『ビジネスモデルキャンバス』は、ビジネススクールでベンチャー系の授業で使用しましたが、その当時の使い方はホントに浅いものだったなと振り返らされます。とりあえず埋めればいい、という感じでそれが魅力的なビジネスモデルになり得るのかどうか、果たしてどこまで考えられていたか…
私はこれまでベンチャーや新規事業開発などに従事することが多いキャリアでしたが、自分の向き不向きで納得しているのは、私が得意な範囲は、0→1ではなく、次のフェーズだということ。本書のなかでビジネスモデルキャンバスを俯瞰して見た時に自己強化型ループが描けそうかという部分を見つけることができ、そこに集中していく戦略を立てることは得意だなと。
そういった視点から見て、ビジネスモデルキャンバスは新規事業だけではなく既存事業を客観視するためのツールとして、製品やサービスの理解を深めるためによく整理できるので有用だなと感じました。
現在、私は新規事業を開発するわけではなく、多くのベンチャー企業とコミュニケーションを取っていまして、しっかりと起業家たちとコミュニケーションを取っていくために使っていけるのではないかなと思いました。またビジネスモデルキャンバスで整理すると、情報が整理され、パッと見の1枚図でまとまるので、多くのビジネスモデルをストックしていくのに役立てていけそうです。
本の概要と要約
著者の課題
ビジネスモデルキャンバスの解説本はどんな要素を書けばいいかは書いてあるが、どんな考え方で書くかは書いていない。
解決方法
著者の新規事業コンサルの経験から、事業構想・ビジネスモデルキャンバスの書き方・仮説検証・事業計画書の書き方・プレゼンテーションまでを解説する。
内容
・新規事業創造プロセスの全体像
①事業構想
課題:進め方が分からない
理由:そもそもやったことがない
方法:意義・情報・知識をインプット
②ビジネスモデル設計
課題:顧客視点の価値提供ができない
理由:顧客の困りごとが把握できない
方法:ビジネスモデルキャンバスで抜けもれ防ぐ
③事業計画作成
課題:事業計画書の書き方が分からない
理由:作ったことがないからポイント外してしまう
方法:BMCを補完、事業の魅力を伝える
④投資の意思決定
課題:継続した収益モデルが設計できない
理由:収益に変える意識が薄い
※本書は①~③までの範囲を扱う
・経営者の悩み
ー新規事業を担える人材がいないこと
・ビジネスモデルキャンバス(BMC)の書き方
①顧客セグメント★重要
ー誰に
ーtoC:地理、人口統計、ライフスタイル…
ーtoB:売上高、業種…
ーJOB(ジョブ)
ー顧客が解決したいこと
ードリルで穴をあけるの話でいう「穴」
ー顧客が抱える切実な問題
ー顧客のJOBを阻害する問題
②価値提案★重要
ー製品(4Pのプロダクト)
ー手段
ードリルで穴をあけるの話でいう「ドリル」
ー価値(STPのポジショニング)
ー購入する理由
③顧客との関係
ー深い関係性が築けるか
④チャネル
ー顧客との接点はスムーズか
⑤収益の流れ
ー収益項目:何で売りが上がる?
ー収益の獲得方法:継続できる?
ー収益の流れ:関係者はwin-win?
⑥キーパートナー
ー独自の価値提案に必要なパートナー
ー価値創出の視点
ーコスト削減の視点
ーバイネームで記述するとイメージ化しやすい
⑦主要な活動
ー独自の価値提案に必要な活動
ー成功要因を明らかにする
⑧キーリソース
ーヒト、モノ、カネ、情報
ー自社の強みが反映されているか
⑨コスト構造
ー主なコスト項目:何にお金がかかるか
ーコスト構造:持続的に低コストでやれるか
・BMC導入のメリット
①ビジネスモデルを用意に設計できる
②組織内でのコミュニケーションツールになる
③ビジネスモデルの検証に相性がいい
ビジネスモデルキャンバスとは?
