『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』の書評とサクッと要約|朝食に学ぶマネジメントの極意

high_output_management(ハイアウトプットマネジメント) ビジネス

『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』を読んで思った個人的理想のマネジメントは、「マネージャーが何もしなくても機能する組織を作る」だったんですよ。これは本書で述べられていることとは全然異なるのですが、もしもそういうチームが作れたとしたらマネジメントの役割を完遂してしまってます。というか特定のマネージャーを否定するティール組織に近いイメージですね。

さて、グローブ氏は早くからVUCA的な概念を想定していて、予測困難なことに対してどのように対応していくかのアドバイスが書かれています。まず朝食工場(トースト、半熟卵、コーヒー)に生産の基本原理が全て詰まっていると言ってます。一番効率的にお客様に届けるには、どの工程が一番重要なのか、制約工程(リミッティング・ステップ)になっているかを見極め、そこから逆算して工程を組み立てる、ということ。

しかし、朝食工場の規模が大きくなったりすると全体工程に一番影響を与える工程が変わってきます。例えばトースターがもし一つしかなかったとしたらトーストが渋滞します。トースターを増やしたら今度はまた卵が…など。

さらに、店舗がもし世界中で増えたら、全部を本店が指示出していたら判断が遅くなって、それが制約ステップになるかもしれない。

なんだか、この部分を読んでいると、『世界はシステムで動く』で書かれているシステム思考の話にもつながってくる印象を持ちました。リミッティング・ステップは成長や時間に伴って変化するけど、何でもかんでも対応しようと思って投資をしてしまうと利益を損なうので、どの制約条件でバランスをとるかという話です。

そして、朝食工場をよりうまく作動させるにはテコ作用が必要だし、そのアウトプットは従業員一人一人がよりよいアウトプットを出すことによって強まるので、従業員との向き合い方にも言及しています。

このように、マネージャーの役割は多岐にわたります。マネージャーでこんなに大変なら、経営者はもっと大変だよね…反省。

最初の話に戻ると、「マネージャーが何もしなくても機能する組織を作る」というのは理想ではあるけど、企業も人も成長するなかで、プレイヤーの一人一人がリーダーになるためには、やはりマネジメントする側が情報収集と情報提供を行い、プレイヤーの教育訓練をしなければ進化はないと思う。自己研鑽したほうがいいけど、それができるのはまだ少数です。ということで、ミドルマネージャーの活躍が必要と言うのには大賛成。

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サマライズ(本の概要と要約)

high_output_management(ハイアウトプットマネジメント)の要約
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著者の課題
グローバル化や情報革命によってこれまでの経営管理では困難な事態に直面している。(背景としては1980年代の半導体分野での日本の脅威や、Eメールの浸透がある)

解決方法
いかなる組織でも忘れられているミドルマネージャーが担当組織でCEOとなり自体への備えをしておく

内容は?
マネージャーのアウトプットとは、「自組織のアウトプット」+「自分の影響力の及ぶ隣接組織のアウトプット」の総和である。

ではそれらを、どうやって高めるのか?
 ①生産工程の基本を理解する
  -朝食工場(トースト、半熟卵、コーヒー)で学べる
  -1セット作るのであれば半熟卵が生産工程で一番時間がかかる
  -これをリミッティングステップという
  -セットの数が増えると、トースターが渋滞する
  -何が一番生産工程の最適化に影響を及ぼすかを理解する
 ②マネージャーの行動とテコ作用
  -マネージャーの行動は5つ
   -情報収集(立ち話、MTG、訪問)
   -情報提供(最新情報、優先事項)
   -意思決定(前向きな決定、問題に対する決定)
   -ナッジング(後押し)
   -役割モデル(行動規範の実践)
  -テコ作用
   -マネージャーの行動のスピードアップ
   -権限委譲
   -ミーティング(1on1、部内会議)
   -理由をつけて旅に出る(新しいことに出会う)
 ③選手たちの業績達成
  -「部下から最高の業績を引き出すこと」がマネージャーの重要な責任
  -訓練と動機付けが必要
  -訓練は、スタッフのタスク習熟度を見極めて行う
  -相手のところに降りていき率直に、相手の話をよく聞き、自分を圏外において客観的にみる

HIGH OUTPUT MANAGEMENTとは?

