『人を動かす(D.カーネギー)』の書評とサクッと要約|友人を獲得して人に影響を与える方法

人を動かす ビジネス
人を動かす(D・カーネギー著)

カーネギーの『人を動かす』は、1936年に刊行されたデール・カーネギーの著書。今になってなお読み継がれている、人が人に影響力を及ぼすための原則をまとめた不朽の名著。

「人を動かす」というのは日本語題であって、英語の原題は“How to Win Friends and Influence People”です。直訳すると「友達を獲得して人に影響を与える方法」です。ハウツー本…というと安っぽくなりますが、友達やパートナーになるメソッドと言い換えても大きな間違いではないでしょう。目次に書かれている原則を眺めてみてください。「友達を作る」というタイトルだったとしてもイケそうな気がしてきませんか?この本を読みだすコツは、「人を動かすには、まず仲良くなること」なんだと思うんです。もちろん、『影響力の武器』という考え方もあると思うんですけど、お互いに気持ちよく過ごしたいものですよね。

さて、この本は長きに渡り語り継がれている本。名著の部類に入るでしょう。日本で500万部を超えるほど売れているということで、超ベストセラーなわけです。

私が初めて手に取ったのは、最初に入った会社の人事の方がお薦めしてくれたときでした。当時22歳の私は、たいして本も読んでこなかったし、しかもビジネス書というかリーダーが読むような内容な本に、あまり関心を持てませんでした(先輩、すみません…)。それから別の会社に行ったとき、なぜか年末年始の課題図書的な感じで、レポートを書かされるということもありました。そのときもイケてない読書感想文どまりの理解。しかし…それから私もマネジメントをする立場になったとき、10年も興味が薄かった本に自然と向き合うようになり、本書をついに読み解くこととなったのです。今ならレポートも書けますね。読書というのは、自分の課題と向き合っているときに、本と対話しながら仮説を立てていくもの。マネージャーになって読んだ私には、チームの生産性を上げるためのヒントが盛りだくさんでした。

今回また改めてざっと目を通しました。やはり読めば読むほど、わが身を振り返る反省。どんどん出てきます。昨今のマネジメントやリーダーシップの本のほとんどの要素がこの本に詰まっている。例えば『恐れのない組織(心理的安全性)』であったり『他者と動く』『LISTEN』などでも全然通じます。

特に「人を変える9原則」の章がとても身近で実践的な考えが浮かんできます。でも私の場合、この本から離れるとすぎに忘れてしまい、再び読んでハッとする…この繰り返し。経営者の方々のなかにも、『人を動かす』を擦り切れるほど何度も読まれている方もおり、それがとてもよく分かります。

ちなみに『人を動かす』には、文庫版と新装版(ハードカバー)があり、購入に迷う方もいるかと思います。その違いは何かというと、「幸福な家庭をつくる七原則」のあるなしです。なくてもいいとは思いますが、それ以外の原則と一味違うので、ハードカバーのほうがいいかなーと思います。といいつつ、今私の手元にあるのは文庫版!

しかし、この本はなかなか読み進めにくいです…エピソードが日本人に馴染まないのか頭に入ってこない。だらだらと書かれている印象で、じっくり読まないといけない。そこで活用できるのがAmazon Audible。ラジオ感覚で聞けるのでめちゃくちゃ使いやすいです。電車のなかで聞けば、いつでも原点に戻れます!

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本の概要と要約

著者の課題
成人教育、人間関係を良好にするための社員研修で活用するため役立つような適切な書物が一冊も出版されていない。

解決方法
教材がないので、やむを得ず自分でそれを書く決心をした。新聞、雑誌、裁判記録をはじめ、心理学書、哲学書、その他人間関係の問題に関連のある書物を調べ、フランクリン・ルーズベルトやクラーク・ゲーブルなど各界の名士を大勢訪ねて直接にその談話を集め、調査の結果を「人を動かす原則」としてまとめ、小さなカードを作って講習会の教材とした。 (その後、講習会の回を重ねる毎にカードが増補され、パンフレットになり、ついには一冊の本となった)