ビジネスモデルキャンバスとは、ビジネスモデルを可視化するためのフレームワークです。
このフレームワークは、アレックス・オスターワルダーとイヴ・ピニュールによって開発されました。ビジネスの構造を整理して、設計図のような形に書き出すことでビジネス上の構造を可視化する際に役立てられています。
特に新規事業の立ち上げには、自社のビジネスモデルに対する理解を深めて、社内や出資者にわかりやすく説明する必要があります。ビジネスモデルキャンバスは、そのために誰に何をどうやって提供し、どのように収益を上げるのかを整理することに役に立ちます。
著者:西田泰典とは
西田泰典(にしだ・やすのり)氏は、未来創造総研合同会社代表として、 コンサルティング業を営む。
1972年京都府生まれ。神戸大学大学院経営学研究科修了(MBA)。同志社大学大学院商学研究科博士課程後期在籍。大学卒業後、旅行会社のHISに入社し、営業とマーケティングに従事。数々の社内表彰を受ける。その後、NEC総研、NECマネジメントパートナーにて、経営コンサルタントとして、マネジメント領域におけるコンサルティング、研修の企画および講師などの業務に携わる。あわせて新規事業創造、マーケティング、事業戦略などの策定・実行支援プロジェクトを数多く経験する。NECを退職した後、未来創造総研合同会社を設立して独立。コンサルティングではクライアントの成果に、また研修では受講者の実務に活用できることにこだわった支援をしている。
本の解説と感想
新規事業創造の難題
新規事業を生み出す際に最も重要なキーワードを1つ挙げるなら、私は迷いなく「ビジネスモデル」と答えます。なぜなら、設計がきちんとできていない事業は、高確率で残念な結果に終わってしまう、もしくは計画の時点で社内の承認を得られないからです
『事業計画に落とせるビジネスモデルキャンバスの書き方』p3
自社の既存事業の成長性が鈍化したとき、次に考えることは「新しい事業展開ができないか?」です。もちろん既存事業のKPIを伸ばし続けることが可能な戦略があれば、それを実行することはやり続けてもいいでしょう。しかし、新しい製品やサービスが出てくるなかで、10年も同じ商品だけで事業を続けていくのは、よほどの参入障壁があるか分散型のマーケットであるか、難しい問題です。
サステナブルカンパニーは、常に新しい環境で新しい事業を想像し続けています。既存事業をベースにして新規事業で新しい収益源を獲得していくことは、いずれの経営者も頭を悩ませるところです。
しかし容易く新規事業が展開できないの一番の悩みは、「新規事業創造を担える人材がいない」ということです。この人材についての問題意識を持っている経営者はなんと8割にも上るそうです。
なぜ人材が問題になるかと言うと、そもそも新規事業創造のプロセスを知らないということに集約されます。また事業計画が書けない、顧客視点になれない、継続した収益モデルが設計できない、そういったスキル、思考、ノウハウがないのです。
ビジネスモデル・キャンバスは、新規事業創造プロセスの中で、核となる「設計」の部分での抜け漏れを防いでくれる強力なツールになり得ます。1枚で図示でき、9つのブロックを書き入れることでビジネスモデルに欠かせない構成要素を抜け漏れなく設計することができます。ただし、キャンバスの9つの項目を埋めるだけではなく、それぞれが相互に関係があり、自己強化型ループを作れるようなビジネスモデルかどうかまで見なければ、ただ埋めるだけになってしまいます。
ビジネスモデルキャンバスの書き方
ビジネスモデルキャンバスを書くことによって、組織内の共通言語として活用で、様々な立場の人達が設計に関与することで、一方的な主張にならないようにすることが可能になります。初期段階で完璧なビジネスモデルキャンバスを書くことができないので、「顧客セグメント」「提供価値」という最も重要な要素を埋めてから、思いついたブロックから書いていくのがよいでしょう。
顧客セグメント
