『恐れのない組織』の書評とサクッと要約|勝つためにプレーする組織のつくりかた

『恐れのない組織』の要約 ビジネス
『恐れのない組織 』(エイミー・C・エドモンドソン著)

『恐れのない組織 「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』は、2019年頃から日本でもブームになりつつあったワード「心理的安全性」の提唱者であるエドモンドソン教授の本です。

最近、部下から「心理的安全性がない」ということで意見書を出されたのがショックで引きづっています。でも率直に言えている環境ではあるのか…?何が難しいかというと、なんでも言い合えることや、失敗を許容することは、仲良しこよしの職場ではないということ。それを求められてしまうとチームとしての生産性は上がりません。人間関係にとらわれずに、建設的な発言と受容が必要だなと思うのですが、難易度は高いですよねー。

さて、本書について。さすがは英治出版と申しましょうか、全体的に綺麗にまとめられており、日本語訳もとても分かりやすい。本のボリュームもありすぎず、ほどよい。そもそも心理的安全性の概念は普遍性が高く、時代や世界に関わらずとっつきやすいため、わたしたちが日ごろ感じている職場での人間関係が想像しやすいということもあり、読みやすいのでしょう。

とはいえ、日本語訳が出版される前にすでに心理的安全性に関しては、2020年に出版されたZENTechの石川遼介氏が書いた『心理的安全性のつくり方』があります。エイミー・エドモンドソン教授の研究をベースとして、かみ砕いて解説されています。最初に読むのはそちらのほうがよいかと思います。(石川さん、マーケティングがうまいですねー)

原書から数年の時を経て日本語訳化された本書は、心理的安全性ついてすでにある程度の知識を持っている人向けと考えたほうが良いです。「言っていることはわかるけども…」と悩んでいる人への後押しや、「心理的安全性、最高!」と傾倒しすぎている人にブレーキをかけてくれます。

個人的な学びとして
・無知の人になる
・真実を恐れないことが大切
・心理的安全性は対人関係の不安を取り除くこと、と考えれば過度になることはない
・失敗できないことが本当の失敗
ということを持ち帰ることができました。

組織のリーダーが謙虚になるということはとても大事で、失敗を恐れず、わからないことにはわからないと言ったり、チーム全員が積極的な参加ができる環境を整えていきたいなと思いました。

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本の概要と要約

『恐れのない組織』の問題提起
『恐れのない組織』の問題提起

著者の課題
どんな優秀で意欲的な人でも、豊富な知識と高い技術うぃ必要とされるとき、必ずしも力を提供することができない。

解決方法
心理的安全性が一つの解決策。率直に行動できる企業風土をつくり、フィアレス(恐れのない)な組織にする。

『恐れのない組織』の要約
恐れのない組織はミスを報告する絶対数が多い
『恐れのない組織』の要約
恐れのない組織をつくるにはリーダーの働きかけが重要

内容
・蔓延する沈黙
 -私たちは、他人に無知・無能に思われたくない
 -私たちは、情報をコントロールし自分の印象に影響をもたらそうとする
 -私たちは、リスクを冒すより安全地帯にとどまりたい
 -発言で対人関係のリスクを負いたくないので沈黙が勝ってしまう

・心理的安全性とは
 -対人関係のリスクをとっても安全だと信じられる職場環境

・成果を上げるチームほどミスが多いのはなぜか
 -成果の高いチームは何でも率直に言えるからミスの報告が多い
 -成果の低いチームは恐怖や体面を気にしてミスの報告が少ない

・沈黙は危険
 -沈黙は誰も得をしない
 -発言すれば避けられた失敗がある

・フィアレス(恐れのない)な組織を作るには
 -沈黙ではなく率直さ
 -不安ではなく積極的な参加
 -心理的安全性のない組織とある組織の違いは、負けないためにプレーするか、勝つためにプレーするか

・実現させるには
 -遠慮なく失敗する
 -徹底した透明性と素直さ
 -無知を恐れない
 -土台を作る
  -フレーミングする(事故の調査→研究と言い換える)
  -意欲を刺激する
 -参加を求める
  -発言が歓迎されているという確信が持てるようにする
 -生産的に対応する
  -悪い報告に感謝する
  -失敗は恥ずかしくない

『恐れのない組織 「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』とは?

『恐れのない組織』は、2018年に刊行された心理的安全性の提唱者である、エイミー・C・エドモンドソン教授の”The Fearless Organization : Creating Psychological Safety in the Workplace for Learning, Innovation, and Growth”の邦訳版です。

Googleが立ち上げた生産性が高いチームについての研究「プロジェクト・アリストテレス」で注目を集めた心理的安全性が、これからの組織にとってなぜ重要なのかを、ピクサー、フォルクスワーゲン、東日本大震災における福島原子力発電所など様々な事例を取り上げ、人間が抱く対人関係への悪影響を懸念する不安という心理が、いかに組織にとって危険であるか、そして、それを乗り越えた組織のあり方を描いている。理論と豊富なケーススタディを軸に、実践への示唆までを語る包括的な一冊。

