2021年、リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットの『LIFE SHIFT 2』が発売されたので『LIFE SHIFT(ライフシフト)』を再度読み直しました。「2」のほうは年末年始に読もうかな…と思っております!
「人生100年時代」ってもはや一般化した表現ですね。たぶんリンダ・グラットン教授のこの『LIFE SHIFT』で使われたものなんじゃないでしょうか。今の時代、多くの人が、働けなくなるまで働くんだろうなと思って生きている気がします。FIREなんて言葉が流行ったり憧れたりするのは、この「ずっと」働くということへの拒否感なのかもなと思ったり。
いま生きている私たちは、これまでの人類のどの時代よりも長く生きることは間違いないです。『サピエンス全史』や『ホモ・デウス』でも述べられていたように、飢餓・疫病・戦争という、死の大きな要因を大部分解決することができました。グローバル化による経済の発展で飢餓が少なくなり、技術の進歩で治療できる疾患が増えたことなどが起因します。
その長寿化に加え、先進国では人口減少が始まり、引退した人を現役世代が支える財政基盤が揺らいでいます。
こうしたことから、これから生まれる子どもたちは昔の人よりも20年以上も長く働かなくてはならないのに、テクノロジーの進展よってどんどん仕事が入れ替わっていくので、ずっと同じ仕事をすることが現実的ではなくなってきています。最近、複数の仕事をする人が増えて行っていますが、そうしたことが当たり前にならざるを得ない環境がもう目の前にあるわけです。
同じ仕事ができないので、どんどん新しい知識も得なければならないし、会社もなくなる可能性もめちゃくちゃ高く、同じコミュニティだけでは生活基盤の揺らぎに耐えられるのか…
私ももう10年同じ会社にいます。ただ、同じ会社にいても、1年経てばまるで違う仕事をやっていて、毎回学習するということを繰り返しています。おかげさまで全てが中途半端な気もしていますが、意外と幅広い知識のおかげで何とかなっている気がします。この点は会社にいながら得しているので、会社に感謝。あと、ビジネススクールの経験から年代と職種の異なるネットワークが築けているのは、今考えるととてもいい投資だったなと思います。これはLIFE SHIFT的には「変身資産」にいい影響を与えてくれました。
確かに長く働かないといけないんだろうけど、新しいことにチャレンジし続けることは嫌ではないかな。
本の概要と要約
著者の課題
グローバル化とテクノロジーの進化は人々に100年生きる人生をもたらし、教育・仕事・引退の3ステージモデルを壊すが、多くの人は準備ができていない。
解決方法
人生はマルチステージ化する。環境の変化と長寿化に備える100年ライフ計画を考える。
内容
・これから長生きする
-2007年に生まれた子供は50%の確率で104歳まで生きる
-長生きは厄災か恩恵か
・オンディーヌの呪い
-妖精の夫婦で不貞を働いた夫に眠ると死ぬ呪いをかけた
-ずっと目を開けておかなければならなくなった
-これから100年ライフになる人々は働き続けなくてはならなくなる?
