「相対性理論」って聞いただけで難しそうで避けてきましたが、今回NHKの100分de名著のテーマ本を解説されている佐藤さん監修の本で、かなり理解が進んだ気になれます。実際のところは理解できないのでしょうが、大枠つかめれば十分!
大前提として、「相対」とはどういう意味なのか。光の速度が一定であることなど、相対性理論の話に入る手前のところの話も、物理素人にも分かりやすく「思考実験」という形でかみ砕いて解説されていて感覚として、おおよそこういうものだという概念が掴めたのかなと思っています。
相対性理論という言葉は知っていましたが、自分とは無縁の世界で難解そうなところから入り込まないようにしていましたが、この本を通してその革新性を知ることができて良かったです。
この本は、昨年の誕生日にAmazon欲しいものリストで頂いた本の一つ。同時に私が勤めている会社の方から相対性理論についてならこれがお薦めだ!と『「相対性理論」を楽しむ本 よくわかるアインシュタインの不思議な世界』という文庫本をもらっていて、理解を深めるために同時に読もうと構えていました。最初に文庫の本から読みましたが、しっかり読まないと頭が回らなかったのと、読みやすさまり、かなり熟読しまいましたが…
そこから100分de名著版に入ったのですが、内容が結構似ている、と。それもそのはず。文庫版は看守者の佐藤さんの著書でした。ということもあり、書いている内容はものすごく理解したつもりなのですが、まとめるのだけは難しかったですね…
相対性理論を語るうえで最も大事なのは「光は誰から見ても常に一定の速度」ってことでしょうか。光の速度が一定だとすると、これまでの考え方では説明できないことがでてくるぞ、という。アインシュタインが天才と言われる所以は、頭のなかだけで常識を覆して世界の真理に迫り、あとから他者が実験をして理論が証明されるというところなんですね。
100分で名著は以前にも『古事記』を読んで、全体感を掴むことができました。映像で見る機会がほとんどないのですが、本当にいい教養のコンテンツですね。(なお、100分de名著の公式サイトにも導入部分の紹介があります)
本の概要と要約
相対とは何か?
・相対とは何か?
ー物理学では相手と自分との関係のなかで運動を観察
・ガリレ=ガリレイの相対性原理
ーガリレイの地動説への反論
ー地球が動いているなら落としたものは真下に落ちないのでは?
ー反論に対するガリレイの反論
ー海を進む船にいる人がマストの上から真下に物を落とすとする
ー船にいる人から見れば物は真下に落ちているように見える
ー地上にいる人から放物線を描いて落ちているように見える
ーある人には止まって見えて、別のある人には言動いて見える
ーしかし、例外がある。光だけが一定して変わらない速度
ーこれは観測と実験で明らかになっている
ー光は波動なのか粒子なのか
ー波動派の主張に粒子は反論できず波動が主流に
ーしかし、波動であるには「媒質」が必要だが発見されず
ーアインシュタインが光粒子だと論じる
ー光が一定の速度だと時間と空間の考え方を変える必要がある
特殊相対性理論
・特殊相対性理論
ー1905年、お役所勤めだったアインシュタインが発表
ー「時間と空間は誰にとっても同じか?」という問い
ー自分と相手とでは捉え方にズレがあるという結論
ー「特殊」とは等速直線運動のみという限定された条件
・特殊相対性理論の思考実験
ー電車の車両のなかのボールの時空を想像する
①中央から前後のドアにボールを投げる
ー両方のドアに同時に当たる
ー従来の速度合成の法則で考えると以下になる
ー前方は電車が進んだ分だけ距離が長くなるが、もとのボールの速度に電車の速度が足されたように見える
ー後方は電車が進んだ分だけ距離が短くなるが、もとのボールの速度から電車の速度を引いたように見える
ー電車内からも地上からも、同時に前後方のドアに着くように見える
②中央から光を前後のドアに当てる
ー電車内では距離が同じなので、同時に届いているように見える
ー地上から見ると距離が短くなっているなら、光の速度は一定で変わらないので後ろのほうが早く当たることになる
ー本当はズレがあるはずなのに、日常ではごくわずかでしかないので、ズレに気が付かない
ーこう考えると動くものは
ー時間が長くなる
ー地上から見た時に比べ、電車のなかの人の時間が遅い
ー長さが縮む
ー止まっている人からすると動いているものが短く見える
ー質量が増える
ー光の速度を超えることはないので、加速しても質量に変わっていく
一般相対性理論
※(訂正:一般相対性理論は1906年ではなく、1916年)
・一般相対性理論(1916年)
ー等速直線運動だけではなく加速度運動にも適応
ー相対性理論はこれまでの常識を覆すものだったので疑問もあった
ー「重力の強い場所では空間が歪んで進路が変わる」は本当か?