顧客セグメントは簡単に言えば「誰に」にあたりますが、「20代女性」ではあまりにも抽象的すぎて先に進めるのは難しいでしょう。ここで顧客セグメントを細分化すると「誰に」「JOB」「顧客が抱える切実な問題」に分解して考えていきます。
顧客セグメントは、ビジネスモデルキャンバスの9つの項目のなかで、価値提案と並び最も重要度の高い項目です。
●誰に
BtoCとBtoCでやや異なってきます。個人属性と法人属性があるため、その部分は考慮する必要があります。BtoCの場合は、地理(関東・関西、欧州や北米など)、人口統計や心理(ライフスタイルや性格)、行動(便益・使用頻度など)といった切り口からターゲット層を特定します。BtoBの場合は、地理や売上規模、業種といった切り口が考えられます。もちろん、切り口を考えればいいというだけではなく、その顧客セグメントが魅力的なのか、自社のリソースとの相性はどうなのかといった視点が不可欠です。
●JOB(ジョブ)
ジョブとは、クレイトン・クリステンセン教授が提唱したものです。顧客が本当に解決したい課題です。よくマーケティングの考え方の例として出る「顧客がドリルを買うのは、ドリルが欲しいからではなく穴を開けたいから」の穴のほうです。
● 顧客が抱える切実な問題
顧客が抱える切実な問題とは、ジョブを阻害している問題を指します。その問題の必要性や解決することの魅力度を考える視点としては、「現状対策」「現状対策における問題点」「その問題のインパクト」「同じ問題を抱えている顧客の多さ」が挙げられます。顧客が切実に困っている問題であれば、必ず現状において、何らかの対策を打っているはずです。 優先度が高くかつ対価を支払ってくれる問題だけをビジネスモデルキャンバスには記述するようにします。
さらに、BtoB企業の場合は、その先の顧客も考えるようにします。直接取引をしている顧客だけではなく、顧客の先にいる顧客の問題やニーズが見えてくると、その必要性や問題の大きさが具体的に語れるようになってきます。
価値提案
顧客セグメントと並び、ビジネスモデルキャンバスのなかで最も重要なブロックの1つです。価値提案は、「製品とサービス名」「価値」の2つの視点から考えます。
●製品・サービス名
製品・サービスは、価値の提供を実現するための手段を指し、前述のドリルと穴の話で言えば、「ドリル」にあたります。
●価値
価値というのは簡単に言うと購入理由です。価値とは顧客が購入する理由となるもので、提供する製品やサービスを通じて顧客の問題を解決でき、他社が提供しておらず、自社の強みが反映されるといった要素を満たしたものです。
価値を検討するには、「必需的価値・魅力的価値」という分類、「機能的価値・経済的価値・情緒的価値」という分類で考えると、整理されてきます。
必需的価値はあって当然のもの。顧客満足度の評価でいう最低水準を満たすものです。あっても満足にはつながらないがないけど、ないと不満に直結するものです。魅力的価値とは、なくても不満にならないけど、あると満足に大きく影響するものです。
機能的価値は、実際のスペックなど。経済的価値は、定量的に測定できるもので、儲けやコスト削減という形で目に見える効果。情緒的価値は、定量的に測定できないもので、心に訴えかけてくるものです。
価値提案を検討する場合には、顧客セグメントに対してどんな価値を訴求するのかを具体化し、その部分をダントツに磨き上げていくことが必要になります。
チャネル
チャネルは、マーケティングミックスの4PのうちPlaceに該当する、顧客と企業の接点となる場所を指します。顧客と直接つながるのか、間接的につながるのか含め、様々なチャネルが考えられます。
チャネルが持つ機能は5つあり、「認知」「評価」「購入」「提供」「アフターサービス」に分解されます。認知はサービスを知ってもらうことで、例えばトヨタのレクサスは高級感溢れる販売店舗を構えて、ブランドイメージを認知させています。評価はサービスを評価してもらうことで、例えばお試しできるスペース、住宅展示場や家電売り場で実際に使えるなどをイメージしてください。購入は購入方法で、提供は製品やサービスの価値を顧客に届ける機能。アフターサービスは販売後に顧客が求めるサービスを提供する機能です。