内容
※ほぼほぼ目次があれば要約されていると思いますが、あえてまとめるなら…
人を動かす方法
・人を動かす三原則
 -以降の原則のベースとなる三原則
 -人それぞれの考え方や環境がある
 -何よりも重要なのは相手が自分をどう評価しているか
 -本当のニーズをつかむ
・人に好かれる六原則
 -相手から好意を持たれる方法
 -こちらが相手に関心や好意を持つ
・人を説得する十二原則
 -人にお願いを聞いてもらう方法
 -対立するのを避ける
 -相手の話をよく聴く
・人を変える九原則
 -人の意識を変える方法
 -ほめて伸ばす
 -謙虚になる
・幸福な家庭をつくる七原則
 -パートナーと長く健やかに過ごす方法

著者:D・カーネギーとは

デール・カーネギー (Dale Carnegie) は、1888年にアメリカのミズーリ州の農家に生まれました。州立の学芸大学に学んだものの、劣等感に悩まされていて、それを克服するために弁論を研究したそうです。大学卒業後は、教師、セールスマン。食肉会社員、行商人など様々な仕事を経験し、劇団員となり俳優を目指すも挫折するなど、その人生の道のりはとても一本道ではありませんでした。やがて YMCAの弁論術講座を担当することになったことが転機となりました。始めは一晩に2ドルの報酬しか得られなかったものの、徐々に受講者が増えていき、報酬が30ドルとなったカーネギーは、ついに成人教育に自分の適正を見出したのです。カーネギーは、アメリカにおける成人教育、人間関係研究の先駆者となりデール・カーネギー研究所の所長として、話術ならびに人間関係の新分野を開拓しました。

●公式
[特設サイト]D・カーネギー世界的ロングセラー – 創元社
※中田敦彦さんのYoutube大学の動画がエンベットされてるってことは、案件だったんですかね笑

本の解説と感想

文庫版と新装版の違い

『人を動かす』には、いくつかの訳本が存在します。どういう権利になっているのかは不明ですが、そもそもカーネギーが1919年に亡くなっているので、ベルヌ条約が定める死後50年有効な著作権範囲を超えているということもあり、もはやどの出版社でも出せるのかもしれません…

数ある『人を動かす』の邦訳版のなかでもメジャーなのは、創元社から出ている、文庫版と新装版です。この2つのバージョン、本文は同じなのですが、新装版にあって文庫版にないのが巻末付録にある「幸福な家庭をつくる七原則」です

文庫版でなぜか外されている箇所ではありますが、まあ「人を動かす」で伝えたい内容はなくても十分。なぜなら「幸福な家庭をつくる七原則」の部分だけ毛色が違うからです。 英語タイトルは”How to Win Friends and Influence People” 。本書のメインはあくまでも友人を作ることで、家庭の話はおまけなのかなと思います。

ちなみにAmazon Audible版『人を動かす方法』はしっかり「幸福な家庭をつくる七原則」もあります。

人を動かす三原則

盗人にも五分の理を認める

人を動かす原則1「批判も非難もしない。苦情も言わない」

すべてを知れば、すべてを許すことになる

『人を動かす』盗人にも五分の理を認める

どんな凶悪犯も、他者からみれば「悪い」ことでも、自分では悪いことだと思っていないということもあるというのです。私はそこまで寛大になれない…というのが正直なところですが、身近なところであれば往々にしてその通りだとも思います。誰も好き好んで嫌われようと思うことはないからです。

悲劇的な事件が起きたとして、それを犯した本人が悪いのは間違いないですが、その人が置かれた環境があり、その影響で犯罪に走らざるを得ないこともあるのでしょう。その背景を私たちは知らないのです。

本原則の好きなエピソードは飛行士のエピソードです。航空ショーの花形パイロットが、飛行中にエンジンが止まってしまい、幸いに巧みな操縦で着陸できたのですが、どうやら若い整備士が異なる燃料が積まれたために発生した事故だと分かりました。パイロットは怒って当然ですが、整備士に向かって「君は二度とこんなことを繰り返さない。私は確信している。確信している証拠に、明日、私のF-51の整備を君に頼もう」と言ったそうです。惚れますやん、こんなん。

この原則は、「人を動かす」ための大前提です。本書のトップを飾るに最も適したものでしょう。

重要感を持たせる

人を動かす原則2 「率直で、誠実な評価を与える」

嘘ではない心からの称賛を与えよう

『人を動かす』 重要感を持たせる

人の役にっているという感覚を持ったとき、もっと貢献したいと思ったり、自分を評価してくれている人に好意を抱くことは多いでしょう。それは自分自身だけでも妄信的に思い込めば効果が発揮されることもあります。

