『リーンスタートアップ』の書評とサクッと要約|資源をムダにしない起業のマネジメント

リーンスタートアップの要約 ビジネス

ベンチャーマネジメントの基礎が詰まっている『リーンスタートアップ』。これを読んだから起業が必ず上手くいくなんてことはないでしょうが、構築→検証→学習というこのサイクルが非常に密に連携してどんどんプロダクトが研ぎ澄まされ、事業が加速していくイメージがとても想い描きやすくなる本でした。オンラインによるアクティブ・ブック・ダイアローグ®で2回まわして実施したのですが、意外と知識がなくてもこのマネジメント手法は有用性が高いんだろうなと感じることができました。

スタートアップ。思い起こせば、私が過去に携わったり、私自身が推進した新規事業あるいは新商品の進め方は、この手法を用いればもっと何とかなったかもしれないなと悔しさも出てきます。

本書では「とりあえずやってみる」でも「完璧なものをいきなり作る」でもなく、仮説を踏まえた実用最小限の製品(MVP)とそれを検証できる目標を立てることを推奨しています。私はMVPを作ったことがありませんでした。しかも私の主観をベースに勝手に商品を作り上げる暴挙。今に至っては恥ずかしさしかない…

とても参考になったのが「仮説」のレベル。ザッポスは「オンラインで靴を買う人がいる」インドのランドリーサービスは「洗濯するサービスにお金を払う人がいる」というこの根本的なところでの仮説検証をしていた。たしかにこの仮説って、すごく簡単なんだけどコアバリューを問う最も本質的で一番最初にクリアしてなければいけないもの。このレベル感で検証するのかという驚きと納得性がとても高かった。

もし次に新しいサービスを創ることになったら(わたしもサラリーマンなのでいきなりそんなことがあることも…)MVPと革新会計を活用し計画をしてみたいです。ですが課題に思うのは、リーンスタートアップのやり方が、経営層に納得してもらうことができるのかは謎。ものすごく回り道をしているような気はするし、こちらのほうがリーンではなく資源を無駄にしているように見えてしまうのではないかという危惧があります。

アントレプレナーならまだしも、イントレプレナーにとってはTOPの理解がとても重要なのではないかと思いますねえ。

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サマライズ(本の概要と要約)

リーンスタートアップとは
リーンスタートアップの要約

著者

著者はエリック・リース氏。アントレプレナーで「スタートアップの教訓」というブログを執筆されているそうです。私はあまりスタートアップ界隈の情報には疎く、同氏の来歴や本書で繰り返し自身の経験から事例として挙げているIMVU社など詳しいところは把握できておりません…

調べてみると「Amazonリーンクラウドエボリューションセミナー」というたいそうな名称のイベントで来日もされているようです。

リーンスタートアップの解説と感想

リーンスタートアップの意味は?

リーンスタートアップを分解するとLean(リーン)とStartup(スタートアップ)に分かれます。リーンとは「贅肉のとれた」とか「脂肪のない」というような意味です。「痩せた」というような意味合いではなく「引き締まった」というニュアンスです。スタートアップは「動き出す」「歩き始める」という意味が転じて起業まもない企業、または起業そのものを指すようになりました。

つまりリーンスタートアップの意味とは、「無駄のない起業」ということになります。著者のエリックリース氏は、起業のマネジメントと表現しているようです。まさにマネジメントというのが肝で、リーンスタートアップでは「とりあえずやってみよう」を否定し、まず仮説を立てて革新会計(MVPで検証するKPIのようなもの)をもって検証することを強く推奨しています。いっぽうで「とりあえずやってみよう」の速さを否定しているわけではなく、ピボットか辛抱かを判断するためにきちんと管理したほうがよりゴールに速く近づくということを説明しています。

ポイントは以下の5原則にまとめられています。

  1. アントレプレナーはあらゆるところにいる
  2. 起業とはマネジメントである
  3. 検証による学び
  4. 構築ー計測ー学習
  5. 革新会計

羅列だけしても意味は伝わらないと思いますので、少しコメントします。ここでいうアントレプレナーというのは何もスタートアップだけではなく既存組織で何か新しい製品を生み出そうとするイントレプレナーも含んでいるということです。そして、それらの活動は製品ではなく組織をどうつくるか、マネジメントしていくかという問題だと述べています。そしてスタートアップは生み出すだけではなく、学びを積み上げて持続させていくことが求められ、それを行うために3つのサイクル(構築・検証・学び)を回していきます。ただし目標なく実行するのではなく、スタートアップならではの評価をするための会計手法が必要だと主張しています。

文章で書くと長いですね…

もうちょっとかいつまんでいくと、

・完璧なものを作ろうとしない(結果的に無駄になる可能性がある)
・計測は革新会計を用いる
・仮説を立てMVPを速いサイクルで投入する
・MVPで満足な結果が出なければピボットを考える

といったところでしょうか。

ちなみに「リーンスタートアップ」という名称は、トヨタのリーン生産方式から採用したそうです。トヨタ式生産ってシリコンバレーでも参考にされるんですね。

定義

アントレプレナーとは?

