義の延長線上のものでありません。日本での脱成長論から紐解かれています。

日本では、脱成長=緊縮と認識されており、この議論では「逃げ切り団塊世代(脱成長)」と「氷河期世代(経済成長)」とに分かれ対立しています。しかしこのなかに欠けているのがグリーンディール(気候変動問題)です。結果として導かれている「反緊縮」は、金融緩和・財政出動による資本主義のもとでの経済成長をひたすらに追求する従来の理論と代わり映えしないものです。

脱成長は旧世代の理論だという固定観念が日本で定着しており、気候問題の関心が低い日本では、このような状況が続いています。諸外国は環境運動が台頭。抗議運動、俳優や市民、金メダリストが声をあげるなど社会的ムーブメントになることもあります。

さらにこの下の世代がZ世代が登場します。この世代はデジタルネイティブで、世界を巻き込んだ価値観をもっています。Z世代は環境意識高く、資本主義に批判的です。大人たちの尻拭いに激怒、呆れさえしています。社会変えようしているその代表格がグレタさんなわけです。

この新世代によって、脱成長が新世代の理論として台頭してきています。新しい脱成長論の出発点は、資本主義に挑戦するものであり、資本主義の延長線上である「脱成長資本主義」ではありません。

資本とは絶えず価値を増やしていく終わりなき運動で、脱成長はブレーキをかけるもの。
脱成長は減速する社会です。

日本の失われた30年は、資本主義を維持したままの脱成長。より一層利益を上げようとすると、賃金は下がり、労働分配率低下し貧富の差を広げてきました。脱成長とは、GDPを減らすことではありません。GDP増大しても万人の繁栄は訪れないので、経済格差の収縮、社会保障の拡充、余暇の増大を重視する経済モデルへの転換しよう、労働を抜本的に変革し、搾取と支配の階級的対立を乗り越え、自由、平等、公正、持続可能を打ち立てるというのが、新世代の脱成長論です。

マルクスの復権

で、いまなぜマルクスなのかっていう話ですよね。

マルクスの資本論というと、イメージはソ連や中国、共産党による一党独裁。生産手段の国有化です。それをそのままということではなく、再解釈しようという試みが、この『人新世の「資本論」』です。

再解釈の鍵はコモンだと述べられています。
コモンとは、アメリカ型自由主義とソ連型国有化の両方に対峙するもので、公共財を民主主義的に管理するものと述べられています。

な、なに言ってんだ…て感じですが、簡単に言えば、地球をみんなの共通の資産・資源として管理するということ。

そもそも『資本論』は、マルクスと共著者のエンゲルスによるものですが、マルクスが先に死んでしまい、最終的にはマルクスの研究ノートをエンゲルスが解釈したもので、マルクスが真意かどうかは定かではないというのです。

再解釈にあたっては、「MEGA」という国際的なプロジェクトにおいて、マルクス・エンゲルスの全集をまとめるために新資料が公開されたことで、新たな解釈につながるだろうとのこと。(なんだか都合がよすぎる…と思ったのは個人的な解釈です)

改めてコモンの説明をすると、共有され管理される「富」、すなわち「水力」「電力」「住居」「医療」「教育」といった=公共財です。これらを専門家に任せずに、市民が水平的に、参加型で共同管理する社会体の形成です。

マルクスは、アソシエーション(相互扶助)がコモンを実現するといっていて、これが資本論で描きたかったマルクスが描いた将来社会だそうです。

マルクスの大転換

マルクスは、若い頃は社会主義革命によって乗り越えられると考えていたようなのですが、資本主義の強靭さから、晩年は修正を加えていった模様。さきほども少し書きましたが、『資本論』はマルクス死後に盟友エンゲルスが遺稿を編集したもので、その過程のなかでマルクスとエンゲルスの見解の相違から歪められた部分があるとのこと。