・人生の3ステージモデルは成り立たなくなっている
-3ステージ(教育・仕事・引退)
-祖父の世代は65歳で引退し残りの8年を貯蓄で生きればよかった
-100歳生きる世代は同じ前提条件なら20年長く働かなくてはならない
-公的年金、企業年金が受け取れない可能性もある
-同じ仕事を続けることは現実的ではない
-ほとんどの人はこれまでよりかなり長く働かなくてはならない
-仕事はテクノロジーに代替され、新たな仕事のスキルを覚えなければならない
・人生はマルチステージ化する
-無形資産に投資する
1.生産性資産
-評判
-職業上の人脈
-知識、スキル
2.活力資産
-友人関係
-健康
-人生のバランス
3.変身資産
-多様な人的ネットワーク
-自分についての知識
・新たなステージ
1.エクスプローラー
-自分の生き方について考える活動と発見の時間を過ごす
2.インディペンデント・プロデューサー
-プロトタイピングで試行錯誤
-自分の専門性の評判を高める
3.ポートフォリオワーカー
-様々な活動に同時並行で取り組む
・余暇時間をどう使うか
-長寿化で使える時間は増える
-いままではレクリエーション(娯楽)に消費
-これからはリ・クリエーション(再創造)に投資
LIFE SHIFT(ライフシフト)とは
『LIFE SHIFT(ライフシフト)』の英語原題は”The 100-Year Life: Living and Working in an Age of Longevity”。
邦題の『LIFE SHIFT』 という本のタイトルから、人生がシフトするという内容の話なんだというのは分かるので、キャッチ的にいい名称ですね。原書を直訳しても「100年の人生:長寿の時代の生き方と働き方」ということなので、邦題の副題にある「100年時代の人生戦略」でしっかり補完されていますね。
『LIFE SHIFT』は、これから生まれてくる子どもたちのほとんどが寿命100年の時代に突入するという現実を前に、どのように人生設計をしていくかを問う本です。100年生きるということは、65歳で引退して80歳までに寿命を全うするという思考では、残り20年も生きなければならないということ。そんな誰もが100年生きうる時代をどう生き抜くかを考えるための示唆を与えてくれる一冊です。
著者:リンダ・グラットンとは
リンダ・グラットン(Lynda Gratton)は、ロンドン・ビジネススクール教授。人材論、組織論の世界的権威。リバプール大学にて心理学の博士号を取得。ブリティッシュ・エアウェイズのチーフ・サイコロジスト、PAコンサルティンググループのダイレクターなどを経て現職。組織のイノベーションを促進する「Hot Spots Movement」の創始者であり、85を超える企業と500人のエグゼクティブが参加する「働き方の未来コンソーシアム」を率いる。
2013年ビジネス書大賞を受賞したベストセラー『ワーク・シフト』や『Hot Spots』『Glow』など一連の著作は20カ国語以上に翻訳されている。2016年10月に出版された『ライフ・シフト』では、寿命100歳時代の生き方を示し、大きな話題となっている。
●インタビュー記事
リンダ・グラットン氏 —寿命100年時代を生き抜く(Adecco Group)
リンダ・グラットンさんに聞く 「人生100年時代」の生き方とは?(クローズアップ原題+)
本の解説と感想
人生は100年時代になる
2007年、アメリカやカナダ、イタリア、フランスで生まれた子供の50%は、少なくとも104歳まで生きる見通しだ
『LIFE SHIFT(ライフシフト)』 p40
日本の子供に至っては107歳まで生きる計算なのだそうです。世界の平均寿命が延びている要因はいくつかあって、まず子どもの死亡率が低下したという結果が大きいようです。昔は子どもを産んでも、成人まで育つことなく亡くなってしまうケースも多くありました。病気への対応が進んだことと、十分に栄養が取れるような環境になってきていることが寄与しています。
グローバル化やテクノロジーの進化については、これまで読んだ本のなかでも多く言及されていますが、結核や天然痘、ジフテリアといった病気の解消、多くの人が健康的な生活を送れるようになっていること、さらに先端医療技術によってがんた心臓血管系の疾患への対処が可能にしました。おかげで、大人になっても健康的に生きれる時間が長くなりました。寿命について言及した『LIFE SPAN』では、どんなに長生きしても限界があるとはいえ、平均寿命は「控えめに見積もって113歳」と述べています。
ということで、かなりの可能性で私たちは100年生きることになるため、そのための人生戦略が必要でちゃんと備えましょうというのが本書の主題です。
ちなみに長寿化で多くの人が恐れるのが認知症ですが、この分野についても精力的な投資がなされていて、googleの創業者ラリー・ペイジが大規模に乗り出すなどしており、人々が健康的に生きることができるイノベーションはまだまだ進んでいくのでしょう。
オンディーヌの呪い
『LIFE SHIFT(ライフシフト)』で、人々の長寿化に対する生き方の比喩として引き合いに出されるのが「オンディーヌの呪い」です。
寓話らしいのですが、その内容はというとこんな感じ。
・妖精オンディーヌとパレモンは夫婦
・夫のパレモンが不貞を働き、オンディーヌは呪いをかける
・呪いの内容は「起きている間は生きられるが、眠ればその瞬間に死ぬ」というもの
・パレモンは死を恐れ、それ以降は目を閉じることを恐れて休みなしに動き続けることになった
この例えで何が言いたいかというと、人生100年時代になると、老後の資金が枯渇するので働き続けなければならない…ということ。
まさにその通りで、親・子・孫の世代では、お金を人生のベースに考えると、とてもじゃないけど持たない。1940年くらいに生まれた人であれば、人生をだいたい75年とかでぼやっと考えることができたかもしれませんが、いま私たちのまわりをみると、60歳になっても全然働き盛りだという人はたくさんいませんか?
