『教養としての落語』の書評とサクッと要約|落語は人間の業を肯定すること

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ビジネスエリートがなぜか身につけている教養としての落語(立川談慶)

『ビジネスエリートがなぜか身につけている教養としての落語』は、立川談慶さんの著書。「エリートが身につけている」ってつくと、気になっちゃうのは何かコンプレックスを持っているからなのかもしれない…

まあ、ビジネスエリートにはそんなに興味はないつもりですが、リベラルアーツという横文字でまとめられるような「教養」には大変興味があります。

本書は、著者の立川談慶さんの言葉でまとめられているので、読みやすく、わかりやすい内容になっています。落語についてさっぱり知識なしでしたが、ちょっとだけ語れる知識が付いたかもしれません!

談慶さんの師匠にあたる、立川談志さんの考え方が印象に残ります。

「落語の本質とは、人間の業を肯定すること」
『討ち入り?めんどくせえよ』『俺は行きたくねえよ』『仮病使ってトンズラするか…』そんな”忠臣”じゃない奴にもスポットを当てるのが、落語なんじゃねえのか?」

落語は失敗図鑑とも言えるくらい、失敗談が多いらしく、人間味溢れる日本人の価値観が詰まっていとう。それを分かりやすく表現した言葉ですね。

落語は改変が可能だとか、そのベースとなる「古典落語」が300くらいしかないというのにも驚きました。そんな知識も豊富。すでに僕も「芝浜」を例えに使う準備は万端です。

今はYouTubeでも落語が聴けるということらしいので、時間あるときに聴いてみます!

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本の概要と要約

『教養としての落語』の概要
『教養としての落語』の概要

著者の課題
国内外問わず、自国の文化・伝統芸能はビジネスエリートの共通言語となっている。落語は、「人間の失敗図鑑」で、日本人特有の価値観や人間の本質が見える。そんな落語の基礎知識、人物、有名落語を解説する。

『教養としての落語』の要約
落語の基礎知識
『教養としての落語』の要約
落語と他の伝統芸能の違い

内容
・原点
 -1623年、徳川家光の時代の笑い話をまとめた本
 -仏教の教えを庶民に分かりやすく伝えた作品だった

・噺(はなし)の構成
 -枕→導入、自己紹介、時事ネタ
 -本題→メインとなる話
 -オチ→締めくくり

・古典落語
 -著作権なしのカバー曲
 -誰が話してもいいし、脚色してもいいし、結末を変えてもいい

・新作落語
 ーオリジナルソング
 -作り手の名前がはっきりしている

・現代落語の派閥
 ①落語協会(古典の研究が中心)
 ②落語芸術協会(創作の研究が中心)
 ③円楽一門会(落語協会と真打昇進の考え方の違いから独立)
 ④落語立川流(落語協会と真打昇進の考え方の違いから独立)
 -派閥間で仲が悪いということではない

・落語の登場人物
 -弥太郎→よく失敗する。ときにはっとする発言。哲学的な存在。
 -一八→太鼓持ち
 -若旦那→お金持ちの息子
 -権助→田舎者
 -彼らは業にまみれた庶民代表

・他の伝統芸能との違い
 -落語は、笑いをとろうとする、門戸は開かれている、庶民の娯楽
 -歌舞伎は、自分を魅せる、ほとんど世襲
  -23歳までなら養成所から歌舞伎役者になれる
  -坂東玉三郎、片岡愛之助
 -講談
  -歴史もの、武士の授業
 ー忠臣蔵が落語にない理由
  -庶民は忠義などに興味がないから
  -「討ち入り?面倒くせえ」というやつこそが落語にいる(立川談志)
 -落語界のレジェンド
  -立川談志→落語の革命児、古典落語を現代にフィットさせようとする
  -柳家子さん→落語会初の人間国宝
  -古今亭志ん生→ラジオの申し子
  -古今亭志ん朝→ルックスに恵まて生活も派手
  -桂文楽→志ん生と同世代。志ん生とは対照的で緻密

著者:立川談慶

本名は、青木幸二(あおき・こうじ)。twitterのプロフィールには、立川流真打「怪力落語家」、ベンチプレス130kgとあります。なんともキャラクターが分かりやすい…!

