デザインというのは、アートと違ってロジックが存在する気がします。今回『なるほどデザイン』本を読んで思ったのは、デザインはコミュニケーション、プレゼンテーションと同じなんじゃないか?ということです。
ロジカルシンキング、ないし…そう、クリティカルシンキング。
著者の筒井さんは、一番最初に、いきなりデザインに取りかかるなと注意しています。デザインの前に、まず「誰に」「何を」「なぜ」「どうやって」伝えたいかを整理しなさいと。
こ、これは『イシューからはじめよ』…!
こうすることで、どういうデザインにするかという大枠の方向性が見えてくるんですね。そして抽象度が高い状態からより具体化させてデザインに落とし込まれていく。
アートについては『13歳からのアート思考』を読んで、だいぶハードルが下がりました。自分なりのものの見方であり、型にはまった枠はなくて作り手の表現、受け手側にとってはその人がどう捉えるか。一方でデザインは、その姿形に「意味がある」ということなんですよね。
わたしは大まかな業界分けでいうと、WEB業界で生きてきているので、例えばUI・UXと言いますけど、ユーザーにとって心地いいような見た目、動き、導線といったものの最適化を図っていくことが求められ、それによってコンバージョン(成果)が全然変わってきます。まさに筒井さんが仰っているデザイン。
本書では料理本の例がありました。デザインの目的が「男女問わず料理初心者が、朝食に、迷わないために、長く使ってもらいたい書籍」だとすると、シンプルな構成で、写真を大きく、手順も完結なデザインになる。
料理好きがバリエーションを楽しみたい場合は、にぎやかさがあり、カラフルで、テキストは最小限、可読性よりもリズムを大事にする。
右脳と左脳もあり、ここでは機能的な訴求と情緒的な訴求の文脈で書かれていました。情緒的な訴求も、人間に刷り込まれた記憶のようなもので想起されるイメージだったりするので、それもロジックと言えます。
でも、ロジックだから再現性があるかと言うとそんなこともないし、どのデザインがどう響きそうかという勘どころのようなものは経験がものをいうのかなーと思ったりします。デザインもロジックなんだ!と分かっても、ハマるデザインを提案できる気が全くしないので…笑
とりあえず、今回、ある程度この本に沿ってまとめてみました!デザイナーへの道のりは遠い。。
本の概要と要約
・誰に伝えたい?
ー主にはデザイナー
ーデザインに興味のあるすべての人
・何を伝えたい?
ーデザインをよくするヒント
・なぜ伝えたい?
ーデザイン力は「なるほど」の積み重ね
ー気づきをえてほしい
内容
・デザインの基本
ーまずは前提を整理
ーどんな人に伝えたいか
ー年齢、性別、関心度、知識…
ー何を伝えたいか
ー解説、種類、見た目…
ーなぜ伝えたいか
ー好きになってほしい?理解して欲しい?…
ーいつ・どこで伝えたいか
ー本?電車の広告?…
・デザインのプロセス
ー図解・ラフ
ー詳しくはいらない
ーいくつか書いてみる
ー方向性を決める
ー大まかな表現と構造
ー骨格をつくる
ーバランスやタイトルなど
ーキャラを立たせる
ー個性。フォントやカタチ
ー足し算と引き算
ー色、飾り
ーいらないものは削る
ーブラッシュアップ
ー細部を調整
・デザインのコツ
ーどっちが大事かの天秤
ー伝えたい要素を絞る
ー大事な方を強調
ー主役にスポットライト
ー初めて見る人にも主役の要素がわかるように
ー色、サイズ、余白などのスポットライト
ー擬人化
ー書体は声色
ー字間と行間は話し方
ー色で年代や年齢に例えてみる
ー連想力
ーコンセプトから色やテクスチャを引き出す
ー言葉→イメージ→ヒントを引き出す
ー翻訳機
ー言語(文字)を非言語(ビジュアル)に
ー要素だし→ビジュアル化→バランス調整
ー虫眼鏡
ー見方の解像度、細部、見た目
ー最後のブラッシュアップ
・デザインの素
ー文字と組み
ー余白、行間、サイズ、文字組方向、書体など
ー揃えたり、差をつけたりする
ー言葉と文章
ータイトルは主役
ーリードはイントロ
ー本文は下地
ーキャプションは黒子
ー色
ーすべての色は3つの属性から成る
ー色相→明度→彩度の順で色を調整