昔のまま、教育→仕事(20歳~65歳)→引退(65歳~75歳)という3ステージモデルだと、100年で人生を終えるにはプラス25年分の貯蓄が必要になります。つまりずっと働き続けなければならないという…
この時代を生き抜くためには、途中で仕事を中断したり、変身・転身したり様々なキャリアを経験するようなマルチステージの人生を実践すればいいというのが、リンダ・グラットン教授の主張になります。ただ、私たちがスムーズにこのマルチステージを生きるのは、企業や社会、国家の制度も大きく変わる必要があるわけです。副業禁止なんで会社、山ほどありますからね。長寿化になれば、時間も増える。この膨大な時間をどのように使うのかの組み立てが、人生戦略を立てるうえで重要になってきます。
人生の3ステージ(教育・仕事・引退)
長く生きる時代には、ほとんどの人はこれまでよりもかなり長い年数働かなくてはならなくなる
『LIFE SHIFT(ライフシフト)』 p82
本書は、人生の3ステージ(教育・仕事・引退)がもう成り立たないということをこれでもかと主張しています。私たちの親世代には有効だった人生設計も大いに揺らぎ、私たちは親とは違う選択をすることになるはず。日本ももう終身雇用じゃないですしね。
具体的な例として、架空の3人の人生を例に比較しています。なので、『LIFE SHIFT』を読む際には、この3人をイメージするととても分かりやすくなります(特にジャックとジェーン)。前提条件をいくつかそろえたうえで、仕事の時代にどれだけ貯蓄していればいいのかを計算しています。(例えば、老後の生活資金は最終所得の50%、65歳で引退など)
ジャック(1945年生まれ、寿命70年)
就労所得、公的年金、企業年金という生活資金の源は3種類しっかり存在しています。
公的年金は最終所得の最大10%相当を受給でき、長きにわたり務めた会社からは最終所得の20%程度の受給します。65歳の引退までに、毎年所得の4.3%を貯蓄すれば良いことになります。
ジミー(1971生まれ、寿命85年)
ジャックとの大きな違いは企業年金を受給できない可能性がることです。公的年金に関しては、問題が見えつつもすぐに大改革は行われず、最終所得の10%相当が支給されます。企業年金がもらえないのにジャックよりも15年長く生きることになるため、ジミーは所得の17.2%を貯蓄しなくてはなりません。
ジェーン(1998年生まれ、寿命100年)
ジミーの世代より、平均寿命が15年長くなり、もはや65歳で引退して第3ステージの人生を送るという生き方が、お金の面で成り立たないことは明らかです。公的年金は受け取れても、毎年所得の25%を貯蓄しなくてはならないし、もし受け取れないとすれば必要な貯蓄率は31%に跳ね上がる計算になります。もし貯蓄率を10%前後にする場合、ジェーンはジャックよりも30年長く生きられるのと引き換えに、20年も長く働かなくてはならなくなります。
このように、これから生まれてくる子どもたちは、長く働かなくてはならなくなります。はたして長寿は恩恵なのか厄災なのか。過去の3ステージの生き方が、耐用年数は切れていることが明らかです。
長寿化に加え、私たちを襲うのは産業の移り変わりです。1900年代は同じ仕事に就いたままで引退することもできたでしょうが、これからは『2030年 すべてが「加速」する世界に備えよ』で書かれているように、様々な産業が加速して成長し、入れ替わりのスピードも加速するでしょう。
ジャックの場合は、40年の勤労期間を通して20代前半で獲得したスキルが60代まで時代遅れにはならなかったのに対し、80代まで働くジェーンにこの方法が通用するとは考えにくい。ジェーンは、産業の構造が変化していくなかで、マルチステージを受け入れるために新しいスキルなどを獲得しなくてはならず、そのために自分に投資をしなくてはなりません。
