『「教える」ということ』(出口治明)の書評とサクッと要約|相手に真意を腹落ちしてもらうこと

教えるということ(出口治明) Amazonほしい物リスト2020
教えるということ(出口治明 著)

『「教える」ということ』は、現代の知の巨人、ライフネット生命の創業者で、現在は立命館アジア太平洋大学を経営している出口治明さんが、その経験と膨大な知識から伝える「教える」ということの本質を書いたという本。

出口さんは、やはり頭の中で分解と再構築をして整理しきってしまっている感。なぜこうもすっきりさせることができるのか。でもなんか想像していた「教える」ということではなかった感はあるので、ちょっともやついていたりします。

冒頭の「はじめに」は、恩師からの言葉で、古典が分からなければ能力不足、現代の本が分からなければ書き手の責任、ということから始まります。

これはつまり、教えられる側が分からないのは、教える側がそのテーマについて消化しきれていないか、相手のレベルに合わせていないかなど、とにかく教える側に課題があるということを意味しています。

「見て覚えろ」とか「あいつは、教えても身につかない」と投げ出すのは自分を棚に上げて他責するようなもの。こうした問題提起に加え、「自分で考える力」と「社会で生き抜く武器」を説明した第1章だけでも読む価値がある。

ただ、ちょこちょこ、ご自身が学長に就かれているAPU(立命館アジア太平洋大学)の宣伝的な文章を入れ込んでいる点はちょっと気になりますかねー…

全体を振り返ってみると「教える」ということにフォーカスされてはいないような気がしてなりません。なんというかまとまっていないような。「教える」こととは何かを伝えたいのか、「日本を救う尖った人を増やす」ことを啓蒙したいのか。それらが結びついていない感じはしました。

Bitly

本の概要と要約

教えるということ(出口治明)
『教えるということ』の問題提起

著者の課題
自分たちが学んだことを次世代に伝えていかなければならないが、相手に真意を腹落ちさせなければ教えたことにはならない。

解決方法
考える力、社会で生き抜く武器など、何をどう教えればいいのか、教えることの本質を本書で伝える

教えるということ(出口治明)
「教える」ということは、真に腹落ちさせること
教えるということ(出口治明)
「教える」ためのヒント

内容

・「教える」とは相手に真意を腹落ちしてもらうこと

・古典が分からない→読み手の力不足
 -その時代の歴史背景を知らないから難しい

・現代本が分からない→書き手の責任
 -書き手が消化しきれてない
 -書き手が難しい言葉を用いる

・なぜ教えるのか
 -自分の頭で考える力を与える
  -一歩先の未来の変化も予測不能である
  -3つの枠組みを考える
 ①タテ:昔の人がどう考えたか
 ②ヨコ:世界の人がどう考えてるか
 ③算数:どのようなエビデンスがあるか

 -社会を生き抜く武器を与える
 ①国家
  -国家という括りは想像の共同体だと知る
 ②政府
  -オペレーションコストである
 ③選挙
  -政府をつくること
  -意見が言える機会
 ④税金
  -再分配のための財源
 ⑤社会保障
  -税金の分だけ給付される
 ⑥お金
  -財布、投資、預金で考える
 ⑦情報の真偽を確かめる
  -数字、ファクト、ロジックで考える

・好きこそものの上手なれ
  -興味がなければすぐ忘れる
  -興味や関心を引き出す

・どうして勉強する必要があるのか
  -何かについて知ってるほど選択肢が増える
  -生涯収入が高くなる

・尖った人を増やす
  -新しい産業を作れないと日本経済は低迷のまま
  -ゼネラリストよりスペシャリスト

・伝え方の基本
  -最初に結論
  -エビデンスを提示
  -相手のレベルに合わせる

・社会人に仕事を教えるとき
  -マニュアル化に尽きる
  -部下とのコミュニケーションは就業時間内
  -部下を公平に扱う

著者:出口治明

著者は出口治明氏です。日本生命保険相互会社に入社し、ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを歴任しました。その後2006年、戦後初の独立系生命保険会社でかつネット専業というライフネット生命を設立しました。出口氏は現在、立命館アジア太平洋大学(APU)学長を務めています。

