『シン・ニホン』の書評とサクッと要約|日本の勝ち筋、若い人に投資する国へ

シン・ニホンの要約 ビジネス

最近、会社の有志でPythonを学習し始めました。プログラミングって基礎素養なんではないか?という思い、どうも外注してしまうとコストもかかるし時間もかかる、思ったことは伝わらない、悪いことばかりじゃないか…という観点から自分でできるよになればいいじゃん、という流れです。

プログラミングは過去にも学習しようとした経験はあるものの、挫折。振り返ってなぜ挫折したのかと考えると、明確な目標をもっていなかったのが第一の要因なんじゃないかとは思っています。そしてこれはなぜなのかさっぱり分からないのですが、全然覚えることができなかった。ロジックが苦手なんじゃないかという気がします。

まあ、それは置いておいて、プログラミングを小学生のころから学んでいたとしたら、きっと私の労働時間ってはるかに短縮できたんじゃないかと思うんです。新卒のころ、excelで格闘して深夜や土日に及んだ作業。新規事業でプロトタイプを外注して「これじゃない」アウトプットが出てきたときの苦悩。

『シン・ニホン』は、データ×AI時代の人材育成とリソースの再配分が書かれています。日本の教育の在り方って様々なところで議論されているけど、本質が全然変わらないのって悲劇ですよね。そして大学に進学したものの、目的なく過ごし、何のために高い学費を払ったのか分からないという学生も多いと思います。私もそうですが、なんとなく、大学に行くという世間体みたいなものですよね。そして社会人になって、あのときちゃんとやってれば…と後悔するんですから。

本書を読んでいくと、自分の至らなさと甘えに猛省するばかりです。がんばって未来を描けるようにしよう。

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サマライズ(本の概要と要約)

シン・ニホンの概要
シン・ニホンの1枚要約

著者の課題は?
現在の日本にある不安、停滞感、現実から目をそむけている。自分たちが次の世代に未来を残す存在であることを無視している。

解決方法は?
少しでもまともな未来を描き、次世代にバトンを渡すための材料を整理し環境を整える。

内容は?
現代は「データ」によって確変モードに突入している。これまでローマ時代から産業革命まで生産性の向上は2倍程度。産業革命以降これまで50~100倍まで向上した。いま「データ」による革命はさらに大きく跳ね上がる可能性がある。

未来の方程式は以下の通り。
「未来」=夢×技術×デザイン

日本はこの15年間一人負けし続けてきた。米国や中国はもちろん、他の先進国に比べてGDPが伸びていない状態で取り残される恐れがある。しかし、このGDPの中身を見れば、製造業を含め生産性を高める取り組みに取り組めていないだけ。何もやっていないのであれば、伸びしろがあるということ。

日本の生産性を上げるためには埋もれた人材「若い人」「女性」「シニア」を掘り起こす必要がある。さらに衰退し続ける科学技術の向上のために財源のリソースを再配分し、教育にも力入れる。こうすることでテクノロジー人材の拡大、テクノロジー環境を整備することで、「AI-ready化」を目指す。

産業革命以降、日本の立場は後発だった。

フェーズ1は発明。蒸気機関による産業革命。電気。
フェーズ2は高度な応用。パナソニック、ソニー、トヨタ。
フェーズ3はエコシステムの構築。新幹線、ゲーム、スパコン。

日本は昔から妄想のエリート教育を受けてきた。フェーズ1では完敗したが、フェーズ2とフェーズ3で勝つ。これが日本の勝ち筋。

シン・ニホンとは

『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』は、もともと安宅和人さんが「イノベーションを通じた⽣産性向上に関する研究会」でまとめた一連の提案がベースになっています。資料の名前もそのまま、シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成です。資格的にわかりやすいです。

そしてTEDxTokyoでの動画もあります。もう、だいたいこの2つで事足ります笑

シン・ニホン | 安宅 和人 | TEDxTokyo

著者

著者は安宅和人(あたか・かずと)氏です。『イシューからはじめよ』がベストセラーとなり、一般のビジネスマンにも認知が広がりました。何を生業にしている方かと言うと、ヤフーでCSO(chief strategy officer:最高戦略責任者)として在籍しながら、データサイエンス領域のトップで活躍されており、データサイエンティスト協会の理事であったり、情報・システム研究機構/文科省 ビッグデータ専門人材育成懇談会委員として招聘されるなど政府への提言にも参画されています。

