『ランキング――私たちはなぜ順位が気になるのか?』の書評とサクッと要約|ランキング社会との付き合い方

ランキング――私たちはなぜ順位が気になるのか??(ペーテル・エールディ 著) 文化
ランキング――私たちはなぜ順位が気になるのか??(ペーテル・エールディ 著)

今回はAmazonほしい物リストの読書はひと休み。仕事柄、思わず手に取ってしまった本ですが、積読対象となっており、重い腰を上げて読んでみました。タイトルから興味津々だったのだけど、期待したような内容ではなかったような…気がする。

消化不良感はないけど、なんかインパクトが足りない。というのも、この本に期待したところは、驚くような研究成果や論理展開によってランキングの存在をどう肯定するかのヒントになればと思ったのだけど、わりと地味な論調で、すでになんとなく認識していることが書かれている印象。

とはいえ、メインメッセージとして受け取った以下の2つについては、納得度の高い説明ができるようになった気がします。
●ランキングは、生物の進化の過程の産物である
●ランキングは、完全なものではない

また、「比較」や「レーティング」「リスト」といった近しい概念の説明から、人間というのは他者と比較したりラベリングすることが、日々の活動において基礎的なものになっているという展開も分かりやすかった。

よく「日本人はランキング好き」ということが言われるけど、それは何も日本人に限ったことではないようです。

例えば、自分を客観的に捉えたり、自己認識するなかで、年齢や成績で「比較」はする。スポーツの世界も「レーティング」や「順位」で評価される。「リスト」は分かりやすくて好む。箇条書きにすると頭の中が整理しやすい。

サッカーで試合が終わると、新聞紙がレーティングしたりするのに対して、サポーターが「自分はこう思う」という比較をすることもある。昔、中田や名波が海外クラブで出場したとき、日本のメディアは現地ではこう評価されてる、こっちの新聞ではこう評価されている、というのをよく見た覚えが…。これは日本の大衆のニーズか笑

よくあるWEBの記事で「日本に来たら行くべき観光地10選」なんていうのは、たいてい欧米発のものだったりする。日本語記事になっているけど、翻訳されているものが多いですよね。

こんな感じで人間はランキングが好き。で、生物の進化の結果で、ランキングは生活するうえでとても効率的なものだという。生物も何らかの方法によってヒエラルキーを作っていたりして、優秀な遺伝子を残そうとどの個体と交尾するかを選別する。人間の社会もヒエラルキーがあるから、歴史上多くの時間を争いをせずに繁栄することができた。

でも問題は、誰もが納得する完全なランキングが果たしてあるのか?ということ。

単一の評価軸、例えば身長のランキングであれば誰もが納得するけど、複数の指標の重み付けで変わってくると、とたんに恣意性が発生するし、操作もできてしまう。

例えば音楽のヒットで言えば、オリコンランキングはCDの売上枚数(推計ではある)でヒットを可視化してきた。これは単一指標の積み上げなので集計側の恣意性は少ない。

だけど、いまはレコードやCDという分かりやすいものだけではなく、デジタルでの購買(1曲単位で購入できる)や、ストリーミングでの音楽の消費というものが発生してくるので、物の売上枚数ではなく複数の消費指標を複合化させる必要が出てきたわけです。こうしたアルゴリズムはビルボードも採用しているものですが、どの指標にどう重み付けをするのかは、集計する側の主観になってきます。

どの指標を重視しているのかが分かると、ランキングで上位になるにはどうすればいいのかというのも分かるので、「当てに行く」という行動もできてしまい、結果的にそのランキングがある側面では正しいのに、「本当にそうか?」という論争が巻き起こっていきます。

でも議論がなされるということは、個々人のなかにはランキングがあって、自分のランキングと他者のランキングを比較しているということに他ならないわけです。

なので、比較やランキングというのはなくならないので、ランキングというものをとりまく恣意性や操作性というものを理解して向き合うことが大事って話ですね。

あ、なんか書いてたら頭が整理された。

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本の概要と要約

ランキング 私たちはなぜ順位が気になるのか
ランキングは完全ではない

著者の課題
ランキングがいま人気の話題であることに同意するが、意図的に操作されたものなので悪いものだという否定的な見方もある。

解決方法
現実のランキングが完全なものではないと理解する。私たちが日常で演じるランキングゲームのルールを知って議論する。

『ランキング 私たちはなぜ順位が気になるのか』の要約
私たちはランキングを好む
『ランキング 私たちはなぜ順位が気になるのか』の要約
多くのランキングは主観的要素があり完全なものではない

