最近ネットビジネス界隈で話題になる未来の世界。『メタバースとWeb3』です。毎年のようにこうしたビッグワードは出てくるものの、一気に話題になってからあまり耳にしなくなるのも聞かなくなるのも早い。
昨年ビッグワードになったので記憶に新しいところではNFTです。実はこれは Web3の中に含まれているもの。NFTのさらに前に言葉として流行したブロックチェーン技術が基盤になっているのがWeb3です。(NFTについては『NFTの教科書』で詳しく取り上げました)
ブロックチェーンがいよいよ各産業で実用化されていく中インターネット界隈でどのようなビジネスの世界が広がっていくかというのがWeb3の大きなトピックです。
Web3と混同されがちなのがメタバース。これは仮想空間におけるコミュニティあるいはコミュニケーション。ブロックチェーン技術ではないのでメタバースはWeb3と切り分けて考えます。
とまあ、なんだか変な言葉ばかりが踊る世界になっていますね~
この本の著者・國光さんは、モバイルゲームで上場をしたgumiの創業者。最近は メタバースとWeb3に振り切っているような人です。最近よくこの文脈で講演されてます。國光さんも含め、ビジネスの観点から新しい世界に入って先行者の利益を取りたいという気持ちがありありと見えてしまう。
彼らが語っているのは中央集権的なプラットフォーマーからの反逆だとか言っている割には、先行者に利益をっていて、ちょっとそんなところに違和感はありつつも、Web 3で実現できるものがユーザーにとって魅力的なものであればやがて受け入れられていくんだろうと思います。
5年後にどういう世界が来ているのか楽しみですね!
本の概要と要約
著者の課題
勝者総取りの時代は終わりメタバース Web 3というゲームチェンジが起こりつつある。
解決方法
豊かさを競争するコミュニティへ変容しつつある時代の波に乗るビジネスチャンスののヒントを紹介。
内容
・メタバースとは何か
ーVR AR MR などのリブランディング
ー種類が色々あってややこしかった
ーmeta(超越した)universe(世界)
ーSF作家ニール・スティーブンソンの『スノウ・クラッシュ』で初めて作られた言葉
・Sense of presence
ーメタバースに重要なのは実在感(今そこにいる感じ)
ーVR AR ではないオンラインゲームはメタバースではない
ーズーム飲みでは得られないもの
ー解像度(画質が良くなるとそこにいると感じやすい)
ーレスポンス(コミュニケーションはノンバーバルな部分が重要)
・メタバースの発展には三つのロードマップがある
ーゲーマーの取り込み
ー職場や学校の取り込み
ーポストスマホ
・Web3とは何か
ー仮想通貨、ブロックチェーン、クリプト等などのリブランディング
ー仮想通貨とかは何か胡散臭い感じがしてしまう
・インターネットの流れ
ーWeb1.0(一方通行の時代)
ーYahoo、Google
ーPC、ハイパーテキスト、マネージドサーバー
ーWeb2.0(双方向の時代)
ーFacebook Twitter Instagram
ーモバイルスマホ、ソーシャルグラフ、クラウド
ー活動の源泉は承認欲求
ーWeb 3(分散の時代)
ーオープンシー、イーサリアム
ーXR、ブロックチェーン、AI
ー活動に金銭的メリットがある
・NFT
ー非代替性トークン
ー2次流通に回ってもクリエイターにお金が入る
・DAO
ー自律分散型組織
ー目的に共感した人がそれぞれ行動しインセンティブがある
・起業家投資家だけでなくファンにも利益分配ができる
・インターネットを人々のもとに取り戻す
ーインターネットはその設計から壊れてしまった
ーWeb2.0
ーGAFAMが支配
ープラットフォーマーに富が集中
ーWeb3
ー中央集権化に対する社会運動
著者:國光宏尚とは
