妻が怖い?『妻のトリセツ』の書評とサクッと要約|夫が妻を怒らせない鍵は、周産期と授乳期にあり

妻のトリセツ(黒川伊保子 著) 心理学
妻のトリセツ(黒川伊保子 著)

妻のトリセツ』は2018年に出版されて以来、TVでも取り上げられることが多く、買ってはいたのですがずっと積読になっていました…。というより私は独身ということもあり夫婦生活に縁もなく、なんとなくトリセツ(取扱説明書)ってのもなあという感じでしたが。

読み進めてみると、夫婦の関係性を具体例としつつも、男性と女性の「脳」の働き違いについて、夫婦という分かりやすい例に当てはめて、身近なものにしているという印象を持ちました。おそらく脳科学とかのすごくわかりにくい説明を、分かりやすくか、かみ砕いたのかなと。

一方で、「女性脳」「男性脳」というラベリングについて批判もあるようですが、そこは分かった上で読み進めれば、「あー、女性って確かにそうかも…」とか「私も夫に、無神経なこと言われた!」とか共感ポイントは多いんじゃないかなと思います。

女性は男性と違い、出産という負担の大きな役割を担っています。この時期は子どもが体内にいる時も栄養を与えるために自分のエネルギーを回す、ホルモンバランスは崩れる、授乳期には睡眠不足にもなる…ほんとに大変。

このタイミングに、夫に対して不満を募らせる危機が最も高まるので、女性脳と男性脳違いを理解しながら戦略を立てていきましょう、というもの。

まだ結婚していない男性でも、パートナーとの良好な関係性を築くために参考になる本だと思います!

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本の概要と要約

『妻のトリセツ』の問題提起
『妻のトリセツ』の問題提起

著者の課題
妻が怖いという夫が増えている。離婚の理由にもなっている。夫には妻の怒りの理由が分からない。妻の望む対応と夫の提案する解決策が根本からずれている。

解決方法
妻の怒りは過去の記憶の総決算。ネガティブトリガーを減らす戦略を、最も危機が高まる周産期・授乳期から解説。

『妻のトリセツ』の要約
女性脳と男性脳の違い
『妻のトリセツ』の要約
周産期・授乳期が大事

内容
・女性脳
 ープロセス指向
 ー共感を求める
 ー目の前の問題に対して、過去の関連情報を瞬時に引き出してダイナミックに答えを出す
・男性脳
 ーゴール指向
 ー妻の話に対して解決策をアドバイスしてしまう
 ー妻の怒りの根本が理解できない
・ネガティブトリガーをつくらない
 ー最も危険なのは周産期と授乳期
  ー妻はホルモンバランスが崩れ、睡眠不足、栄養不足の満身創痍
 ー夫の対応策
  ー周産期と授乳期は一時的に変化するものと知っておく
  ー女友達のように接する
  ーすでにやらかしてしまった人は、真摯に謝る
  ーどんなときも妻をえこひいきする(姑、娘よりも)
 ー心と事実の通信線
  ーコミュニケーションの順番を意識する
  ー心の通信線
   ー共感(無駄話に感じるが)
  ー事実の通信線
   ー事実や実際の行動、言動
  ー妻の話を否定しないで肯定する(フリでいい)
  ー心を肯定すれば事実はどうでもいい
・ポジティブトリガーをつくる
 ー記念日
  ー過去の記憶を引き出す気満々の日
  ーポイント1000倍
 ー予告
  ープロセス指向の女性脳に楽しみが生まれる
  ー1か月後の結婚記念日にご飯を食べよう、でいい
 ー反復
  ーこれまでの努力の積み上げを振り返る
  ー妻は夫に分かってほしい
 ー普通の日でも、いつでもどこでも、君のことを想っていると伝える
・怒るのは一緒にいる気があるから

著者:黒川伊保子とは

黒川伊保子(くろかわ・いほこ)は、人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピュータメーカーでAI (人工知能)開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した、“世界初”と言われた日本語対話型コンピュータを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。

●公式
公式サイト:黒川伊保子オフィシャルサイト

●インタビュー記事
家族それぞれの世界観を尊重したら 家事・育児は楽しくなる!(KIDSLINE 2021.2.23)

本の解説と感想

女性脳と男性脳

女性脳

つわりがひどくてフラフラだった私に、あなたなんて言ったか覚えてる?