落語立川流に所属していて、7代目立川談志の弟子。
慶應義塾大学出身で、卒業後は女性用下着メーカーとして有名な株式会社ワコールホールディングスに1989年に新卒で入社したそうです。1990年に、吉本興業福岡事務所に第1期生として合格し、同期にはカンニング竹山、博多華丸という面々がいます。吉本時代はワコールでのお仕事を続けていたようです。

芸名「ワコール青木」でデビューしたそうですが、1991年にワコールも退職、吉本福岡事務所からも退所すると立川流に入門。前座名もワコールにあやかり、「立川ワコール」…。落語家さんの名前の付け方って、面白いですね。TVドラマで『タイガー&ドラゴン』を見ていた時にも思いましたが。

前座の期間が9年半と長く、(本にも書いてありますが、多くは2~5年で二ツ目に昇進)2005年に立川流の真打に昇進し、今に至ります。

●SNS
[公式サイト]立川談慶の世界へようこそ!!!
[twitter]立川談慶@dankeitatekawa

本の解説と感想

落語は人の心をつかむ術を教えてくれるツール

なんとなく「ビジネスエリートが…」という枕詞をつけていると手に取ってしまうのですが、確かに落語というのは人間の真理を突いていて、日本人にとっては外国に自国の文化や価値観を伝えるための情報が詰まったもののように思えます。

「一眼国」という落語が紹介されています。
一つ目の国があるという噂を聞きつけた男が金儲けのために、一つ目の人間を捕まえようとして探し出すのですが、逆に現地人に捕まって、「こいつは珍しい、二つ目をしている」と見世物小屋に売り飛ばされるという話です。

この落語は「『自分たちが抱いている価値観は、あくまでも自分たちのエリアでしか通用しない』という真理を教えてくれます(p8)」。これは国を超えて受け入れられるものではないでしょうか。

また、落語は失敗図鑑と呼んでも良いぐらい失敗談ばかりで、時代が変わっても変わらない人間の本質を教えてくれるのです。普遍的なことから、日本人ならではのことまで落語は教えてくれます。

落語の原点

古典落語の原点は『醒睡笑』という、江戸時代初期1623年徳川家光の時代の笑い話を集めた作品集で、安楽庵策伝という人が、仏教の教えを滑稽に分かりやすく庶民に伝えるものとしてまとめたものらしいです。

落語が教養として優れているというのは、この「滑稽に分かりやすく」というのがあるからかもしれません。噺の構成は「枕」「本題」「オチ」という流れで、現代的なプレゼンテーションでも十分通じる構成ですよね。本題に入る前に、ちゃんと導入があって、結論がある、という。

しかも、グリム童話のように暗くネガティブなものは少なく、人を褒めて気持ちよくさせる話がよく登場します。落語を聴いているという人が、とっさに気の利いた返しをとっさに言えるのが、落語の話の引き出しをたくさん持っていて、パターンをよく理解しているからなんでしょうね。

最初の落語家の話もありました。『醒睡笑』より前になりそうなのですが、秀吉に仕えた曽呂利新左衛門(そろり・しんざえもん)です。秀吉が病気になって衰弱した時、「盆栽の松の木までなぜだか枯れてしまう」と秀吉がこぼすと、「松は千年の寿命を主に譲って身代わりになっている」と返したそうです。

日本の伝統芸能のなかの落語

『討ち入り?めんどくせえよ』『俺は行きたくねえよ』『仮病使ってトンズラするか…』そんな”忠臣”じゃない奴にもスポットを当てるのが、落語なんじゃねえのか?」

『ビジネスエリートがなぜか身につけている教養としての落語』p137

これは立川談志さんの言葉。

歌舞伎には『仮名手本忠臣蔵』というヒット作があり、講談にも『赤穂浪士』があるのですが、古典落語には『忠臣蔵』がないそうです。これは落語がどういうポジショニングだったかを表しています。

歌舞伎は庶民も見ましたが階級に関わらず人気があり、講談は武士の教養としての側面があります。また、落語は「どう笑わせるか」で、歌舞伎は「どう自分を魅せるか」。

あくまで落語は庶民の娯楽でしかなく、忠義とかそういったものを落語に求めていないという証左なのでしょう。

落語界のレジェンド

本書のなかでは5名ほど紹介されていました。なかでもインパクトがあるのは立川談志さんではないでしょうか。

落語界の革命児で、古典落語をそのままではなく、現代により一層フィットするスタイルを模索。真打昇進にまつわる落語会のシステムに異を唱え、自分で流派を立ち上げる。多くの人が談志さんがこう言った、など挙げる通り、本質をついた言葉を表に出せる人だったのではないでしょうか。印象に残った言葉をピックアップしました。

落語の本質とは、人間の業を肯定すること

『ビジネスエリートがなぜか身につけている教養としての落語』p143

俺は、落語は人を殺さねえから好きだ

『ビジネスエリートがなぜか身につけている教養としての落語』p181

そのほか紹介されている落語家も、落語を語る上では重要な人物。

・柳家子さん(やなぎや・こさん)
落語会初の人間国宝。落語は歌舞伎と違って人間国宝になる人が少ないのです(技の分類が難しい、ずっと人気があるから保護対象にならない、などの理由があるらしい)。226事件の真っ最中に落語を一席演じるようを命じられるという、すごい体験も…。立川談志の師匠にあたる。

・古今亭志ん生(ここんてい・しんしょう)
ラジオ全盛の申し子で、落語は寄席でするものという既成概念を打ち破り活躍の場をメディアに広げ始めた世代の急先鋒。

・古今亭志ん朝(ここんてい・しんちょう)
古今亭志ん生の次男。高級外車アルファロメオ乗り回すなど古い落語家のイメージを刷新。ルックスにも恵まれた落語家、立川談志よりも真打になるのが早かった。

