『風邪の効用』の書評とサクッと要約|風邪は治すのではなく経過するもの

風邪の効用 Amazonほしい物リスト2020
風邪の効用(野口晴哉 著)

わたし、全然体調崩さないんですよ。

4年前くらいに、なぜか子どもがよく感染するという溶連菌にかかり、喉がとんでもない痛さになって以来、これといった健康の不調もなく病院に言った記憶がありません。(歯医者や健康診断は別ですが…)

でも周りはそうでもないみたい。マネジメントをしていると、体調不良で全休・半休という人はそこそこいて、有給も使い切ってしまう人もちらほら見るんですね。そう考えると「お父さん、お母さん。健康な体に産んでくれてありがとう」と、常日頃から感謝しきりになるわけです。

ところが、『風邪の効用』を読むと風邪を引かない、あるいは全然体調不良にならないという状態が果たしていい物なのか考えなくてはならない気がしてきます。

『風邪の効用』は、端的にいうと「風邪は治そうとするんじゃなくて、経過をみるものだし引かないように体を整えることが大事なんだよ」ということが書いてあります。なので風邪を引かないんだったらいいじゃないか、で終わってしまいそうですが、本書には、こんなことも書いてあります。

稀に風邪を引かない人もいる。本当に丈夫でその生活が体に適っているか、そうでなければ適用感受性が鈍っているかであって、後者の場合、癌とか脳溢血とか、また心臓障害等になる傾向の人に多い。

『風邪の効用』p13

風邪を引かないのは体が鈍ってるんじゃないか説です。

著者の野口晴哉氏は整体指導者。体をよく見ている人だからこそ体の経過に着目したのかもしれません。健康な体というのには弾力というものがあって、その人その人が日常で偏りある使い方をすると、硬くなっていくことで弾力がなくなり風邪を引くのだとと説いてます。

年老いていくと弾力、例えば血管の伸び縮みの幅が狭くなっていき、体が鈍くなる。鈍いから病気を感じなくなって、それまで何もないつもりが突然にもうどうしようもない状態になったりする…と。

癌になる人とか脳溢血になる人とかいうのを丁寧にみると皆、共通して風邪も引かないという人が多い。

『風邪の効用』p22

ああ、なんて恐ろしい。

もう一つ、考えを改めたほうがいいのかという迷いが発生してます。

風邪の場合、病院に行くと、薬を処方されて良くなる(症状がやわらぐ)じゃないですか。なので、ちょっと熱っぽいとかいう人がいたら「病院にいって薬もらったほうがいいよ」と勧めてるんです。でも風邪で処方される薬って、対処療法でしかなくって、とりあえず症状を抑えるだけでしかないんですよね。

風邪というのは何もしなくても治るものの、薬で治したとしても根本の改善していないのだから、また風邪を繰り返す。

風邪は病気というよりも、風邪自体が治療行為ではなかろうか

『風邪の効用』p22

うーん、これからは「温かくしてよく寝ろ」と声かける感じですかね。

確かに風邪に特効薬はありません。風邪の特効薬はノーベル賞ものという表現も耳にします。

ところで、『風邪の効用』は、初めて発表されたのが1962年。このころから野口さんは、「病気のなかでも一番難しい」と言っています。人によって症状は様々だからだそう。その時代に、このような考え方があったということに、単純に驚き。当時、「闘病」という言葉に象徴される現代の病気に対する考え方を一変させたとのこと。

風邪というものは治療するのではなくて、経過するもの。意識を変えて体を整えていくことを考えましょう。

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サマライズ(本の概要と要約)

問題提起と解決方法

『風邪の効用』の問題提起
『風邪の効用』の問題提起

●著者の課題
人は、風邪は「治さねば治らぬもの」と思い込んで、風邪を引くような体の偏りをただすことを無視している。

●解決方法
風邪は体の掃除をする役割を持ち、安全弁でもある。体を正し、生活を改め、治すことに工夫を凝らすのではなく、経過を待つべき。

内容

『風邪の効用』のまとめ
風邪の効用とは?
風邪の効用の要約(風邪の要領)
風邪の要領

内容
・風邪の効用
 -風邪自体が体の治療行為
 -体を使うと偏りが出る→風邪をひく→回復する
・弾力
 -筋肉や血管には弾力がある
 -年を取るおと弾力の幅が狭くなる
 -死ぬと弾力がなくなる
・風邪を治そうとして、熱を下げようとしたり、咳をとめようとしたりして、中断術ばかり講じていると、体が硬張り、鈍くなる
・風邪は治すものではなく、経過するもの

・風邪を全うする要領
風邪を全うすると自ずから改まる体の状態がある。
1.体を弛める
 -寝るだけでは緩まない
 -整体体操をして偏り疲労を緩ませる
2.冷やさぬこと
 -汗の体に風を当てない
 -熱を冷まそうとしない
3.温めること
 -入浴して赤くならないところはさらに温める
4.発汗は引っ込めない
 -乾いた温かいタオルでふく
 -汗がネバネバしているうちは下着を変えない
5.風邪の全工程における急処
 -平温以下の時期を安静にする
 -平温に復したら起きる(余分に用心しない)
6.水分を多めに摂る
 -季節の変わり目に水分量を加減する

著者:野口晴哉とは

著者の野口晴哉さんは、整体指導者だそうです。

野口整体の祖。独特な手技療法で、体の偏りを正す「活元運動」、人間の感受性の癖を表す「体癖論」と、それを修正する「整体体操」、手のひらから気を注ぐことで、体に潜在的にある本能的な自然治癒の力を呼び起こし元気を呼び覚ます方法「愉気法」などを提唱した。

