『22世紀の民主主義』の書評とサクッと要約|成田悠輔さんの忖度なし民主主義への提言

22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる(成田悠輔 著) ビジネス
22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる(成田悠輔 著)

昨年2021年の誕生日に、ヨーロッパのメガネフレームXITというブランドに、
┌〇□┐こんなデザインの眼鏡があり、購入しようと思ってたんです。

ところが、Youtubeチャンネルの『日経テレ東大学』のレギュラー(?)として露出が始まった成田悠輔さんが急にこのブランドのメガネをかけはじめ、メディアによく出られるようになってしまったため、購入を控えてしまったんですよね。

成田悠輔さん、今年ほんとうに引っ張りだこですね。そんな成田さんの本『22世紀の民主主義』をまとめてみました。本を読み進めると、成田節で脳内再生される不思議…
あの独特な、軽快であり低めのトーン、毒に思えないけど思いっきり毒づいている言い回し。

本の内容はというと、既存社会における民主主義が故障していて、例えば「若者が選挙に参加」したところで何も変わらない状況になっていることを課題として挙げ、その解決方法として「無意識データ民主主義(アルゴリズム民主主義)」によって政策の意思決定をするという構想を提案しています。

投票だけに寄らない無意識データをインプットとして政策に反映していくというもの。たぶん現在のテクノロジーでは実現しないので「22世紀の民主主義」っていうことなんですかねー。AIによって支配されていく。まさにホモ・デウス

ちなみに、成田さんの弟はクラウドワークスの共同創業者らしい。お父さん蒸発したらしいのですが、その環境でも哲学書などが揃っていたり、この兄弟を育てたお母さんすごいすね。

成田さんらしい言い回しもたくさんあって面白く、かつ分かりやすい一冊でした!

22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる (SB新書)
断言する。若者が選挙に行って「政治参加」したくらいでは日本は何も変わらない。 これは冷笑ではない。もっと大事なことに目を向けようという呼びかけだ。何がもっと大事なのか? 選挙や政治、そして民主主義というゲームのルール自体をどう作り変えるか考えることだ。ゲームのルールを変えること、つまり革命であるーー。 22世紀に向けて...

本の概要と要約

『22世紀の民主主義』の問題提起
『22世紀の民主主義』の問題提起

著者の課題
民主主義は劣化し、経済も閉鎖的で近視眼的になっていて若者が選挙に行っても何も変わらない。

解決方法
選挙や政治、そして民主主義というゲームのルールをどう作り変えるのかを考える。無意識民主主義を提案する。

『22世紀の民主主義』の要約
民主主義は一般人にとって資本主義の鎮痛剤だったが…
『22世紀の民主主義』の要約
民主主義の課題への3つの処方箋

内容
・資本主義と民主主義
 ー資本主義は少数の強者がマスから資源を吸い上げる
 ー資本主義は格差をさらなる格差に変換
 ー民主主義は平均値や中央値が大事になる
 ー民主主義は格差を忘れるための弱者の鎮痛剤
・故障
 ー資本主義をなだめるための民主主義がもつれた
 ー民主国家は張るべきところに張れない
  ー政治家は専門家さえ正解をもたない論点を分かりやすく説明しないといけない
  ー国民は科学技術や高等教育にほとんど興味をもっていない
  ー政治家メディアやSNSで監視されている
  ー民主国家ほどコロナ禍初期に苦しんだ
 ーシルバー民主主義
  ー日本は高齢者が多くを占める
  ー結果、若者が選挙に行ったところで何も変わらない
・民主主義への3つの処方箋
①民主主義との闘争
 ー生真面目な営み
 ー政府統治案、選挙制度の再デザインなど…
 ー制度改革の実現可能性は心許ない
②民主主義からの逃走
 ー既存国家を諦めた人を集める世界
 ー海上、海底、上空、宇宙、メタバースなどでの新国家群
 ー21世紀の政治経済革命の大本命
③まだ見ぬ民主主義の構想
 ー無意識データ民主主義とい提案
  ー選挙に限らないデータ源から民意をはかる
  ー声や表情、本音の価値観
 ー無意識民主主義の二段階
  ーエビデンスに基づく目的発見
   ー無意識データから目的を発見
  ーエビデンスに基づく政策立案
   ー過去データから効果検証、実行
・2つの戦略
①民主主義を見る視点を変えて考え直す楽しさを作り出す
②民主主義をどう改造し、どう改造すればいいかの戦略を示す