内容
・私たちはランキングを好む
 -比較、ランキング、レーティング、リスト
 -私たちは常に比較している
 -他人との比較は人間の基礎的活動
 -我々の脳は整理されているリストを好む

・社会的ランキングのルーツは生物の進化にある
 -ニワトリのつつき順位
 -ヒエラルキー組織は無駄な闘争を避ける効率的システム

・現実のランキングは完全なものではない
 -ランキングは、どの指標を重視し、どう重み付けるかの結果
 -Googleの検索結果アルゴリズムは、重み付け次第で順位が変わる
 -アルゴリズムの裏をかくこともできる
 -大学のランキングも発表主体によって指標が異なる
 -ランキングを上げることが目標となる

・問題点
 -指標が決まっているとそれが腐敗や不正の対象になりやすい
 -アルゴリズム自体が恣意的な仮定に基づいている
 -無知な人に対して自分の有利になるよう巧みに操作することもある

・ランキングはなくならない。問題はその結果にどう向き合うか

本の解説と感想

ランキングは情報の整理に役立つ

自分と他人を比較するのは、人間の基礎的活動であり、比較をしたりされたりすることから逃れることはできない

『ランキング――私たちはなぜ順位が気になるのか?』p51

ランキンキングというのは、対象のすべての組み合わせを比較したもので、アルゴリズムによってはじき出されたレーティングを順番に並べたものです。○○ランキングというリストの形にすることによって、あたかも公式にまとまった情報のようになり、人間にとっては限られた時間のなかで最低限の情報の収集することや、素早く意思決定することができる、効率的なものだと言えます。

比較

比較はランキング作成の基礎になるもの。ほとんどの意思決定は比較は重要な役割を果たす。
例えば、何かの仕事を外部の会社に依頼するとき、相見積もりを取る。安いか高いかだけではなく、満足する品質をどちらが提供してくれるのかと比較する。

ランキング

ランキングは、①一群の比較対象(個人、大学、映画、国、サッカークラブなど)と②比較基準(年齢、論文数、興行収入、論文数、勝敗数など)があれば成立する。

任意の2つの対象、AとBについて、この項目ではAが上位、Bが下位、あるいは同じ順位、という処理を全ての組み合わせで実行したうえで作られるもの。

単一の指標だけではないランキングも作成できる。比較でも例にした外部への業務発注を3社で比較しようとすると、その三社でランキングが作られるが、シンプルな話に名ならない。価格と品質は対立関係にあるし、納品スピードであったり、仕事が一緒にやりやすいかという柔軟性も評価になるだろう。

複数の指標をもち、どう重み付けするかでランキングが決まり、意思決定がなされる。

レーティング

ランキングとは各項目を直接お互いに比較して順番に並べることだが、レーティングとは、共通の尺度を用いて各項目を比較すること。

レーティングはアルゴリズムが用いられる。レーティングの結果順番に並べられるのであれば、その状態はランキング。

リスト

リストは、一覧のこと。モーゼの十戒などもリストである。

人間の脳は、整理されていないばらばらの項目を記憶することができないので、リスト化されることによって脳への負担が少なく済む効果がある(テーマが分かる、まとめられていると安心する、あとどのくらい読まないといけないのかがわかる…など)。

生物としてのヒエラルキー

現在の職場で最初の数日間をどのように過ごしたか覚えているだろうか。意識的かどうかに関わらず、多くの人が同僚たちの公式非公式の関係性を把握しようとしたのではないだろうか。

『ランキング――私たちはなぜ順位が気になるのか?』p72

ニワトリは、つつきつつかれる関係性において、ヒエラルキーが作られ、交尾などの優先順位をつくります。このつつき順位によるヒエラルキーは、一度形成されれば無駄な争いが行われず、さらに優秀な遺伝子を残すことができる効率的な構造になっています。サルの集団でも一緒ですよね。支配ヒエラルキーは、衝突の激化を制限し、社会の安定を維持するのに役立つのです。