無形資産へ投資する
無形の資産は、撤回可能性も代替可能性もない。外国に移り住むとき、それまでの友達を売って、移住先で新しい友だちを買うことは不可能だ
『LIFE SHIFT(ライフシフト)』 p124
100年ライフには、友人関係や知識、健康など、有形ではない無形資産が大切になります。有形資産への投資はやり直しがきき、売却することもできますし、なんなら代わりのものもすぐに見つけられるかもしれません。ですが、無形の資産はそうはいきません。
ハーバード大学の研究で、ハーバード大学の学部生だった268人の男性を75年間追跡した研究があったそうです。これによれば、人生に満足している人に共通することは生涯を通して深く強力な人間関係を築いていることだったそうです。というくらい幸福度には無形資産が効いてくるということですね。
本書では、本人の選択によって影響を及ぼすことができる三つの無形資産を紹介しています。
生産性資産
マニュアル化できない暗黙知の重要性の高まりがある。暗黙知は、身につけるのは簡単ではないが、きわめて大きな経済的価値をもつ。それは知恵と洞察と直感の土台であり、実践と繰り返しと観察を通じてはじめて獲得できる
『LIFE SHIFT(ライフシフト)』 p135
生産性資産とは、スキル、知識です。学習と教育は、大きな金銭的恩恵をもたらすことが統計的に明らかになっています。大卒者と非大卒者の差は大きいものです。
ジャックやジミーの時代であれば、20歳の頃に技術的な知識を得ることで長期にその知識を活かすことができましたが、ジェーンはそうもいきません。長い就労時間のなかで、身につけたスキルは次々に時代遅れになり、新しいスキルを獲得し続けなければなりません。
これをクリアしていくには「時間」の使い方を考える必要があります。人生を100年とするのであれば、87万3000時間を持っているということになります。人間が何らかの専門技能を習得するには1万時間が必要だとよく言われるそうなのですが、そう考えると生涯に複数の専門技能を学ぶことは不可能ではなさそうですね。
一方、現代はインターネット技術とサービスが発展し、オンラインでさまざまな情報を得られるようになりました。単純な知識なら誰でも簡単に獲得できるライバルと差がつかない時代でもあります。こうなると、マニュアルにできない暗黙知、いわゆるノウハウの部分での差別化が求められるのかもしれません。
活力資産
より良い人生を送るための資産が活力資産。健康、友人、愛などです。
長寿化時代にキーになるのは「健康」です。健康に過ごせる期間が長ければ、マルチステージにシフトするためのお金と経験が蓄積されます。もし50歳の時に身体が動けなくなったら、残りの50年をどのように生きることができるのでしょうか。もちろん社会保障はなされるでしょうが…
適切な食生活と運動を習慣づけは大事ですし、仕事ばかりではなく、友人、他の人たちとの結びつきによって生きる活力を得ることができます。
変身資産
ジェーンが長く働くためには、同じ会社や職種であり続けることは難しいので、いくつかのステージを経験し、勤労期間を細切れ化することになります。この移行をスムーズにするのが変身資産です。
仕事が変わると、それまでの仕事上の人間関係は断ち切られ、活かすことができなくなります。そのため、多様な人的ネットワークがあると、新しいステージに移行したときに成功できる可能性が高くなるでしょう。多様なネットワークは、進んで構築していくほかありません。自分の生活範囲のなかでのネットワーク獲得には限界があり、新しいコミュニティに飛び込むことが必要です。
多様なネットワークのなかだからこそ、自分の立ち位置、自分が何に興味を持っているのか、どういう人間なのかなども分かってくるかもしれません。それを見つめることも、変身には重要で、何ができるかできないかという判断にも適用できるのです。