顧客との関係
顧客との関係性は、マーケティングミックスの4PのうちPromotionに該当します。顧客との関係性が「プロモーション」という考え方はには若干違和感があるかもしれませんが、新規事業の場合、顧客がそもそもいないので、関係構築の前に顧客を獲得する必要があるため、その手段がプロモーションにあたることが多いからです。もちろん顧客を獲得して来たら、その顧客をつなぎとめるための手段も必要なので、自己強化型ループの要素として顧客を維持するための手段も考えておきます。つまり、「顧客獲得」と「顧客維持」の2つの視点に分けて検討するということです。
顧客獲得は、どのようなプロモーション活動するのかの検討になります。分かりやすいところでは広告展開。広告は有料なのでパブリシティ掲載を目指してメディアに情報を提供するとうことも手段の一つです。最近では、SNSなどもあります。
顧客維持は、顧客を獲得した後の関係性を維持するための活動や仕組みです。本書では例として、ハーレーダビッドソンが挙げられていました。ハーレー・オーナーズクラブ・グループを設立し、企業と顧客、あるいは顧客同士のコミュニティ形成し、部r何度への帰属意識を高める方法です。
どのような方法にしろ、ロイヤルティを深めることは重要で、一度使用して顧客が離れてしまうと効率が悪いです。新規獲得コストと既存顧客獲得コストのどちらが効率的かは明白。顧客の囲い込みを実現するための活動や仕組みについて、収益を獲得する方法と併せて考えることが望ましいです。
収益の流れ
マーケティングミックスの4Pのなかの、priceに該当します。利益というよりは「売上」とほぼ同じ意味で使われます。
ここで明確にすべき点は、「主な収益項目」「収益の獲得方法」「収益の流れ」です。
主な収益項目は、設計するビジネスモデルにおいて、どのような収益の種類があるかです。箇条書き程度で十分ですが、おおよそリピート購入してくれそうな収益項目があるかどうかは考えておきます。おおよその金額が明確な場合は記述してもよいでしょう。
収益の獲得方法は、「継続して儲ける」「囲い込んで儲ける」「高い利ザヤで儲ける」「メリハリで儲ける」「他の収益源で儲ける」などの考え方で見ていきます。
「継続して儲ける」とは、ジレットモデル(替え刃)のようなサブスクリプションであったり、ショットでお金を獲得するのではなくレベニューシェアでもうけを上げていく方法。「囲い込みで儲ける」とは、一定範囲や期間を無料あるいは低価格で提供することで、顧客を自社の製品やサービスに囲い込んでいくこと。「利ザヤで儲ける」というのは、単純に安く作って高く売るということ。「メリハリで儲ける」というのは、儲ける製品・サービスと、儲からなくてもいい製品・サービスを意図的に作り出して、総合的に儲けを生み出すことです。例えばコストコは商品はほぼ原価で売り、その安さが魅力ですが、会員費用を徴収した収益で儲けています。「他の収益で儲ける」というのは、例えばミュゼプラチナムは低価格で脱毛サービスをやりながら、顧客の膨大なデータをヘルスケアや化粧品会社に販売していたりします。
ということが書かれていますが、「メリハリ」と「他の収益で儲ける」というのはややごっちゃになっている感はありますね。
また、非常に重要だなと思った点は、収益の流れを設計するときはすべての利害関係者が win-win になるように意識すること。自社だけが儲かればいいというモデルは決してうまくいきません。
キーリソース
キーリソースでは、価値を提案するのに重要なリソースを検討します。リソースとは経営資源であり、一般的にヒト・モノ・カネ・情報を指します。
既存事業があるなかでの新規事業開発にしろ起業にしろ、まずは自社の強みを反映しているものかは確認していきたいところです。自社の強みが活用できないのであれば、外部との連携が必要になってくるからです。
自社の強みを判断する上ではVRIO分析というフレームワークがあり、経済価値→希少性→模倣困難性→組織の順に分析を行い、それぞれの要素を有しているかを判断していきます。
