『スピリチュアルズ わたしの謎』の書評とサクッと要約|パーソナリティは遺伝と子どもの頃の所属グループで形成される

スピリチュアルズ 「わたし」の謎(橘玲 著) Amazonほしい物リスト2021
スピリチュアルズ 「わたし」の謎(橘玲 著)

スピリチュアルズ』、心理学で人の特性を分類するのに使われるビッグファイブというものの解説書のような本で、パーソナリティ形成について面白く学ぶことができました。

スピリチュアルズというワードから想像したのが「魂」とか「精神世界」だったので、スピ系の本かと思ったらぜんぜん「心理学」に寄った本でした。心理学はあまり詳しくないのですが、「わたし」を見える化するための要素として「ビッグファイブ」という分類法が革命的でよく使われるんですね。

その「ビッグファイブ」を、一部分解・追加して「ビッグエイト」にし、「わたし」を構成する8つの要素としてオリジナルで展開しているのが本書。

面白かったのは、パーソナリティの形成が「遺伝+子どものころの友達グループのなかでの同一化と差別化」というところ。親の教育よりもどのグループに属し、そのなかでどういうキャラを確立したらよいかという適応によってパーソナリティが形成されるというところ。

そして、ずばり外見もパーソナリティ形成に影響するよね、と言い切っているところがすがすがしい。

わたしは、かなりの肥満児だったのですが、いわゆるデブは小学校時代だと存在感があります。なぜかパワーがあると思い込みがある。中学校に入るとようやく筋肉がないのでボロがでるんですが…まあ、そんななかでうまくキャラクター付けができ、集団のなかで何か得意なことを見つけようとして、必要とされる存在であったり、邪魔にならない存在でいることを選択していった気がします。

わたしは組織の中での処世術は得意な気がするのですが、こうした小学校や中学校でサバイバルするなか徐々に構築されていった…というのは納得感があるんですよねー。

世間では「親ガチャ」なんて言葉が流行ってますが、個性への影響という面では経済力はそこまで影響しないという理解でいいのかな。

スピリチュアルズ 「わたし」の謎 (幻冬舎単行本)
これは事件だ。 驚け、そして目醒めよ! あなたは、あなたのスピリチュアルの、操̈...

本の概要と要約

『スピリチュアルズ』の問題提起
『スピリチュアルズ』の問題提起

著者の課題
人類がずっと抱き続けた疑問「わたしは何者か」という人類史上最大の謎に挑む

解決方法
わたしもあなたも、たった8つの要素でできている。新しい心理学スピリチュアル理論が人生を変える

『スピリチュアルズ』の要約
わたしを構成する8つの要素
『スピリチュアルズ』の要約
スピリチュアル=無意識+魂

内容
・ビッグファイブ(ビッグエイト)
 ーパーソナリティを構成する要素
 ①外向的/内向的
  ー明るいか、暗いか
 ②楽観的/悲観的
  ー精神的に安定しているか、そうでないか
 ③同調性
  ーみんなと一緒にやっていけるか、自分勝手か
 ④共感力(同調性を分解)
  ー相手に共感できるか、冷淡か
 ⑤堅実性
  ー信頼できるか、あてにならないか
 ⑥経験の開放性
  ー面白いか、つまらないか
 ⑦知能(追加)
  ー賢いか、そうでないか
 ⑧外見(追加)
  ー魅力的か、そうでないか
・ビッグファイブは一人ひとり演じる物語のキャラを見える化したもの
・スピリチュアル=無意識+魂
 ー脳科学では、「わたし」はほとんど無意識
 ー進化の過程で身についた生存と生殖の最適戦略
・パーソナリティ形成
 ー遺伝子
  ー人間の基本プログラムは報酬を好み、損失を避ける
 ー非共有環境
  ー子どもの頃に属する集団の影響が大きい
  ー家庭環境や教育ではない
  ー集団のパーソナリティで同一化
  ー個人のパーソナリティで差別化
 ー生まれ持ったもの、そして社会での適応によって形成される
・成功した人生とは
 ーあなたのスピリチュアルにあったポジティブな物語
 ー自分のパーソナリティを知ることが必要

