『一汁一菜でよいという提案』を読んで、生まれて初めて自分で味噌汁を作りました。ちょっと薄味でした。
Amazonほしい物リストを誕生日に向けて公開したところ、プレゼントして頂いた本の1つです。
この本は、懐かしさと安心感を与えてくれます。子供のころを思い出します。母親や祖母への感謝で溢れます。はっとさせられる言葉がたくさんあります。読んでよかった。
まず土井善晴さんという権威的な立場から「一汁一菜でよい」という結論を提案してくれていることで、すべてをやさしく包み込んでくれます。そして文章全体を通して、「それでいいのです」と諭されるような言葉の一つ一つに温かさを感じます。
最初、この本を読んでまとめようと思ったのですが、とんでもない。そこかしこに見逃してはいけないメッセージが散りばめられています。
例えば、
離れて暮らしている子どもが、「食事のことはちゃんとしてるよ」と自分で気を付けてやっていることがわかれば、それだけで親は安心できるものです
『一汁一菜でよいという提案』p9
ほかにも、
味噌汁には、何を入れてもいいのです
『一汁一菜でよいという提案』p60
だったら作ろう、と思い立って作った初の一汁一菜がこちら。
漬物ではなく納豆なのががんばってないところですね。いつもチャーシューを冷凍保存していて、もやしで炒めるのですが、今回は本に書いてある通りに味噌汁にしています。
ちなみに味噌を買ったのも初めてかもしれない。いつもこのボリュームを見て「量、多くない?」と思ってます。使える気がしなかったんですよね。
本のなかにはお味噌汁のつくり方も書いてあります。具材の量も水もお椀に一杯くらいというのが、ベースのようです。
いっぽうで、味噌の量をどのくらい入れていいか分からなかったのでネットで検索。大匙一杯と書いてあったけど、多すぎるんじゃないかと思い、少なくしたら薄味に仕上がってしまいました。でも十分ですね。
ところで、実家にいたころはあまり味噌汁を好んで飲みませんでした。別に嫌いではなかったのですが、「お味噌汁飲む?」というのがなんだか家庭的で、構ってくれるなと言うメッセージを発していたのかもしれません。
『一汁一菜でよいという提案』は、ところどころ郷愁感を覚えさせる文章があります。子どものころを思い出すのです。母親や祖母の背中、香ってくる匂い、ご飯できたよという母親の呼ぶ声、みそ汁の湯気。この本の感想をAmazonレビューであったり他のブログであったり、読んでみたところ「泣く」というフレーズが出てきます。
わたしは泣きはしませんでしたが、わかります。
お料理をつくってもらったという子供の経験は、体の中に安定して存在する「安心」となります
『一汁一菜でよいという提案』p42
この安心が、たぶん今のわたしを形成しているのだろうと思います。
いままで、自分が家庭を持つというイメージがどうも想像でいなかったのですが、幸せのあり方ってこんなことなのかなと、家族を持つのもいいのかなと思いました。ちょっとだけ。
今度、「お味噌汁飲む?」と聞かれたら、「飲みたい」と答えようと思います。「つくるよ」でもいいかも。
サマライズ(本の概要と要約)
著者の課題
毎日の献立を作るのが大変、遅くまで仕事して家に帰って料理をするきになれない…料理をしない理由はたくさんある。外食では経済的にも栄養的にもバランスを崩してします。かといってサプリメントを飲んでもこれでいいとは思えない後ろめたさがある。仕事はストレス。多くの人が自分の暮らしに自信が持てず、気持ちがゆらゆらしている。
※写真では「理由」の「由」が抜けてますが、書き直しません…
解決方法
暮らしにおいて大切なことは自分自身の心の置き場に帰ってくるリズムを作ること。そのリズムの柱が食事。1日、1日、自分がコントロールしているところへ帰る。それには一汁一菜(ご飯、味噌汁、漬物)でよい。
著者
著者は土井善晴さんです。料理研究家で、お父様も家庭料理の研究をされていた土井勝さん。家庭料理のサラブレッドなのですね。
料理番組『おかずのクッキング』はずっとやっていますよね。初めて知ったのですが、この番組は父である土井勝さんから引き継いだんですね。フランスで料理を学ばれたそうで、フランス語も堪能。ですが、一番の魅力は、この本からもあふれ出ていますが、料理番組中でも優しい言葉で全く人を傷つけない人柄だと思います。
一汁一菜でよいという提案についてのインタビューがこちらにあります。
●「一汁一菜でよいという提案」 土井善晴さんがたどりついた、毎日の料理をラクにする方法
本の感想
いつくか印象に残ったところを抜粋してみます。
