『「わかりあえない」を越える』の書評とサクッと要約|共感をもって他者とつながる

わかりあえないを越える ビジネス
「わかりあえない」を越える(マーシャル・B・ローゼンバーグ著)

NVC(Non-Violent-Communication)を提唱する、マーシャル・B・ローゼンバーグ氏のアップデート本、その名も『「わかりあえない」を越える』。タイトルにまず、惹かれますね。わかりあえないを越えられるなんてことがあるんですか!?と…

NVCについては、『NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法』でまとめているので、そちらをぜひご参考ください。一言で言えば「対立する双方が相手の一方的な決めつけや非難、暴力を排除したうえで、言葉をやりとりし、和解するためのアプローチ」って感じです。

NVCの成り立ちはNVCジャパンの公式サイトのほうがいいかもしれません

「わかりあえない」を越える』でも、NVCの目的と原理が説明されていますが、より実践的な内容になっています。自分と相手とが「わかりあえない」を越えるための「平和のことば」を導こうというのが過去のNVC本と本書の違いです。

英語原題は”Speak Peace in a world of conflict”で、この本のテーマはあくまでも「平和のことば、語り」なんですよね。

個人の内面でどのようなことが起きているのか、NVCが人との良質な関係性を作り出すためにどのように活用されているのか具体的な例をもって示していたり、読み進めていくなかで、NVCの実践するためのエクササイズが用意されていて、非暴力コミュニケーションに向けてどのような思考の変化が必要なのかを実感することができます。

エクササイズでは、最初に自分の期待通りにはいっていない「特定の誰かとのやりとり」を思い浮かべます。そのとき、自分はどういう感情になっているか、その感情になっているのは自分が何を必要としているからか(どんなニーズがあるからか)、それを前提に相手にどうしてほしいかをリクエストする。それもリクエストに肯定的な言葉を用いること、相手がどのように反応するかを想像しながら。

NVCは言うは易し、と前にも感じましたが、非暴力にことが進められるコミュニケーションの思考プロセスをゆっくりと解説されているという感じです。

とはいえ、レベル高いですね、NVC…
自分だけではなく相手にもそれなりにNVCという考え方の理解がないとすんなりとはいかない気がします。

問いかける技術』でも、良好な人間関係を築くためには時間がかかり、分かっていてもそれができない、わかりあえないを越えることができないのは、人間が課題解決を優先するから、ということが言われていました。NVCも即効性ではなく、粘り強く相手との関係性を築こうというモチベーションが必要ですね。

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本の概要と要約

『「わかりあえない」を越える』
『「わかりあえない」を越える』の問題提起

著者の課題
他者の幸福に尽くす人がいる一方で、他者を苦しめて楽しんでいるような人がいるのはなぜか。他者との良質な繋がりを作り出すために何ができるかのか。

解決方法
無力感に浸ることでも、相手を押さえつけて、こちらのニーズを満たす必要はない。「パワー・ウィズ(ともに力を持つ)」という作戦をとる

『「わかりあえない」を越える』の要約
NVCの重要な2つの問いと仕組み
『「わかりあえない」を越える』の要約
共感をもって他者とつながる

内容
NVCの重要な2つの問い
 ー今この瞬間にわたしたちの内面で何が息づいているか?
 ー人生をより素晴らしいものにするために何ができるか?
・NVCの仕組み
 ー観察
  ー評価を交えない
  ー自分が何に快く思い快く思わないかを明快に、具体的に
 ー感情
  ー評価や分析ではない
  ーどのように感じたか
 ーニーズ
  ー要求ではない
  ー自分の望みは何か
 ーリクエスト
  ー強要でない
  ー「お願い」であり相手に進んで行動してもらう
・Power over ではなく、Power with
 ー批判を交えず伝えるほど実現する
・共感をもって他者とつながる
 ー自分自身の内面
  ー感情のもとになっている満たされないニーズを知る
  ー自己共感する
 ー他者の内面の美しさ
  ーどんなメッセージを発しても背景にある感情とニーズに耳を傾ける
 ーどのような変化を起こしたいか
  ー相手に何かをやめさせようとしない
  ー相手の苦しみとつながる
  ー相手は理解されてると感じれば他の可能性に柔軟になる

