『攻殻機動隊 1巻』の感想|1989年に生まれた電脳世界のSF

攻殻機動隊の感想 マンガ
攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL(士郎正宗 作)

『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』は、僕が小学校の頃(10歳くらい?)、すでに大人のアニメの濃いファン層に人気なんだろうなって思った記憶があります。

町のレンタルビデオ屋ってありましたよね。そこのアニメコーナーに、ひときわ異色なパッケージがあり、それが攻殻機動隊の映画版『THE GHOST IN THE SHELL』だった(あとになってそれと認識する)。そのころの僕はと言えば、SDガンダムとか繰り返し借りまくっていたわけで、リアルな感じのアニメーションてなんか怖かったんですよね。

あとなんかパッケージの草薙素子のデザインのエロさ(?)というか肌の露出度が、子ども心にも触れちゃいけない何かだと思ったのかも… 

それから、攻殻機動隊という名前を見たり聞いたりするなかで、カルト的に評価されてるものだと認知していき、そうこうしているうちに大学くらいに『イノセンス』が公開されて、観に行きました。

それでも原作漫画とか、TVアニメ版も見ずにきたわけです。
で、今回初めて漫画を読んだのだけど、持っていた印象がかなり違う。

主人公の草薙素子は、笑わないクールな印象だったけど、漫画では熱がありお茶目な感じすらある。アニメーションでの設定とは、どうやらちょっと違うらしい。『イノセント』で受けたドライなものより、もっとしっとりとしたもの。『カウボーイ・ビバップ』と近いのかな。

ところで、原作漫画が描かれたのは1989年。「ネットは広大だ」という1巻で草薙素子が口にする最後のセリフに結構ビビる。だって、ネットにつなぐにも「ピー、ガーー、ティロンティロン」っていうダイアルアップ接続の時代ですよ。通信もめちゃくちゃ遅い。windows95でようやくネットに追いついた一般人がほとんどななか、これを描く漫画家とはいったい。

そこで、このサイバーパンク(でいいのか?)という分野のものって、いつ頃からあるのかと思って知らべると、『ブレードランナー』や『ターミネーター』といったものも加えると、80年代からそこそこある。そうはいっても、『攻殻機動隊』は人間と機械の隔たりが非常にあいまいなものとして捉えられる描写があり、そう遠くない未来には、人間の機能の一部は機械化されてるなんていうことを当時からさせている意味では、今日のSFへの影響度は大きいんでしょうね。

『攻殻機動隊』には、AIやサイボーグといったなんだか『ホモデウス』的な要素もある。とにかく、そのような分野に関しての造詣が深く、漫画のコマの脇に設定の詳細が書かれていたり、本人も矛盾するようなポイントについては「わかりやすいので、あえてこうした」的なメモを残すなど、細かい。

攻殻機動隊にはじめて触れたからか、世界観に追いつくまでかなり時間を要し、読み終えるのに漫画1冊読み終えるのに3時間超もかかってしまいました…でもかなり理解が進んだと思うし、2巻目も読みたいし(というか購入してもう読んだ)アニメも観たくなった。

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著者:士郎正宗(しろう まさむね)

士郎正宗さん、調べたら写真が一切見当たらないんですよね。徹底してメディアに出ないという人は珍しいですね。インタビュー記事でもないかなと思って探しても、押井守監督とかしか出てこない…

他の作品で言うと、映画化もされている『アップルシード』など。最近は、画集などは出していて、成人向けのものが多いらしい。『攻殻機動隊』の1巻のカラーページでもそのような描写が出てきて、幼心にレンタルビデオ屋で手に取るのは違うと思った判断は間違いではなかったと思いました…

あと、公式サイトの士郎正宗infoがすごい。

何がすごいかというと、インターネット黎明期に同人漫画家が立ち上げたようなホームページが、わりとそのまま残っている感じ。それでも毎月更新されている…

攻殻機動隊 1巻の内容と感想

大前提なんですが、全然内容を理解できてないです。なんでこういう任務を与えられていて、なんでその人がターゲットになっているか… でもまあ、それでも雰囲気で読み進めることってよくありますよね。そんな感じでの感想です。当然ながらエピソードの具体的な解説なんてものはできませんので…

攻殻機動隊の世界観

攻殻機動隊の世界観や設定は、士郎正宗氏のサイバー系のSFへの探求心によるリサーチによって、緻密で説得力のあるものに構築されていることに驚きました。

漫画や小説の導入では、登場人物などにより世界設定がそれとなく説明されるものが多いですが、『攻殻機動隊』にはそれがなく、私のように初めて作品に触れる人は読み進めるのにかなり時間がかかります。