著書は多数あり、以前に紹介した『哲学と宗教全史』のような歴史を語るもののほか、『貞観政要』というリーダーシップ論、『論語と算盤』のような利益と道徳を問うようなものなど、多岐にわたり、いわゆるリベラルアーツを学ぶことが重要だとされています。

●インタビュー
ライフネット生命をけん引した出口治明氏の教えから学ぶべきこと(日経ビジネス/2021年3月5日)

●SNS
Twitter 出口治明@p_hal

本の解説と感想

古典と現代本を読んだときの「わからない」は意味が違う

古典がわからないとしたら、読み手の力不足。同時代の文章で書かれた本が理解できないとしたら、書き手の力不足

『「教える」ということ』p2

出口さんの大学時代の恩師・高坂正堯(こうさかまさたか)氏が、発した言葉だそうです。

私たちは、古典を読んで難しく感じることは多々あります。それはその古典が書かれた時代と現代とで、時代背景が異なるからすっと理解ができないことがるからだというのです。例えば「花を見る」という表現は、現代に生きる私たちにとっては「桜」を指しますが、柿本野人麻呂の時代に詠まれていた「花」とは梅を指すのだとか。

つまり「古典がわからない」というのは、読み手の知識不足ということです。

続いて、現在の本を読んで分からない場合の話です。本屋に行けば様々な本が置いてあります。その本たちはそれぞれターゲットが設定されていますが、例えば「働き方」のようなテーマでマネージャー向けに書かれた本があるとして、その読み手が理解できなかったとしたらどうでしょうか。もちろん難易度が高くターゲットがずれていたというのはあるかもしれませんが、手に取ってしまったユーザーが購入するまでの間にコミュニケーションミスがすでに発生しています。さらにもしバッチリとターゲットがあっても理解できなかったとしたら、それは著者自身が題材をよく消化してないか、著者が見栄を張って難しい言葉を使っているかのどちらかです。

つまり「現代の本がわからない」のは、書き手の教える力不足ということです。

出口さんは、この至言をベースに、教えるということが何なのかをこう説明します。

「教える」とは、どんな人に対しても、真意を伝えることです

『「教える」ということ』p6

上司が部下に仕事を教えたとき、部下が上司の話していることを理解できないとしたら、それは上司の責任で、教える立場に立つのなら、相手のレベルに応じて、相手に伝わるように、相手が理解できるように、わかりやすく話す(書く)ことが絶対的な条件だというのです。

教育の目的

出口さんは、教育には2つの目的があるとしています。大元は日本の教育基本法を引っ張ってきています。

教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならない

教育基本法第1条※2006年12月、戦後59年ぶりに改正

かみ砕いていくと、
ひとつは、「自分の頭で考える力を養う」こと。
もうひとつは、「社会の中で生きていくための最低限の知識(武器)を与える」こと。

「自分の頭で考える力を養う」とは、自分が感じたことや自分の意見を、自分の言葉で、はっきりと表現できる力を育てること(人格の完成)

「社会の中で生き抜くための最低限の知識(武器)を与える」とは、お金、社会保障、選挙など、社会人になるとすぐにでも直面する世の中の仕組みを教えること(社会の形成者として必要な資質を備えること)

自分の頭で考える力を与える

人間が人間たる所以は、他人の意見に左右されることなく、自分の頭で考えることです

『「教える」ということ』p24

これは特にこれからの時代を生き抜くために必要な力と言ってもいいでしょう。

大量生産大量消費の時代は、自分で考えなくてもシステムの中に入っていれば、何も問題ありませんでした。しかし、現在は1年も経てば、テクノロジーの進化や価値観など、世界の状況が一変しているような時代です。

現在の延長線上に未来があるのであれば、自分の頭で考えなくても対処できたかもしれませんが、どう変化するか誰にも分からない時一番大事なのは原点から考える力となります。出口さんは、この力を養うのにタテ・ヨコ・算数という三つの枠組みを提唱されています。