ー実際に1919年の皆既日食で光の進路が変わることが観測された
・等価原理
ー加速度運動と重力は同じと考えた
ー表面をゴム膜で覆ったところへボールを置くとへこむ
ーそこに別のボールを近くに置くと近づいてくっつく
ーこの動きこそ重力
ーロケットで考えると
ー地上を飛び立つときは加速すると重力で進行方向とは逆側に押し付けられる
ー宇宙空間で加速をやめると無重力になって浮く
ー宇宙空間で加速すると進行方向とは逆側に押し付けられる
アルベルト・アインシュタインとは
1879年(日本では明治12年)、ユダヤ人の商店主の父親のもとに生まれます。外国語と暗記物の科目が苦手な一方で、数学と物理では才能を見せていたそうです。当時、軍国教育は知識の丸暗記と団体コードの決定さが重視され、アインシュタインには合わず、高校を中退しています。大学に進むと、電磁気学や幾何学など自分の好きな勉強に没頭したものの、就職口として望んでいた大学教師の職は見つからず、臨時教師や家庭教師などを経て、スイスの特許庁に就職するという経歴を歩みます。
スイスの特許庁では、1日のノルマを午前中に済ませると、午後はこっそり物理や数学の本を読みふけっていたそうで、その時間がアインシュタインが26歳のときにインパクトのある3つの論文を出させることになります。それが「光量子論」「ブラウン運動」「特殊相対性理論」です。
光量子論は、同時「波」と考えられた光の正体が、実は「粒」だと論じた研究。一方で光を「波」と考えないと説明できない現象も多くあり、この結果、光は粒でもあり並みでもあるという常識的には同居できない二つの性質を兼ね備えていることを認めなくてはならなくなりました。
ブラウン運動は、元々イギリスの植物学者ブラウンによって水面に花粉を落とすと花粉が勝手にジグザグの運動することが発見されていましたが、花粉の大きさとその動き方から花粉に衝突する水の分子の大きさを推定し分子の実在を証明することにつなげたものです。
そし、肝心の「特殊相対性理論」。これは前述の2つとは訳が違いました。「時間の進み方が遅くなる」「長さが縮む」など常識とかけ離れたことが書かれていたため批判も多くありました。一方で高く評価される向きもあり、アインシュタインは数々の大学から乞われて渡り歩きます。そして約10年後に「一般相対性理論」を発表します。
こうしている間に、ドイツではユダヤ人を敵視する勢力が急成長し、アインシュタインは招聘されていたアメリカに留まり亡命しました。アインシュタインが発表した公式に有名な「E=mc」がありますが、これは原爆を生み出す理論にもなりました。アインシュタインはドイツが原子爆弾を完成させる前にアメリカが先んじて製造するよう進言する署名にサインをしてしまいましたが、戦後は核兵器反対廃絶を強く訴えたそうです。
本の解説と感想
ガリレイの相対性原理とは
相対性理論の前に、物理学でいう「相対」とは何を指すのか、光の速さとはどんなものかを理解しておくと、とても理解が進みやすいです。物理学のなかで言われる「相対」とは、相手と自分との関係のなかでの運動を観察することです。
ガリレイは、それまで天動説(地球の周りを他の星が回っている)という常識のあるなかで、地動説を提唱しました。それまで神のように崇められ確定した常識として語られていたなかで地球が動いているというのは、エポックメイキングな出来事なわけで当然批判も多かったわけです。
「もし地球が動いているというなら、高いところから物を落としたとき、真下に落ちずに、動いた分だけずれて落ちなければおかしいじゃないか」という反論を受けます。それに対してガリレイが持ち出したのが相対の概念でした。海を進む船のマストから物を落としたとき、船にいる人と陸から眺めている人とで、その落ち方の見え方に違いが見えるだろうという思考実験です。
船の中の人たちからみれば、マストから落としても真下に落ちたように見えますが、陸からの視点では、綺麗な放物線を描いたように見えるというものです。船が進んでいる分だけ落ちたものも進行方向に動いているのは想像できますね。でも船の中の人にとってはそれだけの距離を移動したにも関わらず真下に落ちるし、手に持った物を真上に放り投げたとしても手元に戻ってきます。
このように、船の中にいる人にとっては、船が止まっていようが進んでいようが同じ観察ができるのに、陸にいる人からは違った観察が見れるというのが相対性原理というわけです。
光の速さだけは一定
光の速さは30万km/秒です。これは1秒間に地球を7周半する速さになります。