漫画のコマの外側に士郎正宗氏による説明が書かれていて、物語とその解説を交互に読みながら進めることになります。なので世界観に入り込むまでに時間がかかるのです。

でも、言葉のひとつひとつにサイバー感があり、くすぐられる。

攻殻機動隊1巻の名言
攻殻機動隊1巻のセリフ抜粋

脳潜入と書いて、ブレイン・ダイブ。
熱光学迷彩という、なんか最強な特殊工作服。
「俺の目に侵入する?」というSFギャグ。
脳に直結とか…

あと、フチコマというAI兵器が、人間を評して「人間の世界ってすごく未完成なんだね」という言葉は、なかなか奥が深いですね。

人形使い

エピソード3から、「人形使い」というハッカーの存在が仄めかされます。

その「人形使い」は、攻殻機動隊シリーズを通して重要な存在であり、いまネットワークでほぼリアルタイムで世界がつながり、認知できないほどの膨大な情報量の世界で生きていると認識している私たちであればまだ想像することができる、AIが意志を持ったらそうなるか、近未来にサイボーグ化された人間にハッキングされたらどうなるか、といったテーマに問題を投げかける存在です。

攻殻機動隊1巻の人形使い
キーパーソン(?)人形使い

1巻の後半で、「人形使い」は、実は人ではなくプログラムだということが明かされていきます。最初はプログラムでしかなかったはずが、「電脳ネットで企業データやゲームと融合していくうちに「自分は生命体だ」なんて言い出したんであわてて回収しようとしたわけ――(『攻殻機動隊』p279)」というように、自らを生命体と認識し、自我を持つ存在になります。

下記の情報がめちゃくちゃ詳しい。
アニヲタWiki 人形使い/P-2501

エピソード1:PROLOGUE

2902熱光学迷彩!?

『攻殻機動隊』p8

という、熱光学迷彩というどうやらカメレオンのように身を周囲に溶け込ます技術があり、それを使って悪い外交官っぽいやつを堂々と暗殺する主人公・草薙素子の存在を強めるというだけの序章。

冒頭数ページだけなのですが、光学迷彩の印象は強い。攻殻機動隊がルーツかはさっぱりですが、小学生か中学生のころ、光学迷彩に憧れた時期ありませんか?wikipediaによれば本作が発信源になって、フィクション作品の登場が増えたのだとか…?

攻殻機動隊という存在がまだないころのこのエピソードは、あまりよく理解できていないです。のちの公安9課・攻殻機動隊の部長荒巻が登場するのだけど、草薙素子のことを知らないように描かれている。ところが次のエピソードでは、連絡を取り合っている。暗殺の日は、3月5日で次のエピソードは4月10日、この間にコンタクトを取り合う中になったということなんですかね。

エピソード2: SUPER SPARTAN 2029.4.10

全員 脳潜入(ブレインダイビング)用意

『攻殻機動隊』p13

全体として世界観を説明するエピソードになっている感じ。初心者には脳内が追い付かないです。

どうやら人は回線を通して、情報を探れたり共有できたりするらしい。脳潜入という行動が披露されており、草薙素子とその配下のメンバーが素子の脳に潜入にして情報を拾うということをやっています。(口で説明するよりも早く、正確にわかるという利点がある?)

人と人が有線でも無線でも繋がれる世界で、今でならこの設定を理解できるものの、当時はどのように受け止められたんでしょうか…

エピソード3:JUNK JUNGLE 2029.7.27

疑似体験も夢も 存在する情報は 全て現実であり また幻なんだ…

『攻殻機動隊』p94

『攻殻機動隊』の世界は「電脳化」という、人間の脳と外部ネットワークをつなぐことが当たり前にできる時代になっています。

リスクとして当然考えられるのが人間の脳へのハッキングです。このエピソードの具体的な内容はさっぱりなのですが、ゴーストへのハッキングによりゴミ収集業者の男性が、犯罪に加担する姿が描かれます。男性は、妻と子がいるのですが、急に離婚の話を切り出され、その真意を探ろうと、知り合った男から妻にハッキングするサポートをしてもらい、それを実行する…のですが、そもそも妻子がいること嘘。

男性が行動するよう、疑似体験を植え付けられていたという。
脳に外部から直接アクセスできる世界が来るのだとしたら、当然考えられるリスクですね。

エピソード4:MEGATECH MACHINE 1[ロボットの反乱]

人間の世界ってすごく未完成なんだね

『攻殻機動隊』p98

AI兵器(乗り物?)のフチコマの1体が、人間を支配することを目論むという話。シリアスな話ではなくギャグに近い。

ところで、今まで攻殻機動隊に登場するこの戦車のこと、「タチコマ」だと思っていたのでちょっと混乱。原作だと「フチコマ」で他の媒体だと「タチコマ」になっているという違いだけなんですかね?誰か教えて~

エピソード5:MEGATECH MACHINE 2[メイキング・オブ・サイボーグ]

サイボーグが作られるまでの工程を。かなりメカニックであり、皮膚質や体の型の話などが盛り込まれている。いつの時代か、整形と似たような感覚でサイボーグ化やメンテナンスがなされる時代がくるんでしょうか…