料理はやっぱり”ひと手間”ですよね、とはよく聞かれる言葉ですが、それは労力をほめているのであって、必ずしもおいしさにつながるものではありません。
『一汁一菜でよいという提案』p22
無理をしない、がんばらないことを土井さんは伝えています。日常の料理は手間をかけずシンプルでよいという言葉は、とても安心感を与えてくれます。土井さんは「ひと手間」というのを悪しき風潮のように言っているわけではなく、ハレとケというものがあり、ハレの日は手間をかけ、ケの日常は慎ましく過ごすというのが日本人だと仰っています。
ところがわたしたちは、毎日こんな感じです。
SNSなどの投稿を見ていると、一汁二菜をお膳に正しく並べた画像に「今日は手抜きしちゃった」と言葉を添えてつぶやいています。和食は簡単、普段はもう少し手を掛けていると、少し自慢もしているのでしょうか
『一汁一菜でよいという提案』p23
自分でハードル上げますよね。あげちゃうんですよ。
これって料理に限らないと思うんですけど、自分を実態よりも大きく見せようとしたり、がんばったらもっとできるという保険をかける魔法ってありますよね。わたしはそうした言葉や行為は意図的にやっていればいいんだとは思います。だって誰も偶像の本当の姿は欲してないですよね。
無理をしない、それで自分を追い詰めないということが大事なんですね。
それからこのメッセージはグッときました。あらためて家族に感謝しなければと思いました。
妻がその場で娘のために作る料理の音を、娘は制服を着かえるあいだに聞いたでしょう。匂いを嗅いだでしょう。母親が台所で料理をする気配を感じているのです。
『一汁一菜でよいという提案』p42
ご自身の子供のころを思い出す人多いのではないでしょうか。わたしは過去にタイムスリップしちゃいましたね。情景がめちゃくちゃ思い出せます。
そして中盤にあるこれです。
料理することは、すでに愛している。食べる人はすでに愛されています
『一汁一菜でよいという提案』p87
本当に、これはすごい発見。実家で過ごしたありがたさを実感しました。反対に、急に独身である身が寂しくなりました。
まとめ
なかなか普段は手に取らない本でしたが、プレゼントして頂いて手にすることができました。普段の食生活は自炊が多く弁当男子であります。サプリも摂っていません。だからといって健康的な食生活かと言うとそいうではなく、たまにご飯に行くとしたらとにかくお肉を食べますし、自炊も自作のチャーシューばかりです。お腹がすいたらすぐにお菓子を食べてしまいます。
『一汁一菜でよいという提案』の影響もあり、その日常ってどうなんだろうかという疑問から実際にお味噌汁を作ってみたのですが、こんなに簡単な料理だったとは…そして落ち着く。
この本を読んでから味噌汁もう何回も作っています。毎日、一汁一菜にする生活はないと思いますが、疲れて料理ができないというときこそ、一汁一菜に戻りたいと思いました。
本の目次
- 今、なぜ一汁一菜か
- 食は日常
- 食べ飽きないもの
- 暮らしの寸法
- 自分の身体を信じる
- 簡単なことを丁寧に
- 勢と慎ましさのバランス
- 慎ましい暮らしは大事の備え
- 毎日の食事
- 料理をすることの意味
- 台所が作る安心
- よく食べることは、よく生きること
- 一汁一菜の実践
- 食事の型「一汁一菜」
- 日本人の主食・ご飯
- 合理的な米の扱いと炊き方
- 具だくさんの味噌汁
- 手早く作る一人分の味噌汁
- 味噌について
- すぐにできる味噌汁
- その季節にしか食べられない味噌汁
- 日本人の主食・ご飯
- 一汁一菜の応用
- 一汁一菜はスタイルである
- 食事の型「一汁一菜」
- 作る人と食べる人
- プロの料理と家庭料理 考
- 家庭料理はおいしくなくてもいい
- 作る人と食べる人の関係「レストラン(外食)」
- 作る人と食べる人の関係「家庭料理」
- 基準を持つこと
- 美味しさの原点
- 和食の感性 考えるよりも、感じること
- 縄文人の料理
- 清潔であること
- 和食を初期化する
- 心を育てる時間
- 日本人の美意識
- 色の変化
- 何を食べるべきか、何が食べられるか、
- 何を食べたいか
- 和食の型を取り戻す
- 一汁一菜からはじまる楽しみ
- 毎日の楽しみ
- お茶碗を選ぶ楽しみ、使う楽しみ
- 気づいてもらう楽しみ、察する楽しみ
- お膳を使う楽しみ
- お酒の楽しみ、おかずの楽しみ
- 季節を楽しむ
- 日本の食文化を楽しむ、美の楽しみ
- きれいに生きる日本人
- ――結びに代えて