國光宏尚(くにみつ・ひろなお)さんは、株式会社Thirdverse、株式会社フィナンシェ代表取締役CEO/Founder。1974年生まれ。米国 Santa Monica College卒業。元・フジテレビのプロデューサーの森谷雄氏に誘われて帰国し、2004年5月株式会社アットムービーに入社。同年に取締役に就任し、映画・テレビドラマのプロデュースおよび新規事業の立ち上げを担当する。2007年6月、株式会社 gumi を設立し、代表取締役社長に就任。2021年7月に同社を退任。2021年8月より株式会社 Thirdverse 代表取締役CEO、およびフィナンシェ代表取締役CEOに就任。2021年9月よりgumi cryptos capital Managing Partnerに就任。21年7月にgimiを退任して、現在はメタバースとWeb3に振り切って活動されているようです。
●関連ページ
note:国光宏尚 (Hiro Kunimitsu)
Twitter:国光宏尚 元gumi (Hiro Kunimitsu)@hkunimitsu
Wekipedia:國光宏尚
●インタビュー記事
【独自】「これからが黄金時代」──元gumi國光宏尚氏がVR事業に“全振り”する理由(DIAMOND SIGNAL 2021/8/10)
本の解説と感想
メタバースとは
メタバースとは何か
メタバースとは、VR、AR、XR、MR、さらにミラーワールドなどのリブランディングされた言葉。なんとなくVRの世界、仮想世界で動き回れるようなものというイメージはありますが、なんだか種類が多くてとよく分からなくなっていたものをメタバースという言葉に集約されたもののようです。
メタバースという言葉が初めて使われたのは、SF小説『スノウ・クラッシュ(ニール・スティーブンスン)』だそうです。小説の中では、オンライン上に仮想空間「メタバース」が構築された世界を描いています。
よく、「オンラインゲームはメタバースではないか?」という主張がありますが、國光氏が言うにはVRやARなどではないゲームはメタバースではないそうです。徹底してリアリティな世界がメタバースで目とネットが直接つながり、イメージとしては『攻殻機動隊』で描かれる電脳ダイブような感じ。
若干この國光氏の主張については個人的に違和感があり、オンラインゲームが全てメタバースではないというのはおかしくて、VRゴーグルで体験できるゲームプロダクトだってあります。
私の世代では『.hack』とか、もっと下の世代では『ソード・アート・オンライン』でしょうか。
センス・オブ・プレゼンスが重要
メタバースでは、センス・オブ・プレゼンスが重要だそうです。つまり「今そこにいる感じ」です。
新型コロナウイルスが流行し、zoom飲みというのが一時期流行りましたが、すでにやっている方は少数派ではないでしょうか。というのもzoom飲みでは解像度が低く、ノンバーバルなコミュニケーションが取りにくい。リアルと違って表情がリアルタイムではないし、ちょっとした動作を感じ取れないし、空気のような雰囲気も感じ取れない。
なので、徹底したリアリティある仮想空間こそが次の世界たるメタバース(超越した世界)ということになるのでしょう。
発展のためのロードマップ
メタバースが発展していくためには「ハードウェア」の普及が必要になってきます。このロードマップとして以下が挙げられています。
①世界中のゲーマーを取り込めるか
②タブレットや PC 市場を取り込めるか
③ポストスマホ
本書のなかの説明では、「ゲーム」「デバイス」「メタバース」がうまくつながらなかったのですが、なんとなくわかります。
オンラインゲームというのは、見ず知らずの人とコミュニケーションができるツールです。ゲームをやらない方は馴染みがないかもしれませんが、例えばMMORPG(『FF14』のような)と呼ばれるゲームは、知り合いとやることもできますが、ほとんどのユーザーはリアルでは全くあったことものない人たちとコミュニケーションをとることになります。
普通、オンライン上で見ず知らずの人とコミュニケーションを取るのはお互いの情報量が少なく困難ですが、ゲームの場合は目的がはっきりしているので、メタバースと相性がいいんです。
また、ゲームというのはデバイス普及のキラーコンテンツになり得ます。デバイスが1000万台普及すると規模が取れ利益が上がる可能性が増えるので、多くのソフトウェアメーカーが参入してきます。
人が増えていくと、他の目的でもサービスの展開も試みられ、やがて職場や教育現場で使うことに利便性が出てきて、ゲームでは買い渋った親も買い与えることになります。
とはいえ、それでも常時メタバースにいれないので、未来はARグラスを付けて生活するレベルに来るといよいよ一般まで浸透するようになってきます。