他人からの評価を気にしない人はいないし、お世辞を好まない人もいません。しかし見え透いたお世辞はお世辞が気持ち悪いと思うこともありますよね。お世辞の定義とは、「相手の自己評価にぴったり合うことを言ってやること」なんだそうです。相手の興味関心を掴み、誠実に応えていくことが大事だと言えますね。

本原則の好きなエピソードは子どもへの関心のエピソードです。みなさんも小さいころテストで良い点数をとったとき、ほめられたりして関心を示されたとき、嬉しかったでしょう? そういうことです。

人の立場に身を置く

人を動かす原則3 「強い欲求を起こさせる」

この子は、何を一番望んでいるだろうか?

『人を動かす』 人の立場に身を置く

この原則は「友達をつくる」とうより「人を動かす」という方向性が強いですね。この原則では子どもの話がよく理解できます。ある偏食で痩せている子に、ちゃんと食事をとってもらいたい親が「ちゃんと食べて」と言ってもなかなか言うことを聞きません。そこで子供を観察すると、どうやら近所にガキ大将がいてよく泣かされていることが分かった。父親は「お母さんの言うものを何でも食べれば、いつかあの子よりも強くなるよ」と言うと、たちまち偏食の問題がなくなったのだとか。

人に好かれる六原則

誠実な関心を寄せる

人に好かれる原則1 「誠実な関心を寄せる」

犬はただ愛情を人に捧げるだけで生きていける

『人を動かす』 誠実な関心を寄せる

「もしあなたが相手に関心を持たないとすれば、どうして、相手があなたに関心を持つ道理があるだろうか?」という問いにはっとします。人間というのはどうしても自分だけに関心が行きがちではないでしょうか。他人にしっかりと感心を向けることができれば、相手もこちらに関心を持ってくれる可能性はありますよね。最も身近なのがワンちゃん。犬です。犬は僕らが近づけば尻尾を振って見つめてきます。僕らはそんな犬を見て屈んで顔を撫でます。そうするとさらに犬は腹を見せたり… 

人間関係はここまですぐにはいかないと思いますが、こういった反応の応酬で良好になっていくんでしょうね。

笑顔を忘れない

人に好かれる原則2 「笑顔で接する」

笑顔は好意のメッセンジャーだ

『人を動かす』笑顔を忘れない

笑顔って素敵ですよね。表情がない人よりも笑顔の人のほうが、話しかけるハードルが圧倒的に低い。コストゼロで人の心が豊かになする最強のツール。マクドナルドのスマイルゼロ円は、すごくうまくブランディングされていて、注文するほうも受け取った店員もドキドキと笑顔になって、それだけで楽しくなるわけです。

平時からニコニコしているとおかしな人間い見えますが、普段からあごを引くようにして、少なくとも偉そうには見えないようにしないとですね。

名前を覚える

人に好かれる原則3 「名前は当人にとって、最も快い、最も大切な響きを持つ言葉であることを忘れない」

有権者の名前を覚えること――それが、政治手腕と言うものである。それを忘れることは、すなわち、忘れられることである

『人を動かす』名前を覚える

名前というのは自分にとっての最大のパーソナリティだと思います。初対面の人と会議をしていて、自分の名前で呼びかけられると、「自分を求めてくれている」「自分をしっかりと認識してくれて話してくれている」と思います。この感覚、ありますよね。そういった感覚があるので、私もなるべく名前で問いかけるようにしています。採用面接のときは会社の代表として求職者と話すことになるので、なおのこと心がけています。

昔、私が若いころ名刺交換した人で、その人はとても有名な人だったのでこちらは覚えていたのですが、反対に先方はいちいち覚えていられないだろうな…というくらいの人が、数年後に偶然に街で私の名前を呼んで話しかけてくれました。めちゃくちゃ興奮したのを覚えています。

聞き手にまわる

人に好かれる原則4 「聞き手にまわる」

話上手になりたければ、聞き上手になることだ

『人を動かす』聞き手にまわる

最近、『LISTEN』という本を読みました。その本によれば「うん、うん」と話を聞くことが大事なのではなく、興味をもって聞くということこそが大事なのだと言います。その本そのままなのが、この原則。