なので、コモンについては、現行の資本論からは読み取れないそうです。著者の斎藤さんは「資本論の未完の部分を隠蔽した」とまで表現しています。

マルクスが格闘していた部分を見えなくなっている。その誤解により思想を歪めスターリン主義という怪物が生み出されてしまった

『人新世の資本論』p152

だそうです。

ところで、「資本主義がもたらす近代化が最終的には人類の開放をもたらす」という考え方を「進歩史観」というらしいです。「進歩史観」は、①生産力至上主義(資本主義のもと生産力をたかめると貧困も環境問題も解決できる)と②ヨーロッパ中心主義(生産力の高い西欧が歴史のより高い段階にいる。他の地域も同じように近代化をすすめるべき)

社会主義は、資本主義が貧富の差を拡大させて不平等な社会にしてしまうという欠点を解消するために考え出されたものです。マルクスも、もともとは進歩史観を持っていましたが、徐々にこれが揺らいでいきます。

さらに難しい話になってきますが、物質代謝論というものがあり、これは「人間が絶えず自然に働きかけ、さまざまなものを生産し、消費し廃棄しながら惑星のうえで生を営んでる」という循環するという話。

資本主義の強靭さは、人間を低賃金長時間労働させ、自然や資源を収奪し、できるだけ短期間により多くの価値を獲得しようという動くので、それはもう自然的な循環は作れず、本来エコロジカルな物質代謝に修復不可能な亀裂を作ることになってしまう。過剰な森林伐採や、化石燃料の乱費など、環境問題に対しての資本主義を矛盾するものとして扱うようになっていきました。

資本主義が欠乏を生む

少しマルクスから話が飛びますが、資本主義が貧しさをもたらす(正確には貧富の差を開く)という話です。

コモン(例えば土地や河川)というのは、公的なものだったはずなのに、それが私的所有されることによって、希少性が人工的に生み出されました。所有者、すなわち巨大な資本を持つ者のコントロール下に置かれることによって一部の富を持つ者の好き勝手にできるようになりました。残りの人たちは市場で物を手に入れることができる「貨幣」を手に入れるため、労働力を提供するようになります。

もともと無償だったものが、労働力と引き換えになってしまったのです。市場がグローバルになっていくほど、国対国の競争となり、低賃金で生産できるグローバル・サウスに外部化していくと、世界で貧富の差が広がっていきます。

外部化の連鎖がどこまで続くのかわかりませんが、しわ寄せがどこか遠い人に転嫁されていくというのはこういうことです。

脱成長コミュニズム

中国の武漢が発生源とされる新型コロナウイルスですが、こうした未知のウイルスは単純に今まで人類と接触していないものだったのかもしれません。

先進国の需要にこたえるために、自然の奥まで足を踏み入れることで、未知との接触機会は増えざるを得ません。アフリカのエボラ出血熱は、オオコウモリを発生源としているそうなので、同じなのかもしれません(他の動物に感染してから人間に来たという可能性もあるので、個人的なコメントです)。

つまり、資本主義は気候変動だけではなく、接触することのなかった危機も顕在化させる危険性を孕んでいるということです。

こうした資本主義がもたらす世界から救ってくれるのが、「脱成長コミュニズム」だというのが本書のメインとなる主張です。脱成長コミュニズムが形成されれば、「減速」した社会を実現することができ、生産の民主化で物質代謝の亀裂を修復するというものです。

脱成長コミュニズムを築くには以下のようなポイントが挙げられています。

①使用価値に重きを置いた経済に転換し、大量生産大量消費からの脱却を図る
②労働時間を短縮して生活の質を向上させる
③創造性を奪う画一的な分業を廃止する
④生産プロセスの民主化を進めて、経済を減速させる
⑤労働集約型のエッセンシャルワークを重視する

この結果、経済は減速し、環境問題への配慮の余地を拡大させ、資本主義がもたらした物質代謝の亀裂を修復しようというのです。

社会システムの転換

これまでの内容から、資本主義は「グローバル・サウス(低所得国、南北格差などの用語)」への外部化による、労働力と環境を搾取によって成長してきましたが、今後、経済成長と環境問題との両立は、どうも上手くいきそうにないということがわかってきました。

