『WHYから始めよ!』の書評とサクッと要約|WHYによって人々を操作せず鼓舞させる

WHYからはじめよ ビジネス

起業をする人たちの失敗例として、「お金儲けが目的なっている」ということが挙げられることがあります。『WHYから始めよ! インスパイア型リーダーはここが違う』のなかでサイモン・シネック氏が語るには、リーダーたちであったり、人々を熱狂させる商品やサービスを提供し続ける人は、お金儲けではなく「信念」「情熱」といった心の奥底から湧き上がる動機(すなわちWHY)が信奉者を増やし、いつしか多くの人を取り込んでいくことを可能にするというのです。

MBAで学ぶようなフレームワークは、おさまりがよく、現状を打開するために使うことがあります。しかし、それは小手先だけの手段になっているのかもしれません。すでに存在するプロダクトの外側だけ変えるということは、競争していることに他なりません。

ピーター・ティールが『ゼロ・トゥ・ワン』でマーケットで勝つためには「競争ではなく独占」という言葉を用いていましたが、共通したイメージにように映ります。

一見してみればなんてことはない普通の製品は、もともと何かを解決するために最終的な結晶であって、機能を売りにすることではないということでしょう。日本の電化製品は技術で世界を席巻しましたが、今はどうでしょう。性能が一定水準を超えてからは「余計な機能」が付くようになったと思われる人も多いのではないでしょうか。ソニーのウォークマンが人々を熱狂させたのは「音楽が聴けるモノを自分が1人で使うため」という動機から始まったものです。これに対するアップルのipadは、「音楽ライブラリから個人が自由に好きな曲を選んで持ち運べる」というものでした。

本書は『WHYから始めよ!』の理論は、起業に必要な動機の問いであり、大きな組織だったとしても、その組織にいる大勢が「なぜ自分がこの仕事をやっているのか」を考え人生の幸福度を高めるためのヒントが詰まっています。

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サマライズ(本の概要と要約)

WHYからはじめよの問題提起
WHYからはじめよの要約

著者の問題提起
8割以上の人が自分の憧れや夢を見るような仕事に就いていない。人々をインスパイアできる組織があれば、仕事も家庭も幸せになるのではないか。

解決方法
人々の胸をときめかせ、鼓舞することに成功したパターンがある。それらはすべてWHYから始まっている。WHYから始めよう。

内容は?
WHYから始めることによって、人々を操作するのではなく、鼓舞させることができる。
アップルの事例では次の通りだ。

【WHY】からだと…
・我々は現状に挑戦する、他社とは違う存在である
・デザインを美しく、操作性はシンプルに、現状に挑戦した結果、素晴らしいコンピュータが完成した
・1台いかがですか?

【WHATからだと】…
・素晴らしいコンピュータが完成した
・美しいデザインでシンプルな操作性に優れている。
・1台いかがですか?

どちらが人々の心を躍らせ鼓舞するだろう。WHYなきところにイノベーションは存在しない。

WHYを実現するためには、信奉者を集める必要がある。あなたが信じていることを信じる人を雇おう。そして、目の前のレンガを積ませるだけではなく、大聖堂をイメージさせよう。

最大の難関は成功である。会社や事業が大きくなるとWHYがあいまいになることがある。

もし、あなたが「ライバルはどこですか?」と聞かれたら「ライバルはいない」と言おう。HowやWhatで戦わずWhyで始まっているならライバルは存在しない。

『WHYからはじめよ!』とは

『WHYから始めよ! インスパイア型リーダーはここが違う』は、著者であるサイモン・シネック氏が、2009年に行われた世界的プレゼンテーションイベントである”TED Talks”で披露した内容がベースとなった本です。

そのプレゼンテーション『優れたリーダーはどうやって行動を促すか(How great leaders inspire action)』は、現在5000万回再生を超えるほど視聴されています。

ここでサイモン・シネック氏は、世界で最も単純なアイデアとして、「ゴールデンサークル」を提唱し、WHY(なぜ) HOW(どうやって)WHAT(何を)によって、優れた組織やリーダーが他にはない力を得た理由を説明できると主張しました。