本の解説と感想

シン・ニホン

データが人類を解き放つ

記憶にも新しい、2016年の出来事。天才囲碁棋士イ・セドルとAlphaGo(アルファ碁)との戦いは、1勝4敗とイ・セドルが敗れたというニュースがありました。

この結果が何を示すかと言うと、目的・ゴールがあり、ルールがある場合、人間はもはや機械に太刀打ちできなくなってきているということです。情報の推測から予測まででき最適解を導き出す。これは私たちが仕事をするうえでも見え始めていることです。

私はメディア事業も見ていますが、いわゆるデジタルマーケティングと言われる領域は進化がものすごいなと思います。例えばリスティング広告を出すと、とあるワードで検索するときに広告として検索結果にでる入札金額は事前にヒントはくれますし、どんどん学習していき予算に合わせて配信してくれるようになります。これまでプロフェッショナルが大きな役割を担っていましたが、初心者でも簡単に携われます。

このようにデータの活用によって飛躍的に「生産性」が着実に上がってきていることが身近なところでもたくさんあります。

安宅さんはデータ時代は「確変モード」であると表現しています。ローマ時代から産業革命の間ではせいぜい2倍にしかならなかった生産性が、産業革命から現代までの300年で向上した生産性は50~100倍だというのです。そこにきてデータがもたらす革命はさらなるジャンプがあると考えるのが妥当な思考。データについては、『ホモ・デウス』などでも革命として扱われていますね。

ところがです。安宅さんが述べていますが日本はこの15年間、GDP成長率で一人負けの状態になっています。世界開発指標でGDP成長率を確認するとこんな感じです。

GDP成長率

やばいぜ、日本…!という感じです。

しかしながらこの悲観論的なことばかりを言っても仕方がない、それは逃げだと安宅さんは叱咤しています。いまの日本は確かに負けているけど、現実から目を逸らしてしまっては負けっぱなしになります。「未来」を描くために

GDPの話も、よく見て見れば「何もやっていない」だけです。日本と他国を比べてみると、例えば農林水産業で日本の生産性の伸びが「1」だとしたら、他国は「40」。やるべきこと、やれるはずのことをやっていないだけなんですね。

いま埋もれてしまっている3つの人材を掘り起こすだけでも、日本の生産性はあがります。

①若い人
今、貯蓄ゼロという世帯が3割あるそうです。これはなんと1950年代の水準だそう。仕事をもたない人もいて、最低賃金も低い。最低賃金の見直しや、新たなスキルを得るためのトレーニングが必須です。

②女性
女性の時間を仕事に回すことでも生産性は高まります。これは過去の価値観をずっと引きずって、女性の高等教育機関の女性比率が少ないということも影響しています。ハーバードは50%らしいのですが、東大は17.4%だそうです。その結果、女性リーダーが少ないといえるでしょう。

③シニア
日本は65歳を超えると強制退場させられるシステムになっています。もちろんすべてには当てはまりませんが。でもいまの65歳以上の方って元気な方はとても多いですよね。経験も豊富でスキルも持っているのに、それを活用しないなんてもったいなさすぎる。

未来の方程式

データがもたらす恩恵は未来を描く人にとっては、めちゃくちゃエキサイティングな局面です。

これまで大量生産大量消費をするために、リアルでのスケールがなされてきましたが、現在は例えばスマートフォンの上に世界最大の市場が存在しています。まさに虚数軸が富を生む時代。トヨタの時価総額をテスラが抜く時代。世界の時価総額TOP10がスマホ関連の企業です。

では未来ってなんでしょうか。安宅さんはこういう方程式で語っています。

「未来=夢×技術×デザイン」です。

夢と言うのは課題認識です。その課題認識を解決しようとするのが科学技術。それをデザイン(見た目だけではなく近くによって目に見えない価値の創出も含む)でパッケージするというものです。

こんな未来を作りたいという気持ちがなかったら、未来は作れませんよね。偉大な人たちはみんなその情熱があったはずです。だから人もついてきたのでしょう。

日本の勝ち筋とは

シンニホンとペリーの黒船来航

こんな状況から日本には勝ち筋があるというのでしょうか…?
まずは現状把握からしてみましょう。

そもそも日本の科学技術の現状はどうなのでしょうか。「日本製」という謎のブランド意識や、ノーベル賞を受賞される方も多いように感じられ、先端を言っているような印象を持つ人もいるかもしれません。『シン・ニホン』によれば、トップの研究者は確かに多いものの、全体として層の厚みがないのが課題だそうです。

2005年には科学技術分野の論文が世界で3位だった日本。2016年には6位に下がっています。計算機科学分野においては東大で135位。これを聞くだけでもまずそうです。

ところでどうしてこのような状況になってしまったのでしょうか。データ×AIの世界は、単純化すれば、入力・処理・出力というプロセスです。それぞれの段階で重要なポイントを見ていくと次のように整理できます。