エピソード6:ROBOT RONDO 2029.10.1

愛玩用のロボットが出てくる話です。そのロボットが人を殺傷する事件が増え、捜査に乗り出します。

映画『イノセント』って攻殻機動隊が原作なのであればどこかのエピソードを映像化したはず…と思っているなか、全然見つけられなかったんだけど、「強いて言えばこれ」というのがこのエピソード。

あとで調べてみたら、どうやら『イノセンス』のベースはこれのようです。

愛玩用のロボットというのは、過去の様々な技術導入の初期段階に「エロ」があることから、人の見た目をしたロボットのなかでも受注生産の可能性が大きいですよね。

ロボットの反乱は、何もAIが自律的に考えて起こすだけでなく、作り手側がプログラミングしてしまえさえすれば人に危害を加えることなんて容易なんですよね。

エピソード7:PHANTOM FUND 2029.12.24

佐川電子本社の警備主任の脳に直結したぜ

『攻殻機動隊』p166

人の脳に気軽にハッキングできちゃうハッカーがいることが、もはやすごいとも思わなくなってきました。

このエピソードも若干『イノセンス』のもとになってる気がする。
旧型の電脳都市、という表現で択捉島が出てくるんだけど、この雑多な街並みはそれっぽい。

それにしても、攻殻機動隊の世界はテクノロジーが進化しているというのに、この旧型の電脳都市とされる地域の雑多さはどういう経緯なんだろう。電線がめちゃくちゃ張り巡らされてるし、町が多重的に組み立てられているし。この世界では北方領土が返還されているのだけど、それを機に人口が流れたとかで、既成事実化した建物や利権を掌握することができなかったとかなんだろうか。

エピソード8:DUMB BARTER 2030.5.2

相馬という男が、草薙素子に復讐しにくる、という話。
あまり印象に残らない話ではあるんですよね。

印象に残ったのは、冒頭、相馬による草薙素子と彼氏がいる自宅の爆破。士郎正宗氏によれば、描かれているような爆破があれば、普通であれば髪もチリチリだし焦げているものだけど、そうしてしまうと後半の描写に支障が出る(見栄え?)ので、言い逃れできる要素を盛り込んだのだとか。

というのが、自宅の中の描写にアクアリウムがあったり、浴室があったりという。

たぶん、士郎正宗という人は、一つひとつの行動であったり、物に対して、因果関係を追及して落とし込もうという意識が強い人なんだろうなと思いました。

エピソード9:BYE BYE CLAY 2030.7.15

壱生命体として 政治的亡命を 希望する

『攻殻機動隊』p246

「人形使い」の正体が判明し、実体(プログラムなのでそもそも実体はないのですが…)が無くなるエピソードです。

もともと人形使いは外務省が開発し6課の管轄下でコントロールされてきたものが、ネット上で様々な情報を集めていくなかで、「自我」に目覚めてしまったという。これを抑制しようとした6課から逃げようと9課に亡命するという流れです。

「人形使い」を通して、人間(生命)が機械化するのと逆に、情報が生命とろうとする構図を描こうということなのでしょうか。

エピソード10:BRAIN DRAIN 2030.9.9

多様性やゆらぎを持つ為 君と融合したいのだ

『攻殻機動隊』p340

ネタバレになるのでどうかと思いますが、人ではなく電脳のなかの存在となっている「人形使い」と草薙素子が融合します。なんのこっちゃですが、言葉の通り。

「人形使い」は、序盤からこの世界で注目されているハッカーですが、エピソード9でプログラムだったことが判明しています。自分を「生命体」だとも言いだしていて、それを実現するためにも進化の過程で必要な「多様性」や「ゆらぎ」を求めていたんですかね。

ところで、私はそこまで絵を見てすごいと思ったことがないのですが、このエピソードのカラーページで草薙素子が潜水から船に上がったところの描写で、水に重さを感じたんですよね。なんかびっくりした。それだけです。

まとめ

話の流れは全然理解できなかったけど、世界観や登場人物は面白すぎますね。なんでもっと早く手をつけなかったんだろう。アニメのSTAND ALONE COMPLEXは、人形使いと草薙素子が出会わないというパラレルワールドらしくそっちも楽しみたいと思います。

本の目次

攻殻機動隊1巻の表紙
攻殻機動隊1巻の表紙
  • 01 PROLOGUE
  • 02 SUPER SPARTAN 2029.4.10
  • 03 JUNK JUNGLE 2029.7.27
  • 04 MEGATECH MACHINE 1[ロボットの反乱]
  • 05 MEGATECH MACHINE 2[メイキング・オブ・サイボーグ]
  • 06 ROBOT RONDO 2029.10.1
  • 07 PHANTOM FUND 2029.12.24
  • 08 DUMB BARTER 2030.5.2
  • 09 BYE BYE CLAY 2030.7.15
  • 10 BRAIN DRAIN 2030.9.9

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