『ホモ・デウス』の書評とサクッと要約|データ教という宗教

ホモデウスの要約 文化

ユヴァリ・ノア・ハラリ氏の前作『サピエンス全史』では、サピエンスがなぜ唯一生き残った人類になったのかを言語によって語られる「虚構」によって、見知らぬ人との協働とネットワークを可能にしたことと論じていました。『ホモ・デウス』では人類の未来が語られています。

2020年、新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっていますが、この「虚構」の威力をまざまざと感じます。1月~2月頃にはなんだかまずいぞ、という空気感が世界中で醸成されました。海外の情報が簡単に手に入れられる一方で、フェイクニュースや偏った情報も混在し、恐怖と不安で包まれます。SNSでの伝播力、メディア煽り。2月~3月にかけては日本も一気に空気が変わった気がします。いまだにそれぞれが信じる新型コロナウイルスの存在によって、「コロナは風邪だ」とか「PCR検査が少ない」とかそれぞれの主張ごとに協働する人たちが数多く存在します。ただしコロナも「虚構」によって、各国が感染拡大させないよう協力するということを成し遂げたのも事実ですが。

さて、『ホモ・デウス』。なんともいかつい名前。現代でもそのまま”Homo Deus”で、表現として興味深いし、この言葉を思いついたハラリ氏は得意満面かもしれません。”Homo”というのはラテン語で人の意味です。そして”Deus”もラテン語で、その意味は神です。

「ホモ属 カミ」ですよ。すごい強そう。

この本もやっぱり一人で読むのはしんどい。ということで、2019年にアクティブ・ブック・ダイアローグ®(複数人で分担して読んで、読んだパートをサマってプレゼンする手法)でざっと一通り読みました。18人で実施したのですが、リレープレゼンテーションがきつい。なので、面白いと思ったポイントくらいしか頭に残らないので、読んだ気にはなれなかったんですよね。この機会に読みなおしました。

前半は『サピエンス全史』のおさらいと、少し角度を変えて説明される人類の罪みたいなところがとっても不安にさせられます。世界に存在する動物を重量で割合を見てみると、人間と家畜で90%を占めるそうです。家畜は人間が繁殖させていますからね、人間が地球を席巻していると言えます。家畜は人間よりも総重量があり、人間が手を加えなければここまで繁栄(?)しなかったでしょう。ただ、この種の維持と大量繁殖は豚や牛にとって幸せなのか。豚はイノシシを家畜化されて生まれた存在であり、牛もオーロックスという大型動物を家畜化していったものだそうです。

ちょっと暗い話になりそうなのでこの話はここまでにしますが、人間は「虚構」によって他の動物にはできない、認識していない人と共通の世界観のなかにいることができたので、広いネットワークで協力することができました。『ホモ・デウス』はこの前提のもと、これから人類が何のために何を信奉するかという話になります。

品種改良ができるということは、人間の品種改良だってできちゃうってことですよね。遺伝子学の話かもしれないし、サイボーグ学かもしれません。人間がアルゴリズムでできているとしたら、どういう道をたどるのでしょうか。

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サマライズ(本の概要と要約)

ホモデウスの概要
ホモデウスの要約

ホモ・デウスとは

原題は、”Homo Deus”です。ホモ属デウス科ということでしょうか…。本書はイスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏が人類の歴史を紐解いた『サピエンス全史』の流れを汲みつつ、その流れを引き継ぎ人類の未来の道筋を解説している。

人類は、飢饉・疫病・戦争が対処可能になった今、不死・幸福を目指す可能性が高い。不死と幸福の実現は神が成せる業である。もしそうであれば人類は神へとアップグレードし「ホモ・デウス」となるのか。

著者

『サピエンス全史』の記事でも書いたので、単なる人物紹介ではなく、少し別の切り口からご紹介します。

ハラリ氏の主張は『父が娘に語る経済の話。』のバルファキス氏の主張と重なる部分があります。

バルファキス氏は、資本主義が民主主義を民主主義ではなくしてしまうというものです。何を言っているかと言うと、資本主義だと、富が集中するところに権利が集まる仕組みになる(例えば株式会社は一人の大株主の発言権の方が、個人よりもはるかに強い)ので、GAFAに代表されるテクノロジー企業の独占に警鐘を鳴らしています。

似たようなことをハラリ氏も実はTEDカンファレンスでスピーチしています。まさに、民主主義が直面する課題として、技術革命による情報の独占の可能性についてです。ぜひ一度、ご覧になってください。