リーンスタートアップ方式では、アントレプレナーとイントレプレナーとを区別しません。スタートアップに関わる人全体を指すこととして、企業・規模・セクター・発展段階によっては区別しません。

スタートアップとは?

ではスタートアップとは何ぞやという話ですが、本書ではスタートアップを「とてつもなく不思議な状態で新しい製品やサービスを創り出さなければならない【人的組織】」と定義しています。製品ではなく、組織というのがポイントですね。

構築・検証・学習のサイクル

リーンスタートアップはこの「構築ー検証ー学習」のループです。繰り返していくことになりますが、1周あたりの時間は徐々に短くなっていきます。

構築

後述する「挑戦の要」となる仮説が立てられたら、それを検証するために「必要最小限の製品(MVP:minimum viable product)」を作ります。MVPの事例は複数書かれているのですが、とにかく完璧なものを作らないようにすることがポイント。のちのち必要になるだろうという機能も付けません。

ザッポス(世界最大の靴のECサイト)の事例が面白かったのですが、最初の価値仮説は「オンラインで靴を買う顧客がいる」だったそうです。これを検証するために構築したのが、近所の靴屋で写真に撮った靴をWEBサイトに掲載しただけだったそうです。これがMVPですね。

検証

MVPを作ったら仮説の答えを出さなければなりません。検証のフェーズです。本書では構築・検証・学習がほとんど同時に語られているので、各章にわたって検証部分をまとめてみました。

さて、MVPを使ってもらったら(あるいは使われなくても)成果は出るはずです。「使われなくても」次の学習につながるというのがこの本の中でも指折りの学びだったなと思ってます。

この商品を使ってくれる人がいると思い込んでいたところ、そんな価値を誰も感じていなかったことが分かるからです。この結果が、やりつくして作り上げた製品だったら恐ろしいですよね…ちなみに社内の人間だけでクオリティーを評価してはダメだそうです。実際の利用者の反応を見定めましょうとのことです。

そして、使ってくれる人がいたとしても、それがいいのか悪いのかを判断するために、学びの中間目標をつくることが必要になります。

学習

検証のパートでほとんど学習の部分も説明できてしまうのですが、もう少し詳しく解説します。

スタートアップがやらなければならないこととして2つ挙げられています。

  1. 現状を的確に把握し、評価で明らかになった厳しい現実を直視する
  2. 事業計画に記された理想に現実の数字を近づける方法が学べる実験を考案する

これらをやるための手法として「革新会計」が必要だとエリックは提案しています。革新会計については後述しますが、この管理会計の手法によって、方向転換(ピボット)するかそれとも辛抱するのかの意思決定もなされます。ただしピボットするにしても、検証時にユーザーからフィードバックをもらって仮説を立て直すことが必要です。これがまさに学習→構築の部分。

挑戦の要

リーンスタートアップ方式は科学的実験なので、まずは起点となる仮説を置きます。

挑戦の要という表現も和訳の妙。全ての始まりであり基礎になる仮説です。本書では2つの仮説「価値仮説」「成長仮説」の2つが説明されています(たぶん著者の書きっぷりから他にもスタートアップの前提となる仮説あるというニュアンスがうかがえます)。

価値仮説

その製品やサービスが、顧客に本当に価値を提供できるのかどうかをとう仮説です。インドの洗濯サービスの事例で言うところの「洗濯にお金を払う人がいるか」です。

成長仮説

最初の利用者(アーリーアダプター)からどのような広がり方をするのかという仮説です。後述する成長エンジンと結びつきます。

リーンスタートアップ

革新会計:イノベーションアカウンティング

イノベーション・アカウンティング。なんかすごそう。たいそうな名称ではありますが、簡単に言えば既存のビジネスモデルの事業計画を立てるときは売上から分解するが、革新会計では例えば、イーベイのようなマッチングが重要だとすれば、ユーザーの定着率がネットワーク効果の強さを計測することになります。

そしておの革新会計には3つの機能があると述べています。

ベースラインの設定

MVPをユーザーが利用したら、コンバージョンレートや定着率などの現実のデータが手に入ります。これがベースラインとなります。

エンジンのチューニング

ベースラインが設定されたとします。そのベースラインが仮説よりも低かったとしたらどうするでしょうか。よりいい数値になるようチューニングをしますよね。このチューニングによって数値が改善されればより多くの学びが得られます。

方向転換か辛抱か

もしチューニングで成果が出なかったら、失敗だと判断しなければなりません。どんなにがんばってもベースライン以上の学びが得られないようであれば、よもやどんな現実歪曲フィールドがあろうが、現実を直視するしかないので、方向転換という選択肢をとることになるでしょう。

