『21 Lessons』の書評とサクッと要約|的外れな世の中を生きるための教訓

21Lessonsの要約 文化

過去の『サピエンス全史』、未来の『ホモ・デウス』ときて、触れ込みは「現在」の『21 Lessons』という構造は、ついつい本を手に取ってしまいます。ユヴァル・ノア・ハラリ氏の主張は研究者らしく一貫していて、「虚構」がキーワードです。この「虚構」ってなかなか厄介な存在ですよね。悪いことでも、なんでも正当化してしまう悪魔の魔法のようです。

時事的な話で恐縮ですが、個人的とても残念だったニュースがありました。伊勢谷友介氏の大麻所持容疑での逮捕です。9月9日段階では事実関係は分かりませんが、もし大麻所持と吸引が真実であれば本当にショックです。大麻や覚せい剤などの薬物は絶対にダメです。だって禁止されているから。そう、そこが今日、頭を悩ませたこと。伊勢谷氏だってダメだということは分かっていたはず。これを容認していたということは大麻を受け入れる「虚構」にはまってしまったのではないかと。一方で、大麻や覚せい剤が悪だと決めているのも一つの虚構の姿。一度も使ったことがない人たちがダメだからやめようという法律で定められている以上に不文律として醸成されています。

うーん、まさに本書で危惧されているポイントとも重なります。本書の中では、人は自分中心に考えてしまうので、「あなたの宗教、イデオロギー、世界観が犯した最大の過ちは何か?」を自分に問いかけて客観視しましょう。そしてちゃんと自分で考える能力を身に付けましょう。

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サマライズ(本の概要と要約)

要約

21Lessonsの要約
21Lessonsの要約

現代は、誰もが重要だと思うことがありながらも、つい目の前にことに集中して、目を逸らしてしまう。なぜなら常に的外れな情報であふれているので、忙しい人たちにとって問題は複雑すぎるから。そのような人たちには「明確さ」が重要になっている。

人類には多くの難題がある。

1つはテクノロジー。バイオやITがこれまでエリートたちが創造してきた体制を壊している。これからはアルゴリズムが支配する世界が待っている。

もう1つは政治の問題。人類はもはや1つの文明であるはずなのに、ナショナリズムや宗教によって分断されている。核、生態系、テクノロジーという問題に対してはグローバルで考えなければならない。

そして、恐怖と嘘が蔓延する。例えばテロは数名の一ので数億の人を恐怖に陥れる。フェイクニュースはもっともらしく真実にとってかわってしまう恐れがある。

これらに対処するには、教育により考える術を重視し、意味を問う力を養い、自分自身を観察し、自分が何者なのかを知ることが大事。

『21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考』とは

『サピエンス全史』で人類が虚構によって統一に向かってきた「過去」を明らかにし、『ホモ・デウス』では数々の困難を解決してきた人類が次に神になろうとしている「未来」説いた、イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリが「現在」に焦点を当てたのが『21Lessons』。

タイトルの通り、現代社会に大きな影響を与える21の項目(幻滅・雇用・自由・平等・コミュニティ・文明・ナショナリズム・宗教・移民・テロ・戦争・謙虚さ・神・世俗主義・無知・正義・ポストトゥルース・SF・教育・意味・瞑想)に分けて解説をしています。

著者

著者はユヴァル・ノア・ハラリ氏です。すでに説明した通り『サピエンス全史』が世界的ベストセラーとなり、ムーブメントを巻き起こしました。サピエンス全史で描かれる狩猟社会から農耕社会への革命、さらに言葉を得たことによって「虚構」で協働のネットワークを作れるようになったという考え方は、歴史観に大きな影響を与えました。