ー色を使う目的を、機能的役割か情緒的役割かを考える
ー写真
ー構図、選択、調整…
ーグラフとチャート
ー何を比べたいかでどのグラフを使うか考える
ー割合なら円グラフ
ー項目の大小なら横グラフ
著者:筒井美希とは
筒井美希(つつい・みき)さんは、株式会社コンセントアートディレクター/デザイナー。武蔵野美術大学デザイン情報学科卒業後、2006年(株)アレフ・ゼロ(現・コンセント)入社。雑誌・書籍・広報誌・カタログ・学校案内・Webサイトなど、幅広くアートディレクション・デザインを手がける。
●インタビュー・登壇記事
『なるほどデザイン』著者の筒井美希さんに聞く、ビジュアルでわかりやすく伝えるデザインの力とは(VISUAL SHIFT 2019.09.24)
働き方を探す旅 ― 変わるデザインという仕事、生まれる新しいライフスタイル(design surf 2018.10.29)
【『なるほどデザイン』の著者に聞く、 “起業家のためのデザイン”のイロハ 】著者 筒井 美希さんにインタビュー!あしたが見える朝ジカンGOOD MORNING MIRAI
●公式
Twitter:筒井美希 │ なるほどデザイン@miki221
note:筒井美希
●動画
【『なるほどデザイン』の著者に聞く、 “起業家のためのデザイン”のイロハ 】著者 筒井 美希さんにインタビュー!あしたが見える朝ジカンGOOD MORNING MIRAI
本の解説と感想
デザインの基本
「なんのためにデザインするのか」を理解しないままで手を動かしてしまうことはとてもキケン。デザインの迷宮入り、まっしぐらです
『なるほどデザイン』p9
デザインについてまったく学んでない私にとっては、一番最初に書かれている上記のメッセージが一番有効な学びかなと感じてます。
決まったルールがあるわけではないので、絶対的な正解がないとしていて、従来とまったく違うようなとんでもない方法でも「意図されたもの」なのであればそれは正解になり得る。そして「意図」するためには、何のためにデザインするかを整理することが大事。
筒井さんが、そこを整理することとして挙げているものは、ビジネスの場面でも大前提となるようなことで、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングそのもの。
- どんな人に(性別、年齢、知識レベル、関心度…)
- 何を
- なぜ
- いつ、どこで
事例として「料理本」のデザインが取り上げられています。
A.男女問わず料理初心者が、朝食の作り方を、迷わないために、長く使ってもらいたい書籍
B.料理好きで関心高い女性が、朝食のバリエーションを、楽しんでもらう、月に複数回発行される雑誌
C.生活にこだわりのある人が、上質な朝の風景に、憧れを持ってもらう、季節ごとに一冊出るムック
素人の私でも、それぞれのどのようなデザインにするか、違いそうだなと言うことがイメージできます。もちろん具体的なカタチはすぐ浮かばないのですが…
Aはまさに私向きの本。難しさを感じてしまうと気が引けるし、かといって調理方法がちゃんと書かれてないと何もできない。おそらく書店で買うのであれば手に取って「自分でもここからなら…」と思える見た目でないと購入には至らないと思う。
Bはもうある程度、自分で作れてしまう人向け。なのでアイデアがどんどんイメージできるような、楽しさが重視されるのでしょう。Cは雰囲気。料理そのものよりも憧れのライフスタイルそのものを想像させるような、雰囲気が伝わるとよさそう。
という感じで、どんな人に、何を、なぜ、どうやって伝えたいか、ここを押さえないととんでもない方向に行ってしまうので、めちゃくちゃ重要ですね。私が何かプレゼン用の資料を作ろうとするときと同じように整理している。デザインはプレゼンじゃないかという気付きです。
デザインのプロセス
「デザイン=あれこれ飾りをつけること」ではない
『なるほどデザイン』p34
プレゼン用の資料を作るとき、とりあえず書いてみる進め方は、結果的にゴールに遠回りしてしまう場合が多いです。なので、まず全体像を想像しながら大まかな枠組みを決めて進めていっています。本書で書かれているデザインのプロセスとほぼ同じ…!