著者

『WHYから始めよ!』の著者はサイモン・シネック(Simon Sinek)氏です。シネック氏はリーダーシップの専門家で、TEDでもリーダーに関するプレゼンテーションで複数回登壇しています。”TED Talks”のあとに最初の著書”Start With Why:How Great Leaders Inspire to Take Action to Take the Golden Circle”(本書『WHYからはじめよ!』の原題)はウォールストリートジャーナルニューヨークタイムズのベストセラーリストとして紹介されたそうです。

サイモン・シネック氏が個人なのか組織なのかで持たれているその名も”Simon Sinek“というサイトを開設しています。

本の解説と感想

優れたリーダーのパターン

サイモン・シネックは、「WHY」が原動力となることを説明するうえで、優れたリーダーや組織を例に挙げて説明しています。優れたーリーダーには「人々の胸をときめかせ、鼓舞することに成功した個人や組織とってきた行動のパターン」があるというのです。

例えばアップル。スティーブ・ジョブスとスティーブ・ウォズニアックの二人は、ガレージで個人向けのコンピュータを開発しました。その時代は、学生たちがベトナム戦争への抗議活動など、反政府や反権力の機運が高まっているときだったそうです。二人のスティーブは、暴力ではなくビジネスの領域でコンピュータを用いて既存の権力に挑戦状をたたきつけたのです。コンピュータは複雑で大きく個人が持つような代物ではなかったものを、個人が組織と戦える武器を開発し、それが爆発的に支持されました。

ライト兄弟の例もありました。その当時、高名な科学者サミュエル・ピエールポント・ラングレーが潤沢な資金を集め、国からの支援もあるなか飛行機の操縦をすべく立ち上がったそうです。しかし私たちの多くは彼のことを全く知りません。ライト兄弟は「いつの間にか」知っている存在です。ライト兄弟にはお金もなく、実績もなければ大学も出ていません。ただ兄弟には情熱があり、彼らのことを応援する人たちが献身的に協力し、みなが奮闘していました。そうして、1903年に世界初の飛行機操縦を実現させました。そのほか、キング牧師の話もありました。

彼らに共通したパターンは、「人を操作するのではなく鼓舞させる」ような方法で行動しコミュニケーションをとっているというのです。

ちなみに、サミュエル・ピエールポント・ラングレーは、ライト兄弟に先を越されたことを知り、飛行機開発を諦めたそうです。シネック氏はこれを、彼が「WHY」から始まっておらず富や名声を得たかっただけだと一刀両断しています。

ゴールデンサークル理論

アップル、ライト兄弟、キング牧師、その他の偉大なリーダーや組織が成功するパターン、それがゴールデンサークルです。ゴールデンサークルは「WHY」を中心にして「HOW」「WHAT」で構成されています。

WHATとは
「していること」であり、結果を指します。企業であれば、その企業が何をしていて何を作っているのかということは簡潔に説明できます。サイモン・シネック氏によれば100%の人が自分のWHATを説明できるとしています。例えばアップルであれば、「mac」であり「iphone」にあたります。

HOWとは
手法のことです。例えば、ブランディングであるとか、独自のバリューチェーンであるとか、プロモーションの方法のことです。これは分かっている人も多いです。

WHYとは
自分が今していることを、している理由です。仕事をされている方が多いと思いますが、なぜしているのですか?(お金を稼ぐためという理由はこれに含まれません)
サイモン・シネック氏によれば、WHYを知っている人は非常に少ない層です。
WHYは、「何のためにあなたの会社は存在しているのか」「なぜそれが大事なのか」という大きな問いです。何を信じてあなたはあなたの会社で仕事をしているのでしょうか。

信奉者を集める

WHYから始めたとしても、それが炎になるには仕掛けが必要です。それが信奉者、キャズム理論で言うところのイノベーターやアーリーアダプターの存在です。

ここはシャクルトンの例が面白かったです。シャクルトンは南極探検で名声を馳せた冒険家です。

そんな彼が船のメンバーを募集するとき、「危険、低賃金だが、成功したら称賛される」ということを書いたそうです。シャクルトンは最初から自分のロマンについて来れる人だけを乗せようとしたんですね。『ビジョナリー・カンパニー2』で書かれている「誰を同じバスに乗せるか」という話とも似ています。

またこの手の話は、デレク・シヴァースの『社会運動はどうやって起こすか』のTEDも好きです。つまり、リーダーにはリーダーを追いかけるフォロワーが必ず存在するということです。イノベーターと呼ばれる人たちやアーリーアダプターたちが焚き付け、新たなフォロワーを生み出すことができます。

