『サピエンス全史』の書評とサクッと要約|人類は統一に向かっている

サピエンス全史 文化

1年に1冊くらいは、海外で書かれた骨太の書籍が日本語訳になってベストセラーになることがありますが、『サピエンス全史』は2016年のまさにそれだったのではないでしょうか。ブームになったのは2017年から2018年くらいと記憶しています。

私が初めて読んだのは2019年の春くらい。上下巻合わせて500ページを超え、それだけならまだしも文字の詰め込み方がすごく、日ごろから相当活字を読むことに親しんでいないと、10ページくらい進んだら疲労で目を逸らし、机に本をいったん置いて、コーヒーでも淹れに行こうものなら積読リストの仲間入りです。

ということで始めから一人で読むのは無理だと思っていたので、コラボレーション型読書法「アクティブ・ブック・ダイアローグ®(ABD)」で合計20人くらいで解読を試みました。20人がそれぞれ20~30ページ程度を分担して読みましたが、それでも文章が難しいところもあり、また20人がプレゼンをするということで5時間を要しました。疲労困憊。

さて中身はと言うと、全体の主張をざっと理解してしまえば、めちゃくちゃ面白い。

サピエンスの歴史は、認知革命・農業革命・科学革命の順に分解していて、大きなターニングポイントになっています。

私たちホモ・サピエンスが唯一の人類として生き残っていますが、他のホモ属(ネアンデルターレンなど)も同時に生きていたはずなのに、どうしてサピエンスだけが生き残ったのかという壮大な問い。この答えを著者のユヴァル・ノア・ハラリ氏は「虚構」という能力を手に入れたことによると述べています。ここでいう虚構というのはウソということではなく「想像上の何か」というほうが近いでしょう。これが認知革命。

農業革命で興味深かったのは、小麦が人類を家畜化したというくだり。人類が一定の場所に定住し穀物や肉を家畜化したことで貯蓄など新たな概念が生まれるわけですが、これは人間にとって不満足極まりない状態だというのです。なぜそんな不幸な状態になるのに、農業がすっかり定着したのかと言うことを、それまで一部の地域にしかなかったのに世界中に生育するようになったに小麦よる人類の家畜化だという面白い展開。不幸だけど人類も人口爆発させ大量に繁殖していくことができました。

科学革命はこれまでの認知と農業の結果、普遍的な秩序となった「貨幣」「帝国」「宗教」と融合することによって、信用の名のもとに資本が集中投下されるようになり今まで実現できなかったことを実現することができるようになりました。戦争という不幸は未だに続いていますが、これによって戦争よりも平和の方が利益に帰する状態になりつつあり、今、世界は大局的にみれば平和に向かっています。

本書に関しては、論拠がどこにあるのかとかは謎な部分もありますが、最もらしさが正しさと思ってしまうのが人類だと踏まえたうえで、考え方として納得度は高くて、ちょうど『FUCTFULNESS』や『父が娘に語る~』を読んでいたタイミングで被る点もあったりしたので楽しく読めました。(一部では本書の主張は偽りだと批判もされているそうです)

2020年、新型コロナウイルスという人類共通の敵が世界中で猛威を振るい、全世界が同時多発的に対策を講じ、拡散しないように渡航制限などをかける対応をするというのは、まさに「統一」の方向に向かう人類を象徴しているようにも思えますね。

さて、『サピエンス全史』から、次の本『ホモ・デウス』に向かうのですが、それはまたの機会に感想を書いてみようと思います。

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サマライズ(本の概要と要約)

サピエンス全史の概要
サピエンス全史の要約

サピエンス全史とは

原題は『Sapiens: A Brief History of Humankind』。初めて発行されたのは2011年で、ユヴァル・ノア・ハラリ氏がイスラエルの大学で講義をした内容をもとにし、ヘブライ語で出版されました。

『サピエンス全史』で述べられる主張は、弱かった人類が食物連鎖の頂点に立ち文明を築いたのは「虚構」にあり、無数の人々を協力させる共同体を形成させることができたことにあるというものです。