デザインの流れはこんな感じだそうです。
- 手書きでラフを書いてみる
- おおよその方向性を決める
- 骨格を固める
- キャラを立たせる
- 足し算と引き算をする
- ブラッシュアップ
キャラを立たせるってところはあまり自分のプレゼンの資料作りでは馴染みがないのですが、それ以外のところはやってるような印象。後半の足し算と引き算は「何を一番伝えたいか」を研ぎ澄ませることで、相手の合意を得る。
そしてどこまでやるかは、目的によるわけです。
社内向けと社外向けは違いますし、報告なのか説得(承認を得たいとか)によっても変わってきます。
主観ではなく、伝える相手がいてこそのデザインなので、デザインは受け手にとっては機能的要素がとっても大切になるということですね。
デザインの7つの道具
筒井美希さんは、ご自身がデザイナーとしてやれるようになったと言える状態になるまでは、ひとつひとつの積み重ねがあったから、と書かれています。先輩たちから学んだことを自分自身の経験を通じて体系化されていったのだとか。
本書で紹介されている7つの道具は、筒井さんの経験を通じて体系化されたものだそうで、それぞれ触れていきたいと思います。
ダイジ度天秤
伝えたいことってたくさんあるので、つい盛り込んでしまいがち。でも、伝える時間やスペースは限られているから取捨選択しないといけない。
そうしたときに、「どっちが大事?」と天秤にかけて、優先順位をつけ、どうやって主役を立たせるかを考えます。
スポットライト
大事なものは決まって、強調はしてみたつもりだけど、それが伝わるかどうかは分からない。ということで、客観的に見てどう見えるかを確認しましょう。
作り手は自分の世界に没入してしまうことがあるので、自分は当たり前にわかっているから大丈夫、と思っていても、初めて見た人には理解してもらえないかもしれないわけです。
離れて見て「大事なポイント」に目が向かなかったら、スポットライトを当ててみる、ということをやってみます。スポットライトの当て方はいくつか例として挙げられてました。
わかりやすく色をつけたり、地を変えたり、サイズを大きくしてみたり。余白を作って空間的に差をつけるということも。
スポットライトを当ててみたら、もう一度確認。
擬人化力
擬人化やキャラを立たせる、というところだけ私が苦手なところだなと思いました…
確かに書体によって、感じる印象は違うんですけど、「このフォントだったらこういう印象」という結びつける勘どころがなくて…。この連結がパッとできると強力だと思うんですけどね~
本書で書かれているのは、書体を声色に例えてみたり、行間や字間で話し方を表現したり…というもの。文字といえどデザインの一部ということだと思うので、身につけたいスキル。
もう一度見返してみるか。『絶対フォント感を身につける』。
連想力
人間は記憶からイメージ感じ取って、感情に影響を及ぼしていきます。この「連想力」というのは、伝えたいことを情緒的に伝えるために、抽象化する作業だなと思います。
コンセプトから、言葉やモチーフを書き出し、イメージや写真につなげ、ヒントを抽出。そこからデザインに取り入れられそうな色みであったり、テクスチャを引き出すのだそうです。
例えば「リゾートに着て行きたくなるような色鮮やかなワンピースやアクセサリを扱うアパレルブランド」のパッケージやWEBサイトをデザインする場合、連想するのは、「海」「砂浜」「ヤシの木」「トロピカル」「南国」「のんびり」…とか。
そこから、水気を感じる要素、南国の花、ラフさ気楽さといったものを引き出すという感じ。
翻訳機
「伝える」ことは文字でも写真でも可能。
例えば、ある街の風景の美しさを伝えたいとき言葉を尽くして文章で語り下ろすのか美しさが分かる写真1枚だけをポンと置いておくのかでもまったく違う。
言語コミュニケーション(文字)は、受け止め方に個人差が少なく説明がしやすいのですが、読まないといけないので、伝わるまでに時間がかかります。非言語コミュニケーション(ビジュアル)は、伝達スピードが速く英語や日本語など問わないメリットがある反面、受け止め方はひとそれぞれになり曖昧になります。
言語と非言語をそれぞれ翻訳をかけつつ、使い分けで適切なバランスを調整することもデザインのコツですね。
虫めがね
デザインの最後のブラッシュアップの過程は基本的には「ちょっとしたこと」の積み重ね
『なるほどデザイン』p112
デザインのプロセスの最終段階が、ブラッシュアップ。そこで活用する道具が「虫めがね」です。