①入力
多様なデータが多量にとれることで優位に立てます。データ時代においてはグローバルを制したものが圧倒的にデータ量を支配できます。Googleは世界中でデータを収集できています。SNS企業もそうです。日本は世界的な土俵に立てていません。

②処理
圧倒的なデータ処理能力があることで優位に立てます。データ処理に必要なのはハード。そしてそれを稼働させる電気コスト。いまやAWSやAzureなどのクラウドコンピューティングが性能もコスト面も日本を凌駕しています。日本は電気コストが高いそうです…

③出力
十分なデータサイエンティストがいることで優位に立てます。これに関しては日本には人材がとことん不足しています。理数素養のある学生の割合が大学進学者の2割程度。スタートラインにたてるリテラシーすらままなりません。

こんな悪いことばかり挙げられるとまたまた悲観的になりますが…

シン・ニホンは危機感をあおるだけではなく、その解決策がまとめられていることが大きな特徴です。それも絵空事ではなく戦略的に述べられている。安宅さんのメインメッセージは、現状は完敗していることをまずは認め、第2第3の波で勝つしかない、勝てるはずというものです。産業革命を3段階に分解して、データ時代に当てはめて説明されています。

フェーズ1は、新エネルギーの発見や技術の発明です。フェーズ2は高度な応用です。フェーズ3はエコシステムの構築です。

フェーズ1でいうと、日本は完敗という話。もう決着がついてます。GAFA圧勝。で、産業革命のときはというと、そのときも日本は弱かったんですね。イギリスで蒸気機関が発明されているころ、日本は農業漁業。もともとこのフェーズでは過去も負けてるんです(1700~1800年って日本は鎖国してますけどね)

フェーズ2でいうと、日本は高度経済成長期に表れていたように、技術を応用していき、自動車や家電といった領域で他国を圧倒しました。ペリー提督の黒船来航が1853年ですよ?それまで米とか魚で生計をたてていた日本人は、あっという間の明治維新に向かい、世界大戦を経てボロボロになりながらも圧倒的なスピードで世界一になったわけです。

フェーズ3ではさらに、複雑化させてそれがシステムとして機能する世界を作り上げました。技術的にさらに発展させたというのもありますが、そのプロダクトだけで終わるのではなく社会システムの中にも組み込まれていきます。例えば新幹線。超速いというのはもちろん、これは国家インフラとしても機能しています。日本の鉄道は技術のみならず時刻表の精緻さもすごいところ。それからウォークマンは音を持ち運ぶというライフスタイルを発明し、既存の概念から解き放ちました。ゲームだってすごいわけです。これはビジネス領域でのエコシステム構築とも言えます。本体があってカセットはメーカーが生産する。今のプラットフォームの概念です。

どうですか。日本の追い上げ方がやばいですよね。キャッチアップがすごい。私たち日本人は、ドラえもんや鉄腕アトムから見えるように、昔から「妄想」に触れてきた妄想エリートなんです。安宅さんはこのフェーズ2以降で日本が勝つしかないと仰っています。

ただ、この産業革命以降の流れで日本が勝てたのは、全て1からスタートすることができてからではないでしょうか。これは安宅さんも述べていますが、明治維新も戦後の復興も、すべてご破算になっての再スタート。とにかく進むしかない状況でもあった。そして明治維新は若い人の活躍だった。

今の日本は素晴らしいことに大変な長寿大国になっています。60歳以上の割合が非常に高く、そして元気。声も大きい。この状況下で若い人を応援できる環境がないと未来を描き実現することは難しいのではないでしょうか。

多面的なAI-ready化と人づくり

AI-ready化、最初読んだとき「オール・レディ」よ読みましたけど「エーアイ・レディ」ですよね。使われ方から察するに。

私は「AI-ready」とはAIに対して準備ができた状態と解釈しています。何が満たされていればいいのかと言うと数が多いのでなかなか書ききれませんが、特に重要なのかなと思ったのは、「人材」と「リテラシー」です。この2つの要素は少しリンクしているところもあります。

この情報産業革命のなかでは、データやAIを使いこなす人材が不可欠です。先にも書きましたが、日本は計算機科学分野の論文数で他国に差をつけられています。専門家が不足しているんです。一方で専門家がいれば何とかなるかと言うと、そうでもありません。未来を描くには「夢」も必要です。様々な場面でAIを使いこなすには基礎教養だって必要です。なので、多面的に「AIに取り組む人材」の準備が必要になってきます。