その主張をサピエンス歴史を「認知革命」「農業革命」「科学革命」の3つに分解その主張がまとめられています。

著者

本書を書いたのは、ユヴァル・ノア・ハラリ氏。イスラエルの歴史学者で、現在はエルサレムのヘブライ大学の歴史学の教授です。『サピエンス全史』のあと、人類の未来を描いた『ホモ・デウス』、現在を生きる私たちが抱える課題を問う『21Lessons』を書いてます。

インタビューも多いのでネットを探すと多くの記事に触れることができます。

新型コロナウイルス流行に際しても様々なメッセージを発信していましたので、ご覧ください。

ユヴァル・ノア・ハラリ「もし生き延びたら、コロナ後の世界ですべきこと」 | 『サピエンス全史』著者が問う「コロナと死生観」
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の死者数が25万人に迫っている。このパンデミックに対して人類は「諦め」ではなく、「怒り」と「希望」をもって乗り越えようとしている──『サピエンス全史』の著者で歴史家のユヴァル・ノア・ハラリ氏はそう語る。それは、いったいどういうことか? そして、乗り越えた先にある「コロナ後の…

本の解説と感想

認知革命:サピエンスは虚構で繁栄した

人類のなかでも、今生き残っているのはホモ・サピエンスだけです。同時に存在していたネアンデルターレンとサピエンスの違いは何なのかと言うと、言葉によって「虚構」を発明したということだと述べられています。

この「虚構」というのがサピエンス繁栄の鍵を握っています。

もともと人類は、他の動物よりもはるかに弱い存在です。筋骨隆々の動物にフィジカルだけでは勝てません。人類は筋力の代わりに「脳」が肥大化しました。そして火を操れるようになったことも大きい。火は多大な利益をもたらしています。身体的に強い人や弱い人に関わらず誰もが使うことができ、調理をすることを可能にしました。そこに加えて「言語」を手に入れます。

言語を人類がどのようにして手に入れたかは本書では書かれていませんが、これこそ革命でした。みなさんも日ごろランチや飲み会で噂話をするかと思いますが、そうやって情報収集することが可能になったのです。

また、架空の物語を語ることによって、知らない人同士が共通の価値観のもとで共通の目的を成そうと行動することができるようになりました。これまで生命体と言うのは遺伝に遺伝を重ねゆっくりと環境に対応して進化してきましたが、虚構によって行動がめちゃくちゃ早くなったのです。

これって、納得度高いんですよね。例えば僕らの社会構造を考えれば全部そう。国や家族、会社。宗教。理念とか神様とかが分かりやすい例ですね。

農業革命:史上最大の詐欺

約1万年前に、人類は農耕民族の道に進みます。農業は狩猟と違い、日々獲物を捕らえなければならない状況から人類を開放した素晴らしいことのように思えます。がしかし、本書ではこう書かれてます。

農業革命は、史上最大の詐欺だったのだ。

『サピエンス全史』p107

確かに生命をコントロールする術によって、多くの果物・穀物・肉を手に入れられるようになったものの、それらは人口爆発を起こし、結局のところ取り分が増えるわけではなく、貯蓄によりエリートのような支配階級も生まれ、日の出から日の入りまで労働しなければならなくなり、狩猟よりもはるかに満足度が低い状態に陥ったのです。

先にも書きましたが、ハラリ氏はこれを小麦による人類の家畜化と言っています。小麦・稲・ジャガイモといった限られた植物の呪縛により不幸な状態に陥ったのですが、人類の爆発的な繁殖に貢献しました。そして増えすぎた人類は新たな地に植物を植え、世界中に小麦が生育したというのです。小麦が繁栄するために人類を利用した。面白い考え方ですよね。

さて、人類の不幸はまだ続きます。農耕民族になるということは定住するということです。ですが、農耕には不作がつきものですし、水の近くに住むことになるので洪水の被害だってあり得ます。治水などない当時からしたら絶望しかありません。また疫病が流行っても、その場所から移動することもままなりません。狩猟することができないのですから。

そこからまた人が進化します。将来に不安があるので、サピエンスは未来を想像するようになります。集落はやがて巨大なネットワークでつながり「想像上の秩序」がつくられ、それ紡いでいくために文字が生まれます。文字が果たした役割は農業と深い関りがあります。それは、資産や負債を記録できるようになったということです。結果的に経済という概念が生まれ、ヒエラルキーが形成されるようになります。