本書の構成は3部立て8章。
第1部(1,2章)は、心理的安全性の概念とその研究史。
第2部(3~6章)は、実例によるケーススタディ。
第3部(7,8章)は、実現方法と心理的安全性に関する質問と回答。

・ページ総数は320ページとありますが、本文内容は250ページ程度
・1ページ当たりの文字数は、19行×44文字(836文字)

著者:エイミー・C・エドモンドソン

ハーバード・ビジネススクール教授。専門領域はリーダーシップ、チーム、組織学習。2011年以来、経営思想家ランキング「Thinkers50」に選出され続けている。彼女の論文は、Harvard Business Review、California Management Review、Administrative Science Quarterly、Academy of Management Journalなどに掲載されている。また、多数の受賞歴があり、2004年にはアクセンチュア賞、2006年にはカミングス賞を受賞している。著書に『チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ』(英治出版)がある。

●インタビュー
恐れのない職場がトヨタの強み ハーバードが見る組織(NIKKEI STYLE 2019/11/4)

●SNS
Twitter @AmyCEdmondson

本の解説と感想

心理的安全性の重要性

どんな人でも朝、目覚めて気が重いのは、勤め先で無知・無能に見えたり混乱をもたらす人だと思われたりする場合だ

『恐れのない組織』p26

失敗したことを報告することで、「怒られる」「厄介ごとを引き起こした」など、職場で悪い方向に思われてしまうのではないかと恐れることで、何も言わない「沈黙」という選択をしてしまう。多くの人に経験のあることではないでしょうか。

人間はどうしても、対人関係のリスクを冒すのを気にしてしまう性質を持っています。しかし、冷静に考えてみれば「失敗」したことは厳然とした事実であり、それを報告されたからといって怒ることに何も意味はありません。誰も得することはないのです

それどころか、対人関係のリスクを恐れることでコミュニケーションが阻害されると、業務上重大な事故につながることだってあります。

本書のなかで心理的安全性が示す重要な例があります。ある医療ミスについての調査での予想外の発見です。著者はたまたまこの調査に参加する機会があり、チームワークが医療の誤り率にもたらす影響を調べていました。

研究者にとって喜ばしいことに、チームごとに人的ミスの数に10倍の差がつき、チームメンバー同士の尊敬し合う気持ちや満足度など、数値にばらつきがありました。ところが予想外だったことは、成果の高いチームのほうが、よりミスの数が多く、相関関係が予想に反していたのです。

ここに、率直に言える組織と言えない組織の差が生まれていたのです。つまり、心理的安全性が高いチームほどミスを報告するためにミスの数が多く、心理的安全性が低いチームはミスを報告しないのでミスの数が少ないということです。心理的安全性が高い職場であれば、事故につながることを未然に防げる可能性が高くなり、生産性も上がるということの証左ではないでしょうか。

発言と沈黙

VUCAに直面しているあらゆる企業にとって、心理的安全性は不可欠といってもいい職場環境の要素です。現場で働く社員の指摘、疑問、アイデア、懸念こそが市場と組織で起きていることについて重要な情報をもたらすからです。

では、沈黙が蔓延する理由はなんでしょうか。前述している通り、他人への悪印象であり、仕事上であれば人間関係への不安です。

リスクを冒して発言をしても、当事者である自分への効果は薄く、大抵は組織や顧客が効果を実感するものですが、その時間軸は即時性がなく、もしかしたらそもそも効果がないかもしれません。

ところが、沈黙という選択肢は、自分の身の保全という効果が即時確実に実感可能です。なので手っ取り早く安全地帯にいることができ、コスパのいい「沈黙」を選択してしまうのです。

回避できた失敗

心理的安全性のある職場であれば、回避できた失敗だったという事例をいくつか紹介しています。

例えばフォルクス・ワーゲンのクリーン・ディーゼル。

フォルクス・ワーゲンは2014年に世界最大の自動車メーカーの座に就きました。しかし2015年、クリーン・ディーゼルエンジンの不正が行われ、販売が停止となりました。当時、大きなニュースで日本のメディアでも大々的に取り上げられました。

この事件が発生した背景には、恐怖支配があったことが示唆されています。達成不可能に見える目標を課せられ、可能にできなければクビという恐怖支配に、ビクビクと言われることを実行し、命令に従わなければならない環境が出来上がっていました。

私たちがここから学べることは、真実を知ることを恐れない態度がリーダーに求められていることでしょう。

危険な沈黙

沈黙の文化とは、率直な発言を妨げるだけでなく、率直に発言する人の言葉に、とりわけその人がもたらす知らせが不愉快なものである場合には、注意深く耳を傾けられなくなる文化なのである。

『恐れのない組織』p119

「率直にものが言えない」という例で、飛行機事故はよく取り上げられます。機長と副操縦士の関係性において、機長のほうが上であるという価値観がある国では、その自己の発生件数が目立ったことがありました。副操縦士や整備士が違和感を伝えても、機長が聞かなかったり、そもそも沈黙してしまうからです。

日本においては、東日本大震災の福島原発事故も同様です。事故の可能性は指摘されていたものの、聞いてもらえなかった、つまりヒエラルキーに発現が抑制されてしまったという報告がったりします。

