『心理的安全性のつくりかた』の書評とサクッと要約|「何でも言ってね」だけでは意味がない

心理的安全性のつくりかた Amazonほしい物リスト2020

「リスクフリーだから、何でも意見を言ってもいいよ!」なんて上司の立場で言っても、当たり障りのない意見しか出てこない。あるいは部下の立場で、「今これを言ったら怒られる」と思って押し黙ってしまうことはよくあります。

「心理的安全性」は最近、組織開発でよく出てくるワード。フレデリック・ラルーの『ティール組織』でもティール組織を重要な3要素の1つ「全体性(ホールネス)」の獲得に重要なものとして語られます。簡単に言えば、「チームで活動するうえで、何でも言い合うことができ、受け止められる心理的に安全な状態である」ということなのですが、この状態にあることは非常に難しいように思います。

『心理的安全性のつくりかた』は、その難しさを課題としてまとめられた本でした。

そもそも心理的安全性が高いことがどんなことをもたらすか、心理的安全性に影響を与える因子とは何か、リーダーに必要な資質や行動は何か、人間の行動にはどんなメカニズムが働いているのか、言語が行動に与える影響とは何か、など理論立てて心理的安全性を解き明かしています。

「心理的安全性」が保たれている職場なんて当たり前でしょ、と思っていたり、「あの人には言いたいことも言えないポイズン状態だけど、自分のところのチームは違う」とも思っていたりする人も多いはず。ところが実は自分のチームも全然、心理的安全性が高くない可能性があるわけです。

その要因についていくつか書かれています。要素として大きいなと思ったのがチームに巣食う「歴史」というもの。チームは過去の経験を学習していきます。なので、過去に何らかのルールが作られてしまうと、チームはそれに従って行動するようになっています。それを「きっかけ」→「行動」→「みかえり」というフレームワークで説明されているのですが、これがとても分かりやすい。

例えば、「何でも意見を言ってもいいよ」(きっかけ)と上司が言って、よかれと思って意見を言う(行動)と、それが否定された(みかえり)場合、次に意見を言いたくなくなりますよね。もしみかえりとして褒められたりすると意見はどんどん出てきそうですよね。

このようにチームは個人の1つ1つの行動と見返りによってカルチャーが築かれていくので、「何でも言ってもいいよ」だけでは何でも意味がないというのです。ものすごい腹落ち感!

そして印象に残ったのは、心理的安全性が築けないのは何もリーダーだけに責任があるわけではなく、部下だって共犯者だというところ。これは本の内容になるので後述しますが、何でも言い合えないのは人のせいではなく、自分も加担している。そう考えてみんなと向き合っていきたいと思わされました。部下の立場だから何もできない、しないということこそ、チームの心理的安全性を悪化させることにつながる。

ちなみに今回、この本はオンラインでのアクティブ・ブック・ダイアローグ®で、著者の石井さんにも参加頂いて読みました。著者が参加するのは心理的安全性的にどうなのか?と思ったりもしましたが、なんとも謙虚で柔和で、どんな意見や質問も受け止めて返して頂く仏のように接して頂きました…さすが。心理的安全性をつくりかたには、初対面でも「この人なら何を言っても大丈夫」という空気づくりが重要なんだなと大変勉強になりました。

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サマライズ(本の概要と要約)

心理的安全性のつくりかたの要約
心理的安全性とは
心理的安全性の理論と体系

著者の課題
チームの一人一人が率直に意見を言い安全だと感じる、一見普通の状況を作るのは実は難しい。

解決方法
理論と体系に裏付けられた実践が必要。柔軟に役立つアプローチがてきる心理的柔軟性と、行動をより良く変えるための理論・体系である「行動分析・言語行動」まで踏み込んで分析する。

内容
・非安全なチームとは
 ーだれのせい?うまくいく?など…罰を与えるチーム

・心理的安全性が高いとは
 ー健全に意見を戦わせ、生産的で良い仕事をする
 ー仕事の基準も高く、心理的安全性の高いと、学習する職場になる

・心理的安全性の4因子
 ー話しやすさ、助け合い、挑戦(やってみよう)、新規歓迎(異能歓迎)の4つ。

・変革の3段階
 ー構造・関係性&カルチャー・行動&スキルの3つ
 ー構造は変えにくい

・誰かのせいにせず自分事とする
・心理的安全性をもたらすのはあなた

・心理的柔軟性のあるリーダーシップ
 ー変えられないものを受け入れる
  -事実は変えられない
  -やれることをやる
 ー大切なことへ向かい変えられるものに取り組む
  -困難があっても行動を促進
  -仕事に意味づけをする
 ーマインドフルに取り組む
  -物語としてのわたしから、観察者としてのわたしへ