・桂文楽(かつら・ぶんらく)
古今亭志ん生と同世代。破天荒さがウリの古今亭志ん生とは対照的で、緻密な芸風で高い評価を受けている。1971年、78歳のときに国立劇場での高座に上がったとき、登場人物の名前を失念してしまうということがおきました。そのとき「もう一度勉強し直してまいります」と言って舞台の袖に消えたそうです。それから高座に上がることはなく、4ヶ月後生涯の幕を閉じた。

知っておくと一目置かれる落語

本書に書かれている落語のメモ。章立ての中に「知っておくと一目置かれる落語」とありますが、他の章でも印象的な落語はたくさんありました。

●たらちね
「若く見える、と言われれば誰でも嬉しい」ということからボケをかます話。
若く見えると言うということは、45歳の人を見たら42歳と言うことです。そこで主人公は、赤ん坊についてこうやりとりします。
「赤さんの年齢は、おいくつで?」
「生まれたばかりだから、一つだ」
「それは、お若く見える。どう見ても半分だ」

●寿限無
落語を聞いたことがない人でもなぜか知っている「寿限無」。とんでもなく長い名前が笑いを誘う落語です。これは子どもに長生きになってもらいたいという親の願望が込められた名前だということを知りました。寿限りなしで死ぬことのない「寿限無」にはじまり、パイポ王国という国の王シューリンガンと后のグーリンダイそしてその間に生まれて超長生きした双生児姉妹の名「ポンポコピー」と「ポンポコナ」。それぞれに意味づけはあったのですね…

寿限無(じゅげむ) 寿限無(じゅげむ) 五劫(ごこう)のすりきれ 海砂利(かいじゃり)水魚(すいぎょ)の水行末(すいぎょうまつ) 雲来末(うんらいまつ) 風来末(ふうらいまつ) 食(く)う寝(ね)るところに 住(す)むところ やぶらこうじの ぶらこうじ パイポ パイポ パイポの シューリンガン シューリンガンの グーリンダイ グーリンダイの ポンポコピーのポンポコナの 長久命(ちょうきゅうめい)の長助(ちょうすけ)

NHK for School ちょちょいのちょい暗記「寿限無(じゅげむ)」

●まんじゅうこわい
怖い物がないという人に問い詰めて、ようやく出てきた怖いものが「まんじゅう」だった。それを聞いた他の男たちは、怖がらせしようと目論んで枕元に大量の饅頭を送りつけるわけです。ですが「まんじゅうがこわい」と言った男は、「まんじゅうこわい」と言いながら、むしゃむしゃとまんじゅうに食らいつきます。嫌がらせしようとした男たちは「本当は何が怖いのか?」と聞くと今度は「渋いお茶が1番こわい」と言ってオチがつきます。

●芝浜
人情噺の大定番らしく、古典落語の金字塔なのだそうです。
魚屋の勝という男が、朝に浜で顔を洗ったりしていると、42両も入った革財布を発見します。魚勝は喜んで帰宅して、女房に報告したあと、酔いつぶれて寝てしまいます。魚勝が起きると、女房は夢でも見たんじゃないかと言います。納得いかない魚勝は騒ぎますが、「夢見て喜ぶなんて情けない」と女房に泣きながら訴えられ、魚勝は酒をやめてよく働くようになります。3年経ったある日、女房は「あれは夢じゃなかった」と42両入った革財布を取り出します。
「拾った金を使わせたら、罪人になるから奉行所へ届けて夢の中の話にしちまえ」と助言され、ついに3年経って落とし主現れずで魚勝のものとなったのです。女房は「酒を飲んでいいよ」と言うが魚勝は「夢になるといけねえ」と思いとどまるという話。

まとめ

正直、ぼくにとっては初めての情報が多く、とてもまとめきれないものでした。これでも、かなり割愛してしまった感があります。

ですが、落語の成り立ちから、具体的な噺、魅力的な登場人物、他の伝統芸能との比較なども書かれていて、落語がどういう存在なのかということがよくわかりました。この本に触れられてよかったなと思います。落語好きの方に程よい相槌がうてそうな気がしております!

本の目次

  • 第1部これだけは知っておきたい日本の伝統芸能「落語」
    • 第1章これだけ知っておけば間違いない落語の「いろは」
    • 第2章噺の構造と落語家の出世
    • 第3章ニュースや会話によく出てくる名作古典落語
  • 第2部日本の伝統芸能と落語界のレジェンドたち
    • 第4章落語と比べると理解しやすい日本の伝統芸能
    • 第5章これだけは知っておきたい落語界のレジェンド
  • 第3部ビジネスマンが知っていると一目置かれる落語
    • 第6章世界の笑いと落語
    • 第7章これを知っていればあなたも落語!使える落語

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