話している相手が、話をするのが楽しくなるという場になりさえすれば、すでにきっと好かれてますよね。よくモテる男性は女性の話に共感するということがよく言われますが、おそらく近い話ですね。喋りたいことをしゃべりつくすには、一方的に受け止めるだけでは果たせません。相手に興味をもって、相手が話す内容にも関心をもっていくことで到達することができます。

関心のありかを見抜く

人に好かれる原則5 「相手の話題を見抜いて話題にする」

ルーズヴェルトは、誰か訪ねてくる人があるとわかれば、その人の特に好きそうな問題について、前の晩に遅くまでかかって研究した

『人を動かす』関心のありかを見抜く

すでに何度も言っているように、人から好意を抱かれるためには、相手に関心を抱く、正確には相手に「私はあなたに関心があります」と思ってもらうことが大事です。いけてる営業は、提案先の人の興味関心をしっかりつかんで、その解決方法をしっかり提案しようと動きますし、そういった課題を捉えるためにその人そのものに関心をもって、どんな人なのかを会話のやりとりで探っていきます。そのときに身にならなくても、何かあった時に思い出してもらえるだけでもいいのですから。

心からほめる

人に好かれる原則6 「重要感を与える――誠意を込めて」

ロゼッティは自分を重要な存在だと考えていた。当然のことだ。人間は、ほとんど例外なく、そう思っている

『人を動かす』心からほめる

ある庭師が有名な法律家の庭づくりをしていた際、その法律家に「立派な犬を飼ってますね」「品評会でも評価されたようですね」と語りかけると、法律家が家の中に招いてくれて次々に自慢の話をした最後に、血統書付きの犬をもらったといエピソードがありました。何がその人によって最大の関心ごとなのか、その関心事について誠実に評価をして褒めることができれば、間違いなく嬉しいはずです。

気をつけなければいけないのは、こういう褒められるところに嘘も混じっている可能性があり、意図的に調子に乗らせることもあるということです。私たちが褒められる立場になったとき、このあたりをしっかりと吟味できるようにならないと、知らないうちに騙され、ちょろいやつだと思われてしまいます。気を付けましょう。

人を説得する十二原則

議論を避ける

人を説得する十二原則1 「議論に勝つ唯一の方法として議論を避ける」

議論に負けても、その人の意見は変わらない

『人を動かす』議論を避ける

孫氏』に「兵とは国の大事なり。死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり」と、そもそも戦争する前に、戦争したらホントに大変だから戦う前によく考えようぜ!という教えがあります。議論を避けるというのはここに通じる気もします。

この原則は確かにその通りです。でも議論がなかったら、会社組織の場合、健全に前に進むんでしょうか?そこは疑問が残ります。なので使いようなのではないかと思います。「議論に負けても、その人の意見は変わらない」というのは至言で、そのことを前提にして人間関係を考えていくのが良いのではないでしょうか。

誤りを指摘しない

人を説得する十二原則2 「相手の意見に敬意を払い、誤りを指摘しない」

間違いを指摘して、一流の有名人に恥をかかせるという大失策をやってのけたのだ

『人を動かす』誤りを指摘しない

これは気を付けなければいけない。人に恥をかかせることは、進んで人に嫌われるようなものです。このブログを書きながら、「あー、そういえばあれ、やっちまった…」ということを思い出してしまいました…。人にはプライドがあるんですよね。特に人前で指摘するのはNGでしょう。また、部下への厳しい指摘や評価も、人前でやってはいけません。1on1、個室でやるようにしましょう。

この原則の本文にありますが、ジェイムズ・ロビンソン『精神の発達過程』によれば、私たちは自分の考えを自ら変えるということは実は簡単にできるものの、他人から誤りを指摘されると腹を立てて意地を張って反対してしまうのだそうです。怒ってしまうとなかなか謝れないのが人間ですよね。私も改めて気を付けます…

誤りを認める

人を説得する十二原則3 「自分の誤りを直ちに快く認める」

すみやかに自分の誤りを快く認めることにしよう。この方法には予期以上の効果がある。そのうえ、苦しい言いわけをするよりも、このほうが、よほど愉快な気持ちになれる

『人を動かす』誤りを認める

「誤りを認める」って、自分のためにも必要だと思うんです。私はよく使います。例えば、何かに対して反射的に怒ってしまったとき、冷静に考えると相手の立場からしてもどうしようもなかったことや、単なる誤解だったこと、もしくはそもそも自分の論理の整合性が取れていなかったことなど、あとから気が付くことが結構あります。