タテは、昔の人の考え方を知ること。人間の脳は1万年ほど全く進化していないため、弥生時代の人たちと基本的に喜怒哀楽や判断力は同じだと言います。

ヨコは、横はグローバルな視点。世界の人の考え方を知ること。先進国で夫婦同姓を強制している国は日本以外には皆無。もしこれで「夫婦別姓を容認したら家族を壊れる」などと言っている人がいたら、単なる不勉強か思い込みでしかないという話。

算数は、エピソードではなくエビデンスあるいは数字ファクトロジック。日本の労働時間は年間2000時間で経済成長率1%にも満たず、同程度の資源を持つドイツやフランスは1400時間で2%の成長を達しているのに、日本的経営が重要としている人はお門違いという論法。

社会を生き抜く武器を与え

民主主義社会を生き抜くために、最低限必要とされる7つの武器を紹介しています。これらの知識は大前提として備えるべきで、そこから自分がどう行動すべきかを考えることができるようになります。

1.「国家」の基礎を知る

国家とは、国民国家という概念を作り出す「想像の共同体」です。国家という組織に属する一人ひとりをまとまった構成員として統合しようというものです。各国の政府は、作り上げた国民意識を維持するために、国旗・国家・国民の祝日などを制定して一体感の醸成に努めています。

2.「政府」の基礎を知る

この節の中には、貸借対照表のような図があってそれがわかりやすいのですが、テキストで整理します…。この図では左側が資金調達で右側が使い方になってますのでBSとは違いますが。

左右に分かれたボックスを頭に描いてください。
左側はお金の調達です。主に国民が税金によって徴収される負担で、一部は国債による借金です。
右側がお金の使い道です。主には社会保障などでの給付で、処理するために政府がオペレーションコストとして乗ります。

負担:国民が政府によって徴税される
給付:公共財や公共サービスの提供
政府:オペレーションコスト
借金:国債発行など

これを踏まえれば、政府は小さい方がいいことがわかります。大きいとオペレーションコストがかさんで無駄が多くなるからです。

3.「選挙」の基礎を知る

政府がオペレーションコストと分かれば、その政府を作るのは何か。それが選挙です。選挙とは、自分の意見を表明できる機会です。白票や棄権は、現在の政治を信任することと同じです。

選挙というのは、こういった信用のおけない人たちの中から、総体的にマシな人を選ぶ忍耐のことである

『「教える」ということ』p42(チャーチル)

低い投票率は改革できない社会を作ります。「投票に行かない」とか「政治に興味がない」といってる人は、レストランでお金を払っているのに、何が出てきても文句を言わない人と一緒です。

4.「税金」の基礎を知る

選挙に行くということは、私たちが徴税される税金を「こう使って欲しい」「こういう使い方はしてほしくない」などと注文をつけることです。つまり、選挙に行かないということは、税金がどう分配されても、年金を払ってもらえなくても、医療費負担が10割になっても、決して文句は言いませんという意思表示になってしまいます。

過去、アメリカ東部を植民地としていたヨーロッパは、アメリカに課税しておきながら議員を置くことを禁じていました。アメリカに住む人々は税金の使い道について発言ができなかったのです。これが独立戦争のきっかけの一つになりました。

いま、わたしたちは、税金だけでは賄えない給付を、借金して予算化しています。4分の1が借金です。このままいけば、私たちの子供や孫の世代が将来税金を開けようとしたとき、すでに借金で1/3が先食いされてしまっている状態になっているかもしれません。これだけでも、これ借金を増やすべきではないということがわかります。

5.「社会保障」の基礎を知る

市民が負担した分だけ市民が給付を受け取るので、税と社会保障の改革はひとくくりにしないといけない

『「教える」ということ』p49

近代国家の大原則は負担がすなわち給付、再分配と捉えれば、税金と社会保障はセットです。

昨今、消費増税が弱者いじめなどと言われますが、そもそも人口構成に変化が生じているのに、これまでと同じ負担でやり過ごせるわけがありません。人口が増え続けるのであれば働き手が増え続けるので所得税でなんとかなったかもしれませんが、日本はもう少子高齢化にしかなりません。すでにヨーロッパなど高齢化先進国では、所得税から消費税の転換が進んでいます。