人間も社会を形成していくうえで、ヒエラルキーが大変重要な役割を担ってきました。

集落ができると、それを束ねる長が資源を管理します。やがて宗教や国という大規模なシステムの中でもヒエラルキーは展開されます。

このヒエラルキーこそランキングに他ならないといえるでしょう。つまり、ランキングとは生物学的にも社会学的にもルーツがあるものなのです。

ランキングアルゴリズムを構築するのは人間の主観

どのようなランキングであっても、その結果は完全に合理的にも客観的でもないということを我々は理解する必要がある

『ランキング――私たちはなぜ順位が気になるのか?』p120-121

ランキングを作る過程において、どの指標を採用し、どう重み付けするのかという問題が発生します。単一の指標ではなく複数の指標になると、とたんに主観的要素が強まります。

例えばgoogleの検索結果。検索順位はgoogleが採用するランキングアルゴリズムによって決定します。サイト制作をする者にとって、これは共通の指標で絶対的なものではありますが、そのアルゴリズムはほかならぬgoogleが採用した指標をgoogleが重み付けしたものです。いってしまえば、googleの主観です。

googleはアルゴリズムのアップデートを頻繁に行っています。コアアルゴリズムアップデートという大規模な変更があるたびに、ランキングは大きく変動するのです。いまも多くのサイト運営者が右往左往しています。

主観的なランキングにはあらゆるバイアスが含まれることを考えると、googleのアルゴリズムもgoogleによる操作がなされているとも言えます。(それに抵抗できない状態がすごいのですが…)

無知と操作

新聞を読まなければ、情報に疎くなる。新聞を読めば、現実を誤解する

『ランキング――私たちはなぜ順位が気になるのか?』p133(マーク・トウェイン)

これまでランキングには主観が入るという話をしてきました。完全に客観性のあるランキングが作れない理由は、2つあります。「無知」と「操作」です。

ダニング・クルーガー効果(無能な人々が自分たちを過大評価する)と、キャンベルの法則(定量的な社会指標が社会の意思決定に用いられるようになればなるほど、その指標が腐敗の対象となりやすくなり監視するべき社会プロセスを歪ませ劣悪にする傾向が高まる)という二つの現象があります。

可能な限り、客観的にランキングを作ることで価値を生み出したいと思っても、人間の思い込みや、意図的な介入によって、完全な客観性を持ったランキングを作ることは不可能に等しいのです。

ランキング競争

単一の理想的なランキング方式というものは存在しない

『ランキング――私たちはなぜ順位が気になるのか?』

大学ランキングというものを目にする機会も多いですよね。

このランキングは、1983年に US NEWS and WORLD report が大学ランキングを掲載し始めたことに端を発するようです。大学ランキングは戯言でしかないという評価もある一方で、ランキングを好む私たちによる脅迫的なものによって、批判しながらも利用する大学関係者も多いはずです(日本は低すぎるのでメディアだけが騒ぐのでしょうが)。

大学ランキングは、複数の発表もとがあり、それぞれで採用している指標や重み付けがことなります。おそらく上位の大学関係者は、それぞれのランキングで上位になるために数字合わせに行くという行為もしていることでしょう。なぜならランキングを利用するのは大学関係者だけではなく、受験生にも及ぶからです。ランキングとしてリスト化された大学のなかで、自分が優先する要素を出発点に、受験先を決めることが大いにあるのです。

まとめ

人間の作成するランキングには、認知バイアスの影響がある。コンピューターによるランキングは、データベースとアルゴリズムを利用するが、一般的に、データベースとアルゴリズムにもバイアスが入り込んでいる。それにもかかわらず、これらのランキングは、全くのでたらめではなく一定の客観的事実を反映している

『ランキング――私たちはなぜ順位が気になるのか?』p260

あらゆるランキングには、ランキングする側とされる側の「主観」と「認知バイアス」が関わっていて、操作もされやすいので完全に客観性のあるランキングというのはそもそも難しいということがよく理解できました。

とはいえ、ランキングというのはそれはそれで1つの結果。それをどう受け止めるのかということが大事。ランキングを見る側も、どのような形でランキング化されているのかを認識する努力はしておきたいし、作る側も客観性を追求する姿勢をやめないことが求められそうです。