安宅さんはデータ×AIの人づくりを三層で語っています。

①リテラシー層
そもそも「未来を生み出すとは何か」というマインドを醸成する必要があります。そのため課題設定と課題解決に目を向けられる教育が求められます。また当然、日本語だけではなく世界語(英語と中国語)で考え、やり取りできるようになったほうがいいですし、データサイエンスの教育も必要です。

②専門家層
リテラシー層の1割は専門家になり、データそのものであったり、様々な領域を刷新する人が出てくることで、生産性を飛躍させます。

③リーダー層
リーダーはビジョンを語り、人を惹き付けるパワーを持ちます。データ×AIの時代では、十分なリテラシーを持ち、人材に対する広い視野を持った人です。

若い人に投資する国へ

安宅さんのメッセージの中にある強烈なものとして、「若い人」に対する愛があります。そもそも若い人に期待しないと未来はないですよね。でも期待だけで人は動かないように、しっかりと環境を整備し、マインドセットさせることが大事です。そのためには、今ビジネスをしている大人たちが、若い人に投資するという考え方をもち、実際に行動していくことが必要です。

それをやるには、国の制度や方針を変え、リソースの再配分が必要になります。

若い人に投資するということは即効性がありません。事業活動で言うとR&D(研究開発費)です。国が取り組むもので最もROIが高いのが「教育」「人材開発」「科学技術予算」です。

教育では例えば国語と算数。
思い出してください。国語のテストってどんなものでしたか?筆者の考えを推測したり、感想を書いたり…これってつまり空気を読む力を養っているんです、角が立たずに生きる力と言うか…。もちろんそれが日本人を日本人たらしめる美徳を形成しているのかもしれません。そうではなくロジカルシンキングのように「考える力」を養うことが大切ではないでしょうか。ロジカルシンキングを学んでいけば、ロジックが重要な素養になるデータサイエンスの理解も早いはずです。

数学はどうでしょう。日本は数学のレベルは高いらしいのですが、数学が好きな人が1割もいないそうです。私も嫌いでした…。しかも大学に行くとほぼ数学に触れなくなります。数学への恐怖心を持たずに道具として使えると強力なのだということがわかる教育が必要なのでしょう。

そして科学技術予算に光を当てる。
さきほど論文数の順位が低くなっていると書きましたが、論文数と予算は恐ろしいほど相関しているそうです。

日本では、学生一人当たりの予算は米国の3分の1以上の低さで、大学教員の給与もこの十数年据え置きの状態。米国での給与は2倍あるそうです。これでは優秀な人たちは日本を去ってしまいますね…。とにかく日本には予算がないみたいで、国立の研究所でも予算が削られ、博士号課程ではお金がかかり、国家的なプロジェクトは15年何もない。なんてこった。

科学技術分野への予算を増やすことで、様々な分野でインパクトのある初期論文を出せるようになると国全体がパワーアップしていきます。このような事業ポートフォリオ的な発想が必要になのです。

ところで、じゃあどうやって再配分するんだよということなんですが、それが「シニア」の活用につながってきます。

国全体の総予算170兆円のうち、120兆円が社会保障だそうです。そして安宅さん曰く、この配分を数%変えるだけでも変わるそうです。『シン・ニホン』で語られてきた未来への取り組み、すなわち教育、AI-ready化、科学技術予算は3.2兆円で足りるというのです。そしてその財源は65歳での「伐採」をやめ、価値を生産する人口を増やすことで解消できます。

若い人へリソースを再配分することがこの日本を再考させる戦略。コンフォートゾーンにいる大人たちが積極的に若い人に投資するような環境をすぐにでも考えていかなければなりません。

まとめ

『シン・ニホン』は今後の「日本という国」がとるべき戦略が、ただの1冊に簡潔にまとめられている。グローバルの市場がどのような状況かというマクロ視点、現状、日本が置かれている状況はどんなものかというミクロ視点、それが何を示しているのかという課題の抽出。その課題に対して取りうる選択は何なのかを見事に書ききっている。

私は素養がなく、安宅さんにとって渾身のビジョンであり戦略が、この本を読んでしまうだけだと「そうなのか!」となってしまうばかりです。

しっかりと自分なりに客観的に日本を見ないとなと思いつつも、「若い人に投資する」という点は強く同意します。私も若い方だと言われはしますが、それにしてもいまの20代の部下たちの給与は、おそらく見合ったものではないように思う。こればかりは会社のシステムで仕方ない面もあるが、国全体として若い人が輝ける環境を心から作ってあげたい。

一方で、どうしても大人たちは自分たちが快適に過ごせる環境を守りたい。若い人を応援するとは口では言っても、自分を犠牲にしたいかと言われれば首を縦に触れない。私を含め、このマインドをどう変えられるのかが今後の日本に大切なのだろうと思います。

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