・行動分析
 ーきっかけ→行動→みかえりのフレームワーク
 ー行動は「キッカケ」と「みかえり」で制御される
 ーきっかけがないと行動しない
 ーみかえりが大きいと行動を繰り返す確率があがる

・言語行動
 -人間は言葉によって経験してない行動の結果を学習できる
 -大切なことを言語化し、行動を増やす

心理的安全性とは

心理的安全性(Psychological Safety)は、ハーバード・ビジネス・スクールの教授である、エイミー・C・エドモンドソン (Amy C. Edmondson)教授が提唱した概念です。TEDで『他人同士の集まりをチームに変える方法(how_to_turn_a_group_of_strangers_into_a_team)』というプレゼンテーションでも紹介しています。

ですが、このワードを世に知れ渡らせたのはGoogleが立ち上げたプロジェクト・アリストテレスの調査結果でした。この内容はニューヨークタイムスでも取り上げられ(『「グーグルは完璧なチームを築く過程で何を学んだか(What Google Learned from Its Quest to Build the Perfect Team)」』)、多くの人が注目するようになりました。

「高い成果を出すチームとはどういうチームなのか」という調査をしていった結果、心理的安全性が重要な要素であるという結果が出たそうです。心理的安全性とは、個人個人が率直に意見を言いチームとして成長していき、成果を出す出さないに効く要素ということです。

著者

『心理的安全性のつくりかた』の著者は石井遼介(いしい・りょうすけ)さん。株式会社ZENTechで取締役をされています。ZENTech社の事業はものすごく絞り込まれていて、「心理的安全性」にのみフォーカスしています。本書でも語られる行動分析を研究されているようで、成果の出る組織の構築のため重要である心理的安全性の4因子を用いたサーベイツールの開発を行い、ZENTech社で提供しているようです。

本の解説と感想

心理的安全性が高いチームとは?

心理的安全性って、そもそもどういう意味なのでしょうか。本書の冒頭で以下のように定義しています。

「心理的安全性」とは、このように組織やチーム全体の成果に向けた、率直な意見、素朴な質問、そして違和感の指摘が、いつでも、誰でも気兼ねなく言えること

『心理的安全性のつくりかた』p3

「なんだ、当たり前じゃないか」ということを誰もが思うのに、実際にこの状態を作ることがとても難しい。(詳しくは後述しますが、主な障害はチームが経験して積もらせた歴史にあります)

では、心理的安全性が高い状態とはどのようなもので、どのような効果があるのでしょうか。それを紐とくには、「非安全」な状態についても語らなければなりません。非安全なチームとはすなわち、罰を与えるチームです。

罰とは、具体的に以下のようなことが挙げられています。

  1. うまくいくの?(チャレンジに否定的)
  2. 報告は仕事が増えるだけ
  3. 犯人さがし
  4. 意見対立で人間関係にヒビ

これらは、チームメンバーに「無能だと思われたくない」「邪魔だと思われたくない」という心理が働いて、「行動しない方がマシ」という考えになってしまうのです。これではチームは学習しません。いや、チームではなく役割分担された個人の集合体でしかありません。個人の経験は積めてもチームとしての成長はありません。心理的安全性の高いチームと言うのは、健全に意見を戦わせ、いい仕事をして成果を出すことに集中できるチームなのです。ということは、心理的安全性が高いチームは、常に個ではなくチームで学習していくので中長期的にパフォーマンスが上がっていきます。

ただ、心理的安全性をはき違えると、ただの「ヌルい職場」になってしまいます。何もしなくても安全ということではなく、意見や挑戦をしても安全で健全な衝突が推奨される「学習する組織」を目指すことが大事です。

心理的安全性の4因子

エドモンドソン教授は、非安全に関わる因子として説明している「無知・無能・邪魔・ネガティブ」という罰がない状態を目指すことにとどまらず、本書では「話助挑新」という4つの因子がる状態を目指すことをが心理安全性のある状態だとしています。以下に紹介していきます。