本の目次

  • 第1章プロローグ ランキングとの出会い
    • 人気リストで上位に来る方法はサッカーボールを所有すること!
    • サッカー選手のレーティングとランキングーー客観性の錯覚
    • それほど美しくない物語ーーハンガリー民話に見る意図的に偏りを加えたランキング例
    • 教訓 客観性の現実、客観性の錯覚、客観性の操作
  • 第2章比較、ランキング、レーティング、リスト
    • 比較ーー「幸福の泥棒」か、将来の成功への原動力か
    • モハメド・アリの「俺がもっとも偉大だ」から「隣の芝はいつも青い」まで
    • セカンドベストの悲劇
    • 比較からランキングとレーディングへ
    • ランキングとレーティング
    • 大学院受験生のレーティング
    • 数学者のランキングからチェス選手のレーティングへ
    • チェス選手のレーティングーー成功物語
    • モーゼの十戒とベスト10ブーム
    • 教訓 基本概念のおさらい
  • 第3章動物集団と人間社会におけるランキング
    • ニワトリのつつき順位
    • 支配の計測とヒエラルキー形成の理解
    • トップになるための2つの方法ーー暴力vs.知識
    • 社会構造ーーヒエラルキー型組織vs.ネットワーク型組織
    • ネットワーク社会
    • ランキング闘争ーー民主主義vs.独裁体制2.0
    • 教訓 進化および進化の先にあるもの
  • 第4章選択、ゲーム、法律、ウェブ
    • 個人から社会選択へ
    • 人はどのように選択しているのか
    • 社会選択
    • ジャンケンゲームと法則
    • 法体系の循環ーータルムードが現代へ
    • IT長者を生んだランキングアルゴリズム
    • ゲームの結果についてーー安定性、逆転、統計
    • 教訓 合理性の範囲と限界
  • 第5章無知と操作ーー社会を計測することの難しさ
    • 無知な人
    • 操作する人
    • 社会を計測する重要性と困難さ
    • 人事における順位付けと解雇
    • 信用スコア
    • 教訓 社会の計測が(不可能ではないものの)これほど困難なのはなぜか
  • 第6章ランキングをめぐる駆け引き
    • ベスト10幻想
    • 誰も望んでいないのに、みんなが使うーー大学ランキング
    • ランキングの需要
    • ランキングは何を計測しているのかーー指標と重み付け
    • ランキングをめぐる駆け引きーー反射から反応へ
    • 世界で「最良」の国は存在するか
    • 信用格付けによる国別ランキングーー客観性と主観性のジレンマふたたび
    • 腐敗のランキングーー容認から糾弾へ
    • 自由のランキング
    • 教訓 ゲームは終わりではない
  • 第7章評判を獲得するための競争
    • 「評判なんてぜんぜん気にしない」という態度をあらため評判管理へ
    • 評判を決定するのは誰か
    • 間接的互恵性から協力の進化論へ
    • 評判獲得競争
    • デジタル上の評判
    • 評判の計測
    • 科学者のランキングをめぐる駆け引き
    • 芸術家のレーティングとランキング
    • ノーベル賞とアカデミー賞ーー候補者と受賞者
    • 成功物語のダークサイドーー検索エンジンの操作とその影響
    • 教訓 ランキングを上げるための評判管理
  • 第8章ほしい物リストに刺激されーー芝刈り機を買うか買わないか
    • おすすめ表示ーー必要なのは信頼だけ
    • おお!ネットフリックス
    • 偽レビューーーふるい落とす方法
    • 愛こそはすべて、なのかもしれない
    • 教訓 慎重な楽観主義
  • 第9章エピローグ ランキングゲームのルールーー今、われわれはどこにいるのか
    • 客観性の現実、客観性の錯覚、客観性の操作
    • 比較するのは人間の性
    • リストは情報の整理に役立つ
    • 社会的ランキングは進化論的ルーツをもつ
    • 人間がランキングアルゴリズムを構築する
    • 評判、外的成功、精神的平穏のバランス
    • おすすめ表示システムは選択肢の整理に役立つ
    • インターネットの管理ーー最終的権限をもつのは人間が、コンピューターか

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