ベンチャー系の講義を受けた際に、参考図書として読んだことはあった『ビジネスロードテスト』。
個人的な話になりますが、2021年7月に、これまでマネジメントしてきた事業部から完全に離れ、ベンチャー投資など全社戦略的な部門を立ち上げて動くことになったため、この機会に再読。オチとしては、帯にも描いてあるのですが、「7つの成功条件の何を満たしているのか」「満たしていないとしたら何の要素によってカバーできるのか」というものです。具体的な事例は本がたくさんあるので、買って読み込んでるのがよいかともいます。
この本はスタートアップ向けに書かれているのですが、私みたいな事業投資初心者にもちょうどいい本だと思いました。ベンチャーキャピタルでも全然活用できる教科書なんだと思います。起業家側にとっては『リーンスタートアップ』と合わせて読んでおくと良さそうです。
思い込みというのはありがちで、雰囲気で「なんかニーズありそう」で進むことはあるあるです。私もよくやらかしました…本当はしっかりとマーケットリサーチをして、できなさそうであれば戦略の方向性を切り替えなければいけないのですが、リサーチをするためのコストを予算化できなかったりして、結果的にずるずると長引かせた挙句に何にもならないということも。
とはいえ、思い込みがなければ空白の市場を開拓するようなことはできないとも思います。ニーズが顕在化しているんだったら、わざわざ起業しなくても誰かがやっている可能性がありますからね。
ただベンチャー投資になってくると、少なからず投資に対してのリターンが必須になります。CVCなどは「戦略的リターン」と言いますが、結局は将来的に新たな「経済的リターン」が生まれないのであればやる意味がありません。そのためのリスクを減らし、リターンの可能性を高めるチェックリストとして本書の「7つの条件モデル」を確認することは有用なのではないかなと感じました。
これから、楽しんで、真剣にベンチャーと向き合おうと思います。
本の概要と要約
著者の課題
新規事業の勝算は低い。叶わぬ夢を追いかけずに済み、成功の可能性を高める秘訣はどこにあるのか。
解決方法
起業を成功させる上で重要な市場、業界、経営陣と関連付けた七つの成功条件モデルを紹介する。
内容
・市場と業界は違う
-市場は顧客(買い手)で構成されている
-業界は売り手で構成されている
・マクロとミクロの視点が重要
・7つの成功条件モデル
ー市場
①魅力的なターゲット・セグメントの存在
②市場の魅力
ー業界
③業界の魅力
④持続可能な競争優位性
ー経営チーム
⑤使命、野心、リスク許容度
⑥CSFに対する実行力
⑦バリューチェーン上での人的ネットワーク
・重要な質問
①魅力的なターゲット・セグメントの存在
-喜んで買う顧客セグメントはいるか?
-そのセグメントはどのくらいの大きさで、どのくらい成長するか
②市場の魅力
-市場は大きいか
-短期的な成長率は
-長期的な成長率は
③業界の魅力
-5つの競争要因の状況はどうなっているか?
④持続可能な競争優位性
-他社は模倣できるか
-採算性があるか
⑤使命、野心、リスク許容度
-自分の資本を危険にさらせるか
⑥CSFに対する実行力
-業界の主要成功要因(CSF)は何か
-実行できるか
⑦バリューチェーン上での人的ネットワーク
-上流・下流・ヨコの情報源はあるか
・5つの落とし穴
①巨大市場という罠
-つまり他社も狙っている
-顧客に本物のメリットを提供する必要がある
②優れた製品という罠
-テクノロジーを現金化するのではない
-顧客のニーズをテクノロジーで満たす
③持続できないビジネスモデルという罠
-顧客にメリットがあっても採算が取れなければ短命に終わる
-自分や業界を理解し採算性を試算する
④便乗という罠
-新規参入の脅威や持続可能な優位性がなければあっという間にふるいにかけられる
⑤自信過剰という罠
-これまで向かうところ敵なしだったとしても、過去の影響に安住せず、7つの成功条件モデルに注意を払う
※本書は正誤表が公開されています。私の手元にある4刷では修正されていますが、それ以前の方は英治出版のサイトをご参考ください(英治出版:書籍情報『ビジネスロードテスト』)
著者:ジョン・W・ムリンズとは
ロンドン・ビジネス・スクール(LBS)教授。スタンフォード大学ビジネススクールでMBAを、ミネソタ大学でマーケティングの博士号(PhD)を取得。アントレプレナーシップの人気教授で、プロフェッサー・オブ・ザ・イヤーにも輝いている。アパレル大手のGAPの創業に携わるなど、3度の起業経験を持ち、20年にわたる経営者としての経験をもとに教育や執筆を行う。
