気候系の本って文章量が多い本だとなかなか読みにくいのですが、『最近、地球が暑くてクマってます。』は地球温暖化の問題提起から、その原因、解決方法まで子どもにもやさしい内容になっています(前半のみですが)。
『これってホントにエコなの?』という本であったり、『サステナブル資本主義』という本を以前に読んでいましたが、方向性としては同じような内容です。
それらとの違いは、温暖化について前出の本よりもこちらの本のほうが知識としてインプットできる点。とはいえ温暖化についての科学的な話を解説したものではなですが…
昔は地球温暖化というと、北極の氷が解けてしまってシロクマの住む場所がなくなる…とかだったものが、このままいくと人間の住む場所もどんどん失われて行ってしまうという警鐘。
地球の温度はこのままいくと今世紀中に4℃上がるらしく、こうなると江戸川区のような海抜ゼロ地域は浸水し、住むことができなくなってしまします。その他も日本は河川が多く、3000万人以上の住居に影響するのだとか…
100年後に私たちは生きていませんが、一人ひとり将来に負債を先送りにしているという自覚をもって生活しないとダメですね。。
本の概要と要約
内容
・最近、地球が暑くてクマってます
ー地球温暖化はもう止まらない
・レジ袋有料化
ーまったく使わなくなっても0.2%の削減にしかならない
ー焼け石に水、ホッキョクにヒートテック
・地球温暖化の原因
ーIPCC(国連の機関)は人間活動が原因
・今世紀中に4℃上がる
ー日本では3400万人の住む地域が被害を受ける
・あなたの行動が投票
ー広がれば国が動く
・地球温暖化は我慢?
ー生活の質を高める
ー交通量が減少
ー空気がよくなる
ー脱大量消費、脱大量生産
ーシェアリングエコノミー
・地球温暖化の仕組み
ー温室効果ガスによって地球は生物に適した温度
ー高くなりすぎると暑くなる
・地球温暖化懐疑論
ーCO2が原因か?
ーほかに有力な原因がない
ー自然のサイクルでは?
ー人間活動のほうが優っている
ーティッピングポイントに注目
ー臨界点を超えると、大気・海洋・生態系が連鎖して崩壊
・今から始める対策は?
ー再生可能エネルギーに切り替える
ー使い捨てをやめ、モノを大事にする
ー環境に配慮した企業の商品を選ぶ
ー政治家と意見交換する
著者
本書の著者は水野敬也(みずのけいや)さんと、長沼直樹(ながぬまなおき)さん。多作です。
水野さんは小説「夢をかなえるゾウ」で有名。長沼さんとは「人生はニャンとかなる! 」を共著するなど、小説だけではなく幅広く本を企画して展開している模様。
本の解説と感想
レジ袋を有料化しても…
地球温暖化、もう止まらないんで
『最近、地球が暑くてクマってます。』p15
プラスチックであるレジ袋の生産を減らすことで、その過程で発生する二酸化炭素(温室効果ガス)を抑えようというのが1つの目的(※プラスティックは自然分解できないので、温暖化だけではなく様々な悪影響を及ぼします)。
個人的に、レジ袋の有料化は、エコロジー活動のなかで多くの人が「エコ」について意識づけがなされる、良い施策だと思っています。ところがレジ袋を全く使わなくなったとしても、温室効果ガスは0.2%しか削減できないそうです。
『これって、ホントにエコなの?』でもありましたが、エコバッグにしたところで、エコバッグを生産するだけでもエネルギーは消費されてしまうわけです。エコバッグは130回使用しないとレジ袋よりもエコじゃないのです。
地球温暖化の影響
昔、地球温暖化と言えば「北極の氷が解けて、シロクマが住めなくなる」みたいな悠長なものでしたが、もはや人類や地球全体の将来が危惧されるようなイメージが付いてきています。
私たちが住むところにも大きな影響を及ぼすようです。地球の温度は今世紀中に4℃は上昇することが予想されていて、そうなると北極の氷が解け海面が上昇していきます。この影響で日本では今3000万人以上が住んでいるエリアが被害を受けるそうです。
東京の江戸川区のような海抜ゼロメートルのエリアは、水害が起きた時に「ここにいてはいけない」と注意喚起しているくらいです。
海面上昇以外にも、気候は生態系のように波及していき、海水が増えたことによって台風の強大化が起こり、洪水などが発生すると衛生状態が悪化して感染症が増える…という悪循環が発生。
ものすごいスピードで起こる地球温暖化によって、生態系が大きく乱れていく可能性が高いのです。
国を動かす
地球温暖化を遅らせる、待ったをかける、たった一つの方法は「国を動かす」こと。
本書で上げられているのが「禁煙・分煙」。昔は電車内でもタバコが吸えるなど(今では信じられませんが!)、どこでも喫煙することができました。ところがタバコが体に悪影響を及ぼすものだという科学的証明がなされていくと、分煙化が進んでいきました。