ちなみに、シャクルトンは煩悩の塊のような人なのかなと思っています…船を降りれば事業で失敗し続けたり借金したりと、あまりリーダーとは言えないような気がしますので。冒険においての情熱はそうではなかったのでしょうか。

最大の敵は成功

事業において「既存の成功」が足かせになることって、結構ありますよね。

『WHYから始めよ!』で語られる「成功が敵」というのは、事業が拡大していくとリーダーから直接伝達されることがなくなり、WHYが曖昧になってしまうということで書かれています。

例えばウォル・マートは、最初はただの1店舗からスタートしたものの、やがて週に4000万人が利用するまでに店舗は増えました。創業者のウォルトンはすでに亡くなっていますが、その後の社長にウォルトンの「WHY」が伝わらずに結果としてもたらされていた「安さ」だけを目指し始めました。この影響は消費者がどうこうよりも、なにより働いている従業員のモチベーションに影響が出ます。「安さ」の実現のために果たして働いていたのかと。もし「WHY」が「安さ」であればまたきっと違うでしょう。(例えばダイソーのように「ワンプライスで生活を豊かに」という理念からスタートしてそれを信じていれば、従業員は徹底的にそこに向けて奔走するでしょう)

おもしろいことに、起業についてのメソッドが書かれている『リーン・スタートアップ』にも同じようなことが書かれていました。「方向転換(ピボット)かあるいは辛抱するか」という問題提起です。ある新サービスは、ユーザーも獲得でき、利用されているものの、そのサービスが本当に起業家が考えていたビジョンに通じるものなのかを問わなければならないということです。この判断軸こそ「WHY」なのではないでしょうか。

WHYから始めよ、だがHOWを知れ

WHYだけあれば成功するのでしょうか。そうではありません。必ずHOWが必要になります。

円錐形のゴールデンサークルを横から見てみよう。円錐形は、会社や組織――もともと改装で組織されたシステム――をあらわす。システムのトップ、つまり円錐形の頂点はWHYをあらわしている。これがリーダーであり、会社の場合はたいていCEOだ(そう願いたいところだ)。

『WHYから始めよ! インスパイア型リーダーはここが違う』p160

つまり、WHYとはすべての大本であり源です。そのWHYが存在するだけではだれにもその価値を知られずに終わることだって考えられますし、伝わったところで適切な人たちに届き、拡大することはないかもしれません。実現させるHOWが必要です。

HOWのレベルには幹部がいる。リーダーのビジョンに感銘を受け、それを実践する方法を知る人たちだ。WHYはただの信念にすぎず、HOWはその信念を実践する手法であり、WHATはそうした結果である。行動の結果である。

『WHYから始めよ! インスパイア型リーダーはここが違う』p160

キング牧師の話で言えば、キング牧師自体は「私には夢がある」と人々の心を駆り立てるものを提供することはできました。しかしそれを実現するために奔走したのはラルフ・アナーバシーでした。どんな手段をとればいいのか具体的に説明することができました。

またアップルの例で言えば、ウォズニアックがアップルを開発してもそれだけでは人々の心を揺さぶることはできません。ジョブスが営業マンとなることによって多くの人々に価値を知らせることができたのです。

このように「夢を語る人」のそばには「計画を立てる人」が存在するということです。

まとめ

優れた組織やリーダーが、どのように人々を鼓舞させるか。会社に勤めているとよく分かります。いったい自分が何のためにこの仕事をしているのか、調べ物をしているのか、必死になって営業をしているのか、それを信じるに足る意味合いがあることによってモチベートされる効果は計り知れません。

一方ですでに固定化してしまった組織ではどうなのでしょうか。本書にもあるようにWHYが薄れてしまうことがあるのは、素晴らしい企業だったとしても、その道をたどってしまうことがります。なので、いまWHYが明らかであるならば、それを継承されるよう整えておかなければなりません。すでにWHYがかすんでしまっているなら、それを取り戻すためにリーダーシップが発揮されなければならないでしょう。

私自身の話では、過去に一度起業したことがありますが、そこにWHYはありませんでした。ただ自分でもできるかなという程度のもので独立しました。当然のように、過当競争にさらされ常にキャッシュが厳しく、固定ファンもつかないような状況が続き、2年でギブアップ。存在意義を問いながら進めていれば、また違う結果になったかもしれません。

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