『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』は、元インテルCEOのアンディ・グローブが、仕事の基本的な原理とマネジメントの在り方をまとめた一冊です。初めて書かれたのが1983年らしく、シリコンバレーで読み継がれているのだそうです。序文はベン・ホロウィッツ。

著者

アンドリュー・グローブは、インテルの元CEOです。インテルの3番目の従業員だそうで、3番目のCEOでもあるのだとか。本書の課題意識でもあるように、インテルが世界最大の半導体メーカーになったという事実と、1980年代にそれをひっくり返すような勢いを持った日本の脅威が、彼のマネジメントへの大きな課題意識の醸成させたきっかけでした。

グローブは世界中の電子機器製造業界に多大な影響を与え、シリコンバレーの成長期を牽引した男と呼ばれています。1997年には、TIME誌で「マンオブザイヤー」にも選ばれました。

最近注目されるマネジメント手法である「OKR(Objectives and Key Results)」の父とも呼ばれているそうです。

本の解説と感想

朝食工場(ブレックファスト・ファクトリー)を理解しよう!

なぜ朝食工場(ブレックファスト・ファクトリー)と名付けたのかは謎ですが、朝食セット(トースト、半熟卵、コーヒー)の生産から配膳までが、あらゆる生産工程の基本となるという、うまい例えです。

もし、半熟卵工場(ボイルドエッグ・ファクトリー)だったら、複雑性がなさ過ぎて…

朝食工場は3つの部品を生産し、3つを1つのものに組み立てるというのがざっくりとしたプロセスです。この3つのうち最も全体の生産工程に影響を及ぼすのは「半熟卵」です。一番時間がかかるからです。この対象を本書ではリミッティング・ステップ(制約的ステップ)と呼んでいます。しかし、半熟卵がリミッティング・ステップなのは、1セットしか作らないという条件付きです。

もし複数セット作ることになったらどうでしょうか。もし朝食工場にトースターが一つしかなかったとしたら、トースターが空くまで列をなすことになります。この状態で今までのやり方をしていたら、半熟卵がゆで卵になるわけです。ということで、トーストすることがリミッティング・ステップになりました。

ここでトーストを1台追加購入するという選択もあるし、ゆで卵にならないように半熟卵係を雇うという選択もります。しかしアンディ・グローブは以下のように言っています。

どの案を取るにしても金がかかるので、我々の仕事は、経営資源を利用するのに、”費用対効果上の最も良い方法”、つまり、あらゆる種類の生産作業を最適化するカギを発見することとなる。こういった状況には必ず正しい答え、つまり、可能な限り最低の費用で最善の引き渡しと製品の質が得られる答えがある

『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』p48

上記の考え方が、『世界はシステムで動く』でいうところの層状の限界に似ているなと思いました。(どの制約のなかでバランスをとるか)

もう一つ大切なことに、「付加価値」という話がでてきます。物はプロセスを通って動くにつれて次第に価値が高くならなければなりません。これは基本であり、アンディは注意すべきこととして「価値が最低の時」に問題を発見することが大事と述べています。悪くなった卵は客に発見させるのではなく、ゆでる前に発見するほうがリスクが少ないのです。(これは『リーンスタートアップ』的な考え方にも通じますね)

さらに、朝食工場がグローバル展開を考えたとします。

このとき、経営者としては例えば「設備」「食器」「原材料」などをどう揃えるか考えます。本社で伊勝購入するほうが良いのか、いや地域ごとに好まれる食器だってあるだろうし、卵は各地域で調達したほうがいいんじゃないか、など。

ここでミドルマネージャーの登場です。経営者よりも現地現場を知り尽くした人物が、担当エリアでチームを作りマネージャーとなって、本社は個々のチームが適切に活動できるよう支援するのです。

マネージャーのアウトプットとは?