ユヴァル・ノア・ハラリ氏はメディアにも登場することはあり、「新型コロナウイルス後の世界」といった寄稿も公開されています。

本の解説と感想

テクノロジー面の難題

『ホモ・デウス』でも語られてきた自然科学の発展とデータを中心としたテクノロジーの革命が人類に与える影響がまとめられています。

これまで人類は単純化された物語でまとまってきました。そしてその物語は20世紀にはいると一部のエリートが創造してきて、ファシズム・共産主義・自由主義と変遷してきたものの、昨今特に2008年の金融危機以降、移民の受け入れや貿易協定への抵抗が強まり、もはや物語でまとまれなくなってきています。

それに代わりテクノロジーの進歩が目覚ましい状況になっています。なんだか原理は分からないけど、いつの間にか恩恵に預かっていますよね。「OK,Google!」でいろんなことに答えてくれます。そんなこんなで、やがて全ての仕事がロボットに奪わられる未来がやってくるかもしれません。もしかしたら、AIに仕事を与えられる世界が来るかもしれません。

こうしてかつてサピエンスが神話や宗教によって想像上のネットワークによって協働していったものが、アルゴリズムに従う世界になりうるというのです。

この世界はボーダーレスな社会を生み出すかもしれないと言われる一方で、恐ろしく不平等な世界になってしまうかもしれません。なぜならテクノロジーをメンテナンスする一部のエリートが出来上がってしまうからです。

…という風に書いてあり、GAFAへの牽制を煽られている感は満載です。実際私たちの行動データは一部の企業と政府に支配される可能性は高いですよね。その状態になったとき、データを握る人たちが暴走しないようにしなければならないというのは真っ当な意見だとは思います。まあ、まず間違いなく私はカースト下位ですね…

でもこのまま行くとそういう世界にならざるを得ないので、中央集権的なデータの集約ではなく、ブロックチェーンのように誰もが情報を持ち合うという考え方がいい方向に議論されていくのかもしれません。

政治面の難題

人類は1つの文明なのに、あらゆるところで分断が起きているという話です。多くは政治に関わるところです。

これまでサピエンスは、過去から統一に向かっていて、いまやグローバルな方向にまとまりつつあります。ハラリ氏は、文明同士の衝突というのが現代においてあるのかと言うと「ない」と言っています。例えばイスラム主義もグローバル主義を否定しているものではありません。つまり身内のケンカに過ぎないということです。

そういえば、SDGsというのがこの数年流行っています。ひところのLOHASと違って、これは一過性のバズワードを超えて、これから企業や一人一人の意識に根差していく基本的な価値観になるかもしれません。

これって、世界中で展開されようとしているんですよね。SDGsの理念は「誰一人取り残さない」です。日本でもまだ全く知らない人も多いですし、知ったところでどうしようもない人たちはたくさんいます。豊かな国や人たちだからこそこんな平和なことを言えるのではないかという気もしないではないですが、個人的には、SDGsは「虚構」によって形成される究極の姿かもしれないなと実は思っていたりします。

テロと戦争の愚かさ

テロに関する章がとても面白かったです。例えば爆破テロがあったとして、それが人的な被害がなかったとしても自分が被害に遭うかもしれないという恐怖が多くの人に植え付けられます。日本では、地下鉄サリン事件や911のその後の流れから駅構内のごみ箱が撤去されるということがありました。テロは実のところ最終手段でやけっぱちに近いものの、効果は抜群で政府は無視できないので利用されてしまうのです。

ところでテロや戦争にしろ、そのような愚かな行為をしてしまう背景には一体何があるのでしょうか。本書では「ほとんどの人が自分の文化が世界の中心だと信じている」と述べられていて、そうした背景があるんだろうなと思います。アイデンティティを生み出すために創作されることは多いですよね。日本でも古事記の世界で世界の成り立ちが描かれ、中国では夏・商の王朝の神話的な話があり。

ハラリ氏はテロや戦争のような愚を犯さないために、自分は世界の中心ではないという謙虚さを持つことと、何かしらの宗教に依存せず客観的に物事を捉える「世俗主義」を推奨しています。そしてどのような宗教やイデオロギーにも影の面があるので、それを認めましょうと言っています。

面白い問いかけがありました。

・あなたの宗教。イデオロギー、世界観が犯した最大の過ちは何?