また、タイム・ワーナー、イーストマン・コダック、ロシュ・ダイアグノスティックス、ノバルティスなど、イノベーションを生み出す企業の経営陣を対象に研修・コンサルティングを実施している。
本の解説と感想
市場と業界の違い、マクロとミクロの視点
市場と業界の違いについて、説明できるでしょうか。ビジネスを考えるときにこの二つの要素が全く別のものだということをまず理解しておくことが大切です。
市場とは、顧客で構成されるものです。つまり、製品なりサービスをお金を対価として購入するという意思を持っている人たちで構成される集団です。新規事業で成功するためには、その人たちがいるのかどうかと、その人たちが今後どのくらい増えていくのかどうかを考えることになります。
業界とは、売り手で構成されるものです。つまり、あなたが提供しようとする製品またはサービスと似通ったものを、似たようなターゲットに提供している人たちで構成される集団です。この集団の周辺を含む業界構造がどのようになっているものか、そのなかであなたが他者に優って持続的に戦っていける要因はあるのかどうかを考えることになります。
市場は魅力的でも、業界の環境は厳しいことは多々あります。例えば、インターネット市場は、90年代前半までほとんど未開拓の市場であり、今でも世界の人口のほとんどがアクセスできるようになるという見込みであれば市場は魅力的と言えます。しかし、インターネットの世界は白紙の領域がどんどんなくなっていき、参入障壁も低く、差別化が難しい業界が非常に多く、競争優位を維持していくことは難しいのです。
さらに、マクロとミクロの2つのレベルで「市場」と「業界」を見るということも忘れてはいけません。
マクロとは、全体的で一般化された視点です。つまり、その市場がどのくらいの市場規模なのか、どのくらい成長するのかというものであったり、その業界がどのような構造になっているのかというものです。
ミクロとは、個別的具体的な視点です。つまり、その市場のなかでの具体的な顧客がいるのか、セグメントはどこなのかというものや、業界のなかで優位性や差別化できる能力は何かというものです。
もっとも前提として、これからまとめる「市場」「業界」「マクロ」「ミクロ」のクロス視点を含む7つの条件すべてを満たすことは困難で、あくまでも事業を俯瞰的に、冷静に見る視点として考えておくことも大切です。
市場
成功を収めた起業家は、たとえ世界を制覇することを究極の目標に掲げていても、最初はターゲットを絞り込んだ市場や本当に小さなニッチ市場から事業を始めている
『ビジネスロードテスト』p72
魅力的なターゲット・セグメントの存在
新規事業を文字通り事業化させるためには、そもそも製品やサービスを喜んで買ってくれる人たちが必要です。ありがちな落とし穴としては起業家の妄信です。なんとなく良さそうなものでも、それを有料で買ってくれる人がいるのかどうかがポイントです。
この問題をチェックするための質問が、4つ提案されています。
1.自社商品やサービスを理解し購入してくれる顧客セグメントは存在するのか、自社の商品は顧客が喜んで購入する価格で彼らの悩みは痛みを解決できるか
2.顧客が思い描くメリットは他の手段によって提供中のメリットよりも何らかの点で優れているか
3.このセグメントの大きさはどのぐらいかどれほどの速さで成長しているか
4.このセグメントへ参入することはかねてから狙っている他のセグメントへの参入に繋がるか
このなかでも、1と2がまずはベースでしょうか。クリアするためにも、思い込みではなく、しっかりとマーケティングリサーチをしたり、『リーンスタートアップ』で書かれているような、プロトタイピングでの検証が一つの手段でしょうか。
顧客が購入しそうだという証拠もない商品のために、ビジネスプランをまとめるのは時間の無駄。ターゲット市場を明確に特定し、説得力のある証拠を出しながら顧客が製品を購入する理由を示すことで、顧客も投資家からの支援も獲得することができます。
市場の魅力
その市場がビジネスサイズとして申し分ないか、市場は拡大するのか、それはどのくらいかという観点です。士業などに代表されるスモールビジネスなど、投資家からの資金供給を必要としない起業もあるでしょうが、そうでない場合は投資家の存在に頼ることになります。投資家は新規事業が100%成功しないことを知っています。それどころか、スタートアップ投資はしたうち7割は全く何もリターンを生みださない可能性もあります。そのなかで利益を出すための投資を考えるのであれば、今日ある100円が明日はるかに高くなることを求めるのは必然になります。市場は大きく、しかも成長しなくてはならないのです。
この問題をチェックするための質問が、3つ提案されています。