本の解説と感想

「わかりあえない」を越える

「わかりあえない」ってどういうことでなんでしょうか。本書では分かりやすく「対立」を意味しています。では、「越える」とはなんでしょう。「超える」ではないので、上をいくという意味ではなく、境界線のようなものを踏み越えるような意味なのではないでしょうか。

つまり、「わかりあえない」という現象がありつつも、相手と自分との間にあるその壁を取り払い、行き来自由にするような、そんな感覚なのだと思います。

アダム・カヘンの『敵とのコラボレーション』という本がありましたが、もっと寄り添っている気はしますね。あちらは、離脱(対立から逃げる)や強制という選択肢もあるにはある、という話でしたから…

NVCのプロセス

NVCの基本プロセスは、観察・感情・ニーズ・明確なリクエスト。

観察

NVCでは、評価を交えないように伝えること、自分が快く思っている、もしくは思っていない言動をその本人に対して明確かつ具体的に伝えることが必要とされています。「率直に伝える」ということです。

例えば、「校長先生が気に入らない」という教師がいたとします。「何が気に入らないのか?」という問いに対して評価を交えずに答えるということは、どういうことでしょうか。

①「おしゃべりが過ぎるんですよ」
②「校長は自分だけが知性を備えた人間だと思っているですよ」
③「職員会議で、どんな時代の時でも校長が自分の経験や子供時代に結びつけて話をするんですよ」

このなかだと③が観察に基づいた答えになります。①は「おしゃべり」という診断結果であり、②はそういう人間だとあなたが評価しているにすぎません。

観察では、診断・評価を除いた事実を見るようにします。

感情

相手と対立したと思った時、あなたの内面で何が息づいているのでしょうか。「息づく」というのは本書の言い回しで、やや表現が回りくどいのですが、うごめいている感情とか、そういう類のものです。場面ごとに違うものですが、2つの視点から情報を整理します。そのうちの一つが「感情」です。

例えば、「ルームメイトの行動に悩んでいる」とします。その感情とは何でしょう。

①「そんな行動は間違っている」と感じている
②「パーソナリティ障害の証拠だ」と思う
③「マジむかつく」

③が感情です。①は勘違いしやすいのですが「間違っている」というのは診断であり評価です。②も分析、診断です。③は言い方こそ難ありですが、これがあなたの感情です。

ニーズ

感情のほかに、もうひとつ他者とのコミュニケーションで内面で息づいているものがあります。「ニーズ」です。ニーズという言葉は私たちもよく耳にしますが、「リクエスト(要求)」との区別はできているでしょうか?

例えば、「娘が部屋を片付けないことに腹を立てている」とします。あなたのニーズは何でしょうか。

①「娘が部屋を片付けない」
②「腹立たしい」
③「娘は怠け者だ」
④「娘に部屋を綺麗にして欲しい」
⑤「秩序と美を保ちたい」

⑤がにニーズです。①は観察した上での行動の事実、②は感情です。③は娘を診断した言葉です。④はニーズっぽいのですが、片付けて、という要求です。あなた自身のニーズを満たすために娘に部屋を片付けて欲しいのです。

⑤こそがニーズで、①~④はすべて⑤の秩序と美を実現したいがために、娘もサポートして参加して欲しいからこその言葉です。

なかなか、自分のニーズは言葉にできませんよね。ローゼンバーグ博士は、なぜニーズを表現するのが難しいかを、そのような教育を私たちが受けてこなかったからだと言っています。なぜなら支配構造の上の人にとっては、人々がニーズを表現できるようになってしまうと都合が悪いからだと言います。

自分と相手のニーズを知ることによって、本当の意味で繋がりを生み出せるのです。

リクエスト

リクエストは、具体的に伝えることが大切です。

さきほどの「娘に部屋を綺麗にして欲しいと思っている母親」の話では、「秩序と美を保ちたい」というのがニーズで「娘に部屋を綺麗にして欲しい」がリクエストと説明しました。たしかにリクエストではあるのですが、まだ抽象度が高いです。整理整頓の話なのか、掃除の話なのか…

リクエストを具体的にすると、例えば「ベッドメイキングをしてほしい」「洗濯物は洗濯機に入れて欲しい」「自室に持ち込んだ食器はキッチンに戻してほしい」などになります。自分が望んでいることを明確に伝えないと解決はしません。