著者:橘玲とは

橘玲(たちばな・あきら)氏は、2002年、国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。同年、「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』が30万部を超えるベストセラーに。06年『永遠の旅行者』が第19回山本周五郎賞候補。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で2017新書大賞受賞。

●公式
橘玲公式サイト(https://www.tachibana-akira.com/
Twitter:橘 玲@ak_tch

●インタビュー
『無理ゲー社会』橘玲に聞く 「自分らしく生きる」が生んだ絶望(日経ビジネス 2021.9.29)

本の解説と感想

わたしを構成する8つの要素

ビッグファイブという、人のパーソナリティを分類するモデルがあるそうです。ちょっと調べてみると心理学的に使われている言葉と本書では表現は異なるようです。(wikipedia「ビッグファイブ」を読む限りは…)

著者の橘氏はこれを一部分解、要素を追加して8つの要素でパーソナリティを分類できるというように述べています。『スピリチュアルズ』で挙げられている要素が以下の8つ。

  1. 外向的/内向的
  2. 楽観的/悲観的
  3. 同調性
  4. 共感力
  5. 堅実性
  6. 経験の開放性
  7. 知能
  8. 外見

外向的/内向的

特定のモノ/ひとに欲望を感じるかどうかは、あなたが自分で選んで決めているわけではない。欲望とは、あなたが遭遇した出来事に対する脳内神経伝達物質の反応なのだ

『スピリチュアルズ』p102

外交的か内向的かというのは、報酬型の個体差です。

生き物は、「覚醒」「鎮静」という「感じ」を持つように進化してきました。辛い物が好きというのは刺激を求めているということで、つまり報酬と快感の「感じ」をもたらす神経伝達物質ドーパミンが放出されることを求めているということです。

刺激に対して鈍感な人は、覚醒度を上げようとして強い刺激を求めるので「外交的」刺激に対して敏感な人は、覚醒度を下げようとして強い刺激を避けるので「内向的」というのが一般解だそうです。

外交的な人の脳波は興奮が足りない傾向があり、内向的な人の脳波は興奮しすぎる傾向があります。これは「激辛ラーメン」か「図書館」かの違いで、刺激を求めるのは外交な人のイメージと合致しますし、強い刺激を避ける内向的な人は図書館のような落ち着いた色調の静かな空間を好むというイメージともつながります。

楽観的/悲観的

楽観的か悲観的というのは、損失系の個体差です。これも進化の過程で最初に生まれたパーソナリティです。

それぞれの人が、自己の脳で未来をシミュレーションするときに、ポジティブに向かうのかネガティブに向かうのかの傾向のばらつきと言えばわかりやすいでしょうか。

人類が生き延びるために発達させたのが「予測」。脳が生存や生殖に有利になることがあれば、それを予測する。とてつもなく高度なシュミレーション能力を発達させなければ人は社会という危険な環境で生き延びることができませんでした。

人の脳は、記憶に基づいて過去と未来を構築すること if thenの条件式を持っており、「あの時こうしていたら、こんなことにはならなかっただろうか」というシミュレーションを行い反省や後悔をします。

面白かったのは、脳は基本的に楽観主義という点。恋愛、スキルについて、「平均と比べてどうですか?」と質問をすると大多数の人は「平均以上だ」と答えるのだそうです。

これは生存や生殖にあまり関係ないように思えるのですが、自尊心なのかある程度楽観的に構えていたほうがいいのか、できるだけポジティブに考えることによって健康に悪影響を与えないようにしているものと言えそうです。さまざまな調査で楽観主義のほうが健康で長生きし、悲観的な人は病気がちになるということが判明しているそうです。