1.今、市場は大きいだろうか、競合他社が足を引っ張り会わずに自社のセグメントへサービスを提供できる規模だろうか
2.市場の短期成長率はどう予想されるか
3.市場の長期成長率はどう予想されるか(これはマクロレベルの動向によって大きく影響を受ける)
しかし、この問いに応えられたとしても安心はできません。大きく成長している市場を他者が見逃すわけはなく、当初想定していなかった競合を引き込むことがあります。そのため、次に解説する「業界」で述べるように、知的財産など競争から自分の会社を守る力がないのであれば小さめの市場を選ぶべきかもしれません。
業界
業界の魅力
業界をマクロ視点で捉えるフレームワークとして、5フォース分析(業界構造をつくる5つの競争要因)が用いられています。本書では、トミーという子どもがレモネードを販売するサービスを提供するという環境を例に解説されています。
1.新規参入の脅威
レモネード販売は、初期投資や特別な知識がなくても、回転できる折りたたみ式のテーブルと大きな看板があればすぐに始められる。レモネードを作る知的財産権なども存在しない。新規参入はしやすい…ように見えるが。実はトミーは売上の10%をテリー兄さんに払っており、テリー兄さんのおかげで近所の子供たちは新たにレモネード販売ができないため、新規参入の脅威はほとんどない。トミー、やり手。
2.サプライヤー(売り手)の交渉力
レモネードの原材料は、トミーの母親が手数料なしで毎週安定して仕入れてくれる。もしも母親が供給してくれなくなっても、トミーは近所のおじいさんおばあさんに頼めば喜んで引き受けてくれると確信しているため、サプライヤーの交渉力が弱い。トミー、あざとい。
3.買い手の交渉力
顧客となる人たちは、お年寄り。トミーのような子どもを可愛がっているし、それなりの可処分所得もあろ、何よりもレモネードを楽しみにしているため、買い手の交渉力は弱い。トミー、またもあざとい。
4.代替品、サービスの脅威
2ブロック先にナンシーのアイスティースタンドがある。値段はレモネードと同じくらいで、他にもトミ多くの代替品が存在するが、今のところトミーの笑顔が顧客をつなぎとめている。
5.競合他社との敵対関係
テリー兄さんのおかげで近所にレモネードを売る他の子はいない。いたとしてもトミーより安い値段で売ることはない。
ということで、競争環境のうち代替品以外ではよい環境であると言え、この業界は魅力的であるとわかる。
5フォース分析に基づく質問として、以下の5つが提案されています。
1.この業界に企業が参入するのは難しいか、簡単か
2.この業界に対するサプライヤーは取引条件を決定してしまうほどの交渉力を持っているか
3.買い手は取引条件を決定してしまうような交渉力を持っているか
4.代替品が市場を奪うのは簡単か、難しいか
5.競合状況は厳しいか、緩やかか
まとめると、業界の魅力度を投資家が考えるときには、新規参入の脅威がほとんどなく、サプライヤーと買い手の交渉力が低く、代替品サービスの脅威が少なく、業界内の競合他社との敵対関係が厳しくないかどうかをチェックするということです。
持続可能な競争優位性
そう簡単には破られない特許で保護される優れた商品を持っていれば、それは紙幣を印刷するためのライセンスに匹敵するのである
『ビジネスロードテスト』p175
もしあなたが新しい製品やサービスを提供しようとも、ほとんどの業界では、既存の競合他社や新規参入企業がすぐさま製品やサービスを模倣し、初期の競争優位は瞬く間に消えていってしまいます。先行者優位は多くの場合は幻想で、最高の物が先行者を打ち負かすというのが現実です。ピーター・ティールが『ゼロ・トゥ・ワン』でラストムーバーアドバンテージと言って、最後に圧倒的に勝てばいいということにもつながります。
競争優位を維持するための確認点として、以下のチェック項目が挙げられています。
1.他社が複製もしくは模倣できそうもない財産がある
2.他社が複製もしくは模倣できないほど優れた組織プロセス、能力、資源がある
3.ビジネスモデルに採算性がある
4.必要な投資家利益率に見合うだけの売り上げがある
5.顧客獲得維持コストや顧客を引き付けるために要する時間が妥当
6.必要な固定費をカバーできるほど貢献利益が十分にある
7.運転資金サイクルの特徴が好ましい状況にある
もし、優位性を維持できる特許などを持っていたとしても、採算性がなければ意味がないですし、もしキャッシュが回収できてもキャッシュフローが耐えられる回転をするのかどうかなど、お金にも目を向けないと持続させることは困難です。
特に投資家は長期投資になるため、5年後にも投資したビジネスが高い利益率を得られるのかどうかは大きな関心ごとです。Saas型のビジネスが好まれるのも分かります。
