「不老」とか「不死」という言葉は、昔の為政者が最後に求めるものであったり、いろいろな物語で語られることが多いなというイメージがあります。
以前に読んだ、イエール大学のシェリー・ケーガン教授の講義をまとめた『「死」とは何か』という本では、人がなぜ不死を求めるのかというと、「死ぬまでにできないことがある」あるいは「死んだあとに、今よりもっといいことがあるかもしれない」という、剥奪されることを恐れていると述べています。同時にもし、「不死」になったとして1000年後に存在するには果たして今と同じ記憶や価値観を持った自分なのか、という疑問も投げかけています。
『LIFESPAN(ライフスパン):老いなき世界』では、不死ではなく、不老が語られています。
2020年の発売以来、本屋でも平積みされていることも多く気になってまして。冒頭の「はじめに」だけで40ページ使い、全体でも500ページ。医学用語満載で、結構びびりましたが、思いのほか大混乱せずに読むことができました。
分担して一冊の本を読む、アクティブ・ブック・ダイアローグ®でみんなで分担したからこそ読み切ることができたと思いますが…
興味深いことはたくさんあります。
まず、人は老化するようには進化していないということ。長寿遺伝子はあるものの、老化遺伝子というものは存在しないそうです。老化の原因というのが人間が長生きするため活動によって引き起こされる副作用なものとして説明されています。損傷したDNAを修復しに行くために持ち場を離れた長寿遺伝子が本来の活動ができなくなることによって、老化するというのです。
また、人間の平均寿命は延びているものの、最高寿命は延びていないということも面白い。どうやら人間はどんなに長くても120歳までしか生きられない。でもどんなに長く生きていても、後半の人生が幸せなのかというと、きっとそうは見えていない。だから多くの人がいつまでも健康でいたいと思う。
その健康寿命を延ばせるというのが、『LIFESPAN』で書かれている、「老化は病気だから直せるもの」というもの。ここで語られる「老いない」とは「死なない」ではないんです。最大寿命を長くするというのではなく、健康に過ごせる時間を長くできるという話です。
この本以外でも、最近は老化=治せるみたいなことをたまに聞いたりすることが増えました。
2021年1月にも、東京大学の研究グループがサイエンス誌に「『老化細胞』死滅させ体の機能改善(東京大学医科学研究所)」みたいな発表をしていたのがニュースになりましたね。
老化=病気だと考えると、どんどん年取っていくけど、むしろ活発にいられる時間が長くなりそうで楽しみになります。
サマライズ(本の概要と要約)
著者の課題
92歳まで生きた著者の祖母は、晩年には祖母らしさを失っていた。長く生きたとしても、良き人生だと言えるのだろうか。
解決方法
老化を病気と捉えて研究。遺伝子はもともと老いるようにはできていない。老化の情報理論に対処し、老化を防ぎ、治療し、健康寿命を長くする。
内容
・老化とは何か?
-老化の原因は原始に身についたサバイバル回路
-サバイバル回路は生きるためのメカニズムだが老化の要因になる
-老化はエピゲノム情報の喪失
-エピゲノムとは遺伝子の働きのオンオフをつかさどるもの
-アナログ情報であるため劣化する
-人間はもともとは老化するようにはできていない
-他の病気の唯一のリスク要因である
-老化すると病気になる
-がん治療してもまた別の病になる、もぐらたたき状態
-老化を防げば、上流から病気の要因を防げる
・老化の情報理論
-DNAが損傷したら、長寿遺伝子であるサーチュインが修復しに行く
-エピゲノムの働きはサーチュインが調整している
-修復にいくと、もといた場所が不安定になる
-エピゲノムも混乱する
-細胞のアイデンティティが喪失し老化する
・どうやって老化を防ぐのか?
-サーチュインを働かせる
-食事量を減らす
-アミノ酸を制限する、肉は危険
-運動する
-寒さに身をさらす
-サウナ
-薬や物質
-すでに人以外では複数効果あり
-赤ワインに含有のレスベラトール
-※1日750杯以上飲む必要あり
-未来になれば
-老化細胞の除去
-ワクチン接種
-細胞のリプログラミング
・長寿になったら地球が自滅するのでは?