本の解説と感想

ホモ・サピエンスは「ホモ・デウス」になる

狩猟社会から農耕社会に舵を切ったホモ・サピエンスには様々な苦難が待ち受けていました。農耕するということは定住するということで、その定住する地域が不作や洪水になると、とたんに食に陥ります。疫病があってもその地域からすぐに離れることができません。

しかし虚構によって協力することが可能になった人類は、今や飢饉・疫病・戦争という大きな問題に対処ができるまでになりました。

「飢饉」は、よく歴史の教科書でみましたが、過去に多大な命を奪いましたが、慢性的飢餓はあっても飢饉はありません。

「疫病」は、黒死病・天然痘・インフルエンザなどがあったものの、空前の医療の成果によってあらゆる病気は解決されようとしています。新型コロナウイルスもやがてワクチンができるでしょう。

「戦争」は未だに続いていますが、古代に比べて暴力によって命を落とすことは減り続けています。これは戦争が技術の発展によりただの集団自殺にしかならない状態になり見返りがなくなってきたためです。

ここから人類が目指すのは、「不死」と「幸福」そして「神性」です。

「不死」は遺伝子工学や再生医療によってもはや技術的問題だと考えるのが当たり前になっています。不死にはたどり着かなくても人間社会に大きな変革をもらたらすでしょう。

「幸福」は難しい問題です。主観的な幸福度は経済が成長しても変わりません。幸福度は目標達成までの道のりにあります。これを人為的に果てしない流れを作ろうとしています。スマホゲームとか、やめられないんですよ。そういう感覚です。

これら「不死」「幸福」というものは、神の能力です。不死や永遠の幸福の追求なんてもともと人間にはできませんでした。いま、ホモ・サピエンスが「不死」や「幸福」に立ち向かおうとしているということは、すなわち神へのアップグレード、ホモデウスになろうとしているということです。

人類と他動物は何が違う?

冒頭でも書きましたが、ホモ・サピエンスと他の動物たちとの最大の違いは、言葉によって虚構を作れるということです。同じ物語のなかで共同主観的事実を築き、自分の知らない人とも同じ思想や信じるものを共有してくることができました。

これによって、統治者が例えば宗教や信仰を利用して集団を治めやすくなりましたし、何か危機が起きたとしても早めに察知することはできますし、助け合いも不可能ではなくなりました。

人類はこうして大型の野生動物を絶滅に追いやり、少数の動物を家畜化し大繁殖させて、地球上で圧倒的な支配者になってしまったのです。

この人類による動物の家畜化が『ホモ・デウス』の鍵でもあるので、序盤で語られているのだということが読み進めると分かってきます。

人間至上主義からデータ至上主義へ

人間はアルゴリズムでできているのか?という前提にたてば、人間を支配する存在が出てきてもおかしくない気はします。それが「データ」です。

『マネーボール』という映画をご存知でしょうか。メジャー・リーグの話なのですが、ブラット・ピット演じる元MLB選手が貧乏球団のGMに就任し、低予算のなか勝利を積み重ねるチームを作り上げるという実話を元にした映画です。マネー・ボールでは選手起用に徹底的にデータを活用しています。ホームランを打つ選手よりも長打率の高い選手を起用するほうが勝利に貢献するなど分析し、そして勝ってしまうのです。人間の主観的判断ではなく統計を信じての判断です。

また本書では、アンジェリーナ・ジョリーが乳がんになる可能性が87%あるという遺伝子を持っていたということから、両乳房切除の意思決定をしたという事実が語られています。数字に目をむけての判断です。

データとデータによるアルゴリズムは知らないうちに私たちを支配し始めています。今は人間が機械やAIに指示する側かもしれませんが、やがては操作されるようになってしまうかもしれません

ただ、AIにしてもそれをメンテナンスする人は出てくるので、その人はエリートとして大多数の人の上に立つ存在になります。人間は自由に生きているつもりがいつからか不自由になっている時代がくるのかもしれません。まるで映画『マトリックス』のようです。

ちょっとホラーが入りましたが、データが全てという考え方がデータ至上主義。生き物や社会全体、経済、政治がアルゴリズムで説明できるというものです。データ至上主義の恐ろしい点はこれ。

そうなるとデータ至上主義はこれまでホモ・サピエンスが他のすべての動物にしてきたことを、ホモ・サピエンスに対してする恐れがある

人類総家畜化ですね。一部のエリートすらデータの上には立たないのです。

私たちのあらゆる行動データが収集され、それが一部のエリートたちに吸収されていることに、もっと危機感を持つべきなのかもしれません。…とはいえ便利なので私はあきらめてしまってますが(^^;

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