光がなぜ相対性理論にとって重要なのかと言うと、光の速さが常に一定であることと、相対性理論が明らかにした様々な現象が物体が光の速度くらいになった場合のみ際立って現れていくためです。なので日常生活で相対性理論を感じる場面は存在しないので、気が付かないほどなのです。
光の速さは、デンマークの天文学者レーマーが木星のまわりに回っている衛星が木星の影に隠れる「食」の時間に注目し、木星と地球との距離によって食の時間に変化があるのは光に速度があるからだと考え、秒速22万kmと導きました。その後の研究により30万km/秒であるとわかりました。
もうひとつ光を語るうえで重要なのが、光が「波動」であるか「粒子」であるかという問題。かつては波動であることが主流の考え方でした。しかし波動であるためには媒質と呼ばれる波動を伝えるための物質が必要なはずが、真空であるはずの宇宙には存在しえない。波動説を信じる学者はこの幻の媒質をエーテルと名付けて探しましたが、一向に見つかることはありませんでした。
そこでエーテルのような物質が存在するのかどうかを確認するために、1887年に「マイケルソン・モーリーの実験」と呼ばれる実験が行われました。これは、エーテルという物質が存在するのであれば、光が地球に届くまでの間に摩擦の抵抗を受けるはずなので、エーテルが追い風になるときと向かい風になるルートとでは光の速度が変わるはずだという仮説に基づきます。
そこで同一光源から発せられた光をハーフミラーを通して、南北方向と東西方向で速度が違うかどうかを計測したところ、何度繰り返しても光の到達時間に違いが見られないという結果が得られました。エーテル自体の存在が疑問視されるとともに、光の速さは地球が動いていようがいまいが常に一定であるという光の性質があることがわかってきました。
特殊相対性理論とは
この光の速さが一定であるということをベースにすると、今までの常識を覆すような不思議なことがわかってきた、というのが相対性理論になります。
1つ目は、動くものは止まっているものよりも時間の進みが遅くなるということ。2つ目に、動くものからすると進行方向の長さが縮んで見えるようになるということ。3つ目に、動くものは質量が増えていくということです。特殊相対性理論からその現象を捉えていきましょう。
特殊相対性理論とは、等速直線運動という限定された条件下でのみ説明できる相対性理論です。「特殊」というと「一般」よりも難しいイメージを持ちますが、一般はどのような条件下でもということになるのでそちらのほうがややこしいという認識でいればよいかと思います。
そして、果たしてその本質は「時間と空間は誰にとっても同じか?」という問いです。
私たちが日常で見えるレベルでは時間も空間も誰にとっても同じなのですが、実は光の速度のレベルまでいくと同じではないというのが、アインシュタインが導き出した結論です。
アインシュタイン以前、例えば電車の中で進行方向前方と後方の両方のドアに向かってボールを投げると、そのボールの速度は「電車の速さ」+「ボールの元の速度」でした。なので、進行方向へ投げたボールは電車が進んだ分だけ投げた位置から距離がプラスされるもののボールの速度は速くなり、後方へ投げたボールは電車が進んだ分だけ投げた位置から距離が短くなるもののボールの速度も遅くなるために、両方のドアに同時に着いたように見えます。これは電車内にいても地上にいても同じです。
しかし光の速度のレベルで考えるとどうなるでしょうか。光の速度は一定です。電車内では前後の距離は変わらないので同時に前方後方に光が着きますが、地上からみると光が発せられた位置から後方のほうが距離が近いので後方のドアに早く光が届くはず。
そうして考えると、電車の中と地上とでは時空の捉え方が違っていることになります。日常生活ではただ気が付かないだけなのです。このような考えに基づくと、光の速さのレベルで考えると、自分と相手とで同じ事象に対して時空の捉え方が異なってきます。
例えば、秒速24万 kmで走る列車が40万 kmのトンネルを通り抜ける(先端部分のみ)には1.67秒かかる計算になるのですが、アインシュタインの計算式を当てると電車の中では1秒しか進まないことになるそうです。
しかし、この電車がもし40万kmのトンネルを1秒で進むとしたら、光の速度を超えて走っていることになります。光の速度を超えることはないので、電車内の人から見るとこの40万kmのトンネルが24万kmまで縮むので1秒で通過できるという捉え方になります。
もうひとつ、速度が光の速さを超えないのであれば、例えば宇宙空間でロケットを加速させ続ければ光の速さを超えるのではという問いに対しては、スピードが上がるにつれて質量が増えるという仮説を導きます。