具体的に伝えたからといって、それでいいかというわけではありません。強要となるような伝え方は対立を生む可能性がありますし、何よりも相手に協力してもらってこそ良好な人間関係が築けるので、ポジティブに受けて止めてもらえるような表現をしましょう。

NVCの中心となる2つの問い

本書では、「平和のことば」を生み出すために、2つの問いを中心に語られています。2つの問いは自分と相手の双方に向けられているものです。

1つ目は、「今この瞬間にわたしたちの内面で、何が息づいている・生き生きしているか?」
2つ目は、「人生をより素晴らしいものにするために何ができるのか?」

内面に何が息づいているかは、私たちが普段協力関係を築こうとするときに自然に交わしている言葉に現れています。例えば”How are you?”です。この言葉のように、相手の気持ちを推し量ろうという努力はいつ何時も人はやってきています。

人生をより素晴らしものにするためには、リクエストを肯定的な言葉を使い、強要にならないような形で、自分のニーズを満たすコミュニケーションをとることです。

自分の内面

NVCの目的は、思いやりのある与え合いが可能になるようなつながりを作り出すことです。

そのための前提として、感情・ニーズがあり、自分の内面を観察することでそれらを明快にし、「贈り物」として差し出す形でリクエストします。自分の内面で何が息づいているのかを、相手に伝わるようにし、相手が肯定的な気持ちで受け止め行動できるように促します。

相手が行動を変える動機は、「現状よりも少ない代償で、自分のニーズを満たすよりよいやり方に気づいたから」であって欲しい、というのがNVC。つまりこれは、相手が罪悪感や恐れから行動を変えるのではないということです。

そのために、まずは自分の内面を理解し、表現していくことが求められます。なにより大事なのが自分に共感することです。

何かの行動に対して、自分が後悔するということはたくさんあります。自己嫌悪にも近いかもしれません。例えば、気分の落ち込み、罪悪感、恥の意識など。そして、その感情の元になっている満たされないニーズが明らかになる。

こうした感情に対して、自分自身が受け入れるというプロセスがNVCにとって重要になります。本書から引用すると「ヘマをすることを楽しむ」こと。否定ではなく受け入れることですね。自分の感情やニーズに共感できれば、他人に共感することもできるようになるはず。

相手の内面

相手を頭で理解しているときは、その人を分析しているのであって、「ともにいる」ことにはなりません。共感的につながるとは、「今この瞬間に」相手の内面で息づいているものとつながることです。

『「わかりあえない」を越える』p124

繰り返しになりますが、NVCの目的はあくまでも、思いやりをもって「与え合う」ことが可能になるようなつながりの質を相手との間につくることです。単に自分が求めているものを手に入れることが目的ではありません。

自分の感情をさらけ出すとき、多くの人が恐れを感じます。例えばこんな風に。

「それはおかしい」「神経質すぎる」「甘えすぎだ」「要求が多すぎる」など。こうした恐れによって、率直に言い出すことを困難にしています。さきほど自分の内面について受け容れる自己共感というプロセスを過ぎたら、次は相手のニーズに共感していきます。

今度は「相手の内面で何が息づいているか」「何が相手にとって人生をよりすばらしくするか」に思考を寄せて共感的なつながりをもっていきます。

ここで指摘されている間違いは、「頭で理解しようとしているときは分析しているだけ」ということ。本当の意味でつながっていない、客観的に見てしまっているということですね。

これ、めちゃくちゃ難しさがありますが…

相手の表面的なメッセージの背景に、どんなニーズがあるのかに耳を傾けると、もしかしたらそれはあなたも納得できるものかもしれません。

例として挙げられたのは、難民キャンプでアメリカ人に対する批判が起こったこと。表面的には「アメリカ人だから」という理由だけでなぜか非難されたのですが、その背景にはアメリカ人の支援が、彼らに本当に必要なインフラではなく武器ばかりを送ってくるから不満を持ったというもの。

こうしたニーズを掴めないまま話をしても、平行線をたどるだけですが、感情とニーズに共感することで難民キャンプの人たちは初めて耳を傾けてくれたのだとか。

Power with(パワー・ウィズ)

本書のなかで語られてい考え方の1つに「Power over(パワー・オーバー)」と「Power with(パワー・ウィズ)」があります。

「Power over」とは。「相手を服従させて何かをさせる」
「Power with」とは、「相手に進んで行動を起こしてもらう」

パワー・オーバーは、報酬や罰といったものを餌にして上から従わせるものです。こうしたアプローチには、代償を伴うものです。見えない反発を生むことになります。特に最近の社会の流れは、多様性を認めようという時代。こうした状況は相手のモチベーションに大いに影響し、不確実性の高い社会において脆く崩れ去ってしまうかもしれません。