Web3とは
Web3とは何か
Web3(ウェブスリー)とは、仮想通貨、暗号資産、ブロックチェーン、クリプトなどをリブランディングしたものです。
日本だけではなく海外でもなのでしょうけど、仮想通貨や暗号資産と言う言葉ではうさん臭さが付きまといます。実際、投機的なものは多いですし。なのでイメージチェンジって感じでしょう。
誰が言い出したのかわかりませんが、「じゃあ、Web1ってあるのか?」という疑問については以下のようにまとめられています。(ネットを探せばいくらでも出てきますが…)
・Web1.0
・Web2.0
・Web3
「Web3」だけ「Web3.0」ではないのは、本当のところはよくわかりませんが、「Web2.0と決別する、これまでの流れのインターネットと区別する」というようなニュアンスらしいです。どっちでもいいですが、先行者たちの意気込みなのでしょう。
Web2.0からの脱却
Web1.0は、読み取り専用。一方通行。静的なコンテンツで構成されてるものなどをう想像すれば分かりやすいのではないでしょうか。Yahoo!やGoogleを使って検索したり、検索するコンテンツは誰かがHTMLで作成したもの。
Web2.0は、書き込みが可能となり、例えばfacebookなどに情報を自ら投稿することです。それまではgoogleなどがWEBにある情報をクローリングして取得していたのですが、ソーシャルプラットフォーマーはユーザーが自ら投稿する情報を取得することに成功します。
しかしWeb2.0の成れの果ては、GAFAMに代表されるテックジャイアントによって、私たちはタダ働きされた末に個人情報も行動データも発信した情報も握られ、彼らに富は集中し、大統領ですらアカウントを停止されるような生殺与奪の権も握られています。
Web3は、ブロックチェーン技術によって中央集権的な世界から脱却し、非中央集権的な世界に移行する大きな転換点だというのが一般認識です。
『メタバースとWeb3』のまとめ
要約の部分はかなり割愛しました。本書は「メタバースとWeb3」について、その業界の中での一般的な見解と、國光さんの解釈が織り交ざっているものです。ポジショントークもあると思いますし、個人の宣伝本でもあるため、國光さんの関わった取り組みなども事例に書かれているものです。
ネットで入手できる以上の情報はそんなになかったかなーというのが正直な感想です。
もしかしたら私が個人的に國光さんのgumiに関して、上場後すぐに業績を下方修正するという行為をしているためあまり良い印象は持っておらず、彼の熱量をすごく客観的に見ているだけかもしれませんけど…
とはいえ、ブロックチェーンが実現する新しいカタチの世界はとても楽しそうです。あとは何ができるか、界隈の人達だけではない成功事例が少しずつ生まれてくることによって、浸透していくんでしょうね。
本の目次
- Intro メタバースやWeb3がバズった本当の理由
- テクノロジーの融合によって起こる「大変化」この20年で、バーチャルファーストの時代がやってくる
- 次のステップに移行するインターネットの世界
- バーチャルファーストというビッグトレンド
- 國光流解釈で見るバーチャルファーストの世界
- 次世代インターネットが向かうゴール
- メタバースの発展で重要なのはセンス・オブ・プレゼンス
- NFT が実現するDAOの可能性
- テクノロジーの融合によって起こる「大変化」この20年で、バーチャルファーストの時代がやってくる
- chapter1 これまでの流れを知ると Web が行き着くゴールが見えてくる
- GAFAMの独占になった Web 2.0の終わり さあ、新しい時代の幕が開ける
- スマホ、ソーシャル、クラウドの Web 2.0の覇者たち
- テックジャイアントが誕生した理由
- スマホの次にくるデバイスは VR、AR、MR
- ネット市場を牽引した Web トレンド
- Web 3.0の時代のデバイスは何になるのか
- データと解析の発展
- スマホ・クラウド・ソーシャルの次にくる主戦場
- GAFAMの独占になった Web 2.0の終わり さあ、新しい時代の幕が開ける
- chapter2 メタバースとは何か?