これは最初、個人や小集団の行動だったかもしれませんが、やがて社会運動となり、様々な地域や業界で条例やルールが整備されていきました。
喫煙と同じような流れを地球温暖化でもやればいいのです。
私たちが、考える消費者になるということです。例えば、普段購入する商品がよりに温室効果ガスを排出しないほうを選んぶということです。消費を投資と考えることで企業も国も変わっていかざるを得ません。
自分のような個人に何ができるのか、とは考えず、一人ひとりが行動しない限りは社会は何も変わりません。このあたりは『サステナブル資本主義』をぜひ読んで頂ければいいのかなと思います。
地球温暖化懐疑論
地球温暖化は間違いなく起きている。そして地球温暖化の原因は人間活動であることに疑う余地はない
『最近、地球が暑くてクマってます。』p32
「地球温暖化問題は陰謀だ!」なんていう主張を聞かなくはないですが、これはもう事実から完全に目をそらした主張でしかありません。国連のICPPという機関では、世界中から論文を集め、地球温暖化は間違いなく起きていると結論づけました。
実際に、観測史上における年平均の最高気温は2015年から2020年が上位6位までを独占しており、記録的な温暖化が起きているのです。これが周期的なものだとする主張もあります。これまでの地球のサイクルで次の氷期は5万年以上先になりますが、人間活動による温暖化の影響で来ないかもしれないとまで言われています。
また「特定の団体が利益を得るためのでっちあげ」なんていう主張もあったります。これは影響力のある人がポジショントークをすることにより、真に受けてしまうことが1つの要因。もし少しでも主張に疑問をもったりしたとき、もしくは自分の主張が正しいのかどうかも分からないので、立ち止まって科学的根拠を求めるようにしましょう。
今からできる温暖化対策
私たち個人でもできる、温暖化対策をいくつかピックアップしてみます。
自宅の電気を再生可能エネルギーに切り替える
2020年、日本の電力生産の8割は火力発電です。これが風力や水力といった再生可能な方法で発電することによって、二酸化炭素の発生を防ぐことができます。今すぐネットから電力会社やサービスプランの変更ができます。
使い捨てをやめ、モノを大切にする
レジ袋の話の延長ですが、プラスチック製品を作ることを止めるだけで温室効果ガスを押さえられるかと言うと、そんなことはありません。肝心なのは今あるものを使い続けること。不必要になった家具も捨てるのではなく、誰かに譲ったりすることで新しい製品の生産量を減らすことになります。
環境に配慮した企業の商品を選ぶ
社会にムーブメントを起こしていくためには、消費が大きなきっかけになります。消費者が求めているものを企業は作るので、環境に配慮していないものを選ばなければいいのです。コストは高くなる可能性が高いですが、それが考える投資です。
とはいえ気を付けなければならないのは、生産工程で発生する温室効果ガスや使用する水の量です。プラスチック製品を止め、自然分解できる素材で生産されたとしても、製造過程でプラスチック生産を凌駕する非エコな状態であれば意味がありません。
自分の職場で環境対策をする
意外と効いてくるのではないかと思うのが、職場での環境対策。企業にはESGが求められており、またSDGsに対しての目標設定をしているところも多くなってきました。環境への配慮は地道になされているはずで、電力を多く消費するサーバー選び、パートナー企業の選び方、細かいところではごみの分別など、選択肢にエコを意識させるものがあると、日常でも意識するようになるのではないでしょうか。
本書では以下のような方法が取り上げられていました。
- 自宅の電気を再生可能エネルギーに切り替える
- 食材の生産過程で発生する温室効果ガスの量を知る
- ごみの分別をする
- 使い捨てをやめ、モノを大切にする
- 地産地消を心掛ける
- 食品ロスを防ぐ
- 預金先・投資先を考える
- 環境に配慮した企業の商品を選ぶ
- 自転車や公共交通機関を使う
- 自分の職場で環境対策をする
- テレワークを活用する
- 温暖化のニュースをチェックする
- 周囲の人と地球温暖化について話す
- 政治家と意見交換する
- 地域の取り組みに参加する
まとめ
本書は「地球温暖化」という、問題にフォーカスした本でしたが、ここ数年はSDGsの流れで温暖化のみならず、人類の経済活動と地球の持続性を両立させるための社会活動を啓蒙する本も多いですよね。改めて温暖化というものが地球という生態系を壊してしまうものであるということを認識しました。
最近は地球温暖化に対抗する方法をまとめた『ドローダウン』という本もあります。なかなかボリューミーなため要約も難しいですが、手元に置いておいてたまに見ると勉強になりますよ。