解決策としての脱成長コミュニズムの例として、バルセロナが挙げられています。バルセロナはアダ・クラウ市長が、2020年1月に「気候非常事態宣言」という2050年までに脱炭素化(CO2ゼロ)にするという目標を打ち立てました。

アダ市長が所属する政党であるバルセロナ・コモンズは、公共空間の緑化、電力・食糧の地産地消、自動車・飛行機・船舶の利用制限、といったマニフェストを掲げています。経済成長ではなく、恒常的な成長と利潤獲得のための終わりなき競争を批判する脱成長型のビジョンです。

すでにこんな実績があるらしい。

「寡占電力企業にさようなら。電力などの基本的なサービスは寡占企業の手に委ねてはダメ」となる。市自らも太陽光発電に着手、たった数年でBEを4700の供給ポイントを持つヨーロッパ最大の公営電力供給会社に成長させた。そしてEndesaに依存していた時に比べて、市は年間71万ユーロ(約9000万円)、2018年から合計130万ユーロ(約1億6000万円)の節約に成功した。

newsweek:世界一ラディカルな市長?アダ・クラウ

バルセロナ市が独占的に意思決定するのではなく、市民参加型で運営されているそうです。つまり、私的所有や国有から生産手段を水平的共同管理するという試みが実現されています。このように、新たな社会システムとしてのモデルケースで、社会的所有・市民営化・脱トップダウン型の統治形態・市民参加の主体性がとられています。

とはいえ、全世界でバルセロナの例のようにはいかないでしょう。本書の最後には、改めて働くことや生きる意味、一人ひとりが考えて人を巻き込んで議論をしていくことで、これまでの常識を転覆させる必要があるとしています。

まとめ

うーん、めっちゃむずい。わかったようなわからないような。

1回読んだだけではピンとこなかったというのが正直なところだったのですが、この数か月で読んだ他の本でも主張されているようなことで結びつくこともあり、読み返してみると、だんだんと資本主義ではない世界というものが必要な時代に差し掛かっているんだなという気にはさせてくれました。

脱炭素化の話をとっても、いまのままだと無理ですよね。自動車産業でもガソリン車ゼロの目標が次々に立てられていますが、EV車を動かすにも排気ガスがないだけで脱炭素するものではないですし…

それでも地球全体の持続を考えるのであれば、誰かに責任を転化しない国際的な連帯というのは、急務なのでしょう。どうなる、コスモポリタン。

※追記
(6/6)脱炭素という点では大企業の取り組みは啓蒙になるし、影響力もあるなと思いました。それが日清食品さんのフタ止めシール廃止。これによってプラスチック原材料が33トン削減できるらしい。かなりインパクトのあるPR展開だったため、実効果以上に、一般にもこうした活動の意味を考えさせるきっかけになりますね。(かわいいネコちゃんデザインも合わせてくるところとか、商品も売れるだろうし、プロモーションとして単純にすごい)

本の目次

『人新世の資本論』の表紙
人新世の「資本論」のカバー

本って表紙のデザインの威力に売上が左右されるということもあり、最近の新書も帯だけではなくカバー丸ごとオリジナルのデザインが多くなったなというイメージです。集英社さんもしっかり対応されていて、この表紙、実はサイズの大きいカバーです。取ると新書のいつものデザインなんです。

  • はじめに――SDGsは「大衆のアヘン」である!
  • 第1章 気候変動と帝国的生活様式
  • 第2章 気候ケインズ主義の限界
  • 第3章 資本主義システムでの脱成長を撃つ
  • 第4章 「人新世」のマルクス
  • 第5章 加速主義という現実逃避
  • 第6章 欠乏の資本主義、潤沢なコミュニズム
  • 第7章 脱成長コミュニズムが世界を救う
  • 第8章 気候正義という「梃子」  

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