ところで、日本では公的年金が取りざたされることがあります。「本当にもらえるのか?」と。
出口さんは、それは俗説に過ぎない、公的年金保険は破綻することはない、と言います

理由①
年金は所得の再分配だから。市民からお金を集めて働けなくなった人などに配るのが年金市民がいる限り年金は破綻するはずがない。

理由②
2年金より安全な金融商品は存在し得ないから。国より安全な金融機関は存在しない。

理由③
経済成長と良い政府のみが年金を担保するから。日本はまだ成長できる、投票率を上げていい政府もきっと作れる。

年金が破綻すると騒いでる人は、「若者が高齢者を支える」という前提に立っているからだと言います。ヨーロッパでは「みんながみんなを支える」という前提に変わってきているとのことです。

6.「お金」の基礎を知る

まずは「財産三分法」が基本。
給与を「財布」「投資」「預金」の3つに振り分けるという、いたってシンプルな法則です。

次に、72のルール
これは、予定利回りで複利運用した場合に、元本が倍になる年数が暗算で計算できるというものです。

72÷金利=元本が倍になる年数

なぜ72なのかはここでは触れられていませんが、ちゃんとした計算式があるようなので調べてみてください。

続いて、ドルコスト平均法
欧米では、投資初心者は誰でもドルコスト平均法による投資信託の購入から始めると言われているそうです。サラリーマンなら、持株制度とか企業型年金もドルコスト平均法で積み立てているから馴染みがありますね。資本主義社会である限り、どこかで揺り戻しはあっても市場経済は成長し続けます。持ち続けるという戦略ですね。

最期にお金に関してこう書かれています。

ドルコスト平均法よりはるかに儲かる投資方法が既に確立されています。自分に対する投資です

『「教える」ということ』p61

7.「情報の真偽」を確かめる基礎を知る

昔からフェイクニュースは存在しているのですが、インターネット化、さらにSNS時代に移っていき、容易にフェイクニュースが拡散されるようになり、国家単位ではなく個人単位のいたずらですらポストトゥルースとして受け入れられてしまっています。

どんな情報に出会っても、数字・ファクト・ロジックで考える癖をつけましょう、ということです。
そのためには、新聞を複数読み比べ、同じテーマについてどのように各紙が報じているのか、一面的な情報収集ではなく多面的な情報収集が求められます。そして、政府のデータや統計を見に行きましょう。ここには真実があります。ごまかせば世界的な信用失墜になるからです。

子育てについて

「教える」ということ、というテーマで子育てについて書かれているのはなんだか不思議ですが、とても印象的だったので残しておきます。父親が子育てをした方がいい理由と、ホモ・サピエンスの保育について書かれています。

男性が子育てをしたほうがいい理由は、親として子供を育てる義務を果たすために重要なプロセスだというのです。女性の場合は出産するとオキシトシンという愛情ホルモンが大量に分泌されますが、男性は子育てというプロセスを経ることでオキシトシンが分泌されます。男性が育児休暇をとるのが科学的にも理にかなっているとのことです。

さらに、子育ては母親に任せるものではなくあくまで集団で育てるのが基本とも書かれています。

ホモ・サピエンスの20万年に及ぶ長い歴史をたどると、150人程度の集団生活において、男も女も森に入って狩猟や採集をしていました。その間、こどもの面倒を見るのはケガをした人や高齢者。『サピエンス全史』でもサピエンスが繁栄したのは、集団での協働が可能になったからというのがありましたね。

したがって「育児は母親がするもの」という家族観のは、過去から学べばホモ・サピエンスの原理原則ではないのです。そのため保育園に預けるのは正しい選択ということになります。男は仕事、女は家庭という性別分業も、もはやなくなっていく、なくしていくべきでしょう。