-人口増加ペースは確実にダウンしてる
-健康寿命が下がれば医療費は下がる
-不老研究にもっと予算を投下すべき
著者:デビッド・A・シンクレア
1969年生まれ、オーストラリア出身。シドニーのニューサウスウェールズ大学で最優等学士を取得。95年に分子遺伝学を専攻し学位を取得。トンプソン最優秀学位論文賞を受賞。MITでギャランテ博士の下で勤務した後、現職に。
現在は、老化の原因と若返りの方法を研究。ハーバード大学医学大学院で、遺伝学の教授として終身在職権を得ており、同大学院のブラヴァトニク研究所に所属している。ほかにも、ハーバード大学ポール・F・グレン老化生物学研究センターの共同所長、ニューサウスウェールズ大学の兼任教授および老化研究室責任者、ならびにシドニー大学名誉教授を務める。
『タイム』誌による「世界で最も影響力のある100人」の1人に選出され(2014年)、「医療におけるトップ50人」の1人にも選出されている(2018年)。
●インタビュー、投稿記事
ハーバード大が世紀の大発見! 30歳若返りのクスリ(プレジデント)
ハーバード大教授の「老いを治療できる」勝算(東洋経済ONLINE)
本の解説と感想
老化の唯一の原因は「サバイバル回路」
サバイバル回路というのは著者の造語ですが、とても分かりやすいです。
サバイバル回路は、DNA の損傷を感知し細胞の増殖を遅らせDNAの損傷が治るまではその修復にエネルギーを振り向ける仕組みです。
サバイバル回路の重要な要素が、長寿遺伝子サーチュインです。このサーチュインは、いつもはゲノムの働きのオンオフするスイッチの役割を果たしている「エピゲノム」の活動に影響を与えています。
※エピゲノムについて他所からの引用です
こんな風にイメージしてください。ゲノムをA,C,G,Tの4種類の音符が並んだ音の羅列だとすると、音に強弱をつけたりテンポを変えたりして曲を奏でるしくみが、エピジェネティクスです。
日本医療研究開発機構
で、DNAは絶えず攻撃にされていて(細胞分裂も日焼けも)、それを修復しないと長生きができません。このサバイバル回路の中でサーチュインはいわば「災害対応部隊の指揮官」の役割を担っています。
ところが、サーチュインはエピゲノムの活動に影響を与えているはずが、持ち場を離れてしまうことによって、今度はエピゲノムが混乱してしまいます。DNAの働きのスイッチのオンオフが正常にできなくなってしまいます。サーチュインがいないことによって発生する、エピゲノムの混乱の蓄積が老化につながっていくというのです。
そもそも人間は老いるようにできていないそうです。これまでの遺伝子研究において、長寿遺伝子は見つかっていますが、老化という働きを単一でもらたす遺伝子は見つかっていません。著者は今後も見つからないと予言しています。
本書のなかで、老化は「老化の情報論理」という次のような大枠のプロセスでまとめられています。
①若さ
②DNAの損傷
③ゲノムの不安定化
④DNAの巻き付きと遺伝子調節(エピゲノムの混乱)
⑤細胞のアイデンティティの喪失
⑥細胞の老化病気
ちなみに、老化研究においては「酵母」がかなり利用されるそうです。人の遺伝子の70%は出芽酵母と同じで、その共通項は「食べる」か「生殖するか」で、酵母も年を取ると動きが鈍くなり丸く太っていき、生殖機能も衰える。人間がこのプロセスを経るのに何十年もかかるのに対し酵母細胞は一週間で終えるということで、本書の中でも「人間でこうなのだから酵母でも…」などその逆も用いられ、研究が重ねられている様子が分かります。
老化は万人の病気
私たちを断崖絶壁まで追い詰めるのは老化だ
『LIFESPAN(ライフスパン):老いなき世界』p140
万人を蝕んでいるが誰も気づいていない病気。それが「老化」です。
フランシスベーコンらによって設立された、世界最古の国立科学団体「王立協会」は、2010年の会議で、「老化は疾患である」という発表をしました。しかし、WHOがまとめている資料にも老化が死亡原因として焦点があてられることはないし、人の直接の死亡要因を医師が「老齢」とあげることは絶対にない。
一方で、人間の寿命に関する法則によれば、以下の通り。
死というものは、おおむね並び立つ2つの原因によってもたらされていると考えられる。1つは偶然であり、死や衰えへと向かう傾向が前もって見られなかった場合にあたる。もう1つは衰えであり、言葉を換えれば破壊に耐えうる能力がしだいに失われることと言える
『LIFESPAN(ライフスパン):老いなき世界』p141