MVP:実用最小限の製品

MVPという言葉は知っていましたし、なんとなく分かっていたつもりではありましたが、想像よりもずっと実用最小限。

あるサービスは仮説を一つずつ潰していくために一定の機能を持つ製品を次々と開発していったそうです。完璧ではない不完全なものです。それもすべてがプログラミングされているわけではなく、人間で代用できるものは人間で代用します。価値仮説のところで挙げたインドの洗濯サービスでは、「洗濯してくれるサービスににお金を払うか」という仮説を検証するためにトラックに洗濯機を載せたものがMVPです。しかもどういう事情かはわかりませんが、その洗濯自体はトラックに乗せた洗濯機ではなく持ち帰って洗っていたそうです…

方向転換(ピボット)かあるいは辛抱するか

大当たりの製品を開発したいと思うアントレプレナーは、いつの日か、とても大きな課題に対処しなければならないときがくる――いつ方向転換し、いつ辛抱するか、である

『リーンスタートアップ』p200

ピボットも大きな学びでした。ピボットするかどうかの判断はとても難しい。

本書のなかで事例として挙げられるヴォティズン(のちに@2gov)という市民の政治活動を推進させることをビジョンとしたサービスは、初期のMVPでそこそこ上手くいっていたそうです。しかしこのサービスの創設者はしっかりと何を基準に判断するかという軸をもっていたので、最適化とピボットを次々に判断してバージョンアップさせていきます。

ピボットの方法も複数種類が挙げられています。例えばターゲットを変えるなら「顧客セグメント型ピボット」など。とにかく構築→検証→学びからどんどん行動していきます。

でもピボットするには勇気が必要です。自分の考えていることは正しいと現実歪曲フィールドが邪魔したり、そもそも仮説の立て方があいまいだと判断のしようがなく迷う。なにより失敗と認めることで気持ちは下がってしまいがちです。

本の目次

  • はじめに
    • リーン・スタートアップの起源
    • リーン・スタートアップ方式
    • 本書の構成
  • マネジメントの第2世紀
  • 第1部 ビジョン
    • 第1章 スタート
      • 企業のマネジメント
      • リーン・スタートアップのルーツ
    • 第2章 定義
      • アントレプレナーとはどういう人間を指すのか
      • アントレプレナーにとってスタートアップとは何か
      • スナップタックス
      • 7000人によるリーン・スタートアップ
    • 第3章 学び
      • IMVUにおける検証による学びの例
      • 価値と無駄
      • 検証はどのように行うか
      • 大胆なゼロ
      • IMVU以外への応用
    • 第4章 実験
      • 錬金術から科学へ
      • 実験は製品である
      • ビレッジランドリーサービスの例
      • 政府機関でリーン・スタートアップ
  • 第2部 舵取り
    • 第5章 始動
      • 戦略は仮説に基づいている
      • 現地・現物
      • 事務所を出る
      • 分析による停滞
    • 第6章 構築・検証
      • 最初の製品で完璧を狙わない理由
      • 動画型MVP
      • コンシェルジュ型MVP
      • カーテンの陰にいる8人は気にしない
      • MVPにおける品質とデザインの役割
      • MVPを作る際の問題
      • MVPから革新会計へ
    • 第7章 計測
      • 一見つまらない経理で世界が変わる理由
      • 革新会稀有の機能―学びの中間目標3種
      • IMVUにおける革新会計
      • 最適化VS学習
      • 虚栄の評価基準ー警告をひと言
      • 行動につながる評価基準VS虚栄の評価基準
      • 3つの「しやすさ」の価値
    • 第8章 方向転換(あるいは辛抱)
      • 早期にピボットを可能にする革新会計
      • スタートアップの滑走路は今後行えるピボットの数で測る
      • ピボットには勇気が必要
      • 方向転換か辛抱かの検討会議
      • 方向転換し損ねる失敗
      • ピボットのさまざまなタイプ
      • ピボットとは戦略的仮説である
  • 第3部 スピードアップ
    • 第9章 バッチサイズ
      • 起業におけるバッチサイズの縮小
      • 小さなバッチサイズの効果
      • 巨大バッチ死のスパイラル
      • プルで仕事を進める
    • 第10章 成長
      • 成長のエンジン
      • 3種の成長エンジン
      • 成長エンジンが製品と市場のフィットを決める
      • エンジンがガス欠を起こしたら
    • 第11章 順応
      • 順応性の高い組織を作る
      • 5回のなぜ
      • 「5回のだれ」の呪い
      • 5回のなぜの実例
      • 小さなバッチサイズに順応する
    • 第12章 イノベーション
      • 破壊的イノベーションの醸成方法
      • 実験のプラットフォームを作る
      • マネジメントポートフォリオの醸成
    • 第13章 エピローグ――無駄にするな
      • 組織のスーパーパワー
      • 長期株式取引所
      • まとめ
    • 第14章 活動に参加しよう
      • 必読情報源
      • 参考書

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