本書で述べられていることは、「大きな変化にも対応できる組織にするにはミドルマネージャーが必要」ということなのですが、なぜミドルマネージャーに焦点があてられるのでしょうか。

朝食工場で分かる通り、組織が大きくなるとマネージャーが収集しなければならない情報も大きくなり、情報提供も時間的な遅れが出てくる可能性があります。人数が過度に多くなればマネージャーは人の顔も朧げになり適切な支援が不可能になります。そうこうしているうちに目の前に起こっている事態にも遅れて対処することになり後の祭りに…なんてことになりかねません。ちなみにアンディ・グローブはマネージャーが持つ適切な部下の人数を6~8人としています。

マネージャーのアウトプットの話に戻ります。

【マネージャーのアウトプット】=【自組織のアウトプット】+【自分の影響力の及ぶ隣接組織のアウトプット】

というのがアンディ・グローブが示した式です。自組織のアウトプットはそのままですが、マネージャーは他の組織にも影響を与える存在であるということですね。

これらを実現するための基本が、情報収集と情報提供です。スタッフ一人一人に立ち話でも聞いていいし、他社から情報を聞くのもいい。とにかく最新の情報をすぐに伝えるということを怠らないことです。このほかにもマネージャーの仕事としていくつかあげられていて、「意思決定」はやはりマネージャーの大事な権限であり仕事。「ナッジング」というのは、育成にも効果的ですし、なによりも心理的な安心感が湧き、能動的な行動を促進させます。最後に挙げられているのが「役割モデル」です。これは分かりやすく言えば「背中を見せる」ということですね。例えば部下に細かく行動を注意しているのに、マネージャーがそれを実践していなかったとしたら、部下はやらないですよね。

アウトプットを左右するテコ作用

マネージャーのアウトプットをより高めようとするのであれば、「テコ作用」を意識することが大切です。テコ作用はシンプルなものは、単純にマネージャー自身の行動のスピードアップ。情報収取と提供、意思決定などが早まればそれだけ間を持たせずに部下がアウトプットできます。

それからやはりマネージャーのアウトプットは「チーム」にいる一人一人が大事です。マネージャーは適切に権限委譲することによって、意思決定の手間を省くことができます。ミーティングも実は重要です。そこは情報が集まる場であり共有ができるばでもあります。1on1であれば、普段は口に出さないことも話すことができます。

部下の最高の業績を引き出せ!

この考え方、最高ですね。マネージャーのアウトプットを最大化する要素の一つに、「自組織のアウトプット」があると先に述べましたが、「自組織のアウトプット」は部下であるプレイヤー一人一人のアウトプットの総和です。

ということはマネージャーのミッションは、部下の最高の業績を引き出すことに他なりません。そして、そこで必要になってくるのが「訓練」と「動機付け」です。

訓練は、アウトプットを高めるうえでかなりの効果があります。アンディグローブも次のように述べています。

訓練とは、端的にいうならば、マネージャーとして遂行できる最高のテコ作用を持つ活動のひとつである。

『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』p318

グローブが説明している、分かりやすい計算も紹介しましょう。
例えば、マネージャーが部下に講義をするとします。講義には入念な準備が必要で、全体の構成から資料作成まで、もしかしたら1日仕事(8時間)かもしれません。講義は3時間。10名が参加したとして、この講義全体にかかった時間は、8時間+(参加者10名+マネージャー1名)×3時間=41時間になります。

短期的には機会損失があるかもしれませんが、参加者10名がこの講義によって業績を1%でも改善できるとしたらその分の利得を得ることができます。1%という数字はインパクト少ないかもしれませんが、あくまでも例です。どうですか、訓練の効果。

また、部下のタスク習熟度によってマネジメントスタイルを変える必要があります。アンディ・グローブが示すのは以下の通りです。

  • 低:明確な構造、タスク志向。何を、いつ、どうしてを示す
  • 中:双方向のコミュニケーション、支持、お互いの判断力を重視する
  • 高:マネージャーの関与を最小限にする。目標を設定し、モニターする

このあたりは、SLⅡとかのモデルも参考になります。スキルと意欲によってスタイルを変えるというやつですね。

動機づけについても訓練と同じページに次の記載があります。

従業員の動機づけは他の誰にも権限委譲ができない、全てのマネージャーにとって主要なタスクである

『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』p318

100%とそうとも言い切れない気はしますが、ナッジングが有効になるのはやはり上司から部下ですし、いい言葉だと思います。受け身ではなく能動的に動ける人材は成果も高いですし、マネージャーの負担も軽くなります。

まとめ

『HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット・マネジメント)』は、情報革命によって事業の変化スピードが速まったというアンディ・グローブ自らの経験をもとに、これからの不確実性の高まる時代の組織とマネージャーの在り方を早期に示しているな、というのが感想です。そしてここに書かれていることは、本当に原理原則的なことで、普遍性が高いように思えます。定期的に読み返し、今のわが身を振り返るにはとてもよい本だと思いました。

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