パワー・ウィズは、相手や自分を含めて全体で豊かになるから行動するというものです。自分のニーズだけではなく、相手のニーズに関心を持つことで、相手はこちらの幸福に対して関心を寄せ、進んで行動するというのです。

社会を変えるために協力する

社会の変化を促すときに重要になのは、同じようなビジョンを持つ人たちとつながることです

『「わかりあえない」を越える』p193

10章の内容です。これってその通りなのですが、もともこもないような気がしています…。『ビジョナリーカンパニー2』でも、誰を同じバスに乗せるかということも事業を持続させることに重要という考え方がありました。仰る通りだと思うので、そちらは批判しません。

ですが、本書の場合は「わかりあえないを越える」というテーマなわけで、違うビジョンを持つ人たちとどういう風にやっていくのかを議論させるような内容にしてほしかったなと思ったり…

内容としては、お互いのニーズを明らかにしたとき、実は同じようなビジョンでつながっていることがわかる、というもの。でもビジョンが異なる人たちがぶつかることもあるわけで…。おそらくNVCでは、もっと大枠の方向性でお互いのビジョンは一致するはずだと言いたいのでしょうけども。

とはいえ、「どこかでビジョンが一緒」と考えることは、気が楽になるという実感があります。交渉先と意見の対立があったとき、お互いの会社は何を目指しているのか否定しようがないビジョンを探すと、「敵ではないのだ、仲間なのだ」という気持ちで話せます。向こうも否定できないわけですし。

究極は、世界平和。極端だとは思ってますが、そういうことだと思いました。

「わかりあえないを越える」のまとめ

NVCという人間関係のつくりかた、コミュニケーション仕方というものは、理想だなと思う反面、非常にハードルが高いものだなと思います。自分は平和的に解決しようと思っていても、相手側もしっかりとそういう考え方を持っている人でないと、本当の意味で共感的なつながりはもてないなと…どうしても考えてしまいますね。

「わかりあえないを越える」ような人間関係を育むには、時間もかかり忍耐が必要。課題解決をしていくには短期的に早い強制的な手段を取らざるを得ないときも多いはず。

常にNVCを取ることはどうしてもきれいごとのように思えてしまうので、私自身は長期的な人間関係の構築、取り組みを行っていく場合を中心にに、NVCを考えていきたいと思います。

本の目次

『「わかりあえない」を越える』の表紙
『「わかりあえない」を越える』の表紙
  • はじめに
    • NVCの起源
    • NVCの目的
  • 第1部 平和のことば・NVCの仕組み
    • 1.2つの問い
    • 2.「自分の内面で何が息づいているか」を表現する
      • 観察
      • 感情
      • ニーズ
    • 3.人生をよりすばらしいものにするには?
      • リクエスト(要求・お願い)
      • リクエスト vs 強要
  • 第2部 NVCの応用
    • 4.内なる変化をもたらす
      • 自己教育による成長
      • 自分の「過ち」への自己共感
      • 過去の傷を癒やすーー嘆きと謝罪の違い
    • 5.共感をもって他者とつながる
      • 相手のメッセージに応える
    • 6.他者の内面にある美しさを見る
    • 7.何に変化を起こしたいのか
    • 8.ギャングとその他の支配構造
      • わたしたちはどうしてこうなったのか
      • 学校で変化を起こす
      • ゲットーのギャングと対話する
      • 社会制度を変える
    • 9.敵のイメージを変容し、つながりを生み出す
      • 敵対する部族のミディエーション
      • テロリズムに取り組む
  • 第3部社会を変える平和のことば
    • 10.社会を変えるために力を合わせる
      • 社会を変えるために、資金を集める
    • 11.対立や衝突を扱う
      • 対峙する相手を1人の人間として見る
      • ビジネスでの対立を変容する
      • 企業文化に変化をもたらす
      • 当事者たちが顔を合わせようとしない場合
    • 12.感謝
      • なぜ称賛や褒め言葉が評価として有害なのか
      • NVCで感謝を表現する
      • 感謝を受け取る
    • 13.おわりに

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