『妻のトリセツ』p16

妻からこんなセリフを聞いたことがある夫は多いかもしれない。

女性過去の体験にラベルを付けていて、1つのきっかけをトリガーにして何十年分もの記憶から回答を出す。そんな特性が女性にはあるらしい。

ホモサピエンスは、一生のうちに子どもを産む数が少ないため、子どもが危険にさらされる機会自体が少なくなります。だけれども限られた子どもを活かし育てていかなければならないという責務を担っています。

女性脳はこうした環境の中で過去に得た情報から、例えば「もし子どもが高熱を発したら…」という問題に直面したときに過去の様々な経験から対処法を類推していくような働きをするそうです。

女性の会話が男性からすると無駄話に思えることは、実は全く無駄ではなく、聞いた話がすべて経験記憶となって、答えを出すための引き出しにもなっていくので、女性脳は直感のような優れた能力を持ち合わせるのかもしれません。

また、女性が日常の会話で重視するのは解決ではなく共感で、自分の心への共感を求めています。女性はプロセス指向のため、最終的な目的があったとしても、そこまでの準備や予行演習といった積み重ねを重視するため、すぐに解決策を求めるゴール指向の男性が妻を理解できないところですね。

男性脳

男性はゴール指向。目標に向かって、最短時間最短距離でたどり着きたいと思っているので、ついすぐに解決策を提示して、アドバイスしてしまいます。

『妻のトリセツ』のなかでは、夫が理解できない妻の行動・言動がところどころ示されているのですが、買い物での男女の違いが分かりやすいです。男性は目的の店で目的のものを探しに行くのに、女性は家電を買いに行くはずが、その前にバッグを見たりパンプスを履いてみたり、なかなか目的地にたどり着きません。

夫は「早くしろよ…」と内心思っているかもしれませんが、女性とのこの差につい不要な一言を言ってしまったが最後、ネガティブトリガーが発動してしまいます。

ネガティブトリガー

最も危険な周産期・授乳期

妻との良好な関係を作る…というところまでには至らなくても、少なくとも過去話を蒸し返されて怒りを買わないために、できるだけそのネタを作らない、ネガティブトリガーを作らないよう戦略を実行していくのが、精神的にも安心する生活の基礎。

夫婦の間で最もネガティブトリガーが生まれやすく、かつ最も危険なのが、「周産期」「授乳期」。この時期の夫の行動・言動によって、その後の夫婦生活がおそらくガラリと違うはず。

妻は満身創痍。ホルモンバランスが乱れ、自分自身をコントロールしにくいので、夫のちょっとした行動に文句を言うことも増えます。このときに夫の働きが重要。とにかく妻に共感すること。それを実現するには、今の妻の態度が一時的なものだということを知っておき、構えておくこと。

パートナーが出産をする前であれば、「つくらない」対応が可能ですが、すでにやらかしてしまった人もいるでしょう。その場合は、その失敗を受け入れて真摯に謝ることが推奨されています。

妻は夫に分かってほしい

女性は心への共感を求めているそうです。夫に対して怒る根源は「一緒にいる気があるから」。だからこそ夫に分かってほしいのです。

例えば「見えない家事」。ゴミ捨てを手伝って家事を手伝ったと言えるでしょうか。考えてください。ゴミ袋をゴミ集積所に出すには、確かにゴミ捨てという家事手伝っていますが、その前後に「名もなき家事」が存在することをあなたは分かりますか?

ゴミの分別、ゴミ袋の用意、ごみ袋をまとめる、新しいゴミ袋を取り付ける…ゴミ捨ては一つのアクションにすぎず、他のプロセスは妻が担っているなんてことはないでしょうか?