選択肢を与える

教育で大切なのは、学生や子どもが潜在的に持っている、興味や関心を引き出すことです

『「教える」ということ』p103

勉強の基本は好きこそものの上手なれ。
最近の研究では、「最高の先生が最高の授業をしても、聞いている学生が興味を持っていなかったら、単位を取った後は授業内容をほとんど忘れてしまう」という結果が出ているそうです。

出口さんは、「興味がない人に対して教える方法はありません」とまでおっしゃっています。この選択肢を増やすにはどうすればいいのでしょう。

それは、幼少期に適切な教養を受けることによって学習意欲を養うことが一つの手段です。その学習意欲があれば、その後の人生のなかでも新しい何かを学ぼうとする意欲に繋がり幅が広がっていくのです。

少しこの節とはズレますが、もしみなさんに子どもいて、子どもに「どうして勉強する必要があるのか?」と質問されたとき、どう答えますか?

出口さんは、次の2つのことを話すそうです。

1.「選択肢」が増える
2.「生涯収入」が高くなる

シンプルですね。でもそれぞれ根拠とストーリーをもって話せます。何かについて知っているほど人生の選択肢は増えるし、科学的には18歳~19歳くらいまでにきちんと勉強をした人は、勉強しない人よりも生涯収入が高くなるというファクトがあるのだそうです。参考にしたいですね。

伝え方・教え方の基本

1.最初に結論を述べる
2.エビデンスを提示する(できれば3つ以内)
3.相手のレベルに合わせた伝え方をする

結論から最初に伝えると、話が長くなったり、話が脱線してポイントが絞りきれないといった悩みが解消されて、相手の理解度が高まるエビデンスを提示すると納得が得られやすいです。しかも「3つ」という個数は人間の脳にとって覚えやすく、説明もしやすいものです。

また、教えるから覚えられる。といことも書かれています。
学んだことは、実践する。インプットとアウトプットはセットにするということです。

アウトプットすると、情報が整理され、また自分がわかっていないところがわかります。
例えば、人に話す、書いた文章を人に見せるなどです。

尖った人を増やす

新しい産業を作る人を育てない限り、日本経済は低迷したままでやがて沈みます。日本の国際競争力がこの30年間で低下した衆院は新しい産業を生み出せず産業の新陳代謝が起きなかったからです。

大量生産大量消費の時代は、日本が江戸時代より植え付けられた論語的思考の成れの果て、なるべく尖らず集団行動で、とことん成長していきました。しかしもはや限界。

日本に必要なのは、ゼネラリストよりもスペシャリスト。ゼネラリストという概念は、日本を除けば、世界のどこの国にも存在しないのだそうです。

グローバル化する経済において、製造業からサービス業への転換はなされていくでしょう。求められる人材像も変わってきます。製造業は、長時間働け、目の前の作業に注力し、従順で素直、協調性のある人たちが必要でした。しかしサービス産業は、自分の考えで自ら進んで行動し、尖った個性を継続して勉強を続けるような人たちが求められます。

社会人に仕事を教えるとき

社会人に仕事を教える時はマニュアル化に尽きる、とのことです。誰がやっても同じ結果が出る仕組みを作ることをまずマネージャーが考えます。

マニュアルがあれば上司や先輩の都合やレベルに左右されることはありません。若手社員や非正規社員で構成された職場でも、ある程度の訓練でほぼ同レベルの業務を行うことが可能となります

『「教える」ということ』p220

マニュアル化は個性を潰そうという者ではありません。生産性を高めるために有効な手段です。マニュアル化によって人の時間を余計に割かなければならなくなる事態が避けられ、そのぶんを他のことに使えるでしょう。

部下との関わり方も参考になります。

部下とのコミュニケーションはあくまで就業時間内にすること。例えば、飲みニケーションというものがありますが、これは飲みに行かない人にとっては公平性を欠くものです。人は比較をするものなので、公平に扱うことが大切になります。飲みとかもそうですが、例えばMBOの面談でも、ある人は1時間だけどある人は15分などにしないということですね。