1.話しやすさ「何を言っても大丈夫」
上司に対して、いいことはすぐ伝え、悪いことは報告しないなんていうチームは心理的安全性が低いわけです。悪い事実を共有しても罰はなく、上司も事実として受け止めて適切にフィードバックができる状態であれば、報告しやすいですね。

2.助け合い「困ったときはお互い様」
トラブルがあった場合に相談ができたり、逆に支援を申し出るようなチームは、そうでないチームよりも成果がでるのは明白です。部下の立場だけではなく、ついついリーダーが抱えてしまって責任を負い過ぎるなんてことがありますが、最近では、ロバート・キーガン教授が『なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか』で書いてあるように「弱さをみせることができるリーダー」というのも重要視されています。

3.挑戦「とりあえずやってみよう」
挑戦して失敗すると怒られるなんてこともよくあります。あるいは全部の責任を負わされるなど。失敗がいいとは思いませんが、挑戦したことについてしっかりとフィードバックをして、どう改善するかなど健全な前進があるという組織風土があると、環境の変化にも柔軟になりますよね。
でもこれもロバート・キーガン教授の著作『なぜ人と組織は変われないのか』では、挑戦しろと言っても、実は言っている本人の裏の目標(自分の地位が優先…)などによって阻害されると、次第にチームの歴史として刻まれてしまって、変われなくなるということもあるので、注意が必要そうです。

4.新奇歓迎「異能、どんとこい」
組織が学習していくには、価値観が異なったり、意見が異なったりしたほうが多様性があって、チームとしての成長幅は広がります。シュンペーターの新結合で説明されるように、イノベーションは既存知と既存知の融合。その機会が大いに越したことはないのです。

チームの歴史・カルチャーの呪縛

「なぜ心理的安全性がつくれないのか」という問いに対しての答えが、チームの歴史です。

分かりやすい例を本書から引用します。

営業エースがパワハラ問題を起こした時、結局、口頭で注意されるだけでお咎めなしになったとしたら「売上さえ上げていれば問題ない」と人々は感じるでしょう。

『心理的安全性のつくりかた』p72

このような一つ一つの行動と結果が積み重なっていくと、それがその組織の組織風土・カルチャーとなっていきそうなのは想像がつきます。会社としての組織風土はもちろん、会社は同じでも違う部門で雰囲気が違うのはよくあることです。

無意識のうちに組織の当たり前になってしまうので、このチームの歴史という呪縛から解き放たれるにはどうすればいいのか、というのがこの本のソリューションで、「心理的柔軟性」と「行動分析」への理解について解説されています。

心理的柔軟性のリーダーシップ

組織の歴史は、チーム内にいる個人と個人の関係性でありカルチャーです。ネガティブなものになってしまったらそれが呪縛のように付きまといます。これを変革するのに必要なのが他社に影響を与えるリーダーシップです。

優れたリーダーシップとは何でしょうか。リーダーシップとは付き従うものがいるだけ、というドラッカーの言葉がありますが、具体性に乏しいですよね。それはつまり定義が難しいものだということです。リーダーシップは、ビジョナリーであることかもしれませんし、サーヴァント(支援型)などいろいろなリーダーシップスタイルが研究されています。これらは常にそのスタイルで誰もが付き従うかというと、そうではありません。優れたリーダーはこれらを柔軟に使い分けています。

組織・チームの背負った歴史や文脈に応じて、あるいはアプローチする個々人の性質に応じて、しなやかにチームの中の行動を活性化できるのが、「心理的柔軟なリーダーシップ」なのです。

『心理的安全性のつくりかた』p95

『老子』でいうところの「上善は水のごとし」のように、しなやかに形を変えていくというイメージでしょうか。

本書では、心理的柔軟性のポイントとして次の3点を挙げています。

1.変えられないものを受け入れる
起こったことは変えられないので、それを受け入れ、やれることをやるという要素です。本のなかでトラブルが起こったときには「それはちょーどよかった」と唱えることをおすすめしています。トラブルと戦うのではなく、トラブルはあるものだと思っておくという心構えがあるとイヤな気持ちになりにくいですね。

2.大切なことへ向かい変えられるものに取り組む
チームの「大切なこと」が明確になっていて、たとえ困難があってもメンバーが行動をすることができる状態です。仕事に意味づけがなされていればできることです。どのに向かっているのか分からないという状態があだけで不安で、モチベーション以前にどんな行動をしていいのかもわかりません。