ちなみに、「外交的な人は楽観的」というのは違っていて、例えば芸能人など舞台に上がる人は「死ぬほど緊張する」というようなこともよく言うそうです。

外交的な人は楽観的な内向的な人は悲観的だと思われてるが
外交的で悲観的芸能人舞台に上がる時は死ぬほど緊張するという言葉がたくさん見つかる

明るい暗いという印象を作っているのは実は楽観的悲観的のパーソナリティなのだ

同調性

同調性とは、集団の圧力に対するばらつきです。

著者は、同調性の従来の定義は「同調性」と「共感性」を混同しているとしています。同調性は高いけど共感力が低い人、同調性は低いけど共感力が高い人はいくらでもいるという。これについては本書の例えば絶妙によくわかるのですが、前者には「会社で働く人」に多く、後者には「フリーランスで活躍する女性」に多いという感じです。

同調圧力というのは、日本的なイメージがありそうですが、世界的に見てもしっかりと存在するものです。ある実験によれば、正解が正確に分かっていても、他の全員が別の選択肢を選ぶと、不安になって間違ってると知りつつ間違いを選択してしまう層がそこそこいるのだそうです。

また、同調性の威力を説明するものとして、アイヒマン実験が取り上げられていました。アイヒマンという人物はアウシュビッツ強制収容所へユダヤ人の大量磯を指揮したナチスの高級官僚です。「何一つ後悔していない」というほど、職務に忠実な公務員だったそうです。

心理学教授のミルグラムが、被験者を教師役と生徒役に分け、教師が生徒に罰(電気ショック)を与えるというもの。ただ実際には通電していなくて、生徒役と教師役はお互いが見えなくなっていて、声だけが聞こえる状況。演技を電気ショックの威力には複数のレベルがあり、教師役の被験者は命令されてだんだん威力を上げていきます。

レベルが高くなると、「やめてくれ!」など悲痛な叫びをしていき、さらには声が聞こえなくなるところまで来ます。それでも教師役は電気ショックを与え続けるのか…結果として、被験者40人のうち25人が最高レベルまで電気ショックのレベルを上げたのだそうです。

アイヒマンは非道かもしれませんが、誰もがアイヒマンのようになってしまうかもしれないのです。

同調性が共感力と分解したのは、この実験のなかでも途中、被験者が生徒役の苦痛に強く共感したものの実験を止めなかったことから、共感は同調圧力の前には抵抗できないと捉えたからのようです。

同調性について面白かったのは、日本人とアメリカ人の違。本質的なデフォルト戦略が異なり、日本人とアメリカ人の最適な生存戦略が異なるだけという話。日本人は目立つとろくなことがなく、アメリカ人は自己主張しないと存在しないと同じとみられるという。パーソナリティ形成は地域も影響していますね。

共感力

共感力とは、相手と感情を一致させる能力のこと

共感も、生殖に必要なものでした。生存のためには他者を攻撃する(もしくは逃げる)ことがありますが、生殖のためには他者を受け入れることが必須になってきます。

共感力には明らかな性差があるようです。女性は共感力が高く、男性は共感力が低いという。これはオキシトシンとテストステロンが関係しているらしい。子供を産むと盛んに分泌される「オキシトシン」は親子の愛着に関係していますが、男性の競争本能に関係するテストステロンは共感力を抑制します。結果的に、男性が女性の気持ちがわからないのは、この共感力に差があるからだとか…

堅実性

堅実性とは、「異時点間選択のジレンマ」の時間軸のばらつきであり、より簡単にいえば「いまの自分を大切にするキリギリス」と「未来の自分を大切にするアリ」の対立のこと

競争に勝つとドーパミンが放出され勝利が引き金となると、ドーパミンはもっと多くの勝利を求めさせる…と大王製紙創業家の2代目・井川意高さんがギャンブルの魅力にとりつかれ借金をした例が印象的でした。当時かなり大きな話題になりましたね。自伝の『溶ける』を読んでみたくなりました…

この堅実性(というか短期リターンか長期リターンか)というものも、生き物の進化の過程の中で身につけたもの。ダイエットしてもリバウンドしてしまうのは、飢餓に対して危険を察知することでできるだけ脂肪細胞を手放すまいということになるらしい。ちなみに夜食を食べないためには、家に帰ったらすぐに歯磨きをすることだそうです。歯磨きした後は何も食べない、ということがルール化されているからだとか。