…という流れですが、なにも妻は、「夫が家事仕事をしているつもりになっているけど、全然一部しかやってない」という夫ディスりがしたいのではなく、裏側ではこれだけ大変な量の家事をやっているんだと気が付いてもらいたいのが本音らしい。

妻をえこひいきする

妻は、夫との間に姑と子どもというライバルが存在する…という話。夫を取り巻く親族の関係は心理的にも負担になります。嫁姑問題は、夫が妻のストレスを考えなさ過ぎることが要因になり得ます。

実家にどまりに行ったとき、夫は妻に「楽にしていいよ」あるいは「家事手伝ってあげて」なんて言うかもしれませんが、すべて地雷。妻は楽に構えることなんてできないし、姑のテリトリーに入ったら、姑は普段の動きができず、妻が邪魔者になるのは仕方がないのです。

なので、夫は自ら「俺がご飯を作ろう」など、姑と妻のATフィールドの中に入り込んで解放してあげたり、何があっても妻側の立場で肯定することが望ましいのです。

それは子どもに対してもです。子供が成長すると、やがて口喧嘩することもあるでしょう。そのとき夫は、合理的に考えて妻側の言い分が不利だったとしても、妻をえこひいきすること。ママを愛するパパを嫌いになる子どもはあまり想像できません。明日からママは派になりましょう。

ポジティブトリガー

ネガティブトリガーを減らすことばかりでは、怒りは少なくなるかもしれませんが、心がより豊かになっていくということはありません。ポジティブな方向に向かうための戦略も解説されています。

大きなポイントは記念日。女性脳をうまく活用することで、二人にとっての節目、結婚記念日などをポジティブトリガーとする日にできる…とのこと。

予告

これは分かりやすい。例えばデートの日が決まると、その日まで待ち遠しくてずっと楽しいはず。その日に向けて新しい服を買いに行くかもしれません。あーしてこうやって過ごすのかな、と期待に胸を膨らませます。

来月の結婚記念日に出かけよう、と約束すれば、そこに意識が向かい、プロセス指向の女性脳はその日までの時間すらも楽しんでもらえるのだとか。

反復

結婚記念日は、これまでの二人の積み重ねの決算のような日でもある。なので、その日は過去を振り返るチャンス。女性脳は過去の経験を引き出して今の問題に対処するので、記念日はまさにそのトリガーになる。記念日はポジティブなので、嫌な記憶もこれまでの積み重ねとして清算されていく…いろいろあったけど努力の積み重ねでここまで来たね、という振り返りができる日になるんですね。

日常、いつでも君を想っている

記念日ばかりがポジティブトリガーではありません。普通の日にもポジティブトリガーは作れます。出張先で美味しそうなものを見つけたらお土産を買って帰ることを「伝える」とか。これはいつも君のことを考えている、ということを示すアクションになります。

女性脳はゴールがない話題も受け入れるので、何かきっかけさえあればこまめに連絡を取るのもよさそうです。

『妻のトリセツ』関連情報

ドラマ化

『妻のトリセツ』をそのままドラマ化したものではありませんが、続刊ともいえる『女の機嫌の直し方』を原案として、タイトルもそのまま『女の機嫌の直し方』でドラマ化されています。

設定は面白く、とある結婚式場での様々な人間関係から男女の思考の違いによるもつれや、誤解が説かれていく様子をコミカルに描いています。映画にもなっているようです。

夫度チェック

漫画版で「夫度チェック」というのができるようです。例えば「妻の細かい小言に、心が削られる」「自分もちゃんと家事をやっていると思う。なぜならゴミ出しは自分の担当だからだ」など。

詳細は講談社の漫画版のサイトでご覧いただいたほうがよいかと思います。

●あなたの夫度チェック
・講談社「漫画版:妻のトリセツ」公式ページ

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夫のトリセツ

妻のトリセツは、世の夫たちに向けてのものでしたが、『夫のトリセツ』も刊行されています。

夫が妻のことを理解できないのと同じように、妻も夫が理解できないこともあるでしょう。だからこそお互いに雰囲気が悪くなることもあるわけで…。と男女両方の側面からあれば変に『妻のトリセツ』が炎上することもなかったのかもしれませんねー。

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『妻のトリセツ』まとめ

「女性はこう」「男性はこう」というレッテルを貼るのはよくないですが、まあおおよそそんな方向性だよね、というくらいの認識をしておけばいいのかなと思いました。

TVで紹介されるたびに『妻のトリセツ』へは、「くだらない」とか「私はそんなことない」、「トリセツってモノ扱いか?」みたいな感じで、批判もあったりして、メディアがSNS上では炎上したなんて言い方もされたりしてますが、ボヤを大きくしようとしているだけな気も…。

それ言い出したら、我々人類を「ホモ・サピエンスはこういうものだ」として、人類の繁栄を説いている『サピエンス全史』ですら批判できちゃいません?多少のエンタメだと思いましょうよ。

女性と男性の違いで1つ言えるのは、周産期・授乳期の女性の負担は相当なものですが、その苦しみは男性には全く分からない。なので、そこはパートナーに寄り添うことが大事ってことですね。男性側も良かれと思って失敗することが多々あるかと思います。一人ひとりちょっとずつ違うんですから…そこはしょうがない。極力、努力しましょう!