- ・盛り上がりを見せるバーチャル市場。その動向をゼロから解説!
- 一過性のブームではないメタバース
- メタバース市場に参入したマイクロソフトの戦略
- ・メタバースはVR、AR、MR、XR、ミラー・ワールドのリブランディング
- メタバースとは何なのか?
- メタバースを支えるテクノロジー
- メタバースの発展にある3ステップ
- ゲームが SNS になり、メタバースになっていく
- ・これからは、バーチャルでもノンバーバルなコミュニケーションが可能になる
- メタバースで大切なのは「右脳」
- 本当のメタバース時代は VR ネイティブから始まる
- VR はリアルよりもリアリティが重要になる
- ・複数の経済圏を自在に行き来することが可能になる
- コミュニティを選んで生きられたら、私たちはより自由になる
- 若者に圧倒的有利な世界。次の革命を起こすのは誰か?
- ・盛り上がりを見せるバーチャル市場。その動向をゼロから解説!
- chapter3 次世代インターネット Web 3を徹底解説
- ・Web 3の流行はインターネットの世界が「第三段階」へ移行するムーブメント
- そもそも Web 1 、Web 2とは何なのか
- ブロックチェーンの流れを振り返ると見えてくること
- 新規事業のキーとなる、ブロックチェーン事業戦略のヒント
- ・Web 3の特徴1 トラストレス×自律的×非中央集権
- ブロックチェーンの革新はトラストレスにある
- 経済の足かせだった「中抜き」は今後なくなる
- 非中央集権は歴史の必然
- ・Web 3の特徴2 バーチャル上に経済圏を作るNFT
- なぜ今 NFT なのか
- NFT を広めたキーパーソンは誰か
- 國光流「シンプルな NFT の仕組み」
- デジタル権利証としてのNFT
- NFT がクリエイターにとって「革命」な理由
- 「デジタル=コピーされる、無料」ではなくなる
- 次に流行るものは何か?
- win-win を目指せるGameFi
- NFT ゲームで稼げる時代
- ・Web 3の特徴3 DAOの拡大で起こるインセンティブ革命
- 新しい組織の形DAOとは何か
- DAOの本質、インセンティブ革命
- 「個人の時代」と密接な関係を持つDAO
- 日本初エンタメのDAOでクリエイターエコノミーを実現
- ・Web 3の流行はインターネットの世界が「第三段階」へ移行するムーブメント
- chapter4 メタバースと Web 3が辿り着く未来の姿
- ・Web 3の戦いのはじまり もう一度ガラガラポンが起こる
- 変化する理由はの動向をつかむ
- 業界ごとにシフトに差が出る理由
- ・時代の流れに乗ってメタバース・Web 3を活用しよう
- ビジネスに活用するためのヒント
- 複数のコミュニティを選んで生きる自由な人生
- 歪んだ構造を持つ Web 2.0時代からの脱却
- ・いまこそ、インターネットを人々のもとに取り戻そう
- ハードフォークにより PDCA が回せる複数の社会体制構築へ
- 中央集権化に対する革命という新しい社会運動
- 人々が自由に生きられる新しいメタバースの想像
- ・一人ひとりの個性、楽しさを尊重した多様性のある社会へ
- メタバース常に新しい場所・社会を創る
- 賛同者が集まれば、リスクを取った冒険も可能になる
- 「夢」がみんなの「共有財産」になる
- メタバースとWeb3によって生まれる多様性のある社会
- ・Web 3の戦いのはじまり もう一度ガラガラポンが起こる
- last chapter メタバース、Web 3の事例から見るビジネスチャンス
- 変容する社会とビジネス 時代の波に乗りビジネスチャンスを掴め!
- 事例①バーチャルライブ
- 事例②ファッション・旅行業界
- 事例③金融とGameFI
- 事例④バーチャル渋谷(VR 渋谷)
- 事例⑤クラブトークン
- 事例⑥巨大資本と Web 3
- 変容する社会とビジネス 時代の波に乗りビジネスチャンスを掴め!