7つの習慣』の時間管理のマトリクスを思い出します。

経験の開放性

経験の開放性というのは、新奇性と保守の傾向のばらつきのことです。

リベラルは好奇心旺盛で知能が高く、保守派は伝統にこどわり知能が低いというステレオタイプがありますが、知能とはまた別の話です。

知能

知能に関しては多くの言及がありませんでしたが、経験の開放性とともに、4象限で分類されていたものが一定の納得感がありました。

経験の開放性が高く、知能が高い人はリベラル。
経験の開放性が高く、知能が低い人は陰謀論者。
経験の開放性が低く、知能が高い人は成功した保守派(社会主義国家とのかのトップとかですかね?)
経験の開放性が低く、知能が低い人は保守派(保守は知能が低いのか…?)

外見

著者は、外見もパーソナリティに大きな影響を与えているとしています。心理学者があえてこの領域を研究対象としていないような書き方をしていました。若干、批判めいているんでしょうか?

外見がパーソナリティにどのように影響するのでしょうか。ここからは私の勝手な考えになりますが、外見によって、社会手段でのポジションに影響が出る可能性が高く、こうした環境で生き抜くための最適な戦略をとるなかでキャラクターを形成していくという流れではないでしょうか。

遺伝と非共有環境

わたしたちはみな、微妙に異なるパラメーターのレベルを持って生まれてくる。その「傾向の違い」を利用しながら、社会のなかで自分に適した「役柄」を探すのが成長で、それによって一人ひとり違うパーソナリティになっていくのだ

『スピリチュアルズ』p50

ここまで、パーソナリティを形成するビッグファイブ(ビッグエイト)について触れてきましたが、ではその要素・パラメータはどのように振り分けられるのでしょうか。

本書では、パーソナリティを形成するのは遺伝と非共有環境だとしています。遺伝により基礎パラメータが設定され、非共有環境でそのパラメータをベースにしながら社会の中で最適なキャラクターを形作っていくのです。

遺伝というのはここであえて触れるまでもないのですが、非共有環境とはなんでしょうか。それはこどものころの仲良しグループです。家庭環境を離れて異質な人たちのなかで、似たような傾向を持つグループに所属し、その同一化された集団のなかでも個性を出そうとしてパーソナリティが形成されていくという。

これは納得感がとてもあります。子育てて「いつのまにそんな言葉を覚えてきたんだ…」ということがよくあります。これは子どもが所属している外部のコミュニティで発せられた言葉であり、そのなかで生き抜くために馴染まなければならない共通言語や行動があるわけです。

さらにこの集団の中で「モテよう」と思ったら、なんらか差別化しないといけないわけです。

まとめ:スピリチュアルズ

魂の話があまり出てこなかったので、少し肩透かし感はあるのですが、パーソナリティ形成について面白く学べました。人の無意識というのは、生存と生殖のために人類が進化の過程で身につけたパーソナリティの要素で、そのばらつきの度合いが個性に表れているということですね。

本書のスピリチュアルズ理論(?)では、「わたし」を構成する要素と形成されるまでが説明されていましたが、じゃあ一体これをもとにどうするの?というところがミソなわけです。本書の最後に簡単なチェックリストがあるので、自分のおおよそのパーソナリティの方向は把握できます。

で、完全にはマッチしませんが、wikipedia なんかにも組み合わせ表があったりするので、どういう個性なのか診断してみるのもよいのではないでしょうか?

本の目次

『スピリチュアルズ』の表紙
『スピリチュアルズ』の表紙
  • はじめに わたしもあなたも、たったやっつの要素で出来ている
  • PART1 無意識と「ビッグファイブ理論」を最速で説明する
  • PART2 心理プロファイルを使った史上最大の「陰謀」
  • PART3 外向的/内向的
  • PART4 楽観的/悲観的
  • PART5 同調性
  • PART6 共感力
  • PART7 堅実性
  • PART8 経験への開放性
  • PART9 成功するパーソナリティ/失敗するパーソナリティ
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