これは、細かい。でもちょっとのブラッシュアップが印象を決めるんでしょうね。これは雑な自分にはなかなか難しい…。主観になってしまいそう。
分かりやすいところでは、枠の縁の色や太さを変えたり、吹き出しの形を変えたりするなど。めちゃくちゃ細かいところでは、句読点の前後を詰めてバランスをとったり、ハイフンのラインをちょっと上げたり…まさに神は細部に宿る。
面白かったのは、人間の目は錯覚するので、そこも踏まえて調整することがあるんだとか。同じ長さの直線でも違って見えてしまうともしかしたらそこに思考が行ってしまうかもしれない。デザイナーさんの苦労が知れますね…
愛
最後に愛。これは内容をどれほど理解して、一番ふさわしい姿にしたいかという想いがあるかどうかという気持ちの話です。すごく抽象的な話な気はしますが、これがないと、伝えたい相手にどうやって伝えるのかを本気で考えられない。
届けたい当ていの興味や知識、届けるもののいいところ、これがを結びつけるためにデザインとして形になる、ということですね。
デザインの素
デザインの「素」がいくつか紹介されています。ここにも、それぞれの使い方であったり、どういう構造になっているかが詳しく解説されています。
すでにこれまでも触れていたところですが、「文字と組み」「言葉と文章」「色」「写真」。そして「グラフとチャート」といったものが加わります。これらぜひ、本書を開いてみて感じてみるとよいかと思います。文字と組みだけでも、だいぶ個性が違うんだなと感じます。
私にとって、一番実践的だったのは「言葉と文章」の項。
タイトル、リード、キャプション。こういった文章の要素でスタイルが全然違うんだなと思いました。それぞれの役割を認識したうえでデザインや編集に落とし込んでいくと、クオリティがかなりアップしそうな感覚を得ました。
とはいえ、このブログで突き詰めてやっていたら時間がいくらあっても足りないので、仕事のほうで実践していきたいと思います…という言い訳。
まとめ:なるほどデザイン
タイトル通り、「なるほどデザイン」でした~。デザインってそう考えるのか!っていうことがよくわかりました。
デザインの本となると、その道の人が読んでナンボなところがありますけど、本書のようなデザインの基礎の基礎、本質のようなところを解説やまとめてくれる本は、面白いです。
今回、大きな発見は、冒頭でも書いたように、デザインもロジカルがあってその姿形を導いているので、実はビジネスともリンクするということです。
誰に(ターゲット)、何を(プロダクト)、なぜ(ビジョン)、どうやって(HOW)届けるのか。ほら『WHYから始めよ』に近いじゃないですか。幅広い領域の知識をカバーしていけば、いろいろな場面で応用が利いてきますかね。そんな気がするだけかもしれませんが、そんな理由で読書はやめられません。
本の目次
- Chapter 1編集✕デザイン
- 編集とデザインの関係
- 『はじめての料理 きほんのき』
- 『たのしい朝ごはん』
- 『ストーリーのある食卓』
- デザインしてみよう
- 0.図解とラフ
- 1.方向性を決める
- 2.骨格を作る
- 3.キャラ立ちさせる
- 4.足し算と引き算
- 5.ブラッシュアップ
- 編集とデザインの関係
- chapter 2デザイナーの7つの道具
- ダイジ度天秤 どっちがダイジを口癖にしよう。
- スポットライト 主役を狙って光を当てる。
- 擬人化力 いいデザインっていいキャラしてます。
- 連想力 ヒントは世の中にあふれてる。
- 翻訳機 言葉と絵のバイリンガルになろう
- 虫めがね ふところに隠し持った、最終兵器
- 愛 そのデザインを決めるもの。
- chapter 3デザインの素
- 文字と組み 布地を織り上げるように組む。
- 文字組みを解剖する
- 書体を楽しむ
- そろえる-差をつける
- 言葉と文章 言葉の「らしさ」を作る
- タイトルらしさ
- リードらしさ
- 本文らしさ
- データ・キャプションらしさ
- 見出し・キーワードらしさ
- あしらいらしさ
- 色 右脳と左脳で考えてみる。
- STEP1.色を知る
- STEP2.色を作る
- STEP3.色を使いこなす
- 写真 イメージの力に向き合う。
- STEP1.構図を見る
- STEP2.写真を選ぶ
- STEP3.写真を配置する
- グラフとチャート ロジカル、ときどきグラフィカル。
- STEP1.メッセージを決める
- STEP2.グラフを選ぶ
- STEP3.伝わりやすく
- ADVANCED・ビジュアルにする
- 文字と組み 布地を織り上げるように組む。
- 参考文献
- おわりに