現在、私たちが戦っている病気、例えば「がん」「心疾患」「アルツハイマー」などがあります。これらは目の前の大変重大な病気で、多くの予算が投入されていますが、これらの病が発症する要因、それこそが「老化」だということに目が向けられていない。さまざまな病気の唯一のリスク要因は老化であるにも関わらず。
現代の医療は、まるでモグラ叩きのようになっていて、病気になった人を治療して1つの病気を治したとしても、また別の病気を発症して、結果的に死ぬ確率が低くなるわけではないのです。
老化を病気として捉え、がんや心疾患といった下流の病気ではなく、それらの要因となる上流をダムでせき止めることこそが、長く健康でいられる方法なのです。
長寿遺伝子を活発化させる方法
①食事の回数や量を減らす
著者が「間違いなく確実」と豪語するのがこれ。長く健康を保ち、寿命を最大限に伸ばすために、今すぐにでもできる方法です。昔、コルロナという貴族が1日340グラムで生活した人は100歳近くまで生きたそうです。カロリー制限することでサーチュインのプログラムが起動しエピゲノムの変化を最小限にとどめて老化を遅らせる作用があると。
②アミノ酸を制限する
正確に言うとmTORを活性化させるアミノ酸の摂取量を控えること。メチオニン、アルギニン、ロイシン、イソロイシン、バリンがそれだそうです。とくに注目されているのがメチオニンらしく、牛肉や子羊肉、鶏肉、豚肉、卵に豊富に含まれています。ちなみにロイシンが大量に入っているプロテインドリンクのせいで長寿のメリットが得られなくなる可能性もあるのだとか。
③運動する
運動する人ほどテロメアが長いそうです。テロメアは染色体の末端を保護するもので、老化の典型的特徴として、テロメアが短くなること、ということが確認されています。研究によれば運動するとNAD(サーチュインの活動に必要な化学物質)濃度が上昇しサバイバルネットワークが作動するそうです。週5日30分のジョギングを行う人のテロメアは10歳若い人と同じだそうです。
④寒さに身をさらす
寒さに長時間あてたマウスに、SIRT3(サーチュインの1種)が通常よりもはるかに多いことが確認されているそうです。寒さによって長寿遺伝子サーチュインが始動し、背中や肩を保護する褐色脂肪細胞の活性化させエネルギー消費を促し、必要なストレスと健康的に脂肪を燃焼させてくれます。
⑤サウナ
サウナを利用する人はそうでない人に比べて健康がすぐれているという調査があるそうです。しかし、実は病人はそもそもサウナに行かなかったりなどの指摘があります。サウナに関してはまだ深い研究がないらしいのですが、NAD濃度が上昇するのでサーチュインが活発になるのではないかという考え方がある。
老化を治す薬
老化を治療する薬があることは、実は人以外では実証されているそうです。挙げられていたものが「ラパマイシン(抗真菌薬・免疫抑制薬)」「メトホルミン(糖尿病治療薬)」。
ラパマイシンはNADの生産促進作用があり、寿命が、ショウジョウバエで5%、マウスで9~14%延長されたという。これは人間換算で約10年。メトホルミンでもマウスは6%寿命が延びたとのこと。
Sir2(サーチュイン)酵素を活性化させる物質も分かってきていて、話題になった一つはレスベラトール。赤ワインに含まれているそうです。酵母細胞というのは普通25回分裂したら死ぬそうですが、レスベラトールを与えた実験では34回も分裂。人間でいえばなんと50年も寿命が増加する計算なのだとか。マウスの実験では20%伸びたそうですが、人間がマウスと同じ量を摂るためには1日に750杯も飲まなければならないそうです。
未来への選択肢
①老化細胞の除去
老化の典型的な特徴が老化細胞(増殖をやめた細胞)の蓄積だとすれば、それを除去すればいい。サバイバル回路が過剰に働きすぎると、もとの細胞がアイデンティティを失うので増殖をやめます。これが老化細胞。老化細胞はゾンビのようにほかの細胞にも影響をあたえるそうです。老化細胞を除去する薬として、セノリティクスと呼ばれる効果細胞除去薬が開発され、臨床試験が始まっている。
②レトロトランスポゾンを封じ込める
ゲノム全域に移動することができる可動性のDNA配列がレトロトランスポゾン。ジャンクDNAと呼ばれることもあり、このお荷物遺伝子が複製されると老化の要因になる。
③免疫系を活用するワクチンを使う
スタンフォード大学が、マウスの乳がん、肺がん、皮膚がんの発症を抑える予防接種を開発したと発表した。がん細胞を死滅させるのに免疫系が使えるなら老化細胞にもできるだろうという考え方。一部の科学者が取り組んでいる。
④細胞のリプログラミング