そうしたとき、もやもやを解消せずに先に進んでしまうと、自分にも非があったかもしれないと思ったまま自分と相手との溝が深い関係性が通常になってしまいます。そうなると関係性の回復はどんどん難しくなってきます。だからこそ早めに「誤りを認める」ことをして、相手にも自分がなぜ誤ってしまったのかを伝えることができればリセットされます。ほんとにこれ、魔法です。

穏やかに話す

人を説得する十二原則4 「穏やかに話す」

もし相手を自分の意見に賛成させたければ、まず諸君が彼の味方だとわからせることだ

『人を動かす』穏やかに話す

なによりもケンカ腰で話すことで解決することはないと思いましょう。それで解決すると思っているのは自分の意見を押し付けようとしているのにほかならず、相手の反応は同じように激情で反論が来るか、ストレスに負けてハラスメントの被害者になるかです。

穏やかに話すことは、怒りをぶつけてくる相手に大変有効です。本書の事例でロックフェラーの労働組合によるストライキが取り上げられています。なんと2年も続いたそうです。この解決のためロックフェラー二世は、組合側の代表者たちを集め、話し合いの場を作り、その場でロックフェラーは友情に溢れる態度で演説をしたそうです。そうすると2年も賃上げ要求をしてきたことに何も言わずに職場に復帰したのだそうです。ロックフェラーは2年もの間、何やってたんだと言いたくなりますが、とにかく効果が絶大だったということです。

身近でもかなり有効だという実感があります。理不尽に怒っている人からめちゃくちゃに言われることがありますが、私の場合、相手の言葉にずっと耳を傾け、言うことがなくなるまで反論をせずに受け止めます。こちらの主張もせず、穏やかに「そうだったですね」「そう感じたんですね」と事実だけを返すんです。そうすると相手は言うことが無くなるので留飲が下がっていきます。相手は言いたいことを言えるので、理解してもらえたと感じてくれると思います。

”イエス”と答えられる問題を選ぶ

人を説得する十二原則5 「相手が即座に”イエス”と答える問題を選ぶ」

はじめに”ノー”と言わせてしまうと、それを”イエス”に変えさせるには、大変な労力がいる

『人を動かす』 ”イエス”と答えられる問題を選ぶ

これは交渉術としても積極的に用いられるようです。人と何か問題となることを話すとき、必ず主張の異なる点があるため、最初に肯定的な流れを汲み、事実を打ち出し、相手に考えさせるというものです。なかなかパッと「イエス」と答えてもらうのは難しいように思いますが、当たり前のことでつなぐこともできそうです。本書のなかでは、「○○だから、あなたのところのモーターは発注しない」というクレームに対し、「たしかに○○であれば、他の製品を選びますね。そうでしょう?」というめちゃくちゃ当たり前でまるで生産性がないような質問から入っていきます。そこから畳みかけていくという感じですが、これは訓練して慣れるものでしょうね…

しゃべらせる

人を説得する十二原則6 「相手にしゃべらせる」

味方をつくりたければ、友に勝たせるがいい

『人を動かす』 しゃべらせる

ここまでくると、若干繰り返しな部分もありそうですが、相手に関心を持ち、聞き手にまわり、穏やかに構え、相手がしゃべりたいことを好きなだけしゃべらせることができれば、こっちのものです。

ある企業の採用面接で、応募者の男性が社長に「聞くところ無一文から会社を始めたとききましたが本当ですか?」と尋ねたそうです。すると社長はサクセスストーリーを長々と話始め、一通り終わった後に簡単な履歴の確認をしたあと、即採用の運びになったという。応募した男性は面接の前に相手について相当調べ上げ、しゃべらせ、好印象を与えたのです。しゃべったから採用なのか…という違和感はあるのですが、私の面接経験からすると、志望度はこういうところからしか測れないので、間違いなく会社や経営者に関心を持つことはプラスに働きます。

思いつかせる

人を説得する十二原則7 「相手に思いつかせる」

他人から押し付けられた意見よりも、自分で思いついた意見のほうを、我々は、はるかに大切にするものである

『人を動かす』 思いつかせる

マネジメントの世界でも大変重視される原則です。従業員満足度が事業の生産性に影響を与えるというのはなんとなく分かりますよね。その満足度を高めるひとつの要因が、自分の考えを実行できるという自由度の幅があります。