この問いかけは別に宗教などだけではなく、価値観の多様性を受容する一歩にもなるかもしれないなと思いました。

真実とは何か

本書の第4部は「真実」というテーマ。ここで語られていることは、多くの人にとって大変身近なものだと思います。わかりやすいもので言えば、フェイクニュース。

17章「ポスト・トゥルース」は、客観的な事実よりも感情に訴える情報が世論を動かす、というような本当のことではないことが真実のように語られる世界に我々は生きているという話です。これはどうしようもない話でもあるように思えます。例えば中国では王朝が変わるたびに前の王朝は否定されいかに現王朝が正しいかという捏造が普通です。中国に限らず歴史ってそうですよね。

さらに同じ章では、キリスト教の神話やイスラムのクルアーンなど科学的根拠のないフェイクニュースと言い切り(なかなか勇気がいることな気がしています…)、何十億人が千年以上も信じていているのは、まさに人類がポスト・トゥルースのなかに生きているという根拠としています

レジリエンス

レジリエンス。これもまた最近よく聞くワードです。レジリエンスを私なりに解釈すると。「何かの外圧によって原形が変化したときに、元に戻ろうとする、あるいは適応していく力」です。第5部のレジリエンスでは、様々な困難に直面する人類がどうすればいいのかの3つの示唆を書いています。

1つ目が教育です。これからの50年を生きるために何を学ばなければならないか、想像がつきますか?私はつきません。今から1000年前であれば田植えの技術を学んでいれば50年を生きていけました。しかし、これからの50年は技術革命によって想像がつかなくなっています。そして何かを学ぼうとすると、Youtubeでは学校で学ぶよりも有益な情報が無料で観れるのです。ネットの海に飛び込めば一生かけても読み切れない情報が存在してます。このような時代に必要なのが、情報の意味であったり何が重要なのかを見極める力。だとすれば、これから学ぶべきことはあらゆることに柔軟に対応できる思考法や生活技能ではないでしょうか。プログラミングを学んだところでAIがソフトを組むかもしれませんし、語学を学んでも通訳アプリが発明されるかもしれません。

2つ目が意味を問うこと。うーん。ちょっと難しい。人類が洗脳される物語は言ってしまえばきれいごとです。ハラリ氏は「苦しみ」に目を向けて現実を注意深く調べようと訴えています。例えば時の為政者が「彼らの犠牲が我々の永遠なる国家の純粋さを救うだろう」と戯言をいったとき、「犠牲」とは一体何なのかを現実的な表現に言い換えると「苦痛に悲鳴を上げる兵士」「残忍な仕打ちを受ける女性」「恐れで震えている子ども」です。急に生々しいですね。

3つ目が瞑想。これは自分が一体何者なのかを知っておこうというもの。…2つ目よりもっと難しい。繰り返しな部分がありますが、ハラリ氏は物事を客観的に観察することが大事だと主張しています。

まとめ

さて、最後に全体を通しての感想をまとめます。

『21Lessons』を読んでの満足度は、実はそんなに高くありません。というのも多くの部分は『サピエンス全史』や『ホモ・デウス』などハラリ氏の著作で述べられていることの繰り返しでもあるからです。それでも現代を取り巻く「虚構」とその影響は読み物として面白いです。いま目の前に広がっている社会の状況を客観的に眺めてみると「虚構」まみれだなと思う次第です。

本の目次

  • テクノロジー面の課題
    • 1.幻滅
    • 2.雇用
    • 3.自由
    • 4.平等
  • 政治面の課題
    • 5.コミュニティ
    • 6.文明
    • 7.ナショナリズム
    • 8.宗教
    • 9.移民
  • 絶望と希望
    • 10.テロ
    • 11.戦争
    • 12.謙虚さ
    • 13.神
    • 14.世俗主義
  • 真実
    • 15.無知
    • 16.正義
    • 17.ポストトゥルース
    • 18.SF
  • レジリエンス
    • 19.教育
    • 20.意味
    • 21.瞑想

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