細胞のプログラムを一度初期化して、最初の状態に戻す。DNAはデジタル式で情報を保存しているが、エピゲノムはアナログ式なため雑音が入りやすい。例えば、DVDはデジタル情報だけどディスクに傷が増えると情報が正確に読み取れなくなる。これが老化で、復元するためには研磨剤で磨くことで表面の傷をとることができる。クローン羊のドリーは、置いた状態でも若いDNAを保持していた。
健康長寿社会に向けて
健康寿命が延びる社会とはどんな社会なのか。
平均寿命は、控えめに見積もっても113歳まで伸びると予測しています。そうなってくると、人口が増えてしまうため「人類の自滅につながるのでは?という当然の疑問がわいてきます。人口が爆発すると大量消費が必要となり、また大量廃棄という問題も浮上。また、現時点でも、年金や医療費、福祉など膨れ上がる社会保障費の問題も現れてきています。またいまだかつてないほど貧困の格差は広がっています。
しかし、著者はこのように健康長寿社会を説明します。
・地球で生きていける人口に限界はない
地球の人口が何人になったら「いすぎ」な状態になるのかという問題について、80億人が限界という予測が多いようです。この数字は私たちがいままさに置かれている状況です(googleで「地球 人口」で検索してみてください!)。ですが、何万年も前だったら何億と答えたでしょうか。人類は創意工夫によって人口を増やしてきました。この80億人という数字には、科学技術の発展などの変数は含まれていないのです。
・人口増加のペースは落ちてきている
世界の人口は確実に増えていますが、増加率は減少傾向にあります。1970年ころまでは年間2%だったものが、最近では1%にまで落ち込んでいるとのこと。国連の人口統計学者は2100年に110億人に到達したら横ばいになり減少に転じるという予測を出しています。
・高齢者は活躍できる
「職務を遂行する能力は、あらゆる面において年齢を重ねるほど向上する(p399,ペンシルベニア大学 ピーター・カペリ教授)」と、高齢者にある固定観念について調査した結果、結論として出しました。わたしたちよりも長く生きている人たちが、月にロケットを送り、ジェット機やパソコンを発明したことを忘れてはいけない。いつまでも働き続けることができれば、例えば数兆円にのぼる老後のためのタンス預金は減り、経済の在り方は根本から変わる。
・医療費は浮く
過去数十年に医療費は大幅に上昇した。しかし健康寿命が延びれば今よりも医療費を使わなくなる。
・浮いた医療費の予算を科学研究や教育に回す
医療費浮いた予算の一部を科学研究費に回せば、健康寿命との戦いのほか、地球温暖化、感染症の増加、クリーンエネルギーへの以降、食料の安定確保など、様々な難題に取り組むことができる。
まとめ
なんとなく老後に漠然とした「嫌な印象」があったのは、健康ではない、つまり老後には今の元気な自分がいないのではないかという恐れからだなと思いました。もし、健康寿命が延び、長い人生をよりクリアに生きることができたとしたらそれこそ、充実した「良き人生」と言えそうです。
科学技術の発展は研究者の皆さんに任せる感じになってしまうのですが、とりあえず食事の回数と量を気にして…いけるかな。肉は食べたい。
本の目次
- はじめにーーいつまでも若々しくありたいという願い
- 「いい人生」を教えてくれた祖母の晩年
- 死を迎えるということ
- 時が過ぎていくことを気に病まなくていい人生
- 老化の根源を追い求めて
- 私たちはすでに長く生きすぎているのか
- 健康なまま120歳まで生きられる時代へ
- 第1部 私たちは何を知っているのか(過去)
- 第1章 老化の唯一の原因ーー原初のサバイバル回路
- 生命の誕生
- 生殖か、修復かーー厳しい環境を生き残るための仕組み
- 老化の原因に注目すべき理由
- なぜ生物には寿命があるのか
- 老化を説明する統合理論の確立に向けた努力
- 遺伝子変異が老化の原因ではない証拠
- 老化の唯一の原因は存在しないという玉虫色の見解
- 私の考える「老化の情報理論」ーー老化とはエピゲノム情報の喪失である
- 劣化したアナログ情報は回復できる
- 明らかになっている「長寿遺伝子」の存在とその役割
- 生殖とDNA修復を調節しているサーチュイン
- サーチュイン以外の長寿関連遺伝子ーーTOR、AMPK
- 適度なストレスが長寿遺伝子を働かせる
- 第2章 弾き方を忘れたピアニスト
- なぜ「老化遺伝子」は存在しないのか
- 酵母研究から始まった「老化の情報理論」への道のり
- 酵母が老化する謎を解けなければ、人間の老化の秘密は暴けない
- 遺伝子操作によって酵母を老化させる実験の成功
- エピゲノムの変化が老化の原因だ!