主要な活動
主要な活動は、独自の価値提案を提供するための重要な活動を検討していきます。そのためには、まず成功要因を明らかにする必要があります。CSFとKPIですね。KPIの立て方はこちら(『KPIマネジメント』)をご参考ください。例えば鉄鋼業の成功要因は規模の経済性、スーパーの場合は廃棄率を減らすこと。
成功要因が明確になったら、その成功を実現するための活動を書き込んでいきます。優位性が築ける部分を特定して、そこにリソースを集中的に注ぎこむことが望ましいです。一般的な活動ではなく、自社独自の提案活動になることが重要です。活動に抜け漏れがないかバリューチェーン上で抜けもれなく考えていきましょう。
どのような活動が考えられるかは、3つの価値基準から見ていけそうです。
オペレーション・エクセレンシィ(業務の卓越性)なのか、カスタマー・インティマシー(緊密な顧客関係)なのか、プロダクト・リーダーシップ(製品の優位性)なのか。
この項目単体では理想的でも、収益を上げられなければ意味がないので、効率的かどうかもしっかり確認しておく必要があります。
キーパートナー
キーパートナーの項目では、独自の価値提案を提供するために必要なパートナーを明らかにしていきます。
パートナーの考える切り口は2つ。価値創造できるパートナーか、コスト削減できるパートナーかです。コストのほうはイメージしにくいかもしれませんが、本書の例では、ビール業界が原材料を共同で仕入れることで原価低減を図るという取り組みが書いてありました。単純に共同購入のメリットだけでなく、共同配送によってコストも抑えられ、物流による二酸化炭素排出量の削減も実現しています(『これってホントにエコなの?』でも物流はエコ活動において重要な論点になってました)。
書き込み方としては、パートナーはバイネームのほうがイメージしやすいのでよいとのこと。また、特定のパートナーに依存しすぎないことも考えておく必要がありそうです。事業が成り立たなくなる可能性もあるので。
コスト構造
コスト構造の項目では、「主なコスト項目」と「コストの構造」を明らかにします。
コスト項目は、人件費やシステム費など箇条書きで十分ですが、固定費なのか変動費なのかが整理されているとビジネスモデルがより考えやすくなっていきます。
コストの構造とはなんぞやってところですが、なかなか目からウロコ。「コストの構造は最も外部から見えにくいところでもあるため他社との差別化が図りやすく模倣しにくい」という、優位性に繋がっていく感じ。コスト項目を挙げたら、そのコストが全体と比較してどのように構成されているのかを見て、それぞれの項目をビジネスモデルに合わせてどのように削減できるのかを考えていきます。
コスト構造を変えるためには、「従来の常識を疑う」「パートナー企業に任せる」「固定費を変動費化する」「そもそもやらないことを選択する」という考え方で見ていきます。
従来の常識を疑うというのは、例えばフィットネスクラブはプールやシャワーなどが当たり前にありましたが、カーブスは簡単なトレーニング設備しかないし、エニタイムフィットネスなどはスタッフも極限まで少ない。
パートナー企業に任せるというのは、持たざる経営に象徴されるようなことで、随時アウトソーシングするようなこと。固定費を変動費化するちうのは、従量課金、レベニューシェアのようなやり方が考えられます。また、そもそもやらないことを選択するということは、コスト削減というよりむしろ活動しないことを決めることで選択と集中と言えます。例えばQBハウスはシャンプーや髭剃りをなくてコスト削減しています。
鳥の目で見る
ビジネスモデルキャンバスを書いたら、それぞれの項目の関係性を確認するために俯瞰して見るようにします。
すべての項目は「価値提案」と深い関係にあり、「価値提案」以外の8つの項目が価値提案を実現するための内容になっているかを確認していきます。そのなかでも最も重要なのが、「価値提案」と「顧客セグメント」のなかの顧客が抱える切実な問題がしっかりと紐づけされているかどうかです。ここがマッチしていなければそもそもビジネスモデルが成り立ちません。