著者:成田悠輔とは

口にしちゃいけないって言われてることは、だいたい正しい

Twitter:成田 悠輔@narita_yusuke

経歴

成田悠輔氏は、アメリカでイェール大学助教授。また、日本で半熟仮想株式会社代表を務める。専門は、データ・アルゴリズム・数学・ポエムを使ったビジネスと公共政策の想像と設計。

東京大学経済学部の最優秀卒業論文の中から数年に一度授与される「大内兵衛賞」を受賞。麻布中高では山岳部に所属し、同級生のプロゲーマーであるときど(谷口一)と活動した。兄弟にはマザーズ上場企業・クラウドワークス創業メンバー・成田修造氏がいる。

歯に衣着せぬ率直で時に棘のある意見を、対象者を目の前にしながら語ることもあるが、不思議と軽快で穏やかな口調が多くの人の心をつかんでいる。

●公式
公式サイト:Yusuke Narita
Twitter:成田 悠輔@narita_yusuke

●インタビュー記事
成田悠輔 「毎晩ふらふらになるまで家飲みしてます」 【ウィークエンド・インタビューズ 第2週・前編】(メンズノンノウェブ 2022.09.10)

●動画
林修も唸った!イェール大学助教授・成田悠輔★経済・教育・・・思い込みを捨て、データを見ると新しい世界が

日経テレ東大学

日本のメディアへの露出は2021年から増加。きっかけはYouTubeチャンネル『日経テレ東大学』の経済・ビジネス系対談番組Re:Hack(リハック)だ。2ちゃんねるの元管理人であるひろゆき氏とともにゲスト(岸田文雄氏、石橋茂氏、竹中平蔵氏などそうそうたる顔ぶれ)を迎え、経済や政治を中心にこれまでの既定路線を再定義しようという試みを行っている。

●Youtubeチャンネル
日経テレ東大学(https://www.youtube.com/c/keizailabo

本の解説と感想

資本主義のなかで民主主義が故障

資本主義の正体

民主主義が意識を失っている間に、手綱を失った資本主義は加速している

『22世紀の民主主義』p84

資本主義とは、資本がものをいう社会。圧倒的に力を持つ企業が市場を支配する可能性の高い経済構造です。

民主主義は一人ひとりに平等に1票があるが、資本主義は一人に多数票があると考えるとわかりやすいです。会社経営では議決権を51%も持っていれば、ほぼ1人によって意思決定が可能です。

民主主義はいわば、金持ちや天才がゲームの支配権を握り、取り残されようとしているその他大勢が、何とかしようと対処する鎮痛剤の役割…を担っていたが、それがどうやら機能しなくなってきている模様。

民主主義の劣化

民主国家はアメリカをはじめ、先進国の主要な政体です。しかし、経済成長率では陰りが出ています。中央集権的な国家は悪い時には悪い方向に行ってしまいますが、思い切った舵取りが短期間でとれるので、良い判断の場合はめちゃくちゃ良い、ということで中国は大きな経済成長を遂げました。

民主主義は選挙権を持つ国民が、その国民はバカも貧乏も情弱も等しく一票を持っていて、金持ちや天才の影響は薄まり、思い切った政策が取りにくい社会になってしまっているのです。

民主主義の弊害

今の選挙民主主義の欠点は、「あらゆる論点にみんなが意見を持つ」という無理ゲーな建前が適用されていることだ

『22世紀の民主主義』p191

片山さつきさんが、成田さんに「小選挙区は仕事すると票減りますよ」とコメントしたことがあるそうです。この一言に民主主義の機能不全具合が透けて見えます。片山さんが悪いということではなく、事実そういうことなのだろうと。

民主主義の世界では、全ての人に等しく一票です。なので、マス層が勝利する世界になります。つまり政策は様々な属性を合わせた平均値や中央値に寄って行くと言うことです。日本の例が分かりやすいでしょう。

日本では、超高齢化社会になってきています。出生率が大きく下がるなか、年金をもらいながら老後の生活を営むシルバー世代は増えていくという社会において、高齢者が多数票を持ち、選挙では高齢者に刺さるPRをするというのは正攻法と言えます。

「若者は選挙に行こう」と言われながら、若者が大挙して投票に行ったところで、何も変わらないというの民主主義の絶望に包まれているのが今の日本です。

民主主義の綻びは高齢問題に限った話でもなく、未来への投資になるはずの「高等教育」や「科学技術」について、大多数の一般人はさして興味もなく、話を聞いても難しいという事実があり、そんな国民に対して短い時間で分かりやすく説明しなければならない政治家やメディアが、キャッチ―な論点にばかり集中するのは致し方ないことでもある。

今の時代、Youtubeで伝えることだってできますが、そもそも多数派は見ないですよね?