- 遺伝子のスイッチを調整するエピゲノムのメカニズム
- ピアノ(ゲノム)を弾くピアニスト(エピゲノム)のミスタッチ
- 酵母を使った「老化の情報理論」の検証
- ドリームチームによる数々の発見
- サバイバル回路におけるサーチュインの役割
- サーチュインが酷使されると何が起きるのか
- サバイバル回路に負荷をかけることでマウスを老化させる実験
- 何が老化時計を早めているのか
- 老化を寄せつけない、あるいは信じがたいほど長寿な生き物たち
- あらゆる生物がほぼ同じ長寿遺伝子を持つのに、老化のペースが異なるのはなぜか
- 細胞の役割を決める「エピジェネティック地形」
- アナログ情報であるエピゲノムは不安定
- エピゲノムを安定させれば若返りも不可能ではないーー走るのをやめない高齢のマウス
- 第3章 万人を蝕む見えざる病気
- 「老化は疾患」であるという王立協会の会合の主張
- 老化を死因とは認めない社会
- 加齢と「人間の死亡率の法則」
- 老化ほど危険な病気はないーー無視されている老化のリスク
- 老化は身体機能を衰えさせ、生活の質を落とす
- 高齢になればなるほど怪我や病気からの回復が遅れる
- 現代のモグラ叩き式の医療の問題点
- 個々の病気を治療するだけでは健康寿命は伸ばせない
- さまざまな病気の唯一のリスク要因
- 老化を病気と認めれば老化との戦いには勝利できる
- 老化を病気と認めるための思考実験
- 「老化の情報理論」から始まる老化との戦い
- 第1章 老化の唯一の原因ーー原初のサバイバル回路
- 第二部 私たちは何を学びつつあるのか(現在)
- 第4章あなたの長寿遺伝子を今すぐ働かせる方法
- 健康長寿のために誰もが取り組めること
- 間違いなく確実な方法食べる量を減らせ
- 食事制限の科学的研究の始まり
- 人間を対象とした観察でわかったこと
- 効果はありそうだが、万人向けではない手段
- 間欠的断食ーー画期的な健康増進法
- 間欠的断食の方法はいくつもある
- アミノ酸を制限するーーなぜ肉は危険なのか
- mTORを活性化させるアミノ酸の摂取量を控える
- 運動をする人ほどテロメアが長い理由
- 理想の運動強度はどれくらいか
- 寒さに身をさらして長寿遺伝子を働かせる
- 褐色脂肪細胞による熱の算出を再現する脱共役剤
- 褐色脂肪は「寒さ」でも活性化される
- サウナの効果ーー高温は人体にプラスか
- タバコや有害な化学物質、放射線は老化を早める
- 第5章老化を治療する薬
- 分子レベルで見れば生命の仕組みは単純
- 死は必然であるとする法則はない
- イースター島に由来するラパマイシンの長寿効果
- TOR阻害分子のもつ可能性
- 糖尿病治療薬として手頃な価格で処方されるメトホルミン
- メトホルミンが持つ健康長寿効果の発見
- 「抗老化薬」としてのメトホルミンの未来
- サーチュインを活性化させる化学物質の発見
- Sir2酵素を活性化させるレスベラトロール
- レスベラトロールの効果を検証する
- サーチュインの燃料となるNAD
- NADを増加させるNRとNMN
- NAD増強分子による生殖能力回復の可能性
- 老化研究にとって卵巣機能の回復が意味するもの
- メトホルミンとNMNを摂取している父親に起きた変化
- さらなる老化の治療薬の発見に向けて
- 第6章若く健康な未来への躍進
- 問題が何かを理解すれば、老化と戦うのはがんと戦うより優しい
- 未来の選択①老化細胞を除去する
- 老化細胞によるダメージのメカニズム
- 私たちの体が老化細胞を始末しない理由
- 老化細胞除去薬「セノリティクス」
- 未来の選択肢②レトロトランスポゾンを封じ込める
- 未来の選択肢③免疫系を活用するワクチンを使う
- 老化の予防接種は自然に反する行為のか
- 未来の選択肢④細胞のリプログラミング