さらに、自己強化型ループを見出すことで一層に強固なビジネスモデルになっていきます。自己強化型ループは、システム思考の考え方です。一つのプロセス(ビジネスモデルキャンバスでは9つ項目のなかの1項目)が強化されることで、他のブロックに影響を与え、全体としての効果が大きくなっていくことです。
まとめ
新規事業開発って、全く生易しい物ではないですよね。これに則ってやればもれなく成功するかと言われれば、そんなことはないわけです。ビジネスモデルキャンバスも同じだと思います。
ただ、新規事業をロンチし、成功させるための確率が上がるための検証方法として、考えないよりははるかにマシだと思います。これで納得のできる説明ができなければ成り立たないという可能性があるわけです。ちなみに、この記事ではまとめなかったのですが、ビジネスモデルキャンバスで立てたビジネスモデルを踏み込んで検証方法する方法とし、リーンスタートアップが紹介されていました。こちらも成功確率を上げるために当然ながらやっていく過程が必要でしょう。
ひっくり返すような感想になりますが、何よりも重要だなと感じたのは、新しいことでビジネスをしようという、一歩を踏み出す勇気。そしてこの本の前半にも書かれていたように、筋のいいテーマかどうか。
事業を考える多くの示唆が得られました。
本の目次
- 第1章新規事業立ち上げには正しいプロセスがある
- 8割の経営者が新規事業に満足していない現状
- 担当者の前に立ちはだかる4つの壁
- 新規事業創造プロセスの全体像
- 第2章新規事業の構想を立てる
- 事業テーマを考える前に知っておくべき前提
- 新規事業は3つに分類できる
- 筋のいいテーマを見つけられるかが重要
- 新規事業を実現する時間軸を決める
- 事業テーマの検討はバックキャスティングが基本
- アイデアを生み出す六つのインプット
- ブレストでは「筋のいい」テーマが生まれない理由
- ①取り組む意義をインプットする
- ②マクロ環境をインプットする
- ③市場・顧客をインプットする
- ④自社の情報をインプットする
- ⑤競合の情報をインプットする
- ⑥他社の成功事例をインプットする
- インプットした情報を最大限に活かす思考法
- 事業テーマが決まらない場合の3つの対処方法
- 事業アイデアを定量的に評価する
- マトリックスを活用して定量的に判断する
- 事業テーマの妥当性を確認する
- 事業テーマ選びで注意すべき点
- 事業テーマを考える前に知っておくべき前提
- 第3章ビジネスモデルキャンバスの描き方
- ビジネスモデルの定義を知ろう
- ビジネスモデルの見解①Amit and Zott(2001)
- ビジネスモデルの見解②加護野(2004)
- ビジネスモデルの見解③Johnson(2010)
- 先行研究のビジネスモデルの定義
- 優れたビジネスモデルの条件
- ビジネスモデルキャンバスとは?
- ビジネスモデル・キャンバスについて
- ビジネスモデルキャンバス導入のメリット
- メリット①ビジネスモデルを容易に設計できる
- 価値提供と収益獲得を紐づけることができる
- 継続して価値を提供するための仕組みを生み出せる
- メリット②組織内でのコミュニケーションツールとなる
- メリット③ビジネスモデルを検証するのに相性がいい
- ビジネスモデルの完成度を高める2つのこと
- 3つの目を意識する
- マーケティングの基本を理解しておく
- 顧客セグメント
- 「顧客が抱える切実な問題」を捉える上でのポイント
- 潜在化した問題に焦点を当てるキーエンスの事例
- B to B 企業の場合は、その先の顧客も考える
- 価値提案
- 目的と手段を明確にする
- スタバとドトールから考える価値の意味
- 価値を検討する際の二つの切り口
- 訴求する価値を明確にする
- 優れたビジネスモデルの条件に当てはめる
- 競合を意識した価値か?