この理論はE=mc2という式で表され、特殊相対性理論で最も重要な結論であり、のちに原子爆弾にも応用されます。この公式によれば1円玉6個分が東京ドーム1個分の水を沸騰させるエネルギーを持っているということになります。
一般相対性理論とは
一般相対性理論は、特殊相対性理論では等速直線運動でしか説明されていなかった相対性理論を、加速度運動へも適応させたものです。
特殊相対性理論もですが、一般相対性理論もこれまでの常識を覆すもので、懐疑的な意見も多く、実験によって観測しようという動きがありました。この実験によって一般相対性理論でいう「重力の強い場所では空間が歪んで進路が変わる」ということが証明されました。
どういう実験だったかというと、皆既日食が観測されるタイミングで、もしアインシュタインの言っていることが正しいのであれば、太陽方面にある星の光が、実際に本当にある場所ではない位置に観測されるはずだというものでした。この実験では結局、アインシュタインの理論の通りとなり、アインシュタインが天才と呼ばれる所以になりました。
で、加速度運動の話ですが、重力の話と深く結びつきます。
平面の実験でもそれが感覚的にわかります。表面をゴム膜で覆った平らな板があったとして、そこに野球のボールを置きます。すると、重さでゴム膜は沈みます。空間が歪んでいると考えてください。ここにさきほどのボールよりも軽いゴルフボールを近くに置いてみます。すると沈んだボールに向かって速度を上げて近づいていきます。この力は光にも及ぶし、質量の大きいものほど強くなります。
やや話がズレますが、さきほどの野球ボールが重さそのままでパチンコ玉くらいの大きさになると重みがより狭い範囲に集中するので、より深くゴム膜に沈んでいくはずです。なので、ブラックホールは質量がとてつもなく大きく、光でさえ飲み込まれて出てこれなくなるんだそうです。
で、加速度運動と重力の話ですが、ロケットで考えてみたとき、地上からの打ち上げ時は重力で下のほうへ押し付けられますが、宇宙空間では無重力なのにも関わらず加速したらしたで押し付けられます。これが加速度運動と重力が同じ価値を持つという「等価原理」というものです。
まとめ
以上、相対性理論の100分de名著をまとめてみました。思い切って割愛したところもありますが、結局2枚にはまとめきれず、中途半端になってしまったような…ざっと相対性理論の輪郭は追えたように思います。専門家ではないのであくまでもさわりの部分として理解しておくにとどめます。たぶん私の脳では理解できないと思いますので…
でも、この理論でいろいろなSFの要素が生まれているわけですね。宇宙空間をワープし続けて地球に戻ると地球に住んでいる人たちに比べて宇宙空間をワープした人たちは時間が遅い(中の人にとっては遅くはない)ので年を取っていない。ウラシマ効果というやつですね。スターウォーズでは超光速でワープしますけど、どうなってる設定なんでしょうか?
本の目次
- はじめに 誰にでもわかる「相対性理論」の世界へ
- 第1章 光の謎を解き明かせ!
- ガリレイの相対性原理
- 相対とは、一体何なんだろう?
- 物質の動きを相対的に捉える
- どうしても解けない光の謎
- エーテルは本当に存在するのか
- 光の謎を解き明かしたアインシュタイン
- あだ名はビーダーマイヤー
- 世界を震撼させた相対性理論
- 第2章 時間と空間は縮む
- 常識を疑え
- 同時刻の相対性
- 「時間」は絶対ではない
- 動いているものの時間は遅れる
- なぜ時間の遅れに気づかないのか
- 動いているものの長さは縮む
- 「空間」も絶対ではない
- 「時空」という新しい概念
- 第3章 驚きのエネルギー革命
- ものが動くと質量が大きくなる
- エネルギーが重さに化ける
- E=mc2乗が生み出したもの
- ニュートン以来の天才物理学者
- ユダヤ人としての苦悩
- ユダヤ人への弾圧
- 本当は成人ではなかった?
- 第4章 ゆがんだ宇宙 重力の正体とは?
- 重力に注目せよ!
- 加速度運動と重力は同じもの
- 重力の正体とは
- 重力による時間の遅れ
- ウラシマ効果と双子のパラドックス
- ブラックホールとは何だ?
- タイムトラベルの可能性
- 母殺しのパラドックス
- 多世界解釈とタイムマシン
- ブックス特別章 相対性理論が切り開いた「現代宇宙論」
- アインシュタインの静止宇宙モデル
- フリードマンの膨張・縮小する宇宙モデル
- ルメートルの膨張宇宙モデル
- 観測された宇宙の膨張
- ガモフのビッグバン宇宙モデル
- インフレーション理論
- 加速膨張の始まりと火の玉宇宙の誕生
- 無からの宇宙創生理論
- 観測が主導する時代
- 読書案内
- アインシュタイン略年譜