- 老化はリセットできる
- シャノンの通信理論と私の老化理論の類似性
- 山中伸弥が突き止めた老化のリセット・スイッチ
- 未来の私たちが享受しよる夢の若返り治療薬
- マウスの視神経を再生させ、マウスの視力回復にも成功するという快挙
- リプログラミングのメカニズムを探る
- リプログラミングは老化研究の次のフロンティア
- リプログラミング技術の倫理問題に取り組む
- 科学会はなぜ「デザイナーベビー」を否定したか
- 第7章医療におけるイノベーション
- 個人に特化した精密医療へ
- 新しいオーダーメイドのがん治療法
- 自分の遺伝子を知ることで可能となること
- 遺伝子が異なれば薬への反応も異なる
- ゲノムの情報をもとに症状の先回りをする
- センサーの活用
- パーソナル・バイオセンサーの時代へ
- バイオモニターが生活習慣についての決断を助ける
- バイオトラッキングによって突然死を防ぐ
- 「バイオクラウド」データとDNA解析を使って感染症の世界的大流行を阻止する
- 個人情報を明け渡すことへの懸念
- 病原体のDNAを解析して迅速に診断を下す
- ワクチン開発のミニ・ルネサンス
- 臓器移植のドナー問題
- 異種多種と臓器印刷の可能性
- 革新の時代はかならずやってくる
- 第4章あなたの長寿遺伝子を今すぐ働かせる方法
- 第3部私たちはどこへ行くのか(未来)
- 第8章未来の世界はこうなる
- 健康寿命がどこまで延びるのか計算してみよう
- 科学技術は想像を超える速さで進歩する
- 長寿社会に対して誰もが抱く不安
- 地球が抱えきれる人口ーー「100年以内に人類は滅亡する」という警告
- 大量消費・大量廃棄という問題
- 100年辞めない政治家が牛耳る世界
- 社会保障の危機
- かつてないほど広がる格差
- 過去から学べることーー人口過密都市ロンドンが経験したコレラの大流行
- ロンドンにおける公衆衛生の改革
- 人口が多いからこそロンドンは繁栄した
- 人類は限界を超えることができるーー地球で生きていける人口に上限などない
- 寿命を延ばすことは「不自然」なのか
- 人口増加のペースは着実に落ちている
- 人口が増加したこの世界での暮らしは確実に良くなっている
- 高齢者が活躍できる社会へ
- 高齢者の能力は非常に高い
- 高齢の労働者が労働市場を圧迫するという誤った考え
- いつまでも働き続けられれば経済のあり方は根本から変わる
- 老化を遅らせることによる経済効果
- 医療費の削減で浮いた予算を科学研究や教育に回す
- 一番重要なことーー長い人生がもたらす人間らしさ
- 第9章私たちが築くべき未来
- 科学者による未来予測
- 来る健康長寿社会に向けてなすべきこと
- 医学研究に公的資金が欠かせない理由
- なぜ老化研究に割かれる予算は少ないのか
- 今すぐ国は老化研究に資金を投じるべきだ
- 高齢者差別の上に築かれた医療制度
- 個々の病気を治療するコストとどうかを治療するコストの比較
- オーストラリアにおける健康保険・医療サービス制度の成功
- 健康保険制度が不十分なアメリカでは平均寿命が短い
- 誰もが等しく医療を受けられるようにすべきである
- 人生の終え方を考える
- 自ら尊厳のある死を迎えられるようにする
- 大量消費の問題を技術革新で解決する
- 遺伝子組み換え作物に対する風当たり
- CRISPR作物に対する時代遅れの規制
- 人類は創意工夫で困難を乗り越えられる
- 健康長寿社会に向けて働き方を考え直す
- 孫の孫にも会える社会における責任とモラル
- 第8章未来の世界はこうなる
- おわりにーー世界を変える勇気をもとう
- 気鋭の研究者たちの取り組み
- 思い込みを超えて
- 私が実践していること
- 大切な家族とずっと一緒に入るために
- ブッシュウォーキングに出かけようーー変えられない未来などない