本の目次

  • はじめに〜女性脳の仕組みを知って戦略を立てよう〜
  • 第1章 辛い記憶「ネガティブトリガー」を作らない〜妻に嫌な思いをさせる発言と行動を知っておこう〜
    • 1.何十年分もの類似記憶を一気に展開する女脳
    • 2.人生最大のネガティブトリガーを作り出す周産期・授乳期
      • 周産期・授乳期の妻は満身創痍
      • 女友達として接しよう
      • 女の会話の目的は共感
      • 女性脳は、他人の体験談を自分の知恵に変える
      • 共感のプレゼント大会に参加せよ
      • 大切なのは夫が共感してくれたという記憶
      • 地雷を踏むセリフに気をつけよう
      • 挽回は穏やかな時間を狙うと効果的
    • 3.話し合いはビジネスプレゼンのメソッドで
      • 感性が真逆の相手に惹かれる理由
      • 意見が違ったらゲインを提示しよう
    • 4.妻をえこひいきすると、実家ストレスが解消する
      • 実家ストレスのキーマンは夫
      • 母と娘にも女女問題がある
      • 娘の「自我のリストラ」は父親の責任
      • 息子の思春期に妻の心を取り戻そう
      • あなたは息子が目標にできる「行き先」になれるか
    • 5.「名もなき家事」がふたりを分かつ
      • 名もなき家事が妻を追い詰めている
      • 妻が求めているのは夫のねぎらい
      • 実現可能なタスクを自分で決める
      • 失敗はつきもの。可愛い外でごまかそう
      • 妻の失敗は無邪気に指摘
    • 6.妻の小言は、セキュリティ問題と心得よう
      • 妻は家庭内での危険を回避したい
      • 時には逃げずに妻と対峙しよう
    • 7.事件はたいていリビングで起きる
    • 8.時間差の買い物で互いのストレスをなくそう
      • 直感で選びたい女、比較検討で選びたい男
      • 妻より先に売り場に着こう
      • 意見を聞いたのに別のものを選ぶ理由
    • 9.夫が気づかない「妻を絶望させるセリフ」
      • 言わなくても察してほしい女性脳
    • 10.心の通信線を開通させよう
      • 「心」と「事実」、女の会話は2回線
      • 女性脳による「心」と「事実」の巧みな使い分け
      • 心の通信線を開通してもらえない専業主婦の憂鬱
      • 心と裏腹な妻の言葉を翻訳すると……
  • 第2章 ポジティブトリガーの作り方〜笑顔の妻が戻ってくる意外に簡単な方法〜
    • 1.ネガティブをポジティブに変える脳科学的テクニック
      • 記念日は記憶を引き出す日
      • 楽しみには予告と反復を
      • 女性は1回のデートで1ヶ月楽しめる
      • サプライズは逆効果になることも
    • 2.普通の日だからこそ効果絶大な、言葉と行動
      • 女性脳は大切な人を思う究極のえこひいき脳
      • 感謝するより、わかっていると伝えよう
      • ちょっと手間のかかる夫が実は愛おしい
      • 携帯電話を効果的に活用する
      • ビジネスの出張は一大チャンスととらえよう
      • 返信に困ったらとりあえずおうむ返しで乗り切る
      • お土産を買って、家に帰ろう
      • 「定番の幸せお菓子」を作っておこう
    • 3.いくつになっても愛の言葉が欲しい女性の
      • 褒めるときは、幸せなシーンで
      • タイミングをはずすと努力もだいなしになる
      • 見本は欧米の男たち。エスコートをルールにしよう
      • 言葉の飴玉を欲しがる女性脳
      • 変化球はカーブが来る前に直球で勝負しても
    • 4.それでも別れないほうがいい理由
      • 「責務を果たす」という愛は女性脳には通じない
      • 夫を救う女性脳のリスクヘッジ能力
      • 口うるさいのは、一緒に倉敷があるから
  • おわりに〜本当にいい夫の条件〜
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