3.マインドフルに取り組む
人はついついいま目の前で起こっていることに集中し、視野狭窄になってしまいます。マインドフルに取り組むとは、大切なことに向かっているのかどうかを客観的にみれていて気が付いている状態を継続させる要素です。

行動分析をして行動を変える

行動分析の章はとても勉強になりました。「きっかけ」→「行動」→「みかえり」というフレームワークは、個人がなぜその行動とったのか、あるいはとらなかったのかを整理するのに大変役に立ちます。

人が何か「行動」するとき、必ず「きっかけ」があります。暑いと思ったら空調をつけるような「きっかけ」です。

行動した結果「みかえり」があり、その「みかえり」が行動した本人にとって嬉しいものであれば行動は繰り返されるし、もしかしたらもっとブラッシュアップされた行動をしていきます。

反対に、もし「みかえり」が罰だったとしたら、行動を繰り返さなくなります。もし意に沿わない行動だったとしても、適切なフィードバックを返しましょう。そうしていかないと萎縮して何も言わないチームになるのが目に見えています。

言語の力

人間が他の動物と違う能力として『サピエンス全史』でも語られていることですが、言語によって知らないことを知り、それによって知らない人との共同を実現することができました。

言語・言葉には、私たちを行動させるパワーがあります。これを「ルール支配行動」と言うようです。ルール支配行動とは、言葉によって未来の見返りを関連づけ、言語によって行動を支配、コントロールできる能力です。その影響について3種類に分解しています。

1.言われた通り行動
言葉通り、言われた通りにやる行動です。効果が実感できないので、上司が褒めてくれたりする他者から与えられる「みかえり」に依存します。営業のトレーニングなどでは有効です。ただ、他者からもし「みかえり」を与えられなかったときの心のバランスを崩すこともあるかもしれません。硬直した思考になりがちです。

2.確かにそうやな行動
ルール通りに行動していくと「みかえり」を実感でき、行動が強化されていきます。実感しながらなので、たまに見返りが違った場合の経験も積まれていき、「このときはこう」と柔軟な思考になります。

3.そんな気してきた行動
言葉は梃子のような作用をもたらすことがります。もともと「確かにそうやな行動」をしていたところに、上司から「この業務は重要だ」と言われたら、それがきっかけもなり、力強く行動する推進力にもなります。

「言われた通り行動」は必要ながらも減らしていくように意識し、「確かにそうやな行動」へ変化させていくことを目指していきましょう。

まとめ

「何でも意見を言ってもいいよ」というだけでは、何も変わらないということが十分理解できました。

心理的安全性は、「心」なので言わば究極のソフト。組織論にマッキンゼーの7Sというのがありますが、その中心のラインを築く「共通価値観」と「組織風土」を構築するためにはどうするか、ということに関しても思いを巡らせました。

共通価値観は本書でいう「大切なこと」が大前提としてあり、組織風土は個人の行動の蓄積によって築かれていく「チームの歴史」そのもの。作られてしまった歴史は、何かのタイミングで塗り替えることができるので、そこで一人一人のリーダーシップが試され、心理的安全性をつくるための個人と集団としての柔軟性、行動分析による把握と変革が大切ですね。

心理的安全性をつくるために、まずは私自身の行動と、チームにある行動を分析するところから始めたいと思います。

本の目次

  • 第1章 チームの心理的安全性
    • チームの心理的安全性とは?
    • 日本版「チームの心理的安全性」の4つの因子
    • 心理的安全性「変革の3段階」
  • 第2章 リーダーシップとしての心理的柔軟性
    • 心理的安全性と心理的柔軟性
    • 変わらないものを受け入れる
    • 大切なことへ向かいかえられるものに取り組む
    • マインドフルに見分ける
  • 第3章 行動分析でつくる心理的安全性
    • 行動を変えるスキル「行動分析」
    • 「きっかけ」→「行動」→「みかえり」フレームワーク
    • 行動分析で行動を変える
    • チームの行動変容でつくる心理的安全性
  • 第4章 言葉で高める心理的安全性
    • 言語行動は「学習ファースト」
    • ルール支配行動
    • 言葉で「旗」を立てる
  • 第5章 心理的安全性 導入アイデア集
    • 「行動・スキル」レベル
    • 関係性・カルチャーレベル
    • 学習するチームになる

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