世界は統一に向かっている

神話と虚構によって文化が形成されていくと、「貨幣」「帝国」「宗教」というシステムがよく稼働します。

貨幣は、相互信頼制度として最も信用された存在です。みんなが同じ価値とみなしているので、みんなが信頼して使えるのです。これもいわば虚構。もしあなたが何かをモノを売ろうとしているとき、知らない誰かが欲しいと名乗り出たとします。このとき、目の前の知らない人を信じているわけではなく、その人が持っている貨幣の価値を信頼しているから売れるんです。

帝国は、「多くて小さい文化」を「少なくて大きい文化」にする機能を持っているといいます。帝国というと小さい集団をどんどんと征服していって巨大化していく存在です。帝国が確立されるなかで帝国文化が創出され繁栄と発展のサイクルが回っていきます。ハラリ氏はやがてはGAFAがグローバル帝国を築くかもねと述べていますが、あながち夢想ではなく、すでにGAFAの文化や思想みたいなものが浸透しているような気はします。

宗教は、人類を統一させる力を持っている超人間的な秩序だと述べられています。どういうことかというと、宗教と言うのはいつでもだれにとってもその信じるところが正しいものなので、全ての人にとって行動のベースになるものだということ。

サピエンス全史上下

技術革命:世界は平和に向かう

認知革命、農業革命の次は科学革命が起きます。

科学技術は無知の革命とも表現されていて、人類が分からないことを解明しようと事象を観察し数学的に答えを求めようとした結果としてもたらされます。科学技術の躍進には、これまで人類が手にしてきた貨幣(経済)、帝国、宗教が大きく寄与しました。

とにかく科学技術には投資が必要です。解決しようとするものが大きいほど莫大な資金が必要です。宗教とイデオロギーが起こしてきた戦争は、科学を栄えさせるキッカケを与えました。戦争は資源の集中投下です。金銭的な援助は当然のように政治的、経済的、宗教的な思惑が影響を与えます。帝国主義と資本主義が科学をけん引していくことは間違いないのです。

少し脱線しますが、昨今、中国の科学技術面での躍進はすさまじいものがあります。安宅さんの『シン・ニホン』が分かりやすく書いてあるのですが、研究者への投資が日本はとても弱く、アメリカと中国の投資に置いてけぼりにされています。その結果は論文の数にも表れているようです。科学技術こそ支配権を握るカギだと考えているからです。

こうした中で米中のいざこさもありますが、戦争を起こす雰囲気は微塵もありません。まだ第2次世界大戦から100年も経っていません。それはなぜでしょうか。

これまで人類が形成した集団は、基本的に自分たちのコミュニティの内外の紛争あるいは侵略によって富や資源を獲得してきましたが、「核」という暴力の到達点に誕生によって、国家間で戦争するリスクが甚大なものになったのです。代わりに消費経済が発展し、十分な富を生み出せるようになったので、世界の大きな方向としては平和に向かっているのです。

サピエンスはどこへ向かうのか?

統一に向かっている人類は、これからどうしていくんでしょうか。なぜ統一に向かっているんでしょうか。幸せなんでしょうか。

生命の本能が持続的な繁栄であれば、サピエンスがこれまで認知革命による虚構で集団で協力するという力を手に入れ、農業革命によって人口爆発が起き経済が生まれ、科学技術によって世界平和がもたらされようとしています。ところが働き続きけなければならないことは一向に変わらないし、先住民たちにとってはちっともよくありません。

しかし、欲望のまま拡大してきた人類も、倫理的な点から研究が遅れている分野、遺伝子学やサイボーグ工学などにいよいよ没入しようとしています。それは国家間のにらみ合いの影響が大きいでしょう。どこのだれかが結局やってしまうのであれば、自分たちもやるしかないからです。

「病気を治し、人命を救う」という大義名分は、誰の目から見ても正義で、この旗印のもとに科学は全てを正統化させてしまいます。そう、フランケンシュタインを造り出すことだって止められやしないのです。

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