自分が好きなことのほうが圧倒的に習熟度は高いですよね。それと同じように、他人から命令されたことよりも、自分で考えた(と思いこむ)プランのほうが、その実現に自己責任が生まれるため、自然と動くようになるんですね。

しかしマネージャーとしては、勝手に動かれても困ってしまうので、そこはうまく誘導してあげないといけません。例えば「イエスと答える質問」をなげかけ、最後にオープンクエスチョンで自分が考えたような結論が出せるとよいですね。

人の身になる

人を説得する十二原則8 「人の身になる」

非難は、どんな馬鹿者でもできる。理解することに努めねばならない

『人を動かす』 人の身になる

相手の立場になる、ということは物事を進めていくうえで重要な要素になると思います。会社でも家庭でも、合理的に考えればやったほうがいいことがあっても、抵抗を持つ関係者が少なからずいるわけです。その人たちからすれば、「自分が悪者にされる可能性がある」とか「いままでやってきたことが否定される」「損をする」など理由は様々なわけです。でもやらなければならないわけです。真正面から言ってしまえば、ふてくされたまま、その人との関係性は悪化してしまうかもしれませんが、相手を理解し、何が気がかりなのかを把握してから言い方や進め方を変え、少しでもマシな進め方ができるはずなのです。

本書では、カーネギーの近所の林のなかで、少年たちが火の不始末で火事を起こしてしまうことが取り上げられていました。当初は警官のように行動してしまい、結果として少年の行動は変わりませんでした。カーネギーは考え直し、彼らの楽しみを応援し、認め、代わりに落ち葉の掃除や、火を使う時の場所はここにしてほしいと伝えたそうです。そうなると彼らも協力してくれたのだそうです。

同情を寄せる

人を説得する十二原則9 「相手の考えや希望に対して同情を寄せる」

不幸な自分に対して自己憐憫を感じたい気持ちは、程度の差こそあれ、誰にでもあるのだ

『人を動かす』 同情を寄せる

人を説得しようと試みるのであれば、相手の感情に配慮することも大切になってきます。何かに対して怒りを持っている人がいたら、何かしら本音をえぐられるような悔しさがあったに違いありません。怒りに対して怒りで応えるばかりでは逆なでするばかりです。

美しい心情に呼びかける

人を説得する十二原則10 「人の美しい心情に呼びかける」

人間は誰でも正直で、義務を果たしたいと思っているのだ

『人を動かす』 美しい感情に呼びかける

ビジネスの場面で、取引先や関係者との間で意見の相違が出て、ハードな交渉の場面になることがあります。このとき、私は「大きなところでは目標は一緒なはず」という気持ちで臨みます。「イエスと言う」原則とも絡んでいくのですが、「大目標は一緒だよね→イエス」というステップを踏むと、呉越同舟、お互いの落としどころを模索し、解決策を求めようという動きが少なからず出てくると思います。このときの大目標が、否定できないものであればあるほど、人は自らの心情に問うて、腹落ちさせてくれる…と信じてます。

演出を考える

人を説得する十二原則11 「演出を考える」

単に事実を述べるだけでは十分ではない

『人を動かす』 演出を考える

本書の例では、例えば広告手段(ラジオ、CMなど)によって動かされる、商品の利点をドラマチックに演出してよく見せるというものです。確かに現代でも広告の演出によって、人は行動させられることもあります。

最近の話でいえば、『D2C』のように、世界観で売るというところにも通じます。顧客がそのブランドの存在意義、ストーリーに共感することで引き込まれていく。ビジネスの話でいえば、多くの製品が大衆化し、差別化が難しくなっている時代において、演出による付加価値というのはますます大きくなっていきそうです。

対抗意識を刺激する

人を説得する十二原則12 「対抗意識を刺激する」

存分に腕をふるって相手に打ち勝つ機会、これが、いろいろな競争や競技を成立させる

『人を動かす』 対抗意識を刺激する

なかなか刺激的な原則です。負けん気は人の努力を喚起させるものだと思います。まったく成功しませんでしたが、私は子どもの頃かなり太っていて、かけっこでいつもビリでした。でも悔しかったから練習はするんですよね。ビリは嫌だ!って。

ビジネスにおいては気をつけなければならない点もあります。数値競争はそれ自体が目的になってしまう可能性もありますし、マネジメントする側も、数字で追い込むことになりかねません。不正がおこってしまうかもしれません。