経営陣
市場、業界の次に起業が成功するかどうかを左右する、もう一つの要素は経営陣です。7つの成功条件で描かれている「市場」と「業界」の間にこの「経営陣」が乗る形になっています。この図はうまく描かれていて、経営陣のなかの「使命、野心、リスク許容度」は市場側に被っていて、「CSFに対する実行力」は業界側に被っています。「 バリューチェーン上での人的ネットワーク 」はミクロ視点での市場と業界の上にあります。この前提で読み解いていくと理解も早いです。
使命、野心、リスク許容度
どんなに市場や業界が魅力的でも、起業家本人あるいはチームに本気さがなければ、困難を乗り越えていくことはできません。それほどまでに新規事業を事業として回していくまでには『ハードシングス』が待ち構えています。資金ショートもあれば、リストラもあるかもしれません。
ビジネスロードテストでは、起業の夢を実現させる三要素として以下の項目が挙げられています。
1.使命
どのようなビジネスを目指すのか、どのような市場にサービスを提供するのか
2.野心
どこまでの目標達成レベルを狙うのか
3.リスク許容度
夢を実現させる過程でどのようなリスクを冒すのか、そのためにどのような犠牲を払うのか
起業家にとって、ベンチャーキャピタルから資金供給を受けるか受けないかは、最初の重大な経営判断になります。投資家の考え方は単純明快で、ひとえに大きな利益を上げることです。そのため起業家はベンチャーキャピタルからの資金供給を受け入れれば、事業売却に同意したのも同然だということを理解しておくべきです。起業家と投資家は対等に渡り合うのが理想でしょう。投資家は大きなリスクを追ってスタートアップに資本投下します。そのため起業家たち自身が、自己資本を危険にさらす気持ちがあるのかどうかを見ています。
CSFに対する実行力
CSF(=”Critical Success Factor”)で、主要成功要因を意味します。よくKSF (=Key Success Factor”)という言葉は耳にするかと思いますが、それと同義と考えてよいでしょう。
業界で戦い、生き残るためには、業界特有の CSF を特定することが求められます。そしてCSFを実行できる経営陣や従業員を集めていきます。
CSF を特定する重要な質問としていくつか提示されていました。
1.企業の業績に、深刻な悪影響を与える決定や行動とはどのようなものか
2.企業の業績に、この上ない高影響を与える決定や行動とはどのようなものか
投資家にとって、投資した先のスタートアップ企業がCSFを実現できるという状態は、最高の防御策になり得ます。したがって起業チームのリーダーが参入しようとしているの業界 CSF を特定し、理解しているかどうか、CSFの実現を過去の実績を含めて示せる経営チームを結成しているかどうかが注目されます。
バリューチェーン上での人的ネットワーク
「バリューチェーン上での人的ネットワーク」というとあまりすっとは入らないのですが、業界の5つの要因それぞれと市場との関係性を知るということで、この力があるかないかによって、柔軟性が大きく変わってきます。
バリューチェーン上で強い人的ネットワークに取り囲まれている起業家は次のことが可能になります。自社のポジションをうまく築きつつ、刻々と変化していく市場を見定めながら、ニーズに合わせてサービスや製品、オペレーション、組織プロセスなどを修正できます。
市場も業界も時間とともに、マクロレベルでもミクロレベルでも変化していきます。既存事業ですら毎年のように戦略を練るのに、新規事業だけがずっと同じことをやっていられるわけはありません。軌道修正の必要性を途中で伝えてくれる情報源がなければ失敗の可能性は高いです。
つまり、買い手側(見込み客)と関係を築いていれば当面の売上目標を達成する可能性が高くなる。売り手側との関係を持っていれば、仕入れを望み通りのコストで手に入る可能性が高くなる。業界内の関係があれば事業が局面する敵対状況を理解することができる。そうなれば、計画がうまく行かなかったときも、ピボットするかどうかの判断材料になります。
5つの落とし穴
以上のように、7つの成功条件モデルは網羅的にかつ俯瞰的に事業を見ることができるものです。しかし事業を推進する起業家も、投資家も、いつしか視野が狭まることがあります。どこかのタイミングで落とし穴がないかを確認することも必要になります。
1.巨大市場という罠
大きな市場、またはこれから大きくなろうとしている市場は、他社もその市場を狙っているということです。この製品やサービスを、ターゲットセグメントの顧客に、本当のメリットを提供していなければ事業は立ちゆきません。