発言をしたとしても、上が聞いてくれなかったり、何も変わらなかったりすることが続けば、発言をすること自体が歓迎されないので、本来知っておかなければならない情報が届くことがありません。

報告に聞く耳もたないのも論外ですが、そもそも情報が入ってこないような仕組みになることを避けるべきです。

恐れのない(フィアレス)な組織

フィアレスな職場として、ピクサーやGoogleが事例として書かれています。

●ピクサー
忌憚のない意見を監督に伝える仕組みを作った。
①フィードバックは個人ではなくプロジェクトに
②強制はしない
③粗探しではなく共感から

●ブリッジ・ウォーター・アソシエイツ
批判的な意見があるのに、それを言わない権利は誰にもない。
①徹底した透明性と素直さ
②席を外している人については話してはいけない
③偏見のないコンフリクト(対立)を推奨

●アイリーンフィッシャー
無知の人になる。
知らないから耳を傾ける謙虚さ。

●グーグルX
海水を低価格で燃料にするプロジェクトがうまく行かずにストップ。
実行不可能なことに時間を費やすのではなく、切り上げてボーナスを出す。本当の失敗はやってみてうまく行かなかったことをだらだらと続けること。

いずれの事例も率直に言うということの効果ですね。なかでも個人ではなくプロジェクトに対して言うというのは、非常によいやり方だと感じます。例えば否定的な意見だったとしても、それを個人に向けてしまうとただの批判になってしまい、言われたほうも気持ちよくはないでしょう。ヒトではなくコトにすれば、尊敬を維持できそうです。『NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法』もヒントになりそう。

恐れのない組織をつくるために

恐れのない組織、つまり心理的安全性のある職場環境をつくるにはどのようにすればよいのでしょうか。リーダーが謙虚になることは大前提として、いくつかヒントが書かれています。

心理的安全性が生まれる3つの行動として、以下が書かれています。

①土台を作る
仕事をフレーミング、リフレーミングしていきます。例えば、「事故を調査する」を「研究する」という風にフレーミングすることによって、取り組んでいる仕事に、それが必要であるという目的と意義を見出すようにします。

②参加をもとめる
率直に意見を言わずにはいられなくなる方法で参加を求めます。心から発言を求めていますということを示すには、「謙虚さ」と「仕組み」です。よい問いをすること、公式にルールとして意見が言えるようにすること。

③生産的に対応する
ミスを報告することで非難や罰を与えるという生産性のない対応ではなく、むしろ感謝を表すこと。

本の目次

『恐れのない組織』の表紙
  • はじめに
    • 複雑で不確実な世界で成功するために必要なもの
    • 失敗からの発見
    • 本書のあらまし
  • 第1部 心理的安全性のパワー
    • 第1章 土台
      • 無意識に計算をする人たち
      • 心理的に安全な職場を構想する
      • 予想外の発見
      • 巨人の肩の上に立つ
      • 不安によって意欲をうまく引き出せない理由
      • 心理的安全性についての誤解
      • 心理的安全性を測定する
      • 心理的安全性だけでは十分ではない
    • 第2章 研究の軌跡
      • 得点などではない
      • 調査研究
      • 1蔓延する沈黙
      • 2学習を後押しする職場環境
      • 3心理的安全性がパフォーマンスにとって重要である理由
      • 4心理的安全性を得ている従業員は、エンゲージしている従業員である
      • 5特別な構成要素としての心理的安全性
      • 研究を実践に活かす
  • 第2部 職場の心理的安全性
    • 第3章 回避できる失敗
      • 厳しい基準
      • ストレッチ目標を伸ばす
      • 真実を恐れる
      • 誰が監督官を監督するのか
      • 回避できる失敗を回避する
      • 戦略に、機敏なアプローチを使う
    • 第4章 危険な沈黙
      • 率直に意見を言えない
      • 口にされなかったこと
      • 権威に対する過信
      • 沈黙の文化
      • ソーシャル・メディア全盛時代における沈黙
    • 第5章 フィアレスな職場
      • 率直さを実現する
      • 徹底した率直さ
      • 「無知の人」になる
      • 失敗がその役割を果たすとき
      • 従業員を大切にする
      • 心理的に安全な職場環境からの学び
    • 第6章 無事に
      • 自分の言葉を使う
      • 一人はみんなのためにみんなは一人のために
      • 労働者の安全のために率直に話す
      • ホワイトボードによる透明性
      • 能力を発揮させる
  • 第3部フィアレスな組織を作る
    • 第7章 実現させる
      • リーダーのツールキット
      • 心理的安全性の土台のつくり方
      • 人々が発言できるように、参加を求める方法
      • 率直な発言(その質がどうであれ)に対して生産的に対応する方法
      • リーダーの自己評価
    • 第8章 次に何が起きるのか
      • 絶え間ない再生
      • とことん話し合って行う意思決定
      • 沈黙の声を聞く
      • 笑えない冗談
      • 心理的安全性に関する、よくある質問
      • 風上に向かってジグザグに進む

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