わたし、30歳を超えてから経営学を修めた(いわゆるMBA)んです。その頃、やたらとフレームワーク脳になっていたのですが、学びも後半になるにつれ時間お疲労感から、省エネ思考になった結果、「原理原則」ってすごい大事だなって身に染みたんですよ。早稲田大学のビジネススクールでも教鞭をとる入山章栄さんの『世界標準の経営理論』という本が出版されたのはそれからほどなく2019年になります。
「よっしゃ読むか!」と気合を入れて購入したものの、もう全然読み進められません。いったい僕は経営学を大学院にまで行って何を学んだのか…とただただ打ちひしがれました。だって、僕がそういう原理原則があるんだと知っていた経営理論って、30あるなかの5つくらいですよ。なんとなくそういうことあるよね~、というものは多いですが、少なくとも理論の名称はほとんど知りませんでした。
入山さんが毎月『世界標準の経営理論』を寄稿していたのは知っていました。ハーバード・ビジネス・レビューを粋がって毎月買っていたのです。読んでいないという自分の投資コストの意識のなさときたら。
でもまあ開き直って、知っていることが大事なのではなく、そのメカニズムを実感して応用して言うことのが大事だと思うので、めげません。ただ実感するにはある程度知っておかないと逆引きしようにもできないのですがね…
ということで、一人で読むには大変なので、友人を十数名集めてアクティブ・ブック・ダイアローグ®(ABD)をしました。
結論、これは本棚に置き続けたい1冊ですね!なぜかというとメチャクチャ分かりやすくまとまっていて納得度が高いし、約30(たぶん28?)という経営理論が集約されている辞典であること、そしてなにより…私自身がすぐに忘れてしまうからです!ほんとすぐ忘れる。
本の内容と要約
何を?
ビジネスの真理に肉薄している可能性が高いとされ生き残ってきた約30の経営理論を分かりやすくまとめた
誰に?
特にビジネスパーソンへ。
なぜ?
①人はWhyの説明と納得がないと動かない
②理論ドリブンは圧倒的に汎用性が高い
③経営理論の説明力は時代を超えて不変
内容は?
理論とは、How・When・Whyに応えること。
この条件を満たした、説得性と汎用性と不変性を備えた約30の経営理論をまとめた本。経営理論の大枠は3つ。
①経済学
人は合理的という考えに基づく古典的なもの
②心理学
人の不合理性と認知の限界などを前提ちしたもの
③社会学
人と人の社会的なつながりからビジネスを解き明かすもの
著者
著者である入山章栄氏は早稲田大学のビジネススクールの教授です。MBAを得ようとしているような意欲的なビジネスマンが好んで読むようなビジネス書の翻訳もしていたりします。『両利きの経営』とかそうですね。入山氏が本書『世界標準の経営理論』で語っているなかの「知の探索と知の深化」の話です。
『世界標準の経営理論』については、いくつかのメディアでも情報発信されているので、そこで深めてもよいかと思います。
本の解説と感想
理論には汎用性がある
それぞれの理論がどうこうというよりも、一番の学びは経営理論は汎用性があるということ。理論とはHow(因果関係が)→When(どの範囲において)、Why(なぜ有効なのか)に答えることができるもので、つまりそれって、一過性の現象ではなく再現性がある。
さらに、この本はあくまでも「世界標準」にこだわってます。ということは長期にわたり生き残っていて、世界の経営の真理に近い厳選されたものだということでもあります。汎用性の塊でしかありません!
入山さんは冒頭で、ビジネスパーソンにこそこの本を読んでほしいという旨を書かれています。例えば事業で何か問題が発生したとき、原因を結論だけ持ってこられても「そうか分かった!」とはなりませんよね。解決手段の提案も然り。そんなとき原理原則からなる経営理論は納得度が高いため、人が動いてくれる可能性は高まるのではないでしょうか。
分類やメカニズムがとにかく分かりやすい
まず大きな枠で経済学・心理学・社会学という大きな枠で分類されてます。もうこれだけで分かりやすい。経済学って、基本的には合理的に考えればAだよね~という前提に立っているのですが、人間って必ずしも合理的な選択はしないですからね。そこで心理学の登場です。それから僕はやや心理学の分野も重なるのではないかとは思ってしまっているのですが、人間は他者との関係性のなかで意思決定するとか、イノベーションが起きるとか、あるいは企業には長期と言う時間軸があるといった社会学もこの2つにない部分を補完します。
それぞれの経営理論を読み進める際は、メカニズムがそうなっているか、つまりHow(因果関係が)→When(どの範囲において)、Why(なぜ有効なのか)を意識して読み進めると、解像度が上がります!
実は約30の理論と言いながら28しかない
この本を説明できるようになろうとした際、一番苦しかったのは触れ込みにあった、「30の経営理論を網羅!」から全体像を把握しようとしたこと。だって、どう数えても30にならない…!
順を追って説明しましょう。
※ちなみにこの本の本質ではないので、読み飛ばして結構です!
まずこの本の構成からアプローチします。
全部で6部まであるのですが、経営理論についてまとまっているのが1部から3部までです。それぞれ「経済学」「心理学」「社会学」で、その下に1章ごとに理論が格納されています。その数32。
次に読み進めていくとあれ?と思うのですが、章ごとの理論のなかに複数の理論が入っていたりします。例えば<リーダーシップの理論>の章では、「5大理論がある」とか書いちゃってますからね…
そして次は目次を追いましょう。
すぐに気が付きます。<情報の経済学>と<知の探索知の深化理論>がそれぞれ2章にまたがってます。
「おや、ということは32→30でちょうどいいんじゃないか!?」とお思いかもしれません。ところが、経済学のディシプリン(つまり第1部)は<SCP理論>と<RBV>の話で1~4章使っています。つまり、28になってしまうのです。
そう、おそらくですが、『世界標準の経営戦略』には28理論しか掲載されてないのです!
うーん、どうでもいいですね。すいません。