人生はマルチステージ化する
新しいステージのとりわけ魅力的な点の一つは、特定の年齢層と結びついていないことだ
『LIFE SHIFT(ライフシフト)』p223
3ステージの人生が崩壊しようとしているなか、その欠陥に備え、新しい道を開くステージとして、3つの新しいステージが提示されています。これらは、いつ始めてもいいし、必ずしも同じ年代の仲間と出会うわけではありません。だからこそ、この新しいステージは無形資産を獲得するためにも重要な役割をはたすのです。
エクスプローラー
探検と旅をし、新しい経験を追求し3ステージの人生から脱出しようという行動を、もっと極端に推し進める人です。安い言葉で言えば「自分探し」でしょうか。
エクスプローラーは、周囲の世界を探査して、そこに何がありその世界がどのように動いているか、そのなかで自分が何をすることが好きで、何が得意かを発見していきます。いままでの世界から離れ、自分の知らない人、自分を知らない人のなかに入り、自分の生き方について考える時間を過ごします。これは人間形成の時期になります。
ジェーンの人生シナリオの場合、大学を卒業してすぐには就業せず、南米を旅するなかで安定しない雇用形態のなかでスペイン語を学習し、興味をもったフィエスタ(祭り)の屋台で滞在費用を賄います。
インディペンデントプロデューサー
職を探す人ではなく、自分の職を生み出すのが、インディペンデント・プロデューサーです。永続的な企業を作ろうとしているのではなく、個人でプロトタイピング的に試行錯誤を繰り返していきます。プロトタイピングを行うなかで、身につけなければならない専門的な知識を学習しながら、生産する活動も並行していきます。物事を生み出しながら、さまざまな障害を克服できる人物だ、という評判を確立していこうというものです。
ジェーンは、エクスプローラー時代の経験からフィエスタ事業を立ち上げます。その過程で資金調達の方法やマーケティングを学習し、コミュニティ形成の成功で評判を獲得しました。
エクスプローラーとインディペンデントプロデューサーは、無形の資産のなかでも特に変身資産への投資が中心になります。金銭面のやりくりが大変ですが、シェアリングエコノミーなどをうまく活用し、即金で大きなお金を使わないような選択をすることで、乗り切ることができます。
ポートフォリオワーカー
様々な活動に同時並行で取り組む人です。同時並行なので、生産活動に携わる期間のいつでも実践ができます。このステージは、ある程度所得を獲得し、人生の土台を築いた人たちが意欲を感じるステージです。
複数の仕事に関わり、地域コミュニティへの活動や親戚の力になるための活動などで負荷のバランスを取ります。このポートフォリオワーカーとして成功する人は、フルタイムの職についているうちに小さなプロジェクトを通じて実験を始めるのだそうです。副業的にちいさいことをやる、とか。またそうした小さいプロジェクトからネットワークが築けていたら、様々な機会を得られるのかもしれません。
ポートフォリオワーカーの問題点は、リソースを集中投下できないので規模の経済の恩恵に預かれないこと。なので、ある程度はそれぞれが関連のあるスキルと能力が要求される活動を選ぶことでコストを減らすことができます。
リ・クリエーション
グローバル化と技術の進展により、人々は経済的に豊かになり、可処分時間は増えています。特に昨今ではリモートワークの普及から通勤時間が大幅になくなるなど、使える時間は増えているはず。
なのに、毎週末「何もしてない」なんて思うことは多いはず。それもそのはず、余暇時間に何をするかという選択で溢れ、私たちはレクリエーション(娯楽)の消費に忙しくなっています。ツタヤにDVDをレンタルに行く時間も減っているのに、結局その移動時間はNetflixでドラマを1話余計に見る時間に使われています。あれもしたい、これもしたいと、余暇時間は次々に奪われていきます。