- 継続して提供できる価値か?
- 顧客セグメントと価値提案を先に検討する
- チャネル
- チャネルが持つ5つの機能
- チャネルと効率性の関係
- ビジネスモデル・キャンバスの他のブロックとのつながり
- 顧客との関係性
- ロイヤルティを深める
- ビジネスモデル・キャンバスの他のブロックとのつながり
- 収益の流れ
- 主な収益項目を明らかにする
- 収益の獲得方法を検討する
- 継続して儲けるにはどうしたらいいか
- 囲い込みで儲けるにはどうしたらいいか
- 利ざやで儲けるにはどうしたらいいか
- メリハリで儲けるにはどうしたらいいか
- 他の収益源で儲けるにはどうしたらいいか
- 収益の流れを設定する
- ビジネスモデル・キャンバスの他のブロックとのつながり
- ビジネスモデル・キャンバスの右半分はマーケティングに関すること
- キーソース
- ヒト・モノ・カネ・情報の視点で検討する
- 自社の強みを反映したリソースか確認する
- キーリソースを起点に設計する
- ビジネスモデル・キャンバスの他のブロックとのつながり
- 主な活動
- 成功要因は何かを考える
- 自社と外部企業が担う領域を区分する
- バリューチェーンで考える
- 3つの価値基準から「主要な活動」を考える
- 主要な活動の「効率性」を確認する
- ビジネスモデル・キャンバスの他のブロックとのつながり
- キーパートナー
- オープン・イノベーションという考え方
- パートナーを考える切り口
- パートナーはバイネームで記述する
- 特定のパートナーに依存しすぎない
- ビジネスモデル・キャンバスの他のブロックとのつながり
- コスト構造
- 主なコスト項目を記述する
- 持続的な低コスト構造を検討する
- ビジネスモデル・キャンバスの他のブロックとのつながり
- 鳥の目で各ブロックの関係性を確認する
- アスクルのビジネスモデルキャンバスを見てみよう
- 参入障壁を確認する
- 競合に対して優位性が維持できる点を確認する
- 自己強化型ループを見出す
- 最強のモデル「自己強化型ループ」
- SWOTの視点で各ブロックを評価する
- ビジネスモデルの定義を知ろう
- 第4章ビジネスモデルキャンバスの仮説検証
- ビジネスモデルキャンバスの完成度を高めるリーンスタートアップ
- リーンスタートアップとは?
- リーンスタートアップの特徴①ピボット
- リーンスタートアップの特徴②MVP
- リーンスタートアップの特徴③アーリーアダプター
- GE のファストワークス(FastWorks)
- 顧客の検証はどのくらい必要なのか
- 顧客への検証の留意点
- 訪問先の確認
- 顧客のキーマンを確認する
- 顧客に関する情報の収集
- 対話の場合、あらかじめ質問票を顧客へ送る
- ビジネスモデルキャンバスの完成度を高めるリーンスタートアップ
- 第5章ビジネスモデルキャンバスを事業計画書に落とし込む
- ビジネスモデルキャンバスと事業計画書を紐付ける
- 本書における事業計画書の考え方の特徴
- 良い事業計画書、悪い事業計画書の共通点
- 良い事業計画書の共通点
- 悪い事業計画書の共通点
- 事業計画書に盛り込む項目とその書き方
- 事業概要(サマリー)
- マクロ環境分析(PEST)情報
- 市場分析情報
- ターゲット顧客と顧客の困りごと
- 製品・サービス名と提案する価値
- 価値創出のためのリソース
- ピクト図
- 競合状況
- 販売計画
- 想定されるリスク
- 投資回収・損益計画
- 今後の展開
- 推進体制
- 今後に向けての課題
- 実行計画
- 事業計画書の見直し
- 事業計画書の魅力を伝えるプレゼン
- プレゼンテーションの内容
- プレゼンテーションでの振る舞い
- おわりに
- ビジネスモデルキャンバスと事業計画書を紐付ける