まとめ

うーん、長くなってしまった。
期待していた「教える」ということとは結構違ったのですが(教え方、作法的なものと思った)、部下、これから社会に出る人、子どもなど、対象ごとに、教える・育てるということの前提、心構えを学ばせてもらいました。

本の目次

  • はじめに
    • 「わかる」と「わからない」
    • 「現代の本を読んでわからないのは、書き手がアホやから」
    • 「教える」とは真意を腹落ちしてもらうこと
    • さまざまな「教える」立場にある人へ
  • 第1章 後輩たちに「社会を生き抜く武器」を与える
    • 「自分の頭で考える力」と「社会を生き抜く武器」を与える
      • 教育の2つの目的とは?
      • 自分の頭で考え、自分の言葉で自分の意見を表現できる人間になる
      • 考える力を身につけるには「先人の真似」から入る
      • タテ・ヨコ・算数という思考の枠組み 
      • 将来を想像するには、過去を見るしかない
    • 「国家」「選挙」「税金」…についてきちんと教えることができるか
      • 社会を生き抜くための「7つの武器」
      • 現代の国家は国民国家(ネーション・ステート)という「想像の共同体」
      • 政府の基本は「負担>給付」
      • なぜ日本は「先進国の中で投票率が低い」のか
      • 「白票や棄権は、現在の政治を信任することと同じ」というファクト
      • 低い投票率は「改革できない社会」をつくる
    • 「政治とは、税金の使い道を決めること」とシンプルに説明てまきますか?
      • 政治も消費行動も本質的には同じこと
      • 例えば「社会保障について考える」場合
      • ?ヨーロッパの子どもたちが教わっている「原理原則」とは
      • 「年金はもらえなくなる」は誤った俗説にすぎない
      • ヨーロッパの若者が教わっている「原理原則」
    • お金を上手に使えなければ社会では生きていけない
      • お金の基本は財産三分法
      • 「72のルール」を知る
      • ドルコスト平均法を覚えておこう
      • なぜ給与が増えるのか
    • フェイクニュースにだまされないように情報の真偽を確かめるクセをつけよう
      • エピソードではなくエビデンスで考えよう
      • フェイクニュースを見破るコツは
    • 子育てに時間がかかる理由のひとつは、人間が頭が大きく二足歩行をする動物だから
      • 子育ては、権利ではなくて親の義務である
      • 科学的に見ても、父親が子育てをしたほうがいい
    • 母親に子育てを任せるのではなく、「集団で育てる」のが教育の基本
      • 「3歳児神話」は「3歳児デマ」
      • ホモ・サピエンスは、集団保育が原則原理
      • 子どもを保育園に預けるのは正しい
    • 特別対談 久野信之×出口治明
      • 最初に型にはめなければ、型破りの生徒は生まれない
      • 「世界に通用する18歳」を育てる
      • 「命の重さに違いはあるか」という問い
      • 14年かけて実現させたボツワナへの海外研修
      • 大人にできることは、子どもたちに広い世界を見せてあげること
      • 教育の目的は、「生きる武器を与え、考える力を養う」こと
      • 人生にも仕事にも、遊び心が必要
  • 第2章 根拠にもとづいて話す。選択肢を与える
    • 興味のないことはすぐに忘れるが、興味のあることは忘れない
      • 勉強の基本は、「好きこそものの上手なれ」
      • さまざまな可能性を見つける場を提供するのが親や教師の務め
    • 精神論に終始せず、科学的根拠にもとづいた教育をする
      • 根拠なき精神論が教育をダメにする
      • 幼児教育がもっとも「教育投資効果が高い」
      • 若いうちに「腹落ちする体験」を積むことが重要
    • 「タテ・ヨコ・算数」で教え、考えさせる
      • 色眼鏡をかけたままでは、物事の判断を見誤る
      • 「タテ・ヨコ・算数」で減点から考える
    • 教える相手に「伝わりやすくなる」話し方
      • 結論を先に述べて、そのあとで根拠を提示する
    • 教えるから覚えられる。インプットとアウトプットはセット