追い打ちをかけるように、SNSという拡散力の高いメディアにより、ネガティブな話は一気に拡散し、分からないことは陰謀論で片付けられるという始末。情報統制が可能だった時代も過ぎ、政治家は全国民から監視下にさらされているので、ますます動きたくなくなる。

民主主義への処方箋

故障したかのように見える民主主義ですが、成田悠輔さんは3つの選択肢を挙げています。まず「闘争」と「逃走」を検証し、「構想」という見出しで成田さんの主張を展開しています。

闘争

既存の民主主義のなかで抵抗を試みるのが「闘争」。これは政策、法律を更新し、どうすれば民主主義が健全に作用するかを考えるというものです。

例えば、政治家への長期成果報酬年金。こうすれば、政治家は将来への成果に目を向けることができそうです。メディアへの何らかの規制もあると、民衆が扇動されなくなるかもしれません。しかしメディア規制は言論統制になりかねないので、何らかの方法で熱狂と過激化をおさえるための仕組みをつくるなどの仕組みだけでもあると良さそうです。

メディアへの接触や情報量を少なくしても、そのコミュニティのなかでエコーチェンバー(『多様性の科学』を参照)する可能性もあるので注意が必要です。

政治家の定年や年齢制限というのも有効そうです。社会が変わるのはいつの時代も世代交代があるから。天動説が地動説にすぐに置き換わることがなかったのと同じです。しかしこれではまだ、投票者のなかの多数派におもねることが政治家生命を維持する近道なので、もう一歩…

ある世代だけが投票できる選挙区であったり、平均寿命で重み付けをするといったことが実現できるとよさそうです。

しかし、選挙制度をいじること自体には大きなハードルがあります。それは既存の政治家は既存のやり方で当選してきた人たち。改革するのは、どうやら無理ゲーであるとしか思えません…

逃走

フロンティアへの逃走は、ホモ・サピエンスの性である

『22世紀の民主主義』p148

民主主義に抗うことなく、見捨てて外部へ逃げ出そうという試みが「逃走」です。

成田さんは、実は国家から「逃走」はすでに存在しているとし、その例としてタックスヘイブンを引き合いに出していました。タックスヘイブンが富裕層が個人の資産を貪り取られることから逃げることであれば、デモクラシーヘイブンは非効率や不合理を押し付ける民主国家をあきらめ、新国家群が国民を誘致したり選抜する世界。

こうした新国家群も実現できないわけではないそうです。どの国からも承認はされていないけど独立国家を宣言しているシーランド公国があったりします。また公海などどの国にも属さない海上でなら、既存の国家から逃げることは実現性はともかく可能と言えば可能。

すでにあるものを乗っ取ることも可能だそうで、例として千代田区が挙げられていました。なんと区長選の当選者の得票数は9,534票。1万人を移住させるだけで23区の区長選を制することができます。選挙のルールはこのところハックされる様子が見て取れ、NHK党は穴をつく非常に練られた戦術をとって議席を獲得していたりします。

物理的に逃げるのであれば、宇宙・上空・海上。デジタルの世界のフロンティアも見逃せない。メタバース空間やDAOなど新しい国家が誕生するかもしれません。

しかし、「逃走」は文字通り逃げているだけ。現実から目をそらしているという側面があります。

フランクルの『夜と霧』では、強制収容所から外の世界に戻ることに期待し、解放されて自由になったはずの人には孤独が訪れたともあり、されエーリッヒ・フロムの『自由からの逃走』では、近代になり自由を得たはずの人々が自由であるがゆえに孤独になった心理を説明しています。

フロンティアに逃げたところで、人々はまた何かにすがりたくなるのかもしれません。

構想

選挙なしの民主主義は可能だし、実は望ましい

『22世紀の民主主義』p160

「闘争」でも「逃走」でもなく、民主主義が真にその機能を果たせるような「構想」こそが、本書で成田悠輔さんが伝えたい部分であり、提案されているのが「無意識民主主義」だ。言い換えるのであればアルゴリズム民主主義。

民主主義がその政策をアウトプットするまでの流れとは、何らかのデータを入力し、ルールによって代議士が選ばれ、政策決定していくもの。インプットするデータが、声が大きいものに流されず、メディアにも先導されず、選挙にもいかずに民意データを収集し政策を決定するということができなくもないというのです。

確かに投票という行為だけではなく、漏れ出ている意識と無意識を捉えるあらゆるデータがあれば、1つの論点だけではなく、様々な論点が同時並行で政策決定に進むということが「構想」としては考えられるのかもしれません。

無意識データ民主主義のメリットは、投票だけに依存しない、自動化、多種多様な論点を同時並行に処理できる、同調や感情、選挙ハックを緩和する可能性はありそうです。22世紀の民主主義になり得るのでしょうか。

まとめ

22世紀の経済構造とか、政策の意思決定の方法とかどうなってるんでしょうね。

成田さんは構想を提案していますけど、それでも何も変わらないという、悲観論になってしまいますねー。結局のところ「無意識データ民主主義」を採用するのも「闘争」が必要。ということは「22世紀の民主主義では、無意識データを使おう!」と言っても無理ゲーでは…?