2.優れた新製品という罠
テクノロジーが優れている!それだけでは事業としてうまくは行きません。いくら優れていても今までより優れたソリューションを顧客に与えられるとは限らないし、なにより採算性がなければ続けることはできません。テクノロジーの本質は、テクノロジーを使って顧客のニーズを満たすことです。私も経験がありますが、ワクワクするテクノロジーがあっても、顧客にとっての代替品になり得るものなのかは全く別物です。
3.持続できないビジネスモデルという罠
2ともリンクする部分もありますが、顧客に対するメリットに魅力があっても、採算性がとれなければどうにもなりません。テクノロジーの場合は、将来に価格が低下することもあり得ますが、常に将来的なキャッシュがどう生まれるかを試算しておくことが大事です。
4.便乗という罠
大きな市場には続々と新規参入者が入り込んできます。持続可能な優位性がなければすぐに取って代わられます。もし、参入障壁が低く先行者利益を維持できなければ事業を始めないことも選択肢です。無駄なことをするよりも別のプランに心血を注いだほうがよい、ということです。
5.自信過剰という罠
起業家のなかには、すでに成功を収めたシリアルアントプレナーや事業会社で成功してきた人たちもいます。これまでの実績があることは、起業における重要なファクターになり得ますが、新たな市場と業界は過去の成功とは全く違う世界です。起業家チームも投資家も、七つの成功条件に対する注意を怠ってはならない
本の目次
- 第1章 ビジネスチャンスを見極める
- 情熱!信念!根気!
- 成功の秘訣はどこにあるのか
- 魅力的なチャンスにある「7つの成功条件」
- 「市場」と「業界」の違い
- その「市場」に魅力はあるのか
- その「業界」に魅力はあるのか
- 結果を出せるチームか
- 七つの成功条件モデルから行動へ
- 夢を叶える地図
- 第2章 魚は食いつくか
- 顧客の重要性
- 携帯ユーザーを満足させた仕組み――NTT ドコモの i モード
- ビールをあきらめないセグメント――ミラーライト
- スポーツ市場を疾走する――ナイキ
- 大失敗に終わったマーケティング戦略――アワー・ビギニング
- 投資家の知りたいこと
- 第3章 市場の評価
- 市場は重要か
- インド、トップ企業への道――ヒーローホンダ
- 豆腐から歯磨き粉まで――ホールフーズマーケット
- 市場があると思っていた――シンキング・マシンズ
- 投資家の知りたいこと
- 第4章 業界の評価
- 好調な業界、好調な事業
- あなたの業界の定義づけ
- 「どこの業界か」は重要か
- 1980年代の製薬業界
- 21世紀の製薬業界
- DSL業界
- 投資家の知りたいこと
- 魅力のない業界で稼げるか
- 第5章 競争優位の維持
- 持続可能な優位性
- 保護と収益――胃潰瘍治療薬「ザンタック」
- 並外れたイノベータ――ノキア
- 有効なインターネットビジネス・モデル――イーベイ
- 失われた競争優位――EMI
- 持続不可能なビジネスモデル――ウェブバン
- 投資家の知りたいこと
- 「市場」と「業界」についてのまとめ
- 第6章 起業家としての夢の実現
- 夢を実現させる三要素
- 「体験」としてのコーヒ――スターバックス
- 投資家の知りたいこと
- 第7章 CSF に対する実行力
- 「起業」というスポーツ
- 主要成功要因(CSF)の特定
- イノベーションの成功――パーム・コンピューティング
- 投資家の知りたいこと
- 第8章 バリューチェーンとの関係
- 起業家の結びつき
- ビラータが幸運に恵まれた理由
- 投資家の知りたいこと
- 第9章 7つの成功条件モデルの活用
- ただのチェックリストではない
- なぜうまくいくのか、あるいはいかないのか
- ディール・メーカーとディール・ブレイカー
- 逆境に打ち勝つ
- ニッチ市場にいる起業家のチャンス
- 五つの落とし穴
- 投資家の求めること
- 第10章 ビジネスプランをまとめる前に
- なぜ多くのビジネスプランは資金を集められないのか
- ビジネスチャンスは、どこからやって来るのか
- 市場調査の第一歩
- 根拠に基づいた売上予測とその方法
- 顧客中心のフィージビリティ・スタディ
- フィージビリティ・スタディとビジネスプランの違い
- なぜこんな面倒なことをするのか
- 投資家がビジネスプランに求めること
- ロードテストに役立つツール
- ツール①ロングインタビュー
- ツール②市場分析のワークシート
- ツール③業界分析のチェックシート
- ツール④デュー・デリジェンス
- ツール⑤根拠に基づいた予測