      • 「記憶力」を鍛えるための「出力」
      • インプットとアウトプットは、コインの表裏
      • 人に教えることで自分も学ぶことができる
    • 特別対談 岡ノ谷一夫×出口治明
      • 動物界で唯一、親が子に「教育」をする動物とは?
      • サーカスの動物はどうやって芸を覚えるのか?
      • オンライン教育のデメリット
      • 教育は、世代レベルでしか有効ではない
      • 英語教育より大切な「言語教育」
      • 言語学習は思考の多様性を知るための学習である
      • 品減の権利を平等に認めることが社会の大前提
  • 第3章 「尖った人」を生み出すための高等教育
    • 日本の高等教育の問題は、教育費にお金をかけられないこと
      • 日本の義務教育は世界最高レベル。高等教育は低レベル
      • 「小負担中給付」はもはや限界。負担増に舵を切る必要性も
    • 大学は衰退産業ではなく、超有望な成長産業である
      • 18歳人口が激減する中、大学はどうすべきか
      • おもしろい大学をつくれば、世界中から人は集まる
    • 新しい産業を創る人を育てないと日本経済は低迷したまま
      • 日本のユニコーンは「わずか3社」
      • 製造業の工場モデルからサービス産業モデルへ
    • 自分の好きなことを徹底的に極めた「変態」を育てる
      • ゼネラリストよりもスペシャリストを育成する
      • 高校を「変態コース」と「偏差値コース」に分ける
      • 学生の中から起業家やNPOを育成するAPU企業部
    • 日本の低迷を救う3つのキーワード「女性」「ダイバーシティ」「高学歴」
      • どうすれば、新しい産業を生み出すことができるのか?
      • 日本の大学生が勉強しないのは、企業側に100%責任がある
    • 人間は怠け者だから、勉強せ座tるを得ない環境に身を置く
      • 人はひとりでは勉強しない。お互いに刺激し合う仲間が必要
      • 21世紀最初のエリート大学「ミネルバ大学」
    • 考える力を養うには、ピア・ラーニングが最適
      • APUが「ピア・ラーニング」に注力している理由
    • 特別対談 松岡亮二×出口治明
      • 日本の学校教育には、厳然たる格差が存在する
      • 映画『フリーダム・ライダーズ』に見る教育の本質
      • 「誰」が何を「選択」するのか
      • 機械的平等主義が日本の教育をダメにする
      • 日本人はなぜ、新しいことを学ぶのが苦手なのか
      • 家庭と学校の親和性
      • 大学に進学するのが正しい選択か?
  • 第4章 正しい「人間洞察」を前提にした社会人教育
    • 社会人に仕事を教えるときは「マニュアル化」に尽きる
      • 誰がやっても同じ結果が出るしくみをつくる
      • 「目的」が明確になっていれば、「調整」ができる
      • マニュアル化は世界の常識
    • 誰が作業しても「最低60点」は取れるようにする
      • 日本生命に代々伝わるマニュアルをつくる
      • マニュアルは、外国人雇用にも役立つ
      • 名刺をマニュアル化して、マーケティングに役立てる
    • マニュアル作成の「4つ」のポイント
      • マネージャーが作成したマニュアルを定期的に更新する
    • 部下とのコミュニケーションは「就業時間内」に行うのが基本
      • 飲みニケーションの文化は日本独自のもの
    • 定期的な「1 ON 1 ミーティング」で組織内の地図をつくる
      • 愚直に1対1の対話を繰り返す
      • 好き嫌いに関係なく、部下と平等かつ公平に接するのが優れた上司
    • 新しいインプットを生み出すには、「人・本・旅」によるインプットが不可欠
      • インプットを増やす3つの方法
      • 学びを個人に任せてはダメ
      • 大学生の読書量を増やす方法とは?
    • 「上司のいうことを聞かない部下がいる」のは健全な証拠
      • 2:6:2の法則を前提に組織をマネジメントする
  • おわりに
    • 川の流れに流されていく人生が一番素晴らしい


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