もし実現したとしてもアルゴリズムを作るのは人間だし、統制をとる戦略家は必要になってくるのではないでしょうか。

人新世の資本論』などでも書かれていましたが、この何年か資本主義について疑義が投げかけられています。ただ年長者ほど資本主義の恩恵を受けているし、それは今の若い人も年齢を重ねるとそうなる。

本の目次

『22世紀の民主主義』の表紙
『22世紀の民主主義』の表紙
  • Aはじめに断言したいこと
  • B要約
  • Cはじめに言い訳しておきたいこと
  • 第1章 故障
    • ○□主義と□○主義
    • もつれる二人三脚︰民主主義というお荷物
    • ギャツビーの困惑、またはもう一つも失われた20年
    • 感染したのは民主主義︰人命も経済も
    • 衆愚論の誘惑を越えて
    • 21世紀の追憶
    • 「劣化」の解剖学︰扇動・憎悪・分断・閉鎖
    • 失敗の本質
    • 速度と政治21︰ソーシャルメディアによる変奏
    • デマゴーゴス・ナチス・SNS
    • 偽善的リベラリズムと露悪的ポピュリズムのジェットコースター
    • そして資本主義が独走する
  • 第2章 闘争
    • 闘争・逃走・構想
    • シルバー民主主義の絶望と妄想の間で
    • 政治家をいじる
      • 政治家への長期成果報酬年金
      • ガバメント・ガバナンス(政府統治)
    • メディアをいじる
      • 情報成分表示・コミュニケーション税
      • 量への規制
      • 質への規制
    • 選挙をいじる
      • 政治家への定年や年齢上限
      • 有権者への定年や年齢上限
      • 未来の声を聞く選挙
      • 「選挙で決めれば、多数派が勝つに決まってるじゃないか」
      • 「一括間接代議民主主義」の呪い
      • 政治家・政党から争点・イシューへ
    • UI/UX をいじる
      • 電子投票が子どもの健康を救う?
      • ネット投票の希望と絶望
      • 実現(不)可能性の壁、そして選挙の病を選挙で治そうとする矛盾
  • 第3章 逃走
    • 隠喩としてのタックス・ヘイブン
    • デモクラシー・ヘイブンに向けて?
    • 独立国家のレシピ1︰ゼロから作る
    • 独立国家のレシピ2︰すでにあるものを乗っ取る
    • 独立国家︰多元性と競争性の極北としての
    • すべてを資本主義にする、または○□主義の規制緩和
    • 資本家専制主義?
    • 逃走との闘争
  • 第4章 構想
    • 選挙なしの民主主義に向けて
    • 民主主義とはデータの変換である
      • 入力側の解像度を上げる、入射角を変える
      • データとしての民意1︰選挙の声を聞く
      • データとしての民意2︰会議室の声を聞く
      • データとしての民意3︰街角の声を聞く
      • 万華鏡としての民意
      • 歪み、ハック、そして民意データ・アンサンブル
    • アルゴリズムで民主主義を自動化する
      • エビデンスに基づく価値判断、エビデンスに基づく政策立案
      • データ・エビデンスの二つの顔
      • 出力側︰一括代議民主主義を超えて、人間も超えて
      • 「しょせん選挙なんか、多数派のお祭りに過ぎない」
      • 闘争する構想
      • 「一人一票」の新しい意味
      • 無謬主義への抵抗としての乱択アルゴリズム
      • アルゴリズムも差別するし偏見も持つ
      • 選挙 vs 民意データにズームイン
      • ウェブ直接民主主義から遠く離れて
    • 不完全な萌芽
      • グローバル軍事意思決定 OS
      • 金融政策機械
      • マルサの女・税制アルゴリズム
      • 萌芽の限界︰自動価値判断とアルゴリズム透明性
      • 無意識民主主義の来るべき開花
    • 政治家不要論
      • 政治家はネコとゴキブリになる
      • 「民度」の超克、あるいは政治家も有権者も動物になる
      • 政治家はコードになる
      • 夢見がちな無意識民主主義
  • おわりに︰異常を普通に
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