人を変える九原則

まずほめる

人を変える九原則1 「まずほめる」

我々は、ほめられたあとでは、苦言もたいして苦く感じないものだ。理髪師はかみそりをあてる前に接見の泡を塗る

『人を動かす』 まずほめる

「ほめる」というのは「認める」ということに近い気がします。本のなかで、選挙演説の原稿の話が印象的です。マッキンレーが大統領選に出馬したとき、ある共産党員が名演説を自負する草稿をもってきたものの、マッキンレーからすれば使い物にならないものだったそうです。そのままストレートに伝えて、自尊心を傷つけたくなかったので、まず存分に褒め、でもここが今回の場合はまずいので、こういう趣旨で書き直してほしい。そう言うと議員は大いに納得して書き直したそうです。

遠まわしに注意を与える

人を変える九原則2 「遠まわしに注意を与える」

“しかし”という言葉を聞いたとたん、今のほめ言葉が果たして本心だったのかどうか疑いたくなる

『人を動かす』遠まわしに注意を与える

遠まわしに注意を与える、というので想像したのは直接その人に言わず、間接的に人づてにうわさを聞くなどして「こっちのほうがいい」と思わせることかなと思いましたが、ここでは表現を変えるということのようです。

「○○はよかったね。でも、○○ができたらもっとよかった」という言葉はほめて落しているのですが、これを「○○がよかったね。そして同じようにやっていれば○○もできるようになるね」と言い換えるという。何度も言うようですが、直接的に批判をされたりすると、かえって意固地になることがあるので、そうしないための手段のひとつですね。

自分の過ちを話す

人を変える九原則3 「まず自分の誤りを話したあと相手に注意する」

謙虚な態度で、自分は決して完全ではなく、失敗も多いがという前置きして、それから間違いを注意してやると、相手はそれほど不愉快な思いをせずに済むものだ

『人を動かす』自分の過ちを話す

謙虚になる、というのはあらゆることにおいて重要です。さも自分が完璧超人であるかのように装っても、実はそうではないことは近しい関係者はお見通しだったりします。人に気持ちよく動いてもらうためには、自分もできていないことがあるので、と弱みを見せ、開かれた関係になるとスムーズにいくことが多いです。「あんたはどうなんだよ」と思われたら、関係性は開いていくばかりです。

命令をしない

人を変える九原則4 「命令をせず、意見を求める」

自主的にやらせる。そして、失敗によって、学ばせた

『人を動かす』命令をしない

人というのは、自分の選択で行動することには前向きに取り組む性質があります。一見、命令のように見えても、「私はこう思う、あなたはどう思う?」という言い方に変えると、自分の意見として「こう思う」ということになり、指示される気持ちにはなりにくいです。

命令になってしまうと、責任は命令した側にしかなく、またなぜそうしなければいけないのかを考えることがなくなるので、人間の成長の観点からでも意見をだしてもらうように心がけることは大切ですね。

顔をつぶさない

人を変える九原則5 「顔を立てる」

顔をつぶすことは、相手の自尊心を傷つけるだけに終わる

『人を動かす』顔を潰さない

メンツってめちゃくちゃ重要です。本のなかで重要人物の異動の話がありました。優秀な人物ではあるものの気難しく現職は不適格であり、部長職としては外さざるを得ないという状況。会社が彼のメンツを保つために「顧問技師」という役職をつくると、彼はそれを喜んで引き受けたのだとか。自尊心を傷つけるとモチベーションが下がる危険性があります。内部の話ではなく、外部との話においてもメンツは重要です。ある取引先とのやりとりにおいて、現場を通り越して上同士で話が決まってしまったとしたら、それまで現場でやりとりしていたことが無に帰すわけです。

わずかなことでもほめる

人を変える九原則6 「わずかなことでも惜しみなく心からほめる」

批判によって人間の能力はしぼみ、励ましによって花開く

『人を動かす』わずかなことでもほめる

「ほめる」というので分かりやすかったのが動物の訓練の話。サーカスでは動物が登場し、驚くようなアクションをしたりします。イルカショーなんかも冷静に考えると不自然なほどの動きで私たちを魅了します。こうした訓練では、ひとつひとつの行動で成功したら褒めて伸ばしてるんですよね。ちょっと刺激的なことばを引用します。「我々は、このわかりきった方法を、なぜ人間に応用しないのだろう?」と。