人生100年時代は、レクリエーション(娯楽)の時間をリ・クリエーション(再創造)の時間に投資をすることを意識していくことが求められます。一時期に集中して学習する時代ではなく、生涯を通して投資を行い、新しい知識とスキルを獲得していくことで、マルチステージに対応していくのです。
まとめ
『LIFE SHIFT』で提唱する以前から、日本では高齢化社会に向かう状況から年金システムのほころびが指摘されていたし、若い世代は将来に対してかなり暗い想像をしているように思います。その分、ようやく自己投資というマインドも増えてきていて、自分が20代だったことには考えていなかったような視野の広さをもった20代もみかけます。本当に意識が高い。これは危機感に加え、オンラインで学習機会やコミュニティを作る機会が増えたことが要因なのかなと思います。
ところで、引退世代が精力的に活動するということは、若者の労働を奪うことにもなるんじゃないか?という気もしています。引退世代は安くても働きたいという世代もたくさんいるので、そうなると労働賃金を上げなくても働いてくれちゃう。
そうなると、本書でいうように、社会制度的な課題も解決していかないといけないんだなと感じます。それなのに選挙では高齢者の意見がどうしても色濃く反映されてしまうんですよね。変革というのは難しいですね…
まあ、なるようになるかと楽観してます笑
本の目次
- 序章 100年ライフ
- オンディーヌの呪い
- 100年ライフで何が変わるか?
- あなたの100年ライフをつくる本
- 第1章 長い生涯ー長寿という贈り物
- 平均寿命は今後も伸びる
- 健康な期間が伸びる
- 第2章 過去の資金計画ー教育・仕事・引退モデルの崩壊
- ジャック ―3ステージの人生の世代
- ジミー ―3ステージの人生が軋む
- ジェーン ―3ステージの人生が壊れる
- 3ステージ型仕事人生に別れを
- 第3章 雇用の未来ー機械化・AI後の働き方
- 新しい産業とエコシステム
- 雇用なき未来がやってくる?
- 仕事の未来はどうなるのか?
- ジェーンへの助言
- 第4章 見えない「資産」ーお金に換算できないもの
- 人生の「資産」を管理する
- 1 生産性資産
- スキルと知識
- 仲間
- 評判
- 2 活力資産
- 健康―脳は鍛えられる
- バランスの取れた生活
- 自己再生の友人関係
- ジャックの無形の資産
- 3ステージの人生で失われるバランス
- 3 変身資産
- 自分についての知識
- 多様性に富んだネットワーク
- 新しい経験に対して開かれた姿勢
- 第5章 新しいシナリオー可能性を広げる
- ジミーが送ってきた人生
- 3.0シナリオ
- 3.5シナリオ
- 4.0シナリオ
- ジェーンの人生のシナリオ
- ジェーンの4.0シナリオ
- 5.0シナリオ
- ジェーンとほかの世代の決定的な違い
- 第6章 新しいステージー選択肢の多様化
- 若々しさ
- エクスプローラー
- インディペンデント・プロデューサー
- ポートフォリオ・ワーカー
- 第7章 新しいお金の考え方ー必要な資金をどう得るか
- 数字のつじつまを合わせる
- お金に関する自己効力感
- お金に関する自己主体感
- 第8章 新しい時間の使い方ー自分のリ・クリエーションへ
- 時間の使い方は社会が決める
- 100年ライフの時間配分
- 新しい余暇の過ごし方
- 第9章 未来の人間関係ー私生活はこう変わる
- 家庭
- 仕事と家庭
- 多世代が一緒に暮らす時代へ
- 終章変革への課題
- 自己意識
- 教育機関の課題
- 企業の課題
- 政府の課題