公益社団法人整体協会という団体も立ち上げたということもあり、整体の道での権威的な立場の方なんですね。

●公益社団法人整体協会
野口晴哉さんのプロフィール

本の解説と感想

風邪の効用とは

風邪というほど曖昧な病気はないですよね。そもそも病気なのかどうか…ということも。テレビCMでは、熱・喉・鼻などの症状によって薬を使い分けるなんていうプロモーションもあったりします。

風邪は誰も引くし、またいつもある。夏でも、冬でも、秋でも、春でも、どこかで誰かが引いている。他の病気のように季節があったり稀にしかないのと違って、年中ある。

『風邪の効用』p13

つまり、流行り病ではないということですね。自分の体の状況によって千差万別、変わるということ。

内科に行くと、症状にあった薬を処方されますが、それは症状を和らげるためであって、風邪というのは放っておいても自然に治ります。むしろ風邪を経過すると、すっと楽になります。

つまり風邪というのは、それ自体が治療行為だと考えられるのです。

体の弾力

「弾力」というのが本書でキーワードになっています。

この本を読み進めていくと、医学的なエビデンスがどこにあるのか不安にはなるんですが、不思議な説得力があります。「なんか、そうかもな…」という謎の説得力。

健康な人間の体には弾力があって、年をとっていくとその弾力が狭まっていきます。わかりやすい例として挙げられているのが血管の話。血管が硬張っていくと、血液の流れがスムーズでなくなっていきます。なので、脳溢血が起こりやすくなるというのです。最終的に死が訪れると人間の体は完全に硬直します。

日常、わたしたちは体を使って活動しています。それがどこかに負担が集中すると、その部分に偏り疲労が蓄積し、風邪を発症する。さて、風邪は治療すべきものなのでしょうか。薬を飲めば治った風になります。でも薬というのは、中断法。体を治そうとしながら、体を硬直させ鈍くさせてしまいます。

そして風邪は自然治癒するものです。

風邪は弾力性を回復させる機会になります。

『風邪の効用』p42

繰り返しになりますが、風邪というのはそれそのものが体の硬直を恢復させる役割をもっているんです。薬を飲んで治ったように見えるよりも、風邪を引いてどのくらいで偏りが疲労が恢復するのか、どの部分が硬張っているのか、弛めればいいのかというのを知り、自分の体の使い方から改善していくほうが望ましいということですね。

温めるということ

体を弛めるには、とにかく体を冷やさず温めることです。

「風邪を引いたら風呂に入らないほうがいい」「風邪を引いたら寝る前に入ったほうがいい」なんていうこと聞いたことないでしょうか。わたしは小学生くらいのとき、おばあちゃんからそんなことを言われました。

野口さんはこう言っています。

風邪を引いた時にこそ大いに風呂に入らなければならない。

『風邪の効用』p57

入浴というのは、お湯の温度によって皮膚を刺激して体の働きを高めます。体が温まるので汗も出ます。そのうえでこうも言っています。

温まっただけ冷える(中略)冷えるだけでなく、冷え過ぎになるのです。起きていればその調節がつくが、寝ている時では調節がつかない。

『風邪の効用』p57

寝ているときと起きているときの体の働きが違うので、十分に気を付けなければならないということですね。

ちなみに温まっているかどうかは皮膚が赤くなっているかどうかを見ます。もし一部が赤くなっていなければそこを追加で温めて弛めるとよいとのこと。足湯というのがありますが、あれは入浴したあとの補完的な形で使うのが良いそうです。

余談ですが、わたしはかなり冷え性なんです。先端冷え性というのでしょうか。冬場になるとほんと手が白い。今この記事を書いている間も足の先が冷たい。食事にも気を付けていたんですが、今までやらなかったのは、温かいものを飲むこと。最近は『一汁一菜でよいという提案』を読んで以来、温かい味噌汁を飲む毎日なんですが、飲んでいるとき飲んだ後はとっても体が温かく、血行が良くなっている実感があります。

温かくするって大事だな、と思いました。

心理現象としての風邪

風邪には心理的な影響を受けるものもあるそうです。

例えば野口さんが「未練症状」と言っているもの。子どものころ、怪我をしてすぐに治ると言っても、大層な包帯をしたりすることって、なんだかわからないけどそんなことありますね。あるいはもうすぐ治るなんて言われると、もうちょっと「悪いままでいたい」という気持ちになって熱が出るということ。

また、治っているのに「まだ大丈夫じゃないかも」と、余計にケアに努めたりして正しい経過をみれないということも。これによって違う偏りが生じてしまうこともあり、また風邪につながっていくかもしれません。

早く治すというのが良いということでもなく、遅くなるというのが良いのでもない。なんとも難しい話ですが、とにかく、その体にとって自然の経過を通ることが望ましいということですね。

まとめ

医学の面からの根拠がないため、確信をもって「こうしたほうがいい」となれてはいないのですが、風邪のスタンスとしては概ねこの通りなんだろうなと思いました。人間関係でも柔軟性というのは大事ですし、体も柔軟なほうが凝りも少なく血行もよい(…と聞いてます)。

風邪というのは、健康のバロメーターのような役割なのかなと思いました。体の弾力ということを意識して温めて過ごすことを意識して、風邪を引いたとしても健全に経過し全うするという考えをもっておくようにしたいと思います。

あ、ここまで思い出しました。

この記事の冒頭で病院にしばらく病院に行ってないと書きましたが、健康診断で血便で引っ掛かり内視鏡検査に行きました。結果は痔でございました…

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