人を自然に褒められますか?私はできていません。恥ずかしい気がするし、本音でいえてない気がするので。でもそうだよなとは思うわけです。急にほめたがりになったら、キャラ変した感じになって違和感あるよな…

期待をかける

人を変える九原則7 「期待をかける」

君が一番の頼りよ。頼むわね

『人を動かす』期待をかける

こんなことを言われたら、がんばりますよね?仕事に前向きに取り組んでもらう時には、その仕事の意義とやりがいを明確にしてあげることです。やりがいを構成する要素は複雑ですが、そのなかには仕事をやり切ったときの評価であったり、責任感というものがあるように思います。あるプロジェクトの成功に自分自身が欠かせないのだ、求められているのだと思ったら、嫌な気はしないはずです。ただし、見返りもあって然るべきでしょう。名誉かもしれないし、金銭かもしれませんが、報いがなければ続きません。

激励する

人を変える九原則8 「激励して、能力に自信を持たせる」

馬鹿だとか、能なしだとか、才能がないとか言ってののしるのは、向上心の芽を摘み取ってしまうことになる。その逆を行くのだ

『人を動かす』激励する

ほめる、ということと近いですね。激励とは信じることであり、支援することではないでしょうか。失敗を続けている人がいたとして、才能がないなんて言ってしまえば、そこでその人は立ち止まってしまうかもしれません。本当にできなければ仕方がないのかもしれませんが、私たちがその人であれば乗り越えられる、乗り越えて欲しいと思っているのであれば、支援すべきでしょう。

喜んで協力させる

人を変える九原則9 「喜んで協力させる」

人に物を頼む場合、その頼みが相手の利益にもなると気づくように話せ

『人を動かす』喜んで協力させる

メリデメのような単純な話もあるでしょうが、顔をつぶさない原則とも似ている側面もあるようです。

第一次世界大戦に参加するのかどうかという岐路に立たされたアメリカは、平和を回復できるかどうか、各国の指導者と協議するために使節を派遣することにしました。国務長官のブライアンは自分こそその役割をになうものと思っていたものの、ウィルソン大統領はハウス大佐をその職に任命することにしました。そのとき、任命されたハウス大佐はブライアンに対し、ブライアンが大人物すぎるので世間が注目してしまうため相応しくないのだと言って、ブライアンを満足させたのだとか。

人は誰しも、何かしら自分の欲を満たしたいと思っています。そのメリットを享受できるように示唆することは人を動かすために必要な、強かな手段なのかもしれません。

まとめ

なんだか、後半になるほど被りがでてきて何が違うんだ?と頭を悩ませがちになりますね。大切なのは原則をすべて覚えるということではなく、人と仲良くなるにはどういうことを考えればいいのか、自発的に動いてもらうためにはどんなことに気をつければいいのかが掴めればいいのではないでしょうか。

この本を読むたびに原点に返って、身を正す。これの繰り返しです。

本の目次

  • PART1 人を動かす三原則
    • 盗人にも五分の理を認める
    • 重要感を持たせる
    • 人の立場に身を置く
  • PART2 人に好かれる六原則
    • 誠実な関心を寄せる
    • 笑顔を忘れない
    • 名前を覚える
    • 聞き手にまわる
    • 関心のありかを見抜く
    • 心からほめる
  • PART3 人を説得する十二原則
    • 議論を避ける
    • 誤りを指摘しない
    • 誤りを認める
    • 穏やかに話す
    • ”イエス”と答えられる問題を選ぶ
    • しゃべらせる
    • 思いつかせる
    • 人の身になる
    • 同情を寄せる
    • 美しい心情に呼びかける
    • 演出を考える
    • 対抗意識を刺激する
  • PART4 人を変える九原則
    • まずほめる
    • 遠まわしに注意を与える
    • 自分の過ちを話す
    • 命令をしない
    • 顔をつぶさない
    • わずかなことでもほめる
    • 期待をかける
    • 激励する
    • 喜んで協力させる
  • 付録 幸福な家庭をつくる七原則
    • 口やかましく言わない
    • 長所を認める
    • あら探しをしない
    • ほめる
    • ささやかな心尽くしを怠らない
    